IS 殺し屋は日常を知りたい   作:黒鉄48号

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 原作多め回
 全編一夏視点となります。


第十七話 邂逅、対話、衝突

 先日渡された制服を着てIS学園と本土を繋ぐモノレール駅に連れて行かれる。窓を塗りつぶされた車から降りれば、巨大な機械の箱が連なってその扉を僕に向けて開いている。

 それに見惚れている中、ふと後ろに気配を感じて振り向く。人の足が見え、そのまま視線を上げればテレビによく出てくる顔があった。

 

「あなたは……」

「初めましてですね、織斑さん」

「は、初めまして」

 

 長身痩躯の男──僕に続く二人目の男性操縦者である宇野(うの)誠一(せいいち)さんは挨拶をして頭を下げる。

 僕もまた会釈をし、改めて彼の大きさに驚く。

 

「なんというか、本当に背が高いんですね」

「なに、背丈なんて些細な物です。私と貴方はこれから同級生……しかも、あの女の園に二人きりで」

 

 宇野さんはそう言いながらレールの続く先を、IS学園やそれに付随する様々な物が所狭しと建て込んでいる人工島を見つめる。……なんというか、妙に様になっているように思えた。

 僕もそれに釣られていると、連れてきてくれた黒服さんが急かしてくる。

 

「おい、君たち! 時間に余裕がないんだ、早くアレに乗りたまえ!」

「おっと、これは失礼。話の続きは電車の中としましょうか」

「そ、そうですね……」

 

 冷静なのかお茶目なのかよく分からない人だな……。そう感じながらも、僕は彼に続いて扉の中に乗り込む。

 並んで椅子に座ったおよそ十数秒後にドアが閉まり、黒服さんを置いて電車が動き出す。

 

 隣にいる宇野さんをチラチラと見てみるが、どうにも会話を始められない。どうしたものと悩みながら運転席の方に顔を向ける。そこには当然ながら誰もいないのだが、何故だか人が入れそうなスペースが設けられている。

 

「なんでああなってるんですかね、あそこ」

「ん? ……あぁ、恐らくは有事対策だろう。ISに触発されてドローンやら自動運転とかは進化をしたが、だからといってメンテ不要は遠い夢だ。結局、機械がダメな時は人間がやるしかない」

「ふーん……」

 

 どうやらそういった分野が好きらしい。なんというか、子供のように眼がキラキラしている感じなのだ。

 

「あぁ、そういえばだが織斑──」

一夏(いちか)って呼んでくれますか? ……織斑を名乗るには、未熟ですし」

「──ふむ、そうか。では改めてだが一夏くん。例の参考書についてどう思う?」

 

 宇野さんはそう切り出す。参考書というと、あの一昔前の電話帳みたいな殺人的な厚みのやつのことだろうか。しかもページ一枚がコピー用紙並に薄いというアレの。

 

「量はすごいですけど、結構中身は分かりやすい方でしたね。先生……確か山田さんだっけな? そんな名前の人の教材動画もセットでしたし」

「……それ、知らないな」

「えっ」

 

 まさかのカミングアウトで空気が凍りつく。同じ本を貰っているなら動画もあるはずなのに、それがない。とどのつまり……。

 

「……差別、ですかね?」

「どちらかと言えば区別かな。一夏くんと私、どちらを学園やIS委員会が丁重に扱うか考えると、()()()()()()()()()()()。女権相手に怖気づいてるのさ」

「……情けないな、ほんと」

 

 女性権利団体なんて大層な物を名乗っているが、あいつらは他人のことなんかどうでもいいと思っていやがる。ただ姉さんや他のIS使いの功績を笠に着て好き勝手やりたいだけなのだ。

 そう考えればなんとも言えない感情が腹の底から登ってくる。義憤か、それとも嫌悪か。どちらにせよ気分のいい物ではない。

 それが表情に出ていたのか、彼は僕を気遣うような声色で言葉を紡ぐ。

 

「なに、これでも司書をやっているんです。ああいう専門用語のミルフィーユぐらい、どうということもない。それに……もうここに()()()()()()でしょう?」

 

