【完結】暁小南討伐チャートbyホモガキ   作:夜散花

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途中まで本編共通
時空バンバン飛びます
長すぎだけどお兄さん許して


ch.17 †悔い改めて†(ナルト)

 何で俺ばっかりこんな目に。物心ついた頃からそんなことばかり思ってた。

 

 外に出れば誰かから陰口を叩かれ後ろ指を指される。仲間外れにされる。

 他の奴らでそんなことされてる奴なんていねーのに、なんで俺だけ。

 そう思うと、いつも涙が出た。

 

 ずっと泣いてばかりいるのは嫌で、いつしか感情を外へとぶつけるようになった。むしゃくしゃした時はイタズラをして、里の奴らを困らせてやった。そうやって鬱憤を晴らしてた。

 

 でもイタズラする元気もない時は、いつも一人で公園のブランコに乗っていた。プラプラとブランコをこいでぼうっとしてた。

 

 他の子供たちが親に手を引かれて自分の帰るべき場所へと帰っていく。そんな羨ましい光景を横目にしながら、ずっと夕日を見てた。

 俺には家族もいねえ。帰るべき家もねえ。

 

 正確には家族に近いもんはいる。三代目の爺ちゃんはことあるごとに俺のことを家族だって言ってくれる。寝泊りする家もある。でもそうじゃねえんだ。

 

 爺ちゃんは火影っていう木の葉の里の偉い人間だ。里の全ての人間のことを家族だと思ってる。

 だから俺もその一人に過ぎない。特別な誰かってわけではない。血が繋がってるわけでもない。

 忙しいからほとんど構ってはくれない。たまに一緒に飯を食うくらいだ。

 

 そういう意味では俺に本当の家族なんていないし、帰るべき家もない。

 俺はいつだって一人だ。一人ぼっちだ。

 物心ついた時からそんな孤独を味わい続けてきた。

 

 こんな状況があと何年続くのか。下手したら三代目の爺ちゃんと同じくらいの年寄りになるまでこの状況が続くのかもしれない。

 アカデミーに入っても誰も俺と仲良くなんてしてくれないし、この状況がこれから良くなるなんて到底思えなかった。死ぬまで一人ぼっちかもしれない。

 

 そう思うと絶望だった。六歳にして人生の絶望を感じてた。

 

 そんな時、ランの姉ちゃんと出会ったんだ。

 ある日、いつものように一人でブランコをこいでいると、姉ちゃんが俺に近寄ってきたんだ。

 

「ねえ、君……」

 

 物心ついた頃から悪意を持った人間は大勢見てきたから、相手が良い奴か悪い奴かは一目見ればだいたいわかる。

 悪い奴だったら石でも投げてすぐに逃げるところなんだけど、姉ちゃんは見るからに悪意のなさそうな優しそうな顔してた。

 

 だから少し意地悪してやった。あえて毒づいた言葉を吐いてやった。

 

「なんだよ。姉ちゃんも俺のこと苛めるのか?」

 

 絶望たっぷりって顔で言ってやる。

 こうすると良い人の場合、金を置いて立ち去ってくれたりする。

 

 金をくれるなんて良い奴に見えるがそうじゃない。本当の良い奴ってわけじゃない。罪悪感ってものを消すためだ。本格的に関わって俺をどうにかしようなんて思わない。

 

 それでも俺にとっては良かった。

 悪意のある奴よりよっぽどマシだからだ。金を置いていってくれるならそれに越したことはない。

 その金で駄菓子や玩具でも買って遊ぶだけだ。一日くらいはそれで寂しい心を満たせる。

 

 だから精一杯毒づいてやったんだ。美人で身なりも小奇麗にしてるからきっと金持ってるだろう。優しそうだから同情を誘えば金を置いてってくれるだろう。そう思った。

 

 そしたら姉ちゃんはそんな俺の真意を見透かしたように、俺に飛び膝蹴りを加えてきたんだ。

 

「てええええいっ!」

「ぐぇっ!? い、いきなり何すんだってばよ!? 姉ちゃん!」

 

 今までにそんなことをしてくる奴はいなかった。

 しけた顔をしているいたいけな子にいきなり飛び膝蹴りを加えるなんて人間のすることじゃない。そんな極悪なことをする奴は今までにいなかった。

 ランの姉ちゃんは人の良い顔してとんでもない姉ちゃんだった。

 

(何だこの姉ちゃん!? 鬼か!?)

 

 混乱するばかりの俺に、姉ちゃんはさらなる暴力を加えてきたんだ。

 

「子供がそんな辛気臭い顔しない!」

「イテテ! やめるってばよ!」

「笑え! 笑いなさい!」

 

 姉ちゃんは俺の頬を抓ると引っ張った。上下左右へと思いっきり引っ張り、それで俺は無理やり笑顔を作らされた。

 

「ぷふっ、変な顔! 面白い!」

「ね、姉ちゃんが無理やりやったんだろ!」

 

 とにかく無茶苦茶だった。

 顔はこんなに整っててスタイルもすっげーいい美人なのに、頭は本当に悪いんだって感じだった。頭の出来具合は俺といい勝負だった。

 

「君、可愛いからちょっとウチに来なさい!」

「えっ、ちょっ!?」

 

 姉ちゃんは問答無用で俺の首をロックすると、そのまま引きずるようにして自分の家へと連れ去っていったんだ。

 姉ちゃんは細い腕しててか弱そうに見えるのに、とんでもねえ力を持ってた。俺がどんなに暴れても全然逃げられなかったんだ。

 

(この姉ちゃん、人攫いか!? だ、誰か助けてくれってばよ!)

 

 人攫いかと思ったけど違った。

 俺は姉ちゃんの家で一緒に風呂に入って、その後に飯を食うことになったんだ。

 

「たんと召し上がれ! おかわりもあるわよ!」

 

 出てきたのはご飯と味噌汁と焼き魚だった。イサキとかいう見たこともねえ魚が食卓に上ってた。

 

「なんだよこの魚……」

「イサキ! この世界で一番美味しい魚よ!」

 

 アジの方がいいって文句言ったら「イサキが一番美味しいの! アジは邪道!」って言われて滅茶苦茶怒られた。

 食べてみたらアジの方がやっぱり美味しかったけど、姉ちゃんが怖くてそんなことは言えなかった。

 

「イサキ、美味しいってばよ!」

「でしょ!」

 

 でもイサキも悪くないかなって思えた。

 食べ物の味そのものよりも、食事自体が楽しかったんだ。

 

 自分のことを思ってくれてる誰かと楽しく会話しながら飯を食う。

 三代目の爺ちゃんとの飯も悪くないけど、爺ちゃんとの会話はいまいちつまらない。学校はどうだとか、俺があんまり喋りたくない話ばっかり聞いてくる。

 その点、姉ちゃんとの飯は最高だった。俺と同レベルの思考してる姉ちゃんと食う飯は、人生で最高というくらい美味かった。

 

「姉ちゃん、サンキュな」

「え、何、もう一回言って。大きな声で言いなさい!」

「やだ絶対言わない」

「言いなさいこら!」

「やだっつーの!」

 

 その日は姉ちゃんの家に泊まることになった。

 一生この家で姉ちゃんと一緒に暮らしていきたいって思えるくらいに最高に満たされた時間が過ごせた。生まれて初めて、家族っていうのはこういうもんなんだと思えた。

 

 翌日の早朝に爺ちゃんが迎えに来てくれて、俺は自分の家に帰ることになったんだけど、その後は爺ちゃん公認で姉ちゃんの家に遊びに行けるようになった。

 初めて俺を無条件で受け入れてくれる姉ちゃんの存在は、本当に嬉しかった。

 

