マレニアを白霊で手伝って出荷するのが楽しくてな……。
蠅たかりはチート。はっきりわかんだね。
時系列的にはナザリック転移後10日目深夜です。(モモンガさんはカルネ村に泊まってスヤァ……中)
今回はフランちゃん(オリ主)視点からです。オリ主視点がほとんどなかったからネ。
オーバーロードの現実世界観について多分の考察と妄想が含まれていますので、ご注意ください。(イメージはパラノイア)
はーいみなさんこんばんわ。仮想現実体感型アイドル、フランちゃんでーす。
今日もあなたの悩みをキュッとしてドカーン!
リスナーさんから送られてきたお悩みについてフランちゃんがビシバシ解決することでおなじみの人気コーナー。『フランのお悩みブレイク』のお時間となりました~パチパチ~。
さてさて、というわけで早速いくよー。本日の相談はこちら! じゃん!
『ユグドラシルサービス終了日にインしてたら何かログアウトできなくなってユグドラシル2が始まってた件について』
はい! これについては他の多くのリスナーさんからも同じような相談が送られてきました。
いやー実はフランちゃんもね。同じような境遇にいるんですよ!
ユグドラシルが終了するって聞いてね、最後なんだしお世話になった友達に挨拶だけでもしようと思って久しぶりにログインしていたんですけど……なんと、そのままログアウトできなくなってしまいました! ナンデェ!?
システムコンソールは操作できないし、ログアウトはできないしで不安よな。フラン、動きます。
といっても、GMコールもダメだしフレンドも引退するときに全て削除しちゃったから連絡取れないしで詰んでるんですけどね。ぼっちに厳しい……厳しくない?
いやーまじでこれバグだったら糞ですよ。下手しなくても運営は電脳犯罪で捕まるレベルで糞バグです。というか捕まれ(積年の恨み)
しかしですね。糞バグと言いましたが、この現象についてはここ数日この仮想世界で過ごしたフランちゃんに考察があります。
結論から言うと、おそらくバグではないです。
いやね。いくらユグドラシルがユーザー数も減っている下火のゲームだったとしても、ここまで大規模な電子災害が起きればさすがに警察が既に動いてるはずなんですよ。
アーコロジーの警察は優秀だからね。数日もあれば肉体・
それが今のところ一切音沙汰なし!
うーん……ありえないんだよなぁ。
自慢じゃないですけどフランちゃんはリアルじゃ上級国民。
アーコロジー内でも上層に住むほどの政治的権力を持つ家柄なんですよ。
格差社会の権化ともいえるあのアーコロジー警察が、上流階級の人間が巻き込まれている事件を放置するなんて絶対にないと断言できる。
まぁ、中にはたっち・みーさんみたいな困っている人がいたら誰でも助けに行くようないい人もいるんだけど……大部分はウルベルトさんが言うような選民思想の差別主義者だからね。
アーコロジー内の教育自体がそういう思想となることを目的に作られたカリキュラムであるし、周囲の人間もそういった思想の人が多い。
環境汚染によって資源が限られたことによる合理的判断……っていえば聞こえはいいけど、やってることはただの身内贔屓。
中の人には優しく、外の人には厳しく。そんな思想が根付いている。
まぁ、そういうわけで彼らはアーコロジー内の人間、特に上流階級の人間に対しては迅速な対応をしてくれるんですよ。
だからこそ、現状は不自然でしかないんです。
ここまでの電脳災害が起きているのにも関わらず、外部からのアクションが一切ないのはなぜか。
これは上層部に住んでたフランちゃんだからこそ出せた結論なんですけど……おそらく国家規模の実験だと思います。
上層部のトップ、アーコロジーを管理している最上位クリアランスのAI達が進めていた人類救済計画のレポートの一つにこんな一文がありました。
全国民を肉の身体から電子生命体へと昇華し、電脳空間に築いた仮想世界へと移転する。
