IS 殺し屋は日常を知りたい   作:黒鉄48号

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 原作キャラとの戦闘は初投稿です。
 前編は山田先生、後半はオリ主視点となります。


第十八話 銃央矛塵(キリング・シールド)

「はぁ……ダメダメですね。これじゃ先生失格です……」

 

 男子二人とは逆側のピットに戻った私は、さっきまで乗ってた教員用リヴァイヴを見てため息を吐く。右側の盾は溶断され、ブースターには大きな貫通痕が出来てしまっている。

 

 打鉄に乗って出てきた織斑くんとの戦闘は、想像以上に激しいものだった。鬼柳と焔備(ほむらび)で弾幕を貼りながら私の行動を抑制し、一撃離脱(ヒット&アウェイ)で盾や手足を斬りつけてくる。

 無理矢理突破することも可能だったけど、試験官としての立場がそれを許さない。攻撃は出来る限り避けなければならないと上から言われているのだ。

 

「……でも、最後の()()はなんだったんでしょう?」

 

 思い返すのはトドメを刺されたあの攻撃。シールドを片方破壊されて焦っていた私は弾幕に穴を見つけ、瞬時加速(イグニッション・ブースト)での攻撃を選択した。しかしそれを彼は予測していたのかあっさり躱し、狼煙を展開して腕を大きく振り何故か見当違いの方向に射撃をしたのだ。

 それに困惑したのも束の間、腰部で大きめの爆発が起きると同時にISから破損を知らせる表示が出てくる。あり得ない事実にパニックになった私は織斑くんに後から蹴り飛ばされ、結局アリーナの壁に盛大に突っ込んで気絶してしまったのだった。

 

 まるで()()()()()()ようなあの攻撃は、本当に意味がわからない。そんな自分が情けない限りである。これでは元代表候補生()()()()の肩書が安っぽくなってしまう。

 そんな感じの不安が続々と浮かんでくるが、宇野くんが出撃したという知らせを聞いて現実に引き戻される。

 

「織斑さんの弟さんも凄かったですけど、彼はそれ以上に気をつけるべきらしいですしね……」

 

 技術部門の人たちがしてくれた警告を思い出しながら、私はISの装備を変更する。

 ……さぁ、幕を上げましょう(レイズ・ザ・カーテン)────!

 


 

 一夏くんの想像以上に早い帰還に焦りながらもなんとか装備を整え、アリーナに出撃できた私は待ちぼうけになっていた。何かするに越したことはないので、機体の調子を確認する。

 PICは好調、呼び出し(コール)収納(クローズ)はそれぞれ0.7秒程度。レスポンスは……少し遅めで気にはなるが、量産機なのでしょうがないだろう。それは相手も同じなのだから気に病むのは止めておく。

 

 そんなことを続けていると、やっと山田先生がピットから飛び出てきた。だが、その機体は予想していたものとはまるで別物だ。

 通常のリヴァイヴはバックパック上部にサブアーム経由でシールドが二枚、下部にブースターが二基のバランス型である。しかし、目の前のISの場合は四つ全てが多機能武装盾に置き換わっていた。

 

「お待たせしましたー! 宇野くん、調子はどうですか?」

「……失礼ですが先生、その姿は? 換装装備(パッケージ)一覧には乗っていなかった筈ですが」

「これはオートクチュール『ショー・マスト・ゴー・オン』──言うなれば専用装備です!」

 

 あっけらかんと言い放つが、聞かされる側としては溜まったものではない。それはつまり専用機と相違ないのだ。その事実が私にプレッシャーをかける。

 

「私にそこまでの価値はないと思いますが? しがない一般人に過ぎませんよ」

「……測定不能でしたよね、IS適正」

「……それが何か?」

 

 彼女はさっきまでの慌てん坊の子犬のような感じとは打って変わり、落ち着き払った態度でそう話しかけてくる。

 

「適正の基準は年代ごとに変化していますが────()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

「…………」

「当然、私も驚きました。第二世代でISアンプリファイア*1が標準装備になってランクが引き下げられた中、そうならなかったのは彼女とアリーシャ・ジョセスターフくらい。でも、そこにあなたが現れたんです!」

 

 山田先生は表情を豹変させ合図もなしに近接ブレード『ブレッド・スライサー』を展開しながら飛んでくる。それを浮遊シールドで受け流しながら六二口径ポンプ式散弾銃『渦炎(かえん)』を展開し三発撃ち込むが、これは流石に当たらない。

 

「いきなりとは油断も隙もない! 教師とは実にいいご身分だ!」

「しっかり対応しておいてそれですか!? これだから高適正者は!」

「だからなんだと言っているのだ! たかが適正なんぞに負ける者ならそんな御大層な服を貰えはしないでしょう!」

 

