IS 殺し屋は日常を知りたい   作:黒鉄48号

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 少し間が空いてしまいました。用事が多すぎる……。


第十四話 姉弟

 どうしてこうなったのか。そう思いながらため息をつく。

 僕は数日前に誘拐され、()()()()()()()()()()()がどうにか解放された訳なのだが、受験日ちょっと前だったので急いで参考書の中身を頭に詰め込む羽目になった。

 それが災いして当日は寝坊しかけ、おまけに会場が遠いせいで間に合うかどうかのギリギリでの到着。

 そして急いでいたせいか部屋を間違え、中に置いてあったISを動かしてしまったのだ。

 

 そこからも色々あったけど、最終的にはこのホテルの一室に軟禁になった。

 外の情報はテレビでしか手に入らず、携帯は専用の使い捨ての物で元々のは没収される始末だ。

 ニュースとかを見る気になれないので柔らかいベッドの上で大の字になってると、ドアが開いて誰か入ってきた。

 

「……千冬姉?」

「久しぶりだな、一夏。全く、どうしてISに触れたのやら」

 

 スーツ姿の姉さんはやれやれといった感じで僕の横まで歩いてくる。その表情には疲れが見え、目の下に隈ができていた。

 

「……そっちこそどうしたんだよ」

「私は仕事だ。まぁ、お前のせいだがな」

 

 そう言って姉さんは僕の隣に座って、いきなり肩に頭を乗せてきた。その行動に思わずドキッとして目を逸らす。そんな僕を見てクスッと笑う声が聞こえた。

 

「相変わらず可愛い奴め」

「うっさい……」

 

 そのまま彼女の手が僕の手に触れてくる。それを拒否する気にもならずされるがままになる。

 

「……嫌なら、断ってもいいんだぞ?」

「別にいいよ。千冬姉と一緒にいられるんだったらさ」

「……っ! 馬鹿者。私がどれだけ我慢していると思っているんだ」

 

 今度は頬に手を当てられてキスされる。それも触れるだけの優しいものではなく舌を入れてきて深いものへと変わっていく。その行為を受け入れていると姉さんがゆっくりと唇を離す。銀の糸が伸びていきプツンと切れていく。

 

「ふぅ……全く、お前がいけないのだからな」

「……ごめん」

 

 そっちがシたい癖に、と思わない訳ではない。だけどそれを言ってしまえる程まだ割り切れてはいないから黙っていることにする。

 彼女は僕の首筋に顔を埋めて甘噛みしてくる。それはまるでマーキングのような行為で、それでいて愛情表現だとわかるようなものだった。

 暫くの間そんなことをされていると、姉さんは僕を押し倒して覆い被さってきた。

 それから先は……言わなくても分かるだろう。

 

 

 

 むせ返るような命の匂いの中、重たい瞼をどうにか開く。

 姉さんはシャワーを浴びている最中のようで、窓の方を見ると既に一晩経って朝であった。……またやってしまった。

 

 僕は昨夜のことを思い出す。

 結局、あのまま流されて行為に及んでしまった訳なのだが途中から記憶がない。恐らく気絶でもさせられたのだと思う。……正直言うと気持ち良かったし、幸せな気分になれるのでそこまで後悔はしていない。

 けれど、社会的な常識の上ではこの関係は非常にまずい訳で。僕は今更ながらこの生活から抜け出せないのかと考える。……まぁ、無理だよな。

 

 千冬姉は──この行為だけが理由ではないけど──僕がいない生活を送れないだろう。僕だってそうだ。

 あんな快楽を知ってしまって、味わってしまって、忘れられる筈がない。それに、お互いに依存している部分がある以上離れることなんて中々出来ないだろう。

 ……それでもいいかな、と思ってしまう自分がいた。

 

 ガチャリと扉が開きバスタオル一枚の姉さんが現れる。そしてそのまま僕の隣に寝転ぶ。

 

「起きたか一夏」

「うん。おはよう千冬姉」

 

 挨拶を交わすと同時にお互いに抱き締めあう。女性の中でもかなり長身な姉さんと、同級生達と比較して小さめの僕との体格差のせいか包み込まれる形になって少しドキドキする。

 

「千冬姉、髪乾かさないと風邪引くよ」

「構わん。お前さえいればどうでも良いことだ」

 

 ギューっと抱きしめられ頭を撫でられる。見えないけれど、その顔は絶対に幸せで蕩けきった顔をしているに違いない。そう思うだけで嬉しくなって自然と笑みが溢れてしまう。

 

「……一夏」

 

 名前を呼ばれて視線を向けると、姉さんの瞳に吸い込まれそうになる感覚に襲われる。そのままキスをして舌を絡め合う。

 

「この後仕事なんだろ?」

「ああ、だが心配はいらないぞ。私には優秀な後輩がいるからな」

 

 そう言って胸を張る姉さん。そんな姿も愛おしいと感じてしまう辺り末期だなと思いつつベッドから出て服を着替え始める。そんな中、彼女はボソッと呟く。

 

「……この前着ていたセーラー服、可愛かったな」

「え?」

「何でもない……あぁ、そういえば今日は全国検査の最終日だそうだ。まぁ、誰も動かせていないがな……あの仮面のやつ以外は

 

 姉さんは慌てるように話題を逸した。僕が切っ掛けになった例の検査は、どうやら結果が出せていないらしい。それはむしろ当たり前のことなのだろう。ISに触れられる機会というのは、実を言えばそこまで珍しくないらしいのだ。

 年に数回は展示のイベントなどがあり、興奮した男児がうっかり接触してしまうことが今までにもあったからである。それなのに動かした男が僕で最初というのは、つまりそういうことなんだろう。

 

「……そういやさ、僕ってこの後どうなるんだっけ? なんか変な人がサンプル寄越せって来て、外の黒服さんにつまみ出されたりしてたけど」

「ん? 言ってなかったか。お前を欲しがっているのはどこの国も同じでな。話し合った結果……一先ずはIS学園に入学させる、ということで落ち着いた」

 

 彼女は当たり前のようにそう告げた。ただ、言われた側としては驚きでしかない。そもそもIS学園は操縦者や技術者の育成の為の場所で、女性しか行けないはずだ。

 

「……他に男の人、いる?」

「…………いなくもないが、生徒ではないし一人だけだ」

「まじかー……」

 

 女の園に一人っきり……五反田()()が聞いたら血涙を流して悔しがりそうだ。

 ただ、そんなのは特例中の特例なわけで、姉さんが普段にもまして疲れ気味だったのはこのせいだろう。

 

「安心しろ一夏。お前に手を出す輩は全員ぶっ飛ばす」

「いや物騒!?」

 

 朗らかな笑顔で拳に力を込める彼女。血管が浮き出ている辺り相当に本気なのが怖い。

 

「……っと、流石にまずいな。そろそろ行ってくるぞ」

「頑張れよ、千冬姉」

 

 そそくさと部屋を出る彼女の後ろ姿にエールを投げかける。

 

「……IS学園、か」

 

 それが最善策なんだろうけど、やっぱり僕一人というのは想像するだけで肩身が狭くなる感覚に襲われる。

 誰かISを動かせる男が現れてくれないかな、なんて非現実的な事を想像してしまう僕であった。




 ロボット物には爛れた関係がよく似合うよね、という話でした。
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