「ナルト君、今日から正式にウチの子よ!」

「え、姉ちゃんが俺の保護者? 嬉しいってばよ!」

 

 しばらくすると、姉ちゃんが三代目の爺ちゃんの代わりに俺の保護者になってくれることが決まった。本当に嬉しかった。

 

 それからというもの、毎日一緒に風呂入ったり、飯作ったり、遊んだり、色んなことをした。

 

「そこはこうするの! こうやってこう!」

「全然わからねーってばよ!」

 

 姉ちゃんは時折忍術の稽古もつけてくれた。姉ちゃんはかなりの腕を持った忍者らしい。

 

 元は木の葉の生まれじゃないみたいなんだけど、木の葉の里に来てからというものとんとん拍子で出世してるらしかった。

 そんな凄腕忍者だから、初めて家に連れられてきた時、俺がまったく逃げられなかったのも納得だ。

 

「俺、姉ちゃんみたいな凄いくのいちになるってばよ!」

「ぷっ、ナルト君、男の子はくのいちになれないんだよ。くのいちは女の子の忍者だけの名前なの! 女の子だけの特権よ!」

「え、そうなの? じゃあ男の忍者は何て言うんだってばよ?」

「男の子はそのまま忍者よ」

「えー、男の場合はそのままなのかよ。他に何か格好良い呼び名とかないのかよ?」

「役職だったらあるわね。下忍、中忍、上忍とかね」

「もっと凄いのは何だってばよ?」

「この里だったら一番上は火影ね。今はヒルゼン様がなってるよ」

「火影か。三代目の爺ちゃんと同じ……」

 

 姉ちゃんと忍術の修行しながら話している時、人生の目標が決まった。

 どうせ忍者になるなら一番凄い忍びになってやる。里の皆に慕われてる三代目の爺ちゃんみたいな忍者になってやろうと思った。

 

「だったら俺は火影になる! そんでもって里の皆に俺の存在を認めさせてやるんだってばよ!」

 

 俺がそう言うと、姉ちゃんはキョトンとした顔で固まってた。

 いつもは茶化したり喜んだりしてくれるのに何も反応がなかった。

 俺は自分が変なこと言ったんじゃないかって思えて急に恥ずかしくなった。

 

「やっぱ変かな。俺が火影なんて……」

「ううん! そんなことない! とっても素敵! だったら、私がナルト君の夢の一番の応援者になるわね!」

「そっか。へへっ」

 

 姉ちゃんは俺の夢を一番に応援してくれると言った。本当に嬉しかった。

 それからというもの、俺は自分の夢を誰にも憚ることなく宣言することにしたんだ。

 

 他人にどれだけ笑われようがどうでもいい。俺には姉ちゃんがいる。姉ちゃんが応援してくれているなら百人力だ。

 どんな困難が待ってようと必ず火影になってやろうと思った。火影になることで、里の皆に俺という存在を証明してやろうと思ったんだ。

 

 姉ちゃんという家族が出来た。人生の夢も出来た。

 アカデミーではイルカ先生という良い先生にも恵まれ、今までの苦しみが全部嘘だったかのように、生活の全てが充実したものへと変わっていった。

 

 良いことっていうのは連鎖して起こるものらしい。

 人生前向きになれると、自分以外の他人にも優しくできた。アカデミーでも誰かに優しくできた。

 

「大丈夫か?」

「ああ」

「そっか。じゃあな」

「おいおい礼くらい言わせろよ。俺はシカマルってんだ。サンキュな」

 

 目の前で転んだ奴を起こすのを手伝ってそのまま立ち去ろうとしたら呼び止められた。話すきっかけになって、そのまま一緒に遊ぶことになった。

 

 シカマル。初めての友達って呼べる奴が出来た。とてつもなく嬉しかった。

 

 シカマルを通じて友達の輪は広がっていった。チョウジ、キバ――その他大勢の友達が出来た。アカデミーでの生活が本当に楽しいものとなった。

 

 キバは何かと突っかかってきていけ好かない奴だけど、それでも全力でぶつかってきてくれることが嬉しかった。

 アイツは俺のことを「認めない」と言うが、全力で対等にぶつかってくれるということ自体が認めてくれている証だ。

 

「いい加減諦めろ! ドベが俺様と赤丸に勝てるわけねえっつの!」

「くっそー」

 

 キバとの駆けっこは負けてばっかりだったけど、それでも一緒に駆けっこをするのが本当に楽しかった。一人居残りで練習して勝てた時は最高に嬉しかった。

 友達との競争は自分をより成長させてくれるって姉ちゃんが言ってたけど本当だと思えた。

 

 一人で里を歩いていると相変わらず嫌な目にも遭ったけど、それ以上に楽しいことがいっぱいあった。人生最高の気分を味わっていた。

 

 そんな時だ。アイツの不幸を知ったのは。

 

「聞いたか? うちは一族って、アイツを残して全滅したらしいぜ」

「それマジ?」

「哀れ。悪に憑かれた一族の末路だな」

 

 最近里が騒がしいと思ったらとんでもないことが起きていたらしい。

 同じクラスのうちはサスケ。アイツの一族がアイツを残して全滅したらしかった。

 

 サスケは昔から気に食わない奴だった。

 超エリートで忍者としての才能に溢れててアカデミーの全員から一目置かれてる。何もかもが格好良くて、授業で何かすれば女の子から常に黄色い声援が飛ぶような奴だった。

 

 俺とは対極的な位置にいる奴。絶対に相容れない奴――それがサスケだと思ってた。

 

 でもそれは違ったんだ。

 家族はおろか親戚一同皆殺しの悲惨な目に遭ったっていうのに、心配して真摯になって声をかけてくれる奴は誰もいねえ。

 調子乗ってたエリートが落ちぶれていい気味だ、落ち目だとばかりに、ここぞと陰口を叩かれていた。

 アイツは仲良く遊ぶ友達もおらず、夕暮れの川原で一人、流れる川の水面をずっと眺めてた。

 

 そんなサスケの姿を見て、サスケは俺だと思った。

 サスケは俺と同じ孤独を背負っていたんだ。絶対に相容れない奴だと思ってたのに、途端に親近感が出てきてしまった。

 

 俺が人生の絶頂を感じている時、サスケは昔の俺みたいな人生の絶望を感じている。そう思ったらほっとけなかった。

 

「鬱陶しいんだよお前。俺に同情するな。俺をテメーと一緒にするな。勝手に同一視するな。気色悪い」

「なんだよ! 人が心配してるってのに!」

「他人の同情している暇があったら自分のことを考えろドベ。このままだとお前だけ落第だぞドベ」

「サスケ、てめえ!」

「やるかドベ!」

 

 どんなに気遣った言葉をかけても、あるいは逆に挑発するような言葉をかけても、サスケはそれを拒絶するだけだった。

 仲良くなりたくて近づいたのに、気づけば思いっきり喧嘩してた。

 

(俺の気持ち、どうすればお前の心に届くんだ。サスケェ……)

 

 サスケのことが気になって夜も碌に眠れなくなった俺は、姉ちゃんに相談することにした。姉ちゃんならきっと何か良いアドバイスをくれるんじゃないかって思った。

 

「わかるよ。好きで好きでたまらなくて、それでちょっかいかけるんだけど全部かわされちゃう。気に入られようとしてわざとヘラヘラとした態度をとるんだけど、それが向こうの癇に障って逆に嫌われちゃうんだよね。すっごいわかるよ」

「嘘だろ? 姉ちゃん、なんでそんなに俺のことわかるんだってばよ? まるで俺の心が覗かれてるみたいで気持ち悪いってばよ……」

「私もそうだったから。昔ね。本当に好きな子がいたんだ」

 