 立て板に水を流すように言葉が口から飛び出る。

 今度は脇差『茜』を展開して彼女と切り合うが、武者震いと反応速度の遅れによりどうにも不利になってしまう。

 しかし、私はどうにも嬉しくてしょうがなかった。金属音が響けば血が沸き立ち、攻撃が当たればそれはもう格別だった。口角が釣り上がり、笑い声は止まる所を忘れてしまう。

 

「ハッハァッ! いい、実にいい! モンド・グロッソが開かれるのも納得だ!」

「どうして笑えるんです!? 初めてで! 武器を使って! それなのに何故!」

「分からないのですか先生! ISは私達の命を守るが体についてはその限りではない! 傷つき、痛み、苛まれる! しかし死にはしない!!」

 

 撃ちきった渦炎をリロードすると見せかけ、盾に隠れながらコールして入れ替えたのは超加熱(ヒート)斧『首斬(くびきり)』だ。シールドバッシュで隙間に先生のブレードを刺し込ませて動きを封じ、左側の多機能武装盾を大きく振りかぶって溶断する。

 

「いつの間に!?」

「盾を盾だけに使うのはつまらないでしょう? なんであっても使いよう! スライド構造に感謝して追加攻撃(おかわり)ぃ!!」

 

 勢いまかせにもう一撃かまそうとしたが、何か嫌な予感がして咄嗟に距離を取る。壁まで下がりきるとリヴァイヴの表面を細い光が幾本も走って浮遊シールドをズタズタに引き裂いた。

 

触れれば切れるナイフのよう(チェーン・ソウ・チェイン・ソー)……初見殺しを避けるのは反則ですよ?」

「こわっ……」

 

 そう声を漏らしたのは武装の凶悪さだけではなく、山田先生の表情についてもだ。笑顔である、笑顔なのだが……明らかに殺意の波動とか漆黒の意思とかが宿っているタイプのそれだった。

 

「宇野くん、やっぱり強いですね〜」

「はっ、ははっ……どうも、ありが────」

「ですので、ここからは本気です」

「──あっ」

 

 リヴァイヴの各部に青い光が発生し、それは数多の武器へと形成される。

 狙撃(スナイパー)散弾銃(ショット)突撃(アサルト)擲弾発射器(グレラン)機関砲(ガトリング)、パドルブレード……片手で数え切れない程の銃口がこちらを捉え、ロックオンアラートがけたたましく脳裏に響き渡った。

 

「ちょっ……、待っ……!?」

「一斉発射ーっ!!」

 

 爆音と閃光。それらがハイパーセンサーによって処理されれば、多種多様な弾丸が私を穴あきチーズにさせに来ている。その瞬間、思考が加速を始めた。

 まずは壁を蹴りながらブースト。当然山田先生はこちらに照準を移動するが、浮遊シールドとショットガンで迎撃しながら私は天地を駆け巡る。

 

()()()()()()()()! 前後上下左右三六〇度、全てが同時に!」

「なんですって!?」

 

 驚きに染まる彼女の顔もくっきりと確認でき、無性に笑いが込み上げてきたので我慢をせず声に出す。背後では相変わらず爆炎が吹き上がっているが、それがまた面白いのだ。

 

「楽しい、楽しいぞ()()! お前もそうだろう! こんな景色、世界中の誰も見たことがない!」

「あの、宇野くーん!? 正気に、正気に戻って下さーい!!」

 

 何か聞こえてくるが、もはや関係ない。ただ只管に飛び回りたい、その衝動が私の中を埋め尽くしていた。

 

 火薬の匂いが途絶えて数分ほど経っただろうか。ブースターは焼付き、酷使に次ぐ酷使で脚部のショックアブソーバが悲鳴を上げている。体も重くなってきたのだが、それでもやはり止められない。

 

「ははっ、はははぁっ!!」

「……しょうがないですねぇ」

 

 天井と地面を十週ちょっとした辺りで山田先生が目の前に立ってきた。()()()()と思い、壊されすぎて自己再生が出来なくなった浮遊シールドを構えてそのまま突撃する。

 次の瞬間、盾の隙間から眩い光が漏れ出して視界を白く塗りつぶす。思わず足を止めれば、何かが体に充てがわれていた。

 

「ごめんなさい」

「ミ゜ッ!」

 

ズガンッ!!!

 

 炸薬の弾ける音と同時に鈍い衝撃が走る──股間に。あまりの痛みに正気へ戻され待ったをかけようとしたが、彼女は容赦なく続けざまに三発撃ち込む。

 その結果、私は意識を手放し視界が黒へと転じたのだった。

*1
操縦者とコアの相性を補正し、従来では動かせなかった低適正者でもISを使えるようにした装置。




 股間は絶対防御で守られてるから安心!(希望的観測)

 次回、入学
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