 宇野さんは右手の人差し指でこめかみを指差す。恐らくはISを初めて動かしたときの妙な感覚のことを指しているのだろう。確かに色々情報は入ってきたけど、機体を装着した状態じゃなければ思い出せないぐらいいっぱいだったはずだ。それをちゃんと覚えている辺り、この人は相当なキレ者かもしれない。

 

「……そういうことじゃ、ないんですけど」

「おっとそうでしたか? まぁ、ああいう輩には実際に見せてやるのが一番有効ですからね。私はそういうつもりでこれに乗った」

 

 

 そんな会話を繰り広げた後、取り敢えず無難に趣味や好物の話をしてると体がググっと揺れた。どうやら電車が停まったようだ。

 今度は僕が先に降りれば、巨大な建造物が乱立していた。それを二人で暫く眺めていると、タッタッタッと誰かが走ってくる音が聞こえる。

 

「あ、二人共来てくれましたねー。ようこそ、IS学園へ!」

 

 えっへん! とスイカのような胸を張る緑髪の女性……この学園の教師である山田真耶(まや)先生は、動画でも思ったことだがかなり背が低かった。僕と同じぐらいしか無さそうなほどだ。

 

「山田先生、初めまして。織斑一夏です。いつも姉さんがお世話になってます」

「い、いえいえ! むしろ織斑先生にはこっちが助けて貰ってるぐらいですし」

 

 ちょっと狼狽える先生に小動物的な可愛さを覚えてると、宇野さんが近寄ってきてお辞儀をする。

 

「山田先生、で合っていますでしょうか。宇野誠一です、初めまして」

「あっ、は、初めまして! ……すごいおっきいぃ……」

 

 二人をよく知らない人が見たら、間違いなく彼の方が年上と勘違いするであろう身長差。それに先生はちょっと気圧されているようだ。

 

「で、ででで、ではっ! こっちに付いてきてくださーい!」

 

 プレッシャーに耐えきれなかったのか、彼女はかなりの早足で移動し始めた。僕らも急いでそれを追いかける。

 カタツムリの殻っぽいやつ、やけにうねった塔の様なナニカなど、様々な建造物が視界に入ってはまた新しい物がやってくる。まるで未来に迷い込んでしまったかのようだ。

 

 そうこうしている内に、ISアリーナの一つへとたどり着く。山田先生は急停止してこっちに回れ右をする。……しかし、僕はそれに反応できなかった。

 

「さぁ、二人にはこの──」

「ど、どいてくださーい!?」

「止まれ一夏くん!」

 

 結局間に合わずに彼女へとぶつかり、揃って床に倒れ込んでしまう。思わず瞑った眼を開くと、そこは薄橙一色だった。慌てて起き上がろうとすれば、手のひらに柔らかい感触。

 

「あ、あの、織斑く……ひゃう!」

「あっちゃ〜……」

 

 耳に入るやたら艷やかな声に視線を上げれば、赤く染まった顔がそこにあった。

 

「そ、そのですね……こんな場所でなんて……いえ! 場所だけじゃなくてですね! 仮にも生徒になる子と教師がこんなことなんてですね! あぁでもこのままなら責任を取ってもらって──」

「わーっ! わーっ!?」

 

 山田先生。間違いなく100%の確率で山田先生だ。その事実でパニックになっていると、首の後ろを掴んで持ち上げられる。それをやった宇野さんはもう片方の手で眉間を揉みながら口を開いた。

 

 

「……一夏くん、山田先生、()()()()()()()()()()()()()()()()()。いいですね?」

「「アッハイ」」

 

 有無を言わせないという強い意思が滲む声色についついそんな返事をしてしまう。先生も床から立ち上がり、気を取り直して僕らに話しかける。

 

「さて、お二人にはこの打鉄を実際に動かして私と戦ってもらいます!」

「……初心者ですよ?」

「だからこそです! ISを動かすシステムは極めて複雑ですけど、IIF(イメージ・インターフェース)を採用してるおかげである程度なら直感的に使えます。それを覚えておけば、他の子と違って専門教育を受けていないお二人でも、入学後の勉強に付いていきやすくなるはずです! それに──」