 相談している時、姉ちゃんは昔話をしてくれた。

 そう言えば姉ちゃんが木の葉に来る前の話は聞いたことがなかった。

 以前に何度か尋ねてみたことがあったけど、姉ちゃんはその度に言い辛そうにしてたから、いつしか聞くのをやめちまった。

 

「私、小南ちゃんのことが大好きだったんだ」

 

 姉ちゃんは昔の友達の「小南」って奴のことを話してくれた。

 そいつは頭が良くて何でもそつなくこなして格好良くて、サスケみたいに優秀な奴だったらしい。

 姉ちゃんの憧れの人だったらしい。俺にとってのサスケと同じ存在だったみたいだ。

 

「それで、そいつはどうなったんだってばよ?」

「その子は死んじゃったんだ。だからもう一生仲直りなんてできない。もっともっと仲良くなりたかったのに、もう仲良くなんてなれないんだよ」

「そうなのか……」

「でもサスケ君は生きてるでしょ?」

「ああサスケは生きてる。生きて俺のすぐ傍にいる」

「だったら嫌われようともアタックし続けるのみだよ。私と小南ちゃんの関係とは違って、ナルト君たちはまだ未来があるんだもん。これからどんどん良い方向に発展する可能性があるよ。だったら良い未来に向けて真っ直ぐに突き進むだけだよ」

「ああ姉ちゃんの言う通りだってばよ。自分の思いは曲げねえ。真っ直ぐ、サスケの心に一直線にアタックし続けるだけだってばよ!」

「頑張れナルト君。私は二人のこと、ずっと応援してるよ!」

「サンキュ姉ちゃん! 悩みが全部吹っ飛んだってばよ! サスケェ、今すぐにお前の元に行ってやるってばよ!」

 

 姉ちゃんのアドバイスに勇気づけられた俺は、サスケのことは絶対に諦めないと決めた。

 サスケにどんなに嫌われようが関係ない。アイツが今の俺みたいに前向きに生きられるように、全力を尽くしてやろうと思った。

 

「いつも鬱陶しいんだよウスラトンカチ!」

「何を! サスケェ!」

 

 それからというもの、俺はサスケにちょっかいを出し続けた。

 ちょっかいを出し続けすぎて、アイツが隙を見せるのは昼飯の時だけだってのがわかっちまうくらいまで、アイツのことがわかっちまうようになった。

 結局仲良くなんてなれずにいつも喧嘩になっちまうんだけど、拳を交わすごとにアイツのことが少しだけわかる気がして嬉しかった。

 

「なんだその無様な変化の術は。相変わらず才能なしだなドベ」

「くっ、サスケェ……」

「印の結びも甘ければ変化自体もお粗末だな。変化の術は観察力がものを言う。ドベで注意散漫なお前では百年かかっても無理だろうな。忍者なんて辞めた方がいいな。死ぬだけだ」

「っ!?(こいつ、馬鹿にしながらもアドバイスしてくれてるのか?)」

 

 なんとなくだけど、サスケも俺のことを少しずつだけど認めてくれてるってわかった。そう思ったらとてつもなく嬉しかった。

 

 この調子で何年かかったとしても、サスケの心から闇を振り払ってやろうと思った。

 かつての自分と同じだった奴を放ってなんて置けねえ。里の仲間一人救えない奴に、火影になる資格なんてねえからな。

 

――ぶちゅぅうう。

 

「おぇええええっ!」

「てっ、てめえナルト! どういうつもりだ!」

「じ、事故だってばよ!」

 

 ちょっかいをかけすぎて、空回りしちまったこともある。

 アカデミーを卒業して間もなくのこと。サスケとガンつけ合ってたら、後ろにいた奴に肘突きされる事故が起きて、サスケとキスしちまった。

 サクラちゃんといのにはそのことでボコボコにされるし、最悪だったってばよ。

 

「ナルト君はサスケ君のことが本当に好きなのね。ラブ入ってる?」

「違う! 絶対違う! 姉ちゃん、冗談はよしてくれってばよ!」

 

 悪いことというのは重なるもので、その時たまたま仕事でアカデミーにやって来てた姉ちゃんにまで見られちまったのは一生の不覚だった。

 姉ちゃんにはことあるごとにサスケとのキスのことをからかわれて最悪だった。

 

 俺のサスケに対する気持ちは絶対にラブじゃねえ。似たもの同士の友達として好きで放っておけないってことだ。

 勘違いしないで欲しいってばよ。俺が好きなのはサクラちゃんだっつーの。

 

「へへ、俺も一人立ちすんだ。いつまで姉ちゃんに頼ってばっかじゃいらんねえからな!」

「うん、寂しいけどしょうがないね。私の元から離れても、私はナルト君のこと、ずっと応援してるよ」

 

 アカデミーを卒業して姉ちゃんとの共同生活は終わることになった。

 少し寂しい気もしたけど、俺も独り立ちしなきゃなんねえ。下忍になっても姉ちゃんにおんぶに抱っこじゃいられねえからな。

 

 下忍になってからは、姉ちゃんとの別れの寂しさを感じる暇もないくらい毎日が忙しかった。

 カカシ先生とサスケとサクラちゃん――第七班の皆と任務に励む日々。

 任務自体はつまんねえもんばっかだったけど、皆と一緒に任務するのは本当に楽しかった。

 

「え、ランの姉ちゃんも今回一緒の任務受けることになったのか?」

「正確には別件だけどね。でも第七班の皆と同行することになったの」

「姉ちゃんと一緒の任務なんて嬉しいってばよ!」

「同行者は貴方でしたか。まあよろしくです。担当上忍のはたけカカシです」

「うっそ、こんな美人がナルトのお姉さんだなんて嘘でしょ?」

「ちっ、姉さん姉さん五月蝿い奴だ」

 

 波の国の任務では姉ちゃんと一緒になった。

姉ちゃんと一緒に任務を受けるなんて初めてのことで嬉しかった。

 仮に敵に襲われても大好きな姉ちゃんは俺が守る。そんな気持ちで任務に向かった。

 

「敵襲!」

 

 それほど難しくない任務だと思われていたけれど実は全然違った。敵の忍びの襲撃があって命の危険がある厳しい任務だった。

 

「沸遁・巧霧の術! ナルト君、大丈夫?」

 

 忍び同士の本気の殺し合い。情けないことに、俺はビビって一歩も動けなかった。

 姉ちゃんを守るつもりが、気づけば守られてた。

 

「これは血継限界か。俺でもコピーできんな」

「写輪眼と同じ特殊能力だと……?」

 

 姉ちゃんの使う術は凄くて、あのカカシ先生とサスケも驚いていた。

 

(ランの姉ちゃん、本気で戦ってる所初めて見たけどスゲー)

 

 俺の姉ちゃんは本当に凄いんだって思えて嬉しかった。強くて格好良くて美人で優しくて、誰にでも自慢できる姉ちゃんだ。

 でもそんな浮かれた俺の心中を見透かすかのように、サスケは声をかけてきたんだ。

 

「怪我はねえかよビビリ君。大好きな姉さんとやらが傍にいてくれて良かったな。いなきゃ死んでたぜお前」

「くっ、サスケェ……」

 

 サスケには俺の一番痛いところを突かれちまった。

 サスケは姉ちゃんに頼りきってる情けねえ俺の心を見透かして、発破をかけてきやがったんだ

 

「任務、続行だってばよ!」

 

 サスケになんて負けてらんねえと思った。だから気合を入れるために、毒をくらった手にクナイをぶっ刺して血抜きをしてやった。

 