この記述を見た当初のフランちゃんは「まーた頭おかしいこと考えてんなぁ」くらいにしか思っていませんでしたが、今の状況を鑑みると計画に何らかの進展があって治験体として選ばれた可能性があると考えています。
というかアーコロジー内でこんなことして許されるのはあのスクラップ共以外ありえない。
フランちゃんがいくら貴族階級の上級国民だとしても、アーコロジーにて最大権限をもつ管理AI達には逆らえません。
全国民は人類の存続のため、あいつらコンピューターの命令には絶対に従うことが義務付けられています。
それがどんな命令だったとしてもです。
あいつらにとって人類はプログラムによって保護することを義務付けられた家畜程度の認識だからね。
それでもみんなが盲目的に従っているのは、ひとえにあいつらの存在が人類の存続にとって不可欠だからに他ならない。
ここまでどうしようもなくなるほどこの星の環境汚染が進んだのは自分達人類のせいなんだから自業自得なんだけどね。
と、話がそれたけど……以上のことから今のこの現状をフランちゃんはこうみています。
国が用意したユグドラシルベースの仮想世界にテストユーザーとして参加させられているのではないか、と。
「────とまぁ、何を言っても結局根拠のない推論にすぎないんだけど。ユグドラシルと同じシステムで動いてるっぽいし、楽しければまーいっかってね。If the fact will not fit the theory - let the theory go. (もし事実が理論と合わないとしたら、捨てるのは理論の方ね)」
「……ちょ、待ッ! 避、否、死……ぐっ、うぉおおおお!!」
そんな風に愉快な脳内実況していた私の前には、獣のような声をあげながらこちらの爪撃をさばいていくブレインがいる。
全然本気を出してはいないとはいえ、100レベルの肉体武器を相手に針の穴を通すような正確な受け流しで捌いていくのは何気にすごい。
ステータス差抜きの純粋なPvPの技量だけでいえば、上位陣に匹敵するくらいのレベルだ。
ユグドラシルの前衛職の強さは現実の肉体の身体能力にも影響される仕様となっているから、ブレインは現実で相当な実力者なのだろう。
ギルドメンバーの前衛職の中にも武術を嗜んでいる人はいたから、動きを見てブレインが素人でないことはすぐにわかった。
これは育ちきったら面白そう。
ちゃんとビルドしてレベル100に育てば、武人建御雷さんといい勝負ができるんじゃないだろうか。
もしかしたら、たっちさんと戦えるくらい強くなるかもしれない。
それほどまでのポテンシャルを秘めている。
まぁあくまでも同レベル、同条件の装備で戦ったらの話だけど。
だがそれは未来の評価であって、現状のままレベル100となってもそこそこのプレイヤー止まりだろう。
何回かブレインの戦いを見て思ったけど、彼には改善すべき点がまだまだある。
今のブレインは対人経験は豊富なんだけど、格上や同格、絡め手を使う相手との戦闘経験が圧倒的に少ない印象を受ける。
「いうなれば初心者狩りで対人経験を積んできたかのような戦い方だよね。だからこそ私との1on1でその腐った性根を叩き直してあげるってわけ」
「仕方……ねえ、だろっ! 俺より、強い奴と……っ! 戦う、機会なんか、ほとんどなかったんだからよ……っ!」
「そういう意味ではクレちゃんとの戦いはいい経験だったよねー。また今度呼んで協力してもらおっかなー」
よそ見しながら思案に耽っていく余裕綽綽な私とは裏腹に、ブレインは雑に振るわれた爪撃を冷や汗を流しながらも必死に受け流していく。
先ほどから常時"武技"とかいうレアスキルの<領域>を発動しているためか、額には玉のような汗が溢れていた。
「ブレインの良くないところその一。まず初手で奥の手を使っていくスタイル。いやまぁ、それで即殺できればいいんだけどさ。基本的にワンパンで倒せることなんて相当な格下以外ありえないよ? 複数人で囲んで五大明王コンボから
