ブレインの提案でエ・ランテルに向かうフラン達。
王国へ続く街道から外れた森にいたフラン達は、街道に出て道沿いにエ・ランテルへと向かっていた。
人外の吸血鬼が一緒の状況にも関わらず、ブレインが人目の付きやすい街道を進む主な原因は、現在ブレインの頭上で不機嫌なご様子の異形種、金髪吸血鬼っ子のせいである。
「それにしてもなんなのあいつら? 大勢で襲い掛かってきてさ。PKにしてもお粗末だし、昔の嫌なこと思い出しちゃったんだけど!」
フランが怒っているのは先ほど襲い掛かってきた盗賊達のことだ。
男一人と子供一人とみてカモだと思った盗賊達が、取り囲んでいきなり襲い掛かってきたのだ。
◇
「おいおいお嬢ちゃん達、こんな夜更けに森を出歩くなんてあぶねえじゃねえか。どれ、俺達が送ってやるよ」
体格のいいリーダー格の男がそう言うと、周りの取り巻きたちが下卑た笑みを浮かべながら嘲笑した。
粘ついた視線がブレインの頭上へと集中する。
そこには薄ピンク色のふんわりとしたナイトキャップから覗かせる絹のような金髪と、人形のように整った顔立ちの少女が不思議そうに小首を傾げていた。
「こいつはとんでもねえ上玉だな。まだガキだが、そういうのが趣味の貴族共に高く売れるだろうよ」
グヘヘという擬音が似合いそうな下種な笑い声をあげて、盗賊達がじりじりと距離を縮めてくる。
ブレインはやれやれといった様子で盗賊達を睥睨していたが、頭上にいるフランがキラキラと目を輝かせながら盗賊達を見ていることに気がついた。
「……なに喜んでるんだ?」
「新エリアでの初イベントだ!!」
……何を言ってるのかはよくわからなかったが、無駄にわくわくしている様子からまた何か勘違いしているんだろうな、とブレインは溜息を吐く。
一瞬、吸血鬼として人間の血を欲しているのかという考えが頭をよぎったが、この人知を超えた強さのバケモノが盗賊ごときの血でこんなに喜ぶわけがない、とすぐにその考えを切り捨てた。
喧嘩売られているんだよ、とブレインがフランに説明すると一瞬ポカンとした後、すぐにがっかりした表情になって項垂れる。
「あー、なるほど。つまりPvPのお誘いなのね……。 ロール強すぎて逆に分かり辛いだろ……」
レベルも低すぎるし……いや逆に罠の可能性もあるのか……、と何やらショックを受けたフランはブツブツ呟きながらそのまま思考に耽っていく。
手持ち無沙汰なのか、ブレインの髪をいじりながら考え込んでいるせいで時折ブチブチと嫌な音が鳴っていた。
「やめろぉ!!」
ただでさえ精神的ストレスで禿げそうなのに、物理的にまで追い打ちをかけるな!
そんなブレインの悲痛な叫び声が響き渡り、その声に驚いたフランの指と嘲笑していた盗賊達の動きが止まる。
疲れた様子のブレインはさっさと終わらせたいと考えたのか、腰の刀に手をかけながら小声で聞く。
「……で、どうするんだ? お前がやらないんなら俺がやるぜ」
そういってブレインは鯉口を鳴らし盗賊達を睨むと、剣呑な雰囲気がその場を包んでいく。
フランは少しの間思い悩んだ後、自分のプレイングを一度は見せたほうがいいか、とブレインの頭から降りて手を振りながら言う。
「あー、私がやるよ。私の戦い方を見てて」
ひらひらと手を振りながら前に進むフランを見て、ブレインも静かに刀を鞘に納める。
何だかんだで直接フランの戦闘を見るのは初めてだ。気にならないといえば嘘になる。
先ほどからブレインを警戒していた盗賊達は無警戒に降りてきた子供の余裕な態度に怒りをあらわにしていたが、フランの紅い瞳と異様な翼を見てピタリと止まった。
「……このガキ……
「そうだよ。異形種の中では人気どころだよね。まぁ課金して外装データ弄らないと見た目がすごいことになるんだけど……」
盗賊達は吸血鬼であることに気づいて一瞬動揺していたが、子供ならどうとでもなると思ったのか目配せをして武器を抜く。
バハルス帝国では亜人奴隷が売買されており、闘技場の関係者にはモンスターが高く売れる。
吸血鬼……それも人語を解する吸血鬼の子供なんて、どれほどの値段がつくか想像もつかないほどだ。
ただの追剥のつもりがとんでもないお宝と遭遇したもんだ、と盗賊達は欲深い笑みを浮かべ、ジリジリと囲んでいく。
その動きにピクリ、と反応したフランは剣呑な気配を漂わせながら、いつもより低めの声で男たちに警告する。
「……PvPは一対一がマナーだよ。複数人で襲ってくるならこっちも容赦しない」
「化物が調子に乗ってんじゃねえぞ!!」
「人間の恐ろしさってやつを叩き込んでやるよ!!」
「化物相手にマナーも糞もねえんだよ! おいてめぇら! こいつが大人しくなるまで痛めつけて────」
ゴゥッ!