「何やってるのこのお馬鹿!」

「ぐええ! 痛いってばよ姉ちゃん!」

「お馬鹿な子にはお仕置きよ!」

「イタタ! 姉ちゃんのビンタの方が痛いってばよ!」

「愛の鞭よ!」

 

 馬鹿みたいな血抜きをしたせいで姉ちゃんに怒られてビンタをくらっちまった。

 姉ちゃんのビンタ、正直クナイで手をぶっ刺したのよりも痛かったんだけど。

 

「手、見せてみなさい」

「へへ、姉ちゃん、サンキュ」

 

 ビンタをくらって散々怒られた後は姉ちゃんに治療してもらった。

 チャクラを通して姉ちゃんの優しさが伝わってくるようで嬉しかった。

 

「へー、医療忍術って凄いのね。傷が一瞬で塞がっていくわ」

「ちっ、姉さん姉さん本当に五月蝿い奴だ」

 

 サクラちゃんは医療忍術に興味を持ったようで、姉ちゃんの術を真剣になってずっと見てた。

 サスケは何か知らないけどずっとイライラしてて舌打ちばっかしてたってばよ。

 

「カカシ君、担当上忍なのにだらしないわよ?」

「だらしない先生ですまない……」

 

 波の国の任務では再不斬っていう強い忍びと戦うことにもなった。

 激しい戦いになり、カカシ先生が写輪眼の使いすぎでぶっ倒れて、それで姉ちゃんに介抱されてた。

 

「カカシ君、はいどうぞ」

「いや、自分で食えますから」

「はい、あーん」

「勘弁してください……」

 

 終始姉ちゃんのペースに押されっぱなしのカカシ先生は、見てて楽しかったってばよ。

 カカシ先生、いつも俺たちといる時は余裕ぶっこいてるから、そうじゃない先生の一面を見れたのは面白かった。

 

「カカシ君、ナルト君たちの教育に悪いからエッチな本は全部燃やしておいたわよ」

「え? そ、そんな……」

 

 スケベな本を取り上げられて火遁で燃やされてたのは、流石に可哀想だと思ったけど。

 

「カカシ君! マスクの下はすっごいイケメンじゃなーい!」

「本当だってばよ!」

「先生、今度からずっとマスク外しててくださいよー。イケメンなのになんで隠す必要があるんですか?」

「くだらねえ」

「もう勘弁してくださーい。マスク返してくださーい。とほほ……」

 

 それはそうと、カカシ先生の素顔は凄い美形だったってばよ。マスクしてるのが勿体ないくらいだった。

 

「っ!? 何者だ!?」

「サスケ? どうしたんだってばよ?」

「今そこに誰かいたような気が……」

「え、誰もいないってばよ?」

「幽霊? ちょっとサスケ君、怖いこと言わないでよ」

「俺の気のせいか。戦闘後だけに気が立ってるようだな」

 

 サスケは安全な家の中にいても常に気を張って警戒を続けてた。

 流石はサスケだ。俺も負けてらんねえと思った。だから木登り修行では精一杯頑張った。

 

「うぅ、父ちゃん、何で死んじまったんだよぉ……」

 

 タズナのおっさんの家では一騒動あった。

 おっさんの孫のイナリって奴が自分の気持ちを押し殺しながら一人で泣いてた。

 俺は昔の自分を見てるみたいでもどかしかった。

 

「イナリ君、辛かったね……」

「っ!?」

 

 姉ちゃんはそんなイナリにも優しくしてやってた。昔俺がされてたみたいにな。姉ちゃんは本当に優しい人だ。

 

「この甘えん坊の泣き虫野郎が! お前なんてずっと泣いてろっつーの!」

 

 なら俺はあえてイナリの嫌われ者になってやろうと思った。

 優しくされるだけじゃダメだ。俺に対するサスケみたいに、常に叱咤してくれる奴がいないと人間ダメだと思う。

 そう思ったから、俺はわざと挑発するようなことを言ってやった。

 

 そんな俺の本心を見透かしたのか、姉ちゃんは何も言わずに微笑んでいてくれた。

 

「こんなところで寝ていたら風邪引いちゃいますよ?」

 

 波の国の任務の最中には、白っていう美人の姉ちゃんとも知り合った。

 夜の修行の最中に寝ちまって、朝起きたら白の姉ちゃんが傍にいたんだ。

 

 最初会った時は普通に美人の一般人の姉ちゃんだと思ったんだけど、実は男であの霧隠れの追忍の仮面を被った敵だと、後でわかった。

 男なのにランの姉ちゃんに負けないくらいの美人だなんて、ありえないってばよ。

 

「君には大切な人がいますか? 人は大切な何かを守りたいと思った時に、本当に強くなれるものなんです」

 

 ランの姉ちゃん、サスケ、サクラちゃん、カカシ先生、三代目の爺ちゃん――里のみんな。

 皆のことを思えば強くなれる。いやなりてえ。白に言われてそう思った。

 

「君、再不斬と一緒にいた霧隠れの追忍の子ね。ガトーに雇われてるのね」

「っ!? 何を言ってるんです?」

「私、全部知ってるのよ。変化の術!」

「その顔は……最近ガトーに雇われた謎のくのいち。そうかあれは貴方だったんですね」

 

 白との話の途中で姉ちゃんが乱入してきて、よくわかんない話となった。

 

 姉ちゃんは別件任務でガトーって奴のことを追ってたらしい。それで白と何らかの取引をしていたようだった。

 

「感謝しますランさん。それからナルト君」

「いえいえどういたしまして~」

「何だかしんねーけど、俺も白とは戦いたくねえから良かったってばよ!」

 

 姉ちゃんのおかげで戦わなくて済む。そう思ったんだけど、そうは上手くいかなかった。

 俺たちと再不斬たちは再び戦うことになったんだ。

 

「やむを得まい。雷切!」

 

 殺す気でかかってくる相手に躊躇する気はないのか、あるいは俺たちに危険が及ぶ可能性を排除しようとしてくれたのか、カカシ先生は凄い技を発動して再不斬の命を奪おうとしていた。

 そんな時、ランの姉ちゃんは迷うことなくカカシ先生の前に飛び出していったんだ。

 

「カカシ君! ダメ!」

「なっ、ラン何を!?」

 

 姉ちゃんは両の手を広げながらカカシ先生の前方に立ち塞がって攻撃を止めさせようとしていた。

 カカシ先生は酷く驚いた様子で慌てて攻撃を止めていた。あのまま突っ込んでいたら姉ちゃんの命は危なかっただろう。

 

「はぁはぁ……リン……」

 

 あわや味方の命を奪っていたかもしれないという状況で、カカシ先生の右手はずっと震えてた。胸を押さえながら激しく呼吸してた。

 

「女! どういうつもりだ! テメエに情けをかけられる覚えはねえ!」

「ダメよ! 白ちゃんから話は聞いてないの! 私たちが戦う必要はないのよ!」

「うるせえ! 木の葉の忍びであるお前たちのことなんざ信じられるか! 俺は何も信じねえ! 何も信じられねえ! 自分以外はな!」

「白ちゃんのことすら信じられないっていうの!」

「アイツは道具だ! 道具が何言おうと関係ない! 俺の命令通り動けばいいんだ!」

「貴方って人は! 半殺しにしてでも目ぇ、覚まさせてあげるから! ボッコボコにしても医療忍術で回復すれば全部オーケーよね!」

「ちっ、アイツみたいな厄介な術を使いやがるっ、くそ!」

 

 姉ちゃんは戦いながら根気よく再不斬の説得を続けてた。

 他人が信じられない。仲間である白ですら道具扱いする悲しい男。それが再不斬だった。

 そんな奴の目を覚まさせてやろうと、姉ちゃんは全力で身体張ってた。

 

