待ち合わせとかって割とドキドキしてしまう感じだ。そりゃ相手が男とかつくしとかだったらな、なんかドキドキするの違うだろってなるけど。そうじゃなくて女子との待ち合わせ、二人で出掛ける実質デートみたいなノリだとさ、そういう関係じゃなかったり自分にそういう気持ちが全くなかったりしても、なんかドキドキするんだよなぁ。
「おーい!」
そんなおっぱいって言うことすらも忘れた俺の耳に飛び込んできたのは元気な声、そして元気いっぱいな笑顔、さらに──元気に跳ねる、おっぱい! ああおっぱい! ばいんばいんですよ! おっぱいって言うこと忘れてたのにあっという間に俺の思考の宇宙をおっぱいで埋め尽くすスペースコロナモードおっぱいの破壊力を慈悲なくかましてくるのは、上原ひまりだ。
「早いね~、待った?」
「えっと、今来たとこ?」
「うん満点!」
なんか採点されてた。でもましろちゃんにこういう時はどんだけ待ってても今来たとこって言った方が印象いいんだよと教えてもらってなかったら爆死していただろう。フツーに十分くらい前からいるし。そういう意味の満点なんだろう、よかった女子共通認識で。
「さて、デートだよデート」
「……え?」
「どしたの?」
「え、いやデートって」
デートって言われるとどういうことってなっちゃう脳内お花畑はこちらです。というかデートのつもりだったの? と問うとひまりはケロっとした顔でこの状況は誰がどう見てもデートでしょと言われてしまった。え、えぇ……それでいいのか。
「いいも悪いも、こうやって成立してるんだから……もしかして意識しちゃう?」
「いや全然」
「……なんだ、つまんなーい」
いやいやつまんないじゃなくて、どういう反応すればセーフだったんでしょうか? え、もしかしてそこで意識しちゃう! って言ったらどういう反応してくれるの? え、もうわかんないいきなり思考回路が熱暴走起こしてるよ!
「確かに、今日あっついね~」
「か、からかってる?」
「ん? うん」
うんじゃないが。そうやっていたいけな青少年の心を弄ぶんだ! あっついねーとか言いながら胸元をパタパタするんじゃありません! ああいけません、おっぱい、おっぱいです!
──本格的にオーバーヒートし始めてしまったため、急いで移動することになった。夏本番となった熱気と湿度は、熱暴走を起こすには充分すぎる条件だ。
「で、で?」
「……なに」
涼しい電車内に入ってすぐ、隣に座ったひまりがこっちに体重をかけてくる。近い近い、事故が起きますからやめてください。主におっぱい関連の事故が! 柔らか! 待って、触りたくないのに! 違うんです、不可抗力なんですぅ!
「大輔って誰が好きなのっ?」
「……誰って」
「候補は~ましろちゃん? と~燐子さんと~あと、つくしちゃん、だっけ?」
「恋バナしたいの?」
「うんっ」
そんな元気な声で何を言い出すのかと思えば恋バナ……そう言われても残念ながら俺は片思いもしてないよ? おっぱいには永遠の片思いしてるけど。でも片思いでいいんだ、この想いが届くことがないからこそ、俺の中でのおっぱいというものはひどく神聖化されていくものだからね。
「誰も違うんだ」
「おう、露骨に残念そうな顔するな」
「いや、残念って言うか……いやまぁ残念か」
待って待って、その場合の残念って意味が変わってくるのでは? なんか残念な要素あったと問うとあったよと苦笑い気味に答えられた。しかもほぼ即座に。いやまぁ残念系男子であることは割と自覚してるところだけど。頭の中ではおっぱいおっぱい連呼するおっぱいを愛する星の住人だし。
「私から見たらみんなワンチャンありそうだけどな~」
「すっげー無責任なワンチャンだな」
「あは、そうかも」
ため息が出そうになる。客観的なワンチャンほど無責任なことはないでしょ。もしかしたら合ってるかもって言いたいとこだけどそのワンチャンの中につくしが入ってる時点でもう信用ゼロだよ。それにましろちゃんも燐子さんも超弩級おっぱいなだけじゃなくて超弩級の美人さんなんだよな。それに対して好きになってくれてるかも! って感じるの失礼すぎでは? 釣り合いって知ってる?
「そんなに自分下げなくてよくない?」
「第一俺のことが好きかも、って思うこと自体罪じゃね?」
「罪って……そこまで?」
「じゃあ仮にひまりに対して思ってるって言ったら?」
「ギルティ、釣り合いって知ってる?」
ほら見たことか! だから言ったじゃないか! そう叫びたい気分だったけど電車内なのでごまかしておく。あんまりにも素早いギルティ判定に俺のおっぱい世界が終わりを告げようとしていたじゃないか。もう誰にも止められずに降る雨は涙の音色だよこんちくしょう!
「まぁまぁ、冗談だって~」
「じゃあ付き合ってよ」
「え、ごめんなさい」
「……お前さぁ」
「えーだってさ、私のこと好き! って言ってカッコよく口説いてくれるなら、そりゃちょっとはきゅんとくるけど、その死んだ目で言われてもなぁ」
ひまりはあれなんだな、こう少女マンガちっくというか、とりあえず王子様キャラが好きなのは伝わったよ。やめてよね、俺がそんなことしたらキモすぎて誰も勝てるわけないじゃないか。まだ俺がそれをするには時代がついてきてないよ。早すぎるよ。
「んー、なんとなくわかったかも」
「なにが」
「大輔って、あんまり女の子に好かれるのも好きになるのも嬉しくないんだなぁってこと」
「そういう結論になる?」
「だって、ほら今、嬉しそうじゃないから」
指摘されてぐっと言葉に詰まる。確かに、好きとか好きじゃないとか、そういうのはあんまり好ましい話題じゃない。俺はおっぱいしか愛さないから。そのためのおっぱいのことだけ考えていたいからね。そう、俺にとっての正義はあくまでおっぱいであって、俺の感情とか他の人の感情なんて二の次三の次ってやつだ。
「まぁ、だから私はこうやって気軽にデートしよって誘えるんだけどさ」
「そういうこと」
「だって、一人とかじゃすぐナンパされるんだもん。みんななんでもないようにしながら私の胸チラチラ見てさ」
「あ……ソウデスカ」
「もうそれだったらいっそ大輔くらいガッツリ目線来た方が好きかなって」
「……ごめん」
ガッツリ見てました、ハイごめんなさいと俺は土下座せん勢いで謝罪をするが、ひまりは一瞬だけ怒ったような仕草をしてから、またいつもの笑顔に戻った。てっきり幻滅されると思ってたのに、驚いて、思わず顔を逸らしてしまう。
「だーかーらぁ、大輔のは平気なんだってば」
「いや、そんなワケ」
「見られた私がいいって言ってるのに」
「それでも」
「しつこい、いいって言ったらいいの、わかった?」
食い下がろうとしたらむしろそのことで怒られてしまった。いやでも、おっぱい見てたこと知られてて許されることってある? しかもつくしみたいなノリじゃなくてガッツリ好みのおっぱいで拝んでる立場なのに? そんなミラクルも起き放題な祭り開催されてましたっけ?
「大輔は、なんていうかえっちな目じゃないから」
「……俺だってエロい妄想くらいするよ」
挟んでほしいとか顔埋めたいとか、そういう最低な妄想はするよ。たぶん18歳になって高校卒業したらそういうお店で巨乳な子を選んでローションマッサージとかしてほしいとすら思ってるよ。性欲魔人だよ。第一男が女の子のおっぱい眺めて考えることなんてそんなもんでしょ、みんな変わんないよ。
「じゃあ正直に言って何考えて私の胸見てるの?」
「えーっと……ありがとうございます、一生拝みます……ってな感じ」
「……ふふっ、あははは、じゃあ拝んでよし! 特別に許してあげよう!」
「え、まじ?」
「マジマジ、あ、上からはダメね、あんまり上からだとブラ見えちゃうから」
──どこまで本気でどこまで冗談なのかわからない。ドヤ顔でたゆんとおっぱいを揺らすビッグセブンの元気娘はその勝手な名称通り明るい顔で笑うだけだった。だからあのですがひまりさんや、身長差的に上から覗けないと結局拝めないんです! とは言えなかった。いやいや、これで見たらホントに見るなんて最低って言われるに違いないでしょ。そう思うことでしか、俺はひまりの言ってることが理解できなかった。
おっぱいヒロイン図鑑№06
ビッグセブンの元気娘:上原ひまり
羽沢珈琲店の常連同士として知り合い、あこに仲介してもらったデカーイ! な友達。おそらくつくしを除くと一番フレンドリーなのも彼女だったりする。
彼女にとって彼は数少ない異性友達。恋愛感情を問われると笑いながら否定する。ましろ、燐子、つくしが彼のことを好きだと考えており、このまま宙ぶらりんよりは誰かと付き合ったら、とアドバイスする立場。
結論:脈、ナシ(笑)
次回もそんな脈ナシヒロインとのデート回の続きです。