咆哮後俺は周囲を見渡す
現在の状況はかなりひどいものと言っていいだろう。実際戦えそうな人は数人しかいない
……やるしかないか
俺は剣を振りかざしトラウムソルジャーへ突っ込みはせずとりあえず、安全地帯の生成をするために前線を作ろうとする
理由はなるべく一方に戦力を偏らせないのと囲まれないようにするためだ
俺はともかくとくにクラスメイトは錯乱状態
そして何よりも
「……」
後ろで恐怖で腰が抜け震えている桐ヶ谷さんが見えたからだ
初めて訪れる死の恐怖に声も出せないのか座り込み戦闘ができるどころか、恐慌状態から抜け出せる見込みもない
悪態をつきながら目の前の敵を斬り伏せていく
恐らく、俺は時間をかければベヒモスもろとも全滅させることは可能だ
でもどれだけの犠牲者が出るかは分からない
だから動けないのだ。全滅させようにもそれで人が桐ヶ谷さん死んだら元も子もない
「……クッソ!」
特にソードスキル系統が使えないのが特に痛い。ソードスキルは発動した直後に硬直が生まれ後ろに通してしまう
俺が得意なのは攻めであり、防御技術においては攻略組でも下位まで落ちる
GGO以来の防御戦に悪戦苦闘するなか俺は前線保持しかできなかった
俺の周辺には何十のトラウムソルジャーが命を狙ってくる
誰も彼もがパニックになりながら滅茶苦茶に武器や魔法を振り回している。このままでは、いずれ死者が出る可能性が高い。騎士アランが必死に纏めようとしているが上手くいっていない。そうしている間にも魔法陣から続々と増援が送られてくる
悪態を付く暇もなく俺はただ目の前の敵を殺していく
さすがに全てをさばくことはできないので致命傷になるものだけさばいてダメージが少しずつ入っていくがそこは戦闘時回復で回復できるが精神的疲労は大きい
結果的にいくらチートがあろうと守ることに関しては俺のチートが役に立たないことなんてわかってはいたつもりだった
わかっているつもりだった。でも分かってはいなかった
どれだけあろうが俺一人じゃ限界はあるんだ
片手剣を振るうがそれでも防戦一方でよくならない
心が折れかかる。でも後ろを見ると嫌でも視線に入る
……やるしかない
分かっている。もう理屈だけじゃない
最初はずっと一人だった少女を同情して俺は無理を言って桐ヶ谷さんの学校に入った
一人で寂しそうで、疎外感を覚えていた少女を一人だけにしたくなかった
キリトさんに恩を返したかったこともあるのだが
俺がALOでSAOのアバターを使ってないこともこれが原因だ
同学年で、そして同じ剣道部に入った俺を疑問に思っただろう
リアルとゲームをあまり変えないようになったのもこれが原因だ
SAOは何かと必死だった。冗談なんていう暇があれば訓練していたし、よくキリトさんも不安そうにしていた
だから楽しみたかったのだ
俺にとってリアルは地獄なのだから
……でも、本当にリーファと、桐ヶ谷さんといられるときは楽しかった
気がきくし、何かと理由をつけて弁当を作ってきてくれたこともあった
ゲームでもリアルでも、恐らく一番長い時を過ごしたのだ
だから絶対にここだけは通させない
これまでも、これからもずっと一緒にいて欲しい相棒を
守るのだ。この少女が愛する人の元に戻るまで
力が溢れてくる。多分この想いは叶うことはないとしてもこの命を使ってでも守ってみせる
だから一匹たりとも通させはしない
何体殺しただろうか。百を殺したあたりから数を数えるのをやめたのだが
既に息がバラバラになる
しかし嫌というほど魔物は湧き、俺の目の前には既に次の敵が迫ってきていた
汗をぬぐい次の敵を捉えようとすると
すると隣から素早く走り、切り捨てる影が見える
「…ごめんなさい待たせたわね」
「……他のところは大丈夫なのかよ。八重樫」
「えぇ。…直葉を守っていたのね。さっきからそっちに敵が集まっているのが見えたから救援に来たのだけど…必要なかったかしら」
「いや。……八重樫、撃ち漏らしだけ頼めるか?こっからは俺が押し切るから桐ヶ谷さんを頼みたい」
「……押し切る?」
「あぁ……ちょっとストレス溜まっていたからな、発散させてもらうぞ。……血を吸え」
すると剣から手のひらに軽く棘みたいなものが絡むと同時にちくっと痛みが走る
俺はニヤリと笑うとガイコツ野郎に突っ込むと多少のダメージを受けつつもエフェクトを発動させる
前方宙返りから逆手に持った剣を突き下ろすと赤黒い衝撃波が生まれる
全方位重範囲ソードスキルライトニング・フォール
一撃で倒れていく中で俺は小さな硬直が生まれしばらく動けなくなるがその周辺には死体の山が転がっている
前は空いたそれなら全力で押し切るだけだ
攻めに入ると後ろを気にせず俺は突っ込み暴れ続ける。前線もろとも吹き飛ばし。少々撃ち漏らしても八重樫が打ち取ってくれるだろう
「ほい。到着」
そして数分も立たずに俺は階段への道を作り出していた
「……あなた、何その威力」
「ん?これでも攻略組にいたからな。これくらいは普通にできるぞ」
「普通できないわよ」
突っ込まれても関係ない。俺は苦笑する