「ちっ、まだ生きてやがったか。今だかかれ! 皆殺しだ!」

 

 やがてガトーたちがやって来て、再不斬ごと俺たちを始末しようとしてきた。そんで俺たちは全員で協力してガトーの奴らをぶっ飛ばしてやったんだ。

 

「女、感謝する。お前たちがいなければ、俺たちは裏切られて無様に死んでたかもしれねえ。敵にすら情けをかけるお人よしなお前たちを見て、俺は人をもう一度信じてみようと思った。白と共にもう一度人生やり直してみることにする」

「ありがとうランさん、ナルト君、そして皆さん。このご恩は決して忘れません」

 

 全てが終わり、再不斬たちは姉ちゃんに礼を言ってた。

 姉ちゃんが止めなければ、俺たちは本気で殺し合ってて最悪の結末を迎えてたかもしれねえ。こんな風に笑いあってはいなかっただろう。

 

「またいつか会うってばよ!」

 

 俺たちは笑顔で握手を交わしながら(再不斬は笑ってなかったけど)別れることになった。

 初の上級任務、どうなるかと思ったけど何事もなく終わって良かった。

 

 大きな任務を終えてゆっくりする暇もなく、しばらくすると中忍試験が始まった。

 なんとか一次試験を突破して二次試験に向けて修行してる時、エロ仙人に出会ったんだ。

 

「お前、まったく才能ないのぉ。水面歩行すらまともにできんとはのぉ」

「うるせー! 覗き魔に言われたくないってばよ!」

 

 エロ仙人は俺のことを才能ないと馬鹿にしつつも、やけに熱心に指導してくれた。口は悪いが本当に良い人だってわかった。

 

「何っ、お前、ランのことを知っておるのか?」

「そっちこそランの姉ちゃんのこと知ってるのかってばよ!?」

「ああランはワシの元弟子だ」

「嘘だろ!?」

「本当のことよ」

 

 エロ仙人は昔姉ちゃんの師匠をやってたこともあるらしい。本当に世間ってのは狭いもんだと思った。

 

「頼むエロ仙人! 俺もランの姉ちゃんみたいに鍛えてくれってばよ! 俺も姉ちゃんみたいにすっげー忍びになりてえんだ! 中忍試験にぜってー合格してえんだ!」

「そう熱心に頼まれたら考えてやらんこともないが。でものぉ、ワシも忙しいからのぉ」

「そこをなんとか頼むってばよ!」

 

 あの強くて凄い姉ちゃんの師匠をやってたというならエロ仙人も凄い人に違いない。そう思って、俺は必死に頼み込んだ。

 

 姉ちゃんに教わるという方法もあったが、昔からそうだけど姉ちゃんに聞いても「ここはこうする。ここはああする」とか意味わかんねえことしか言わねえんだ。姉ちゃんは教えるのが超下手で全然参考にならない。

 

 その点、エロ仙人は全然違った。少しの間のことだったけど、エロ仙人は教えるのが上手いと感じた。だからこの人に教われば俺はもっと強くなれると思った。

 

「ならとりあえずセンスを見てやるゆえ、一番自信のある術でも見せてみろ」

「わかったってばよ! ハーレムの術!」

「なっ、ぶほぉーー!?」

 

 一番自信のある術をやってみろと言われたので、おいろけの術の進化版のハーレムの術をやってやった。

 小さい頃から美人の姉ちゃんの裸を見て育ってるから、おいろけの術には一番の自信がある。

 スケベなエロ仙人になら通用するかと思ったが、通用しすぎて気絶しちまったのは予想外だったってばよ。

 

 そういえば三代目の爺ちゃんにハーレムの術を仕掛けた時も気絶してたっけか。「ナルト、お前はワシを暗殺する気か……。火影暗殺は重罪じゃぞ……」とか言ってたっけ。イルカ先生も丸一日気絶してたし、俺のおいろけの術は一部の人にはかなり効くみたいだ。

 

「ご、合格じゃ……。楽園は木の葉にあったか。灯台下暗しとはこのことだのぉ」

「やったってばよ!」

「といっても、ワシは忙しいからずっと木の葉にはおれんぞ。その間だけ見てやる」

「それでもいいってばよ!」

 

 エロ仙人から口寄せの術を習ってその修行をやることになった。

 

「あら自来也先生じゃないですか!」

「おおラン! 相変わらず美人じゃの!」

「ランの姉ちゃん!」

 

 途中からランの姉ちゃんも加わって修行することになった。

 俺はいつまで経っても口寄せの術が成功しなかったんだけど、ランの姉ちゃんは流石で何度か練習していると成功していた。

 

「ランちゃんっていうのねぇ。アンタと私、気が合いそうだわん」

「よろしくねガマ(りき)さん!」

 

 姉ちゃんはガマ力とかいう変な蛙を呼び出していた。

 同じ口寄せの術と言っても、相性によって呼び出される相手が違うみたいだ。俺の場合、ガマ吉とかガマ親分なんだけど、姉ちゃんの場合、そのガマ力とかいう奴だった。

 変わりもん同士、相性がいいってことみたいだな。

 

「やったー! ついに成功したってばよ!」

「やったねナルト君!」

「おお、やはり追い込まれてできるようになるタイプだったか」

 

 口寄せの術はなかなか習得できなかったんだけど、エロ仙人とランの姉ちゃんに崖から突き落とされるという荒療治の末、なんとか会得できた。

 姉ちゃんの使う術は俺じゃできないもんばっかだけど、同じ術が使えるようになって、なんだか嬉しかったな。

 

(この術を使って二次試験を突破してやるってばよ!)

 

 そう思ったんだけど、中忍試験の最中、木の葉崩しが始まったんだ。木の葉崩しはなんとか防げたものの、三代目の爺ちゃんが死んじまった。

 

「うぅ、爺ぃ、何で勝手に死んでるんだこれぇ……」

「木の葉丸君、辛かったね」

「うわああ、ランの姉ちゃぁああん!」

 

 里の皆が哀しみに沈む中、姉ちゃんは気丈だった。姉ちゃんは苦しんでる木の葉丸を支えてやってた。

 

「辛かったね」

「うわぁああ! ランの姉ちゃん!」

 

 木の葉丸だけじゃねえ。苦しそうな顔してる小さな子たち全員の所に行って励ましてやっていた。姉ちゃんは本当に優しい人だ。

 

 三代目の爺ちゃんが死んで、次の火影を決めなきゃなんなくなった。

 それで俺たちは綱手の婆ちゃんのところに向かうことになったんだ。

 

――ボキッ、バキィッ。

 

「ぐわぁあああ!」

「サスケェ! お前ぇ、サスケに何しやがる!」

「おっと、ここから先はいかせませんよぉ。兄弟の感動の対面に水を差してはいけません」

「ぐぅあああ! うぁあああ!」

「お前には憎しみが足りない。俺のことを憎め。憎み続けるがいい。哀れな弟よ」

 

 婆ちゃんの捜索中、サスケがイタチっていう奴にボコボコにされてる現場に遭遇した。

 サスケの兄貴にして復讐相手――うちはイタチは、とんでもないくらい強い忍びだった。その相棒の鮫みたいな奴もかなりの実力者だった。

 

「ちくしょう俺はまだあの男に届かないのか……」

 

 サスケはイタチにボコボコにされて手足を折られて凹んでた。

 

 姉ちゃんはいつもならそんな奴を見たらすぐに飛んで行って優しくしてやるのに、サスケにはそうしなかった。最低限の傷の手当をすると、ほったらかしにしてた。

 俺がどうしてサスケには優しくしてやんねえんだって聞くと、姉ちゃんはニコリと笑いながら言った。

 

「それは君のお仕事でしょ?」

「っ! ああそうだな!」

 

 姉ちゃんは昔に話したことを覚えていたらしい。

 サスケの闇を払えるのは俺しかいない。俺じゃなきゃダメなんだ。

 それでサスケのことをあえてほったらかしにしてたらしい。俺に任せるために。

 

(サスケェ! 俺はお前を絶対一人にはさせねえ!)