爆炎が立ち昇ったかと思うと、背後から襲い掛かろうとした盗賊の一人が真っ二つに両断され一瞬にして灰になる。
悲鳴すらあげる暇もなく瞬く間に仲間の一人が絶命したその光景に、盗賊達の思考は真っ白になり呆然とその場に立ち尽くしていた。
そんな静寂の中、元凶である少女はさっきまでの幼さを感じさせる雰囲気とは一変して、世界が呑み込まれたと錯覚させるほどの濃密な殺気を発し怒気を孕んだ口調で告げた。
「────異形種狩りとかくだらないことするなよ。こんなときにまで気分悪いこと続けやがって」
勝負は一瞬だった。
ブレインは言われた通りフランを注視していたが、全く動いたようには見えなかった。
囲んでいた盗賊達は全員、一瞬にして斬られ、灰と化したのだ。
何が起きたのか理解が追い付かない様子のブレインを見たフランが、悪戯が成功した子供のような笑みを浮かべながら楽しそうに顔を覗いてくる。
「どう? 何したかわかった?」
「……いや、全くわからなかった。気づいたらあいつらがやられていた」
その言葉に満足げに頷いたフランは、先ほど起こったことを話していく。
「でしょーね。まぁタネは単純なんだけどね。完全不可知化状態の眷属を召喚して奇襲しただけだよ。本来なら完全不可知化は攻撃時に解除されるんだけど、
「……ほ、他に誰かいるのか?」
嬉々として説明するフランの話は意味不明な単語も多かったが、ブレインは彼女が召喚した何者かに攻撃させていたということだけは理解した。
周りを注意深く観察するも、一切の気配も感じられないことが彼の恐怖心を増長していく。
「「「こんばんは」」」
ビクンッ! と心臓が飛び出たかと思うほど驚いたブレインが、声のした背後を恐る恐る振り向く。
そこには前にいるフランと全く同じ姿をした、3人のフランドール・スカーレットが立っていた。
「〈禁忌・フォーオブアカインド〉。真祖化させた
フランの説明はユグドラシルプレイヤー向けであり、当然ブレインには理解できないものであったが、本人は初心者にレクチャーする気持ちで説明を続けていく。
ユグドラシルにおいて
先ほど使用した
吸血により
そして対象モンスターが
つまり、自身と全く同じ姿、同じ能力を持った眷属を3体同時召喚することが可能となるのだ。
弊害として元の種族レベルが消失しているため、吸血鬼としての種族レベルを加算しても合計レベルが5ほどダウンしてしまうのだが、本人は後悔していない。
〈禁忌・フォーオブアカインド〉を再現することが本人にとって最重要事項だったのである。
一応、
対人よりも拠点破壊に特化している職業構成上、ユグドラシルにおけるフランの強さは中の下といったところだった。
他にもロマン重視で取った不人気
ちなみに敵対したくないプレイヤーランキングで常に上位に名前が挙がっていたほど、その拠点破壊能力は迷惑がられていた。
「まぁ、そんな感じで私は対人想定のガチビルドじゃないからそんなに参考にならないかもだけど……やっぱり自分のロマンを求めてこそだと思うんだよね! それに、強くなるにはこういう搦め手にも慣れとかないと」
戦う前に勝敗は決まっているとぷにっと萌えさんが言ってた、と呟くフラン。
ブレインは知っててもどうしようもないだろ、という言葉をグッと呑み込みながら虚ろな目で礼を言い、これ以上の犠牲者を減らすため街道沿いを進むことに決めたのだった。
フランちゃんイキイキ回です。
ちなみに眷属が喋ってることについてはボイスパッチ入ったのか、くらいにしか思っていません。
捏造設定ktkr!(以下は捏造設定の補足です)
・
眷属強化と召喚に長けた指揮官クラス。
守護者最強ガチンコビルドのシャルティアが真祖止まりなので、恐らく始祖のクラスは戦闘ビルドからちょっと外れているのでは……と予想しています。
ちなみにその上の
某国の吸血姫ではインベルンの嬢ちゃんが就職したらしいのですが……持ってないのでよくわかりません! はいっ!
・<
始祖のスキルです。眷属にしたモンスターを登録して3体まで召喚できます。クアイエッセのビーストテイマーに近い能力です。
真祖眷属化は80レベルまで可能ですが、対象が高レベルになればなるほど眷属化の失敗率は格段に上がります。
どのくらいかというと、70レベル以上は小数点以下の確率です。
モモンガさんのアンデッドの副官は経験値との闘いですが、こちらは乱数との闘いです。
もちろん登録した眷属が戦闘などで殺された場合、泣きながらまた捕獲し直しです。
ちなみにフランのドッペルちゃん達は75(元80)レベルです。
3回ほど眷属をPKされた経験があり、お礼参り(ギルド爆破)しています。
お前も家族だ!(ファミパン