直葉side
「三上くん!!」
私は静止を振り払って崩壊する直前の橋先に向かう
既にボロボロな体を持ち上げると顔が青く、脈が動きが遅くなっている
HPバーを見るとレッドゾーンギリギリにまで体力が減っている
急いで回復魔法を唱えても回復速度が明らかに遅い
「何で!」
「直葉、おそらく彼は貧血状態になってるのよ」
「えっ?」
「三上くんとすれ違った時に血を