 

 姉ちゃんの言葉に促され、俺はすぐにサスケの所に慰めにいった。当然拒絶されたけど、そんなの関係ねえ。表面上は拒絶されても心の奥底では俺の気持ちがちゃんと届いてるって、信じてるからな。

 

「ナルト、サスケのことは俺に任せておけ。担当上忍の俺が責任をもって対処する。お前は自来也様と共に綱手様の捜索を頼む」

「ああ、わかったってばよ!」

 

 怪我人のサスケはカカシ先生に任せて、俺たちは綱手の婆ちゃんの捜索に再度赴くことになった。

 

「火影なんて馬鹿がなるもんだ。なる奴の気が知れないねぇ」

「火影を馬鹿にする奴は許さねえ! ぶっ飛ばす!」

「いいだろう。表に出ろガキ!」

 

 綱手の婆ちゃんの第一印象は最悪だった。大酒飲みでギャンブル狂い。おまけに火影のことを馬鹿にしてた。

 だから喧嘩になって戦うことになった。

 

「ぐはっ!」

「実力もないガキが意気がってんじゃないよ!」

 

 でも火影に推薦されるだけあって、婆ちゃんは滅茶苦茶強かった。俺は手も足も出ないでボコボコにされた。

 でも諦められなくて、必死で食いついて啖呵切ってた。

 

「……訂正しろ。火影を馬鹿にする奴は許さねえ! 火影は俺の夢だ!」

「っ!?」

 

 そしたら婆ちゃんは何故か呆けた表情をしてた。

 

「縄樹……」

 

 綱手の婆ちゃんは、昔のランの姉ちゃんと似たような反応してた。俺が火影になると言うと、誰かの名前をポツリと呼んで呆けてた。

 

「いいだろうナルト。お前のことを認めてやる。ただし」

 

 ボコボコにされながらも踏ん張った甲斐あって、綱手の婆ちゃんは俺のことを認めてくれた。

 ただし条件付きだった。一週間で螺旋丸っていう凄い技を身に着けられたら認めてやるって言ったんだ。

 

 それで俺はエロ仙人と一緒に修行することになった。修行は中々大変だったけど、なんとか螺旋丸を習得することができた。

 

 その後大蛇丸とその弟子カブトと戦うことになって、なんとかあいつらを撃退することができた。

 俺は綱手の婆ちゃんから認めてもらって初代火影の首飾りをもらって、婆ちゃんは五代目火影に就任してくれることになった。

 

「そんなサスケが!?」

「ああ里を抜けたらしい」

 

 綱手の婆ちゃんが五代目になって一件落着かと思ったら、とんでもねえことが起きた。サスケの奴が里抜けしたらしかった。

 

 カカシ先生、サスケのことは全部任せろって言ってたのに酷いってばよ。

 

「ナルト、私の一生のお願い……サスケ君を連れ戻してぇ」

 

 カカシ先生の愚痴を言ってる暇もなく、俺たちはすぐにサスケの後を追うことになった。中忍となったシカマルの指揮の下、ネジやキバたちと一緒にサスケの後を追ったんだ。

 

 サクラちゃんにもお願いされたし、絶対にサスケを連れ戻すつもりだった。

 

「サスケェ! お前の手足ボキボキに折ってでも連れ帰ってやるぞ!」

「できるもんならやってみろ!」

 

 シカマルや皆のおかげで俺はなんとかサスケに追いつくことができた。それで終末の谷ってところで、サスケと戦うことになったんだ。

 

「お前に俺の何がわかる! ずっとあの女と一緒だったお前に俺の孤独などわからない! 孤独を気取って俺に寄り添うふりをしながら、本当はずっと孤独じゃなかったテメエが何を抜かしてやがる!」

「っ!?」

「俺は復讐者だ。俺には憎しみが足りない。もっと深い孤独が必要だ。あの男を殺すためには、木の葉の里だろうが何だって捨ててやる。全ての繋がりを今ここで断ち切る!」

 

 俺はサスケを止められなかった。戦いに負けて気を失って、気づいたらカカシ先生の背中で眠っていた。俺は無力だった。

 

「くそぅ……サスケェ……」

 

 俺はサスケの孤独をわかったふりして全然気づいてやれてなかったんだ。

 俺の言葉も、力も、何もかもがアイツに届かなかった。友達失格だ。

 

「サスケェ……」

 

 悔しくて泣いた。もうずっとこのままサスケを諦めるしかねえのかなって思ったら自然と涙が零れ落ちた。

 アイツが残していった木の葉の額宛を握り締めながら、しばらくずっと泣いてた。

 

「諦めるな! サスケ君のこと好きなんでしょ! ここで諦めたら全部終わりよ!」

 

 サスケを失って落ち込んでたらランの姉ちゃんに励まされて、俺は再びやる気を取り戻した。

 姉ちゃんに励まされると、不思議とやる気が満ちてきた。

 

(サスケェ、俺は絶対にお前を諦めねえぞ!)

 

 諦めるなんて俺らしくねえ。サスケは絶対に連れ戻す。姉ちゃんに励まされて、もう一度その覚悟が出来上がった。

 

 その後、俺はエロ仙人と修行の旅に出ることになった。二年以上にも渡る長期の旅だ。

 

 サスケより強くなるためにもエロ仙人から修行つけてもらわないといけねえ。見違えるほど強くなってから木の葉の里に帰ってやるって思った。

 

「もっと集中しろ! 集中力が足らん!」

「わかってるってばよ!」

 

 エロ仙人との修行は大変だったけど楽しかった。同じ火を囲んで一緒に飯食って話をして、家族みたいに過ごせた。

 

 厳しくも優しいエロ仙人からはまるで父ちゃんみたいな温もりを感じた。

 ランの姉ちゃんからは母ちゃんみたいな温もりをもらったけど、エロ仙人からは父ちゃんみたいな温もりをもらえて嬉しかった。

 

「エロ仙人、ランの姉ちゃんのこと、もっと教えてくれってばよ」

「あんまり他人の過去のことは言いたくないんじゃがのぉ。お前がランに直接聞けばいいではないか」

「そこを何とか頼むってばよ。姉ちゃんってば、あんまり自分のことは話してくれねえんだ。女は秘密がどうたらかんたらだ、とかで」

「それを言うなら『女は秘密を着飾って美しくなる』だのぉ。仕方ないのぉ。まあお主とランは家族みたいなもんらしいし、少しくらいはいいだろう」

 

 ある時、エロ仙人からランの姉ちゃんの昔のことを聞くことが出来た。

 

「そっか。姉ちゃん、そんな悲しい過去を持ってたんだな……」

「そういうことじゃ。ランには言うなよ。誰しも誰にも触れられたくない辛い過去というものが、一つや二つはある」

「わかってるってばよ。俺だってそこまで無神経じゃねえし」

 

 エロ仙人の話を聞いて、姉ちゃんが時折見せる悲しげな笑みの意味がわかった気がした。

 姉ちゃんは楽しそうにしててもたまに凄い悲しそうに見える時があるんだ。ほんの一瞬のことで気のせいに思えるんだけど、その理由がやっとわかった。

 