「道はできたからあとは包囲殲滅って言いたいけど俺がやったほうが早そうだし、暴れてもいいか?」
「もう驚かないけど……なるべく後衛職がたくさんいるところからしてくれないかしら」
「あぁ。さってと……」
散々桐ヶ谷さんを怖がらせたんだ
一匹だって残ると思うなよ
それから先はただ切って敵を殲滅するだけの簡単な仕事だ
どうやら前線も復活したらしく綺麗に前線を押し上げている
既に挟撃を取っているのですぐに包囲網を突破し安全地帯への道を確保する
「皆、待って!南雲くんを助けなきゃ!南雲くんがたった一人であの怪物を抑えてるの!」
南雲?ふとベヒモスの方を見ると一人の男子生徒が抑えているのを見える
土でベヒモスを固定している姿に俺は驚いてしまう
そういえば南雲は生産職の錬成師だった少年だ。でも足止めは完璧にできている
倒さなくてもなんとかなりそうだし、俺も桐ヶ谷さんの元に向かうか
俺は戦線離脱し桐ヶ谷さんの元に向かう
「大丈夫か?」
「えっ?う、うん」
「そっか。……立てるか?」
俺は軽く手を差し出す。するとコクリと頷き俺の手を取ると俺は軽く引き上げる
すると桐ヶ谷さんは立ち上がり少しだけ目を伏せると俺は軽く苦笑してしまう
「気にすんなよ。死にかけたんだ。桐ヶ谷さんが悪いわけじゃない」
「……でも、私何も。それに三上くん、私がいなかったら……」
「ん?まず桐ヶ谷さんがいなければここまで必死に戦ってねぇよ」
俺は小さく苦笑いしてしまう
「俺はこの世界なんてどうでもいいんだよ。ただ、大切な人を守りたいだけなんだ。それだけ。俺には世界を救う力はないからな。目の前にある大事な人を守るために戦っているだけ。世界なんて大きなものはいらない。俺は友達がいてくれたらそれだけでいいんだから」
そして軽く頭を叩く。桐ヶ谷さんはポカーンとしていたが
「……ほら、帰ろうぜ。まずはそれからだ、南雲が来る前に」
と俺がふと南雲の方向を見た時だった
無数に飛び交う魔法の中で、一つの火球がクイッと軌道を僅かに曲げた
「……っ南雲!!避けろ!!!」
俺は大声で叫ぶ!!すると南雲も気づいていたのか瞬時に避けようとする
咄嗟に踏ん張り、止まろうと地を滑る南雲の眼前に、その火球は突き刺さった。着弾の衝撃波をモロに浴び、来た道を引き返すように吹き飛ぶ
……くそっ行くしかないか
「八重樫、リーファを頼む!!」
「えっ」
俺はベヒモスに向かって走っていく。このままじゃ何人かに確実にトラウマが残ることになる
地を蹴り全速力で走ると俺はベヒモスに接近する
ベヒモスは熱を持っているだろう赤色に光った角を南雲に突進してくる
シンプルに光が集まり俺もソードスキルを発動させ、シンプルなホリゾンタルでベヒモスのツノとぶつかる
勢いを乗せた攻撃を弾くと小さな硬直が生まれるがベヒモスもはじき返された衝撃で動けなくなる
「南雲、お前階段まで逃げ切れるか?」
「……ちょっと厳しいかな?」
恐らく軽く脳にショックがあり返事もするのも厳しいだろう
「……オッケ。それなら俺がこいつを殺すか。血を吸え。剣よ」
最初からフルで行く
感じる二回目のエクストラスキルの反応に俺は軽く血を剣に奪われているのを感じる
そして突進を仕掛けてくるベヒモスを冷静に剣で弾くと横からの攻撃を入れていく
多少のダメージが入るのは仕方ない
それに元々スキルでHPも減っていたほうが俺には都合がいい
南雲が地道に減らしていたのかHPバーは半分以下になっている
八重樫も使わせてもらうぞ
赤色のエフェクトが俺を包むと同時に俺はラスト奥義を放つ
HP全乗せの俺が出せる最大奥義の技
八重樫が時々個別で振っていた剣技に加え斜め上に四度切り上げるとそして後方宙返りでもう一撃そして最後一撃をベヒモスに突き刺す
上方単体ソードスキル
スターライジング
するとソードスキルを終えた瞬間俺はかなりの脱力感とめまいに覆われる
だけどしっかりと確認する
ベヒモスのHPゲージがなくなっていることを
俺は立ち上がることも難しく前方に倒れてしまうと異変が起こった
ベヒモスが前方に倒れたところを中心に物凄い勢いで亀裂が走る。メキメキと橋が悲鳴を上げる
あっこれ死んだ
俺は動けない体をふらふらとさまよっている
からだが重く動けそうにない
……まぁ自分の守りたいものは守れたからいいや
これで南雲が逃げ切れたらいい。やっと俺もあの人たちのところに行けるのだから
壊れていく橋が俺に接近してくる
俺は目を閉じ流れるときに流れを任せようとした時
「錬成」
と小さな声が聞こえる。そして声が聞こえる
「ありがとう。ボクのことを助けてくれて」
その声を聞こえた途端バラバラと音が聞こえてくる
俺は意識を保つのが難しくなり、そのまま暗闇に落ちていった
畑山先生について
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主人公のサブヒロイン
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ハジメのハーレム