【OVERLORD: ESCAPE FROM NAZARICK】が発売されるので初投稿です。
なんと! クレマンちゃんが主人公だ!
そして小説最新巻の15巻が6月30日(木)に発売されるので、やっと全裸待機から解放されます(ダイマ)
その日アーグランド評議国の永久評議員を務めるドラゴン、ツァインドルクス=ヴァイシオンことツアーが彼女と出会ったのは偶然だった。
漆黒聖典のカイレが使用したワールドアイテムの強い気配を感じ取り、ギルド武器の監視のため直接出向けない自身の代わりに遠隔操作した“白金の鎧”を確認へ向かわせたことが発端だ。
しかし早朝に到着したそこには既に漆黒聖典の姿はなく、ぽつりと俯いて佇む一人の銀髪の吸血鬼のみがその場にいるだけであった。
そして状況は悪化し、詳しい事情を聞こうとその吸血鬼に近づいたところいきなり攻撃を受けてしまい戦闘へと発展してしまう。
これがこの“不幸な遭遇戦”の経緯だ。
本来ならばツアーは数合吸血鬼と打ち合った後に、白金の鎧の姿のままでは分が悪いと判断し立ち去るのだったが……ここでイレギュラーが発生した。
────それは、相対している銀髪の吸血鬼と同じくらいかやや低い背丈の小さな少女だった。
血のように紅い瞳。黄金のように美しい金髪。幼さの残るあどけない貌。
枯れ枝のような奇怪な翼は七色の宝石を携え、風に揺れ光り輝く様はまさに神秘を宿した妖精のようであった。
しかしツアーは彼女を一目見た瞬間に悟った。
これは危険だと。これは世界を破壊する可能性を秘めていると。
殺気はない。悪意もない。だけど何故か、どうしようもないほどの“危険”を感じていた。
吸血鬼と戦っていた途中から感じていた頭の中で鳴り響く警鐘が最大の音を鳴らしている。
故にその勘に従ってツアーは、目の前の銀髪の吸血鬼から突如現れたもう一人の宝石の翼を持つ吸血鬼へと狙いを変えた。
しかし、彼が認識できたのはそこまでだった。
────きゅっとして、ドカーン
そう声が聞こえると同時に、ツアーの意識は操作していた白金の鎧から評議国にいる自身の身体へと戻ってきた。
それは、十三英雄の一人として長く語られるほど頑強であった“白金の鎧”があの少女の手によって完全に破壊されたことを意味していた。
「……また百年の揺り返しか」
白い微光を纏ったように見える艶やかな竜体は、憂鬱そうな溜息とともに独り言ちる。
友好的な者ならば良い。しかし今回相対した銀髪の吸血鬼からは明らかに悪しき者の業を感じていた。
そしてもう一人の宝石の翼を持つ吸血鬼からは悪しき者としての業は感じ取れなかったが……子供のように純粋で無垢な悪意なき狂気の波動を感じていた。
「……その純粋さが、この世界に牙を剥かないといいんだけど」
評議国の最奥でギルド武器を守護する竜王は、これから起こるであろう苦難を予想して再び大きな溜息を吐くのだった。
◇
白金の鎧が轟音とともに粉々になったその場では、真紅の鎧を身に纏い純白の翼を広げる吸血鬼────シャルティア・ブラッドフォールンが呆然と佇んでいた。
先ほどまで戦っていた白金の鎧が一瞬にして粉微塵となったことに警戒したシャルティアは、その下手人を始末しようと高速で振り返った。
しかし振り向いた瞬間、目に入った至高の御方の姿にそれまで考えていた思考のすべてが吹き飛んでいった。
「…………フランドール・スカーレット様」
至高の御方々でただ一人自分と同じ種族の
その方は種の始まりにして完成された窮極の一であり、遍く吸血鬼はその悉くが彼女を祖として血を受け継いだ眷属であると
祖神の血が濃ければ濃いほど種族としての格が高まり、逆に薄ければ薄いほど種族としての格は下がっていく。
それが吸血鬼という種族であり、夜の王として血族に語り継がれてきた歴史だ。
それは
「……ぁあ……っ」
しかしそれらは吸血鬼という種族としてのシャルティアの崇敬だ。
そしてそれを差し置いたとしても、シャルティアにとって彼女は特別な御方だった。
何故なら自身の創造主であるペロロンチーノと共に、シャルティア・ブラッドフォールンの誕生に携わった“もう一人の創造主”こそが、他ならぬ彼女であったからだ。
「……フ、ランドール……スカーレット様ぁ……っ!」
モモンガやペロロンチーノと仲の良かった彼女は良くシャルティアに話しかけていた。
自分にはシャルティアと同じ髪色をした姉がいること。
シャルティアと同じような槍を投擲する
ペロロンチーノと二人三脚でその姉の面影を薄らと残しつつ、シャルティア・ブラッドフォールンという存在を新たに創り上げたこと。
そう語りかけてくるあの方は本当に楽しそうで。
何処か夢見心地にあの方の声を聞いていたシャルティアは心の奥底が温まっていくことを感じて。
永遠にこの時間が続けばいいと、そう思っていた。