 姉ちゃんは俺と同じだった。親を早くに亡くして親友を亡くして、ずっと孤独だった。姉ちゃんは俺と同じような辛く悲しい過去を持っていたんだ。

 

 エロ仙人の話を聞いて、姉ちゃんの言葉が俺の心に強く響く理由がわかった気がした。同じ境遇を持った人の話だったから、凄い共感できたんだ。

 

「それで、その長門や小南って人たちの死は確かめられたのか?」

「いや確かめてはおらん。情報を聞いたランはすぐにでも雨隠れに飛んで行こうとしたが、それはワシが止めた」

「なんでだってばよ?」

「危ういと思ったからだ。過呼吸を頻繁に起こすほど憔悴しているランを、雨隠れには行かせられんと思った。あやつらの死を確かめた時、すぐに後を追いかねんと思ったからのぉ。しばらく時をおいた方がいいと判断した。あやつらの代わりと言っては語弊があるかもしれんが、他に大切な仲間が出来た時に再度雨隠れを訪れた方が良い。そうした方が良いと、ワシは判断したんだよ」

「そっか。きっとエロ仙人が正しいと思うってばよ」

 

 エロ仙人の判断はナイス判断だと思った。もし昔の姉ちゃんが友達の後を追って死んだなんてことになってたら最悪だ。

 

 そうなってたら俺の人生もだいぶ変わっていただろう。俺が辛かったあの時に姉ちゃんがいなかったらと考えると、とても恐ろしい気がする。サスケみたいに闇に囚われてたかもしれねえと思った。

 

「姉ちゃんが俺とサスケのことをやたら応援してくれる理由がわかった気がする」

「確かランと小南は仲違いのような別れ方をしてそのままだったと聞いたのぉ。お前とサスケのことを重ねているのかもしれんな」

「ああかもしれねえ」

「……闇に惹かれていく友を助けるか。それは簡単なことではない。ワシにもできんかったことだのぉ」

「エロ仙人も似たような経験あんのか!?」

「ああ。ワシと大蛇丸はかつて同じ釜の飯を食った仲間であり友だった。結局、ワシはあやつを救えんかった」

「っ!?」

 

 姉ちゃんの話を聞く際、エロ仙人の話も聞くことができた。エロ仙人とあの大蛇丸の野郎が友達だったなんて初耳だった。

 前に綱手の婆ちゃんの捜索をした時に、エロ仙人と大蛇丸と婆ちゃんは同じチームだったとは聞いたけど、そこまで親しかったとは知らなかった。

 

「闇に染まり行く友を助ける。簡単なことではない。ワシにもできんかったことだが、ナルト、お前ならできるかもしれんのぉ」

「できるかもじゃねえ。やるんだエロ仙人」

「っ!?」

「俺は絶対にサスケを連れ戻す。完全に闇になんて染まらせねえ。俺が元の道に戻してやるんだ!」

「ふっ、お前を見ているとそうなる気がしてくる。お前は誰よりも凄い忍びとなろう。ワシやランをも超える大きな忍びへとな」

「当たり前だ! 俺ってば火影になるんだからな! 今はまだまだかもしんねーけど、いつかエロ仙人もランの姉ちゃんも超えてやんだ!」

「ハハ、そうだのぉ。だがその前にはまだまだ越えるべきハードルが幾つもあるのぉ。印を結ばぬ幻術返しも上手くできんようでは、まだまだだのぉ」

「ぐっ、明日こそはちゃんとやってみせるってばよ!」

 

 そんな感じで、修行の合間にはエロ仙人と存分に語らいあった。

 エロ仙人との会話は、まだまだガキだった自分を精神的に大きく成長させてくれた。年取ったらエロ仙人みたいな頼りになるオッサンになりてえと素直に思った。

 

 修行の際には、九尾の力が暴走してエロ仙人に大怪我させちまって本当に申し訳ないこともしちまった。

 だけどエロ仙人は怒るどころか笑って許してくれた。そればかりか自分の判断が甘かったとすら言ってくれた。

 エロ仙人は本当に良い人だ。本当の親父みたいに包容力があった。

 

 エロ仙人を二度と傷つけねえ。エロ仙人だけじゃねえ、ランの姉ちゃんも、木の葉のみんなも、絶対に誰も傷つけさせやしねえ。

 

 そんな思いで、俺は二年半にも及ぶ修行に打ち込んだ。自分で言うのもなんだけど、身心共に強くなって木の葉の里に帰ることができた。

 

「ナルト君! おかえり!」

「へへ、ただいまだってばよ姉ちゃん!」

 

 久しぶりに会ったランの姉ちゃんだけど、姉ちゃんは相変わらず美人だった。

 綱手の婆ちゃんの若作りの術でも会得したのか、まったく見た目が変わってなくて驚いた。むしろもっと若々しくなっててビビったってばよ。

 

「テウチさん、今日は私の奢りってことで二人にいっぱい食べさせてあげてね」

「いや待ていラン。女に、ましてや弟子に奢らせたとあっては、この三忍の自来也様の名折れよ。ここは当然ワシが奢るぞ」

「何言ってんだい二人とも。ナルトが久しぶりに里に帰ってきたんだ。今日のお代は全部タダに決まってるだろ。お金タダでいいから、好きに注文してくれ」

「テウチさん、素敵!」

「おっちゃん、相変わらず太っ腹だってばよ!」

「すまんのぉ店主」

「ハハ、気にしねえでくだせえ自来也様。ナルトにもランちゃんにも昔から世話になってるからな」

 

 久しぶりに姉ちゃんたちに会えて何だかほっとした。姉ちゃんたちと一緒に一楽で飯食ってると、自分の帰るべき場所に帰ってこれたんだって思えて本当に嬉しかった。

 

「我愛羅がさらわれた!?」

「ああ。砂隠れから応援要請がきた。すぐに向かうぞ」

 

 里に帰って少しは姉ちゃんや里のみんなとゆっくりできるかと思ったけど、そんな暇はなかった。我愛羅がさらわれたって話を聞いて、俺たちはすぐに救出に向かうことになったんだ。

 

 そこで暁の連中と戦うことになったんだけど、チヨ婆のおかげで我愛羅をなんとか救い出すことができた。

 

 チヨ婆は死んじまったんだけど、その死に顔は安らかだった。我愛羅や他の砂の人たちに自分の志を託して安心して逝ったらしかった。

 

「カカシさんに代わって君たちの隊長になるヤマトだ。よろしく」

 

 我愛羅救出任務でカカシ先生が写輪眼の使いすぎでぶっ倒れてしまい、俺たちの班には新しくヤマトって人が隊長として配属されることになった。

 

「君、チ○ポついてるんですか?」

「なんだと!」

 

 ヤマト隊長に加え、サスケの代わりってことでサイって奴が配属されることになったんだけど、このサイって奴がいけ好かない奴だった。

 みんなサスケに似てるとか言うんだけど、全然似てねえし。サスケの方がカッコイイ――いや全然マシだ。

 

 第七班の仲間はサスケだ。サイなんて認められるわけねえ。そう思ってたんだけど、サイも根は悪い奴じゃなかった。一緒に過ごしている内にそう思えるようになった。

 

 新しい第七班で赴いた天地橋。そこで大蛇丸と交戦してその後、大蛇丸のアジトに潜入することになった。

 

「あの時、なんで俺を殺さなかったんだ! サスケェ!」

「イタチのやり方に従うのが気に食わなかっただけだ。それに殺すほどの価値もないと思った」

「なんだと、サスケェ!」

 

 大蛇丸のアジトでサスケと戦うことになったんだけど、そこでも俺は負けてしまった。あれだけ修行して強くなったのに、サスケはさらにその上をいっていた。

 

