全編オリ主視点。
SHRが終わり、最初の授業が始まるまでの小休憩。
IS学園の倍率が大体一万倍とはいえ、やはり女子であることには変わりなく五、六人程で集まって喋っている子達がほとんどだ。
にしても、この参考書はどうにも扱いづらい。机には入らないし、後ろのロッカーだといささかスペースを占めすぎる。どうしようかと悩んでいると、一夏君が話しかけてきた。
「宇野さん、お久しぶりですね」
「あぁ、そうだな……ところで、知識の方はどうだい?」
「それなり……ぐらいですかね。動画は分かりやすいんですけど、やっぱり時間が足りなくて」
「そこはしょうがないだろう。私達こそがイレギュラーであり、彼女らも試行錯誤しているわけだ」
「そうなのかなぁ……」
そうやって会話していれば、当然の如く視線が集まってくる。その中でも特に強い物──まるで抜き身の刀だ──を注いでくる方向をちらっと覗けば、私を除いて最も背が高いであろう少女と目が合う。
「……一夏くん、そろそろ授業時間だ」
「あれっ、もうそんなに? それじゃあまた後で〜!」
トコトコと自分の席へ戻る彼を見つめながら、相変わらずこっちに敵意のような物を向けてくる彼女……『
かの大天災の妹と一夏くんは幼馴染みだったが某事件の際に『重要人物保護プログラム』で離ればなれに。その後は全国の小中学校を転々とさせられていたらしい。
だが、それと今の状態との関係は不明だ。彼と話したかったのなら割り込みでもすれば良かったのに、それをしないというのは理解に苦しむ。
私が呻きながら頭を捻っていると、戻ってきた先生がパンパンと手を叩いた。
「さて! 皆さん、初めての授業ですね。織斑君や宇野君もいるので、今回は中学校で学んだことを一度振り返ってみましょう!」
山田先生が教壇に立ちながらそう告げる。彼女が教卓を弄れば、私達の机にホログラムが浮かび上がった。
噂には聞いていたが、やはりこの学園の最新技術の多さには驚かされる。藍越が開発中の類似品の方は、未だに手の動き──フリックやタッチ等──を判別するプログラムの精度が甘かったはずだ。
「まずはISの世代についてです。織斑君、世代ごとのコンセプトは覚えていますか?」
「はい。えっと確か……第一世代が『兵器としてのISの完成』、第二世代が『戦闘における用途の多様化』。そして第三世代が『IIF*1を用いた特殊兵器の可能性の模索』ですよね?」
「ええ、合ってますよ」
山田先生の返事と一緒にホログラムの画像も変化する。
……このフォント、大きさ、色使い────あの参考書を作ったのは、もしや彼女なのだろうか。
頭の片隅でそんな愚にもつかないことを考えながら教材画像を眺めていたら、画像越しに先生がこっちを見ていた。
「では宇野君、それぞれの世代の特徴を挙げてみてください」
「了解しました」
返事をして立ち上がり、深呼吸をしてから口を開く。
「それではまずは第一世代から。この世代の特徴は、なんと言っても『
説明しながら周りを眺めてみる。
大体の生徒は興味津々といった感じで、篠ノ之さんやオルコットさん、そして織斑先生はこちらを品定めするような目を向けている。
「そもそもの話として、当たり前ですが当時はIS運用や開発のノウハウなんて存在していません。そんな中、開発者達がまず目指したのは『稼働時間の増加』です。この目的を達成する場合SE*2の浪費は極力少なくしなければならりません。その為の一番手っ取り早い手段は単純明快──
ちらっと織斑君と山田先生を見てみると、どうやら好印象らしい。このまま続けていこう。
「ですが、あちらを立てればこちらが立たず……装甲を増やした代償とし、収納できる武装の量がかなり減ってしまいました。この問題への対応は国ごとにかなり特色が出ていて、フランスは独自の圧縮方式を生み出し、ドイツはマウントラッチを採用するなどでした」
ちょっとずつ生徒達に飽きが見えつつあるが、流石にここで止めるのは勿体ない。私は更に言葉を紡いだ。
「こうして開発された第一世代ISが競い合ったのがかの『モンド・グロッソ』の始まりです。そしてこの大会で得られたデータやノウハウから開発されたのが第二世代IS。特徴は言わずもがな『
この辺りは試験でも頻出しているので反応が薄い。しかし、後ちょっとで私はダメ押しをする。
「そして第三世代なんですが……機体の方は第二世代と殆ど変化がありません。メインはあくまで特殊兵装で、国によってかなり差があるので一纏めで説明するのも難しいんですよね。────まぁ、これ以上は長くなりすぎるので一旦お開きにしましょうか。こんな感じでいいですかね、山田先生?」
「え、えぇ……分りやすくていいと思いますよ」
山田先生はちょっぴり言葉を濁しながらそう応えた。
……ついでにオルコットさんがこちらを凄まじい形相で睨んでいるが、地雷を踏み抜いてしまったのだろうか。
「と、とまぁ、お二人が説明してくれた感じですね。皆さん覚えてましたか?」
彼女が問いかければ、女子達から元気な返事が発せられる。それに満足げな表情を浮かべながら、先生は解説を続ける。
「さて、現在のISは先述の通り多様化が進んでいまして、武装を売っている企業だけでも百社以上あります。……しかし、開発費用はあれど試験運用の為の人員やそれで得られるデータは常に不足気味なんです」
先程までとは打って変わり真面目なトーンだ。それに影響されてかクラスの雰囲気も引き締められた様に感じる。
「そんな訳で、開発されたのがこのシステム!!」
先生はバッと両手を開きながら右を向き、それと同時に電子黒板にデカデカと二つの文字が表示された。
「学園ポイント……略して『GP』です!」
「「「ド直球!?」」」
誇らしげな彼女に対して一斉にツッコミを入れてしまう程に名付けのセンスが無い。『
「ダサっ……」
「り、理解に苦しみますわ!?」
「どうして横文字と合体させたんだ……」
呆れというか、驚愕というか。どちらにせよほぼ全員名前に納得がいかないのは同じらしい。
「ま、まぁ名前については置いとくとして。これはISの自主訓練や弾薬の追加等に使う物になっています。また、この島の各所にある販売所の商品を現金よりお得に交換もできます」
山田先生が続きを話し始め、やっとのことで空気が元に戻った。それを感じ取ってか彼女はスラスラと言葉を続ける。
「ポイントを手に入れる方法としては、毎日の出席、課題の提出に加え、試験で好成績を修める等々
その言葉を聞いた瞬間、クラス全体の雰囲気が一段と静かになった。自分たちに求められている役割を察し、その重さについて考えているのだろう。
それにしても『依頼』とは……つまり悪い言い方をするのなら私達は体の良いモルモット的存在というわけだ。しかし、
……何せ、いつでも合法的にISを戦わせることが可能な上に、シェア率上位の機体以外も
「どの様な依頼があるのかというと────おっと、もうチャイムが鳴っちゃいましたか。では、この話の続きはまた別の時間にしましょう」
まだまだ話は続きそうだったが、先生はここで授業を切り上げてしまうようだ。彼女の号令に従って起立〜着席の一連の動作を終えれば、先程よりも喧騒が聞こえる。
……どこかのタイミングで情報を教師や上級生から集めなければ、と思う私であった。
今作では量産型コアがあるので、武器や追加装備のサードパーティが大量に存在します。
また、一定の成果を上げれば学園のある島に支社の設置を許可される為、大量の依頼が舞い込んでいる模様。
次回、侍少女と英国淑女