 

 大げさな身振り手振りで説明を続ける山田先生。それに付随して動く()()()()へ視線が行かないように意識を割いているせいで、内容の半分ぐらいしか分からなかった。

 

「──では、これで説明は終わりです! アリーナで待っているので、準備が出来たら来てくださいね」

「あっ、ちょっと!?」

 

 やり切った! といった感じの表情の彼女はそそくさと部屋から出ていってしまい、男二人とIS二台だけの空間が出来上がる。

 取り敢えず周囲を確認すれば、刀や銃と後は鞭やらバズーカといった様々な武器が壁に架かっていた。

 

「……ああは言ってましたけど、どんな感じにしたらいいと思いますか?」

「ふむ……一夏くん、集中力に自信は?」

「えっ? まぁ人並みにはあると思いますけど……」

 

 そう答えると、宇野さんは壁にある武器の一つ──武骨さ以外の特徴がこれといって存在しなさそうなライフル銃を指差す。

 

「『狼煙(のろし)』。打鉄と同じ場所が作った武器です。あれを使えばいいでしょう」

「銃、ですか? 僕はむしろ剣とかの方が──」

「アレを当てられるのは君のお姉さんか或いは近接狂いのイカレ野郎ぐらい。メインウェポンにするのは狂気の沙汰です」

「口が悪い!?」

 

 まさかの罵倒に困惑するが、冷静になって考えてみればその通りだ。ISはどんな遅い機体や装備構成でもマッハ1を超えるのは当たり前な訳で、それに面ではなく線で攻撃を命中させるのは難しすぎる。

 

「それに、恐らく先生が使うのは『ラファール・リヴァイヴ』だ。同じ世代とはいえこっちは初期であっちは最後発。性能差は言わずもがなだろう?」

「……負かす気しかない?」

「大正解。試験とは銘打っているがこれの出来が合否に直結する訳ではない筈。もしそうなら、国家代表候補や企業代表との格差が大きくなりすぎる」

 

 彼の説明を聞きながら、参考書や動画で何度も見たリヴァイヴの姿を思い浮かべる。盾二枚とブースター二基の機動力重視型。アサルトライフルやショットガンは容易に防がれるだろう。

 であるならば、やはり宇野さんの選択が理に適っていると思えた。

 

 ……しかし、勝っても負けてもいいならなんでこの人は戦闘のことをこんなに考えているのだろうか。その疑問に対する自分なりの答えを伝えてみる。

 

「────勝ちたいんですか?」

「……流石にバレるか。あぁそうだ、私はこの試験を全力で戦い抜きたい。そうじゃなければ男が廃る……というのはちょっと古臭いかね?」

「……」

 

 そう語る宇野さんの表情は完璧に()()()のそれであり、清々しさすらあった。

 

「……僕が先に出ます。宇野さんは装備について考えておいてください」

「……いいのかい?」

「あんなこと言われたら、こうもなりますよ。僕だって『男』ですし」

 

 そこで会話を切り上げて打鉄を装着し始める。手足を差し込みながら武器一覧を確認して、近接ブレード『(あおい)』とパドルブレード*1鬼柳(おにやなぎ)』を交換し、アサルトライフル『焔備(ほむらび)』を残したまま狼煙を追加した。

 

 背後で宇野さんが装備を眺めているのを確認しながらカタパルトに乗って、加速を味わいながらアリーナに射出され────

 

 

「…………あれ?」

「早すぎるぞ一夏くん!?」

 

 ────気づいたら何故か戦闘が終わっていたのだった。

*1
いわゆるエネルギーブレードの一種。ビームガンも兼用した物をこう呼称する。




 大胆な戦闘カットは作者の特権……というのは冗談で。
 同じ相手との戦いを(理由もなく)何度も書くと時間かかるからね、しょうがないね。

 次回、オリ主VS山田先生
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