「僕も力を貸すよ。三人でサスケ君を取り戻せるように頑張ろうよ。僕も第七班の仲間だから」

 

 サスケを連れ戻せなくて項垂れて泣いてる俺を、サイは叱咤激励してくれた。サイは良い奴だった。

 新しい第七班の皆でサスケを連れ戻してやる。そう思った。

 

 自分の力不足を知り、俺は里に帰ってからさらなる修行に励むことにした。ヤマト隊長とカカシ先生の下で、螺旋丸に性質変化を加えた大技の修行を行うことになった。

 修行は今までにないくらい厳しいものとなった。

 

「ナルト君、今日もサクラちゃんと一緒に差し入れに来たよ! ついでにカカシ君とヤマト君にも!」

「感謝しなさいよねナルト!」

「姉ちゃんとサクラちゃん、ありがとうだってばよ!」

「俺たちはナルトのついでねぇ」

「それでも十分に有難い話じゃないですか、カカシ先輩」

 

 修行の時はランの姉ちゃんとサクラちゃんが毎日のように差し入れを持ってきてくれて嬉しかった。

 ランの姉ちゃんの差し入れは美味しい食いもんでいいんだけど、サクラちゃんの差し入れの兵糧丸はゲロマズで最悪だったってばよ。

 でも不味い代わりに効果は抜群で、おかげで傷やチャクラの回復は早く済んだけどな。

 

「猿飛アスマさんが亡くなられたそうです……」

 

 新術の修行に励んでる時、ヤマト隊長が悲しい知らせを運んできた。アスマ先生が暁の奴らと戦って殺されてしまったらしい。

 その一方を聞いた姉ちゃんはすぐに飛び出していった。

 

「姉ちゃん! どこ行くんだってばよ!」

「おそらくシカマル君たちの所だろう。あの人はいつもそうだ。里の子供やお年寄り、苦しんでいる人、弱い人にいつも寄り添ってる。本当に優しい人だ。良い姉さんを持ったなナルト」

 

 カカシ先生が目を細めながらそんなことを言った。

 

 どうやら姉ちゃんはすぐにシカマルたちの所に向かったらしかった。悲しい奴のすぐ傍に寄り添ってやる。姉ちゃんは本当に優しくて良い姉ちゃんだ。

 

「アスマの葬儀の日程等はランが追って知らせてくれるだろう。俺たちはやるべきことをやるぞナルト」

「ああ、わかってるってばよ! もう誰も死なせねえ! 俺が強くなって里の皆を守ってやる!」

 

 シカマルたちのフォローは姉ちゃんに任せて、俺は修行に励むことにした。

 暁の奴らから里を守る。アスマ先生みたいに死なせはしない。そう思って、今まで以上に真剣に修行に取り組んだ。

 苦労の甲斐あって新しい術――風遁・螺旋手裏剣を完成させることができた。

 

「風遁・螺旋手裏剣!」

「ぐああああ! やっと金集めのノルマが終わったのにぃいい!」

 

 新しく身に着けた技を使って、角都っていう暁の強敵を倒すことができた。力がついてこれで皆を守れるって自信がついた。一方、課題もあった。

 

「くぅ、痛ぇ……」

 

 新しい術は反動が大きくて大怪我しちまったんだ。細胞がズタズタになるくらいの怪我だ。しばらく入院が必要だった。

 

(姉ちゃん、見舞いに来てくれねえなあ。姉ちゃんが長期間里を離れる任務なんて珍しいってばよ)

 

 入院中、姉ちゃんが見舞いに来てくれなくて寂しかったけど、その内また会えるだろうと思ってた。

 

 姉ちゃんに心配かけねえようにさっさと怪我を治して、すぐにまた修行再開だ。もっと強くなって暁の連中は全部俺がぶっ倒す。木の葉の皆は俺が守る。そう意気込んでいた。

 

「ナルト、ちょっと来い。五代目がお前を呼んでる」

 

 怪我が治ってこれから修行も任務も本格的に再開だ。そんな時、シカマルが声をかけて来たんだ。

 

「何だよシカマル。そんな怖い顔して……何かあったのか?」

「いいから来い。話は五代目が直接話すそうだ。俺からは何も言わねえ」

「何だよぶっきら棒に。わかったってばよ」

 

 シカマルの尋常じゃない様子に酷い胸騒ぎを感じた。シカマルとはそのまま言葉少なに、火影室へと向かうことになった。

 

「――来たか。ナルト」

 

 部屋に入ると、異様な光景が広がってた。

 いつもは火影の部屋だってのにこれで大丈夫なのかって心配になるくらいの、のほほんとした空気が広がってる。

 だけどその時はそんな様子は微塵もなかった。

 

「うぅ……」

「くっ……」

 

 シズネの姉ちゃんが酷い顔して泣いてた。サクラちゃんもだ。その場にいた皆が怖い顔してた。カカシ先生はマスク被っててよくわからなかったけど、いつもと違うってことだけはなんとなくわかった。

 絶対に碌なことじゃねえって、すぐにわかった。わかったけど、気づかねえふりして馬鹿なふりして尋ねてみた。

 

「いったい何だってんだよ綱手の婆ちゃん。急に呼び出したりなんかして?」

「いいかナルト、落ち着いて聞け」

 

 婆ちゃんは泣いてなかったけど、眉間に酷いくらいの皺が寄ってた。眼に力を入れて必死に堪えてるって感じだった。そして婆ちゃんは搾り出すように言った。

 

「自来也が死んだ」

「――え?」

「それから、ランも死んだ」

「――は?」

 

 婆ちゃんの口から理解できねえ言葉が次々に飛び出てきた。心臓が一気にバクバクと動いていく。与えられた情報に対し、脳みそが理解を拒んだ。

 

「綱手の婆ちゃん、何笑えねえ冗談なんか言ってるんだってばよ? ハハ、俺が馬鹿だからって、いい加減にしろよな」

「冗談なんかではない。そんな冗談など言うものか。全ては厳然たる事実だ。ここにいるフカサク様から齎された確かな情報だ」

「ああ。自来也ちゃんは瀕死の傷を負ってワシに遺言を託して死んだ。直接死亡は確認してないが、口寄せ契約が切れたから死んだのはまず間違いないだろう。それはランちゃんも同じじゃ。ランちゃんは暁の女幹部と戦って死んだと思われる。残念だが事実じゃよ」

 

 フカサクの爺ちゃんの話を聞いて頭が真っ白になって、その後はあんまり覚えてねえ。

 二人にそんな危険な任務を命じやがった綱手の婆ちゃんに喚き散らした後、サクラちゃんたちとも言い合いになって、そのまま火影室を飛び出していた。それでふらふらと里のあっちこっちを彷徨い、人気のないところで涙が枯れ果てるほど泣いた。

 気がつけば日が暮れてた。

 

(俺は守れなかった。一番大事なもん、守れなかったんだ……)

 

 初めて人の温もりを教えてくれたランの姉ちゃん。それとエロ仙人。一番守りたかった大事な人たち。母ちゃんと父ちゃんみたいな人。

 

 その二人を、俺は守ることができなかったんだ。

 

(何が火影になるだよ、ちくしょう……。大事な人すら守れねえのによぉ……くそくそ)

 

 悔やんでも悔やんでも悔やみきれねえ。真の絶望と孤独というものを思い知った。目の前で沈んでいく夕日のように、心が徐々に闇に侵食されていく気がした。

 

(サスケ……そうかお前も)

 

 色んな記憶と感情がぐるぐると巡る中、きっとサスケも大事な人を亡くした時にこんな気持ちだったのかなって、ふとそんなことを思ったんだ。

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