「っ……!」
ユグドラシルというゲームにおいて、一人の攻撃で何もできずにワンパンされることなんてまずない。
超位魔法ですら直撃してもワンパンはできないし、
今まではクリティカル込みで戦った相手を全員ワンパンにて倒してきたみたいだが、そんなのが通用するのは耐性も貧弱でHPも少ない雑魚しかいない初期だけだ。
70レベルくらいになった段階でそのスタイルでビルドしたことを後悔することになるだろう。
まぁ気持ちはよくわかる。
一撃必殺とかワンショットワンキルとかワンターンキルってかっこいいよね。
ワンパン浪漫型はフランちゃんっぽいからと一度目指して、その実用性のなさから諦めたビルドだからよくわかる。
ワンパン戦法が横行すると対人コンテンツとしての寿命が大幅に削れちゃうからね。運営が対策するのも仕方ないのだ。
「ブレインの良くないところその二。攻撃スキルが一つしかない。これはレベル的に仕方ない部分もあるかもしれないけど……一つしかないならすぐに使っちゃダメだよ。それがカウンタースキルならなおさらね」
「摘まんだ、だと……!?」
たしか
後の先を追求したカウンター型のスキルのようだけれど、一度その戦法がバレて対策をされたら何もできなくなってしまうのは問題だ。
スキルの影響か足が止まるため、遠距離から魔法でチクチクされると何もできなくなるし、待ってる間にがっつりバフや罠の準備をされたらどうしようもない。
カウンター型としていくのなら、まず遠距離物理・魔法攻撃に対応できるようになっていないと型として成立しないのだ。
今後各種パリィ系のスキルは習得していくとして、現状としては敵の攻撃を誘えるようにわざと隙を作る練習をしてここぞというときにだけスキルを使うよう矯正していくべきだろう。
「そしてブレインの良くないところその三。諦めが早い。今だって刀を掴まれて諦めたよね? そこはすぐに切り替えて刀を取り戻そうと動かなきゃ。降参するの早すぎだよ」
「……そうだな……その通りだ」
たしかに私とブレインの間にはレベルで差がある。
しかしPKもあるユグドラシルでは常に同条件で戦えるとは限らない。複数人に囲まれることだってあるし戦闘直後の弱った状態を襲われるときもある。
そんなときこそ諦めない精神は大事だ。
どうせ
不利な状況での反骨精神がブレインには足りていないのだ。
まぁでも訓練とはいえここまでレベル差がある戦闘はたしかに辛いか。
手加減されるのも気持ち的にいい気分ではないだろうし、あんまりしない方がいいだろうな。
となると相手が難しいなー、格下だと訓練にならないしやっぱクレちゃんを呼ぶべきか?
でも見た感じあの街のイベントNPCっぽいし、勝手に呼び出すのは他のプレイヤーに迷惑がかかっちゃうかもしれないんだよなぁ。
本当ならレベルをもっと上げさせたいんだけど、新しい
ギルドにいけば『堕落の種子』といった種族変更のアイテムから職業取得のアイテムまで大量に保管されているんだけど、ナザリック地下大墳墓がどこにあるかわからない現状は手にいれることも不可能だ。
そのため今できることとしては、既に獲得している職業レベルの上昇かプレイヤースキルの強化くらいしかないのだ。
「……散々偉そうなこと言っちゃってごめんね。ブレインはちゃんと真面目に聞いてくれるからつい甘えちゃったかもしれない。……私、思ったことをすぐに言っちゃうから、人付き合いって苦手でさ。モモンガさんやぷにっと萌えさんだったら、もう少し上手くできたんだろうなぁ……」
項垂れてしょんぼりしているブレインに気づいた私はやってしまったと慌てて謝罪する。
数日この世界で一緒に過ごしていたとはいえ、会って数日の人に言うような内容ではなかっただろう。
ここでできた初めてのフレンドなのだから大事にしたい。
ブレインはノリもいいし、ロールプレイの熱意も凄い。