「貴女は……」
吸血鬼にもかかわらず朝日をものともせずに浴び、宝石の翼を煌めかせている少女がシャルティアを見据えた。
ドクン、とシャルティアの心臓が高鳴る。
至高の御方々は唯一残ったモモンガを除いて、その全てがここに転移する前にいた世界から去っていった。
敬愛するペロロンチーノが居なくなったときの悲しみは今でもシャルティアの心に深く傷を残している。当然、フランドールが居なくなってしまったときの悲しみも同様だ。
だからこそもう二度と会えないかもしれないと思っていた創造主の一人が姿を見せてくれたことに、シャルティアの心は言葉にできないほどの歓喜の念で震えていた。
しかし同時に、シャルティアは恐怖もしていた。
──わたしのことを忘れてしまったのではないだろうか。
──わたしのことを嫌いになってしまったのではないだろうか。
──わたしのことなんか、もうどうでも良くなってしまったのではないだろうか。
嫌な思考が脳内を駆け巡り、今すぐに側へ駆け寄りたい思いを抱きながらも恐怖で指一本動かせなくなる。
そしてシャルティアは金縛りにでもかかったように動けない状態のまま、少女がゆっくりと口を開き紡がれていく次の言葉を、恐怖で震えながら待っていた。
「────シャルティア?」
──覚えて、いてくれた。
シャルティアはそれだけで胸がいっぱいだった。
言いようのない感情が濁流となり、その紅の瞳から涙が溢れ頬を伝い地面へと滴っていく。
聞きたいことが山ほどあった。尋ねたいことが山ほどあった。
しかしその全てがどうでもよくなるほど、今この瞬間に出会えた運命に感謝していた。
「どうしてシャルティアがここに……? いつの間にか喋れるようになってるし……。
顎に手をあてながら考え込むフランドールの様子を見て、シャルティアは自身が敬愛する至高の御方の呼び声に対し返答していないことに気づく。
万死に値する不敬に慌てて答えようとするも、俯いて考え込んでいたフランドールは顔を上げ、シャルティアの機先を制するように小さな口を開いた。
「貴女の主人は誰?」
嘘や誤魔化しは許さないという真剣な表情でシャルティアへ問うフランドール。
その問いにシャルティアは、一瞬の迷いもなく答えた。
「わた……いえ、わらわの主人は至高の四十一人であらせられる御方々であり、アインズ様とペロロンチーノ様……そして敬愛する我が君であらせられる、フランドール・スカーレット様でありんす」
フランドールの問いに答えたシャルティアの目に浮かぶ感情は敬愛と崇拝であり、一片たりとも自らの回答に疑問を抱いていないことが察せられた。
しかしその最早狂信といっても過言ではないほどに恍惚としたシャルティアの表情に反して、フランドールの表情は段々と険しいものへと変わっていった。
「……そっか。そういうこと、か。……じゃあさ、もう一つだけ聞いてもいい?」
そう言ってシャルティアを見つめるフランドールの表情は、失った我が子を見るような悲しみとこの状況を引き起こした誰かに対する深い怒りで歪んでいた。
「ならどうして、私に槍を向けているの? シャルティア」
「────え?」
シャルティアは一瞬、敬愛する主人が何を言っているのか理解できなかった。
ナザリック地下大墳墓のNPCとして創造されたシャルティアにとって、ナザリックの頂点に君臨する至高の御方に槍を向けるなど許されることではない。
ましてやそれが自身を創造してくれた御方に対して向けられているのであるならば尚のことだ。
そのような不敬な輩には万死を与えてもまだ足りないほどであるとシャルティアは考える。
そしてシャルティアは湧き上がる激情に身を任せ下手人を始末しようと動き出したとき、初めて自分が誰かに槍を向けていることに気が付いた。
「近づいた者は殺さなければいけないでありんす。それが命令でありんすから。……あれ? わたしの主人はフランドール・スカーレット様? なのにどうしてわたしは槍を向けているの?」
まるで知りたくない事実から目を逸らすように、シャルティアの思考が塗り替わる。
敬愛する主人への愛情も、再会した歓喜の感情も、その全てが一つの命令に塗り潰されていく。
世界を変革する神器より与えられたただ一つの命令────敵対者の殺害に。
「よくわかりませんが、わたしはフランドール・スカーレット様を殺さなければいけないようでありんす」
震えるように握り締められていたシャルティアのスポイトランスが、その一言と共に再びフランドールへ向けられる。
そして真紅の鎧に身を包む階層守護者最強の吸血鬼は、守るべき主人を殺すため狂ったように空を駆け抜けていった。
一瞬間違えて別に書いている小説に投稿してしまった……。ばれてないよね?
明日はフランちゃんサイドの話を投稿します。