リアルに対しての興味が一切ないことから現実世界のブレインに多少興味がわくが、純粋にこの仮想世界を楽しんでいるところを邪魔したくはないためあえて言及はしていない。
現実よりも
そしてそれはリアルで重病を患っている自分も同様の考えだ。
だから、今だけは辛い現実を忘れてこの仮想世界を全力で楽しんでいくというブレインの姿勢には共感しており、仲間意識を抱いていた。
新しい世界を楽しんでいるところにお節介から水を差すようなことをしてしまったかもしれない、とこれまでの自分の言動に後悔を募らせていく。
「別に、嫌じゃねえさ。自分から頼んで修行させてもらっている身だ。言い方くらいでいちいち気にしたりしねえよ。俺の方が弱いのは事実だからな。……変なところで気を遣うよな、おまえ」
「変なところって何さ!? え、私普段は気遣いできない人だと思われてる……? そんなことない……ないよね……?」
オロオロしだした私を見たブレインが呆れた様子で溜息をつき私の言葉を否定する。
その態度にむっとした私は、頬を膨らませながら拗ねたように半目でブレインを睨みつける。
「むー。そういうブレインだって人のこと言えないじゃん。エ・ランテルの宿で寝たときのいびきとか凄かったよ? 一晩中聞かされるこっちの身にもなってほしいわ」
アンデッドの種族特性で睡眠不要の私は寝る必要はないのだが、別に寝ることができないわけじゃない。
異形種ではあるが外見は人型ベースでもあるため、寝ようと思えば寝れる。スケルトンとかの完全な異形種なら無理だったのかもしれないが。
だから基本的には起きていても特にすることもない夜は寝ているのだが……エ・ランテルでは同居人であるこのワカメ男のいびきがうるさくて眠れなかった。
外で野宿するときは座ったまま寝ているため静かなのだが、ベッドで横になって眠ると途端にリサイタルが始まる。
宿ごと寝床をぶっ壊してやろうかとも一瞬考えたが、流石に迷惑がすぎるのでその日は渋々外でお空の散歩をするはめとなったのだ。
「あ、あれは……気が緩んじまったというか、なんというか……すまん」
「べつにいいけどー。全然怒ってないし。こんないたいけで可憐な少女を、夜中に宿から追い出す程度の能力でいじめる鬼畜髭おじさんのことなんか何とも思ってないし」
「いや、めちゃくちゃ根に持ってんじゃねえか」
ぶーぶー文句を言う私を見て面倒くさそうに肩をすくめたブレインは、腰を下ろして荷物からいくつかの食料を取り出す。
その中の一つをこちらに投げると、手に持った干し肉を頬張りながら私も座って食べるよう促してきた。
「ほら、お前その果実が気に入ってただろ。それ食っていい加減機嫌直せって」
「食べ物で釣ろうっていうの? ふん、いつもならこんなもので絆されたりしないけど、今回はこの果物に免じて許してあげるわ」
食べながらしゃべるという行儀の悪い行いには目を瞑り、今はこの口全体に広げる甘味を堪能していく。
アーコロジー内では効率重視の味気ない栄養食が基本だったため、ここにきて食に対する執着が強くなってしまったのは仕方のないことだ。仕方ないのだ。
「……意外と扱い易い奴」
「なんか言った?」
「いや、何も」
私の100レベルの聴覚がボソリと呟いたブレインの言葉を正確に拾ったが、まぁ今は機嫌がいいし流してやろう。
そんな風に他愛のない雑談を交えながら私の魔法で火付けした焚き火の前で休憩していると、不意に
『マスター。ご報告があります』
突然の感覚に驚いたが、偵察に出していた
何か問題があったのかと尋ねると、眷属はどこか緊張した様子で驚きの言葉を口にした。
『ワールドアイテムと思われる装備を所持した一団を発見致しました。十分後、こちらに接敵します。マスターから与えられた記憶によると……
その言葉を聞いた瞬間、身体の底が冷えていく悍ましい感覚が全身に広がるのを感じた。
フラン(やべえ)
隊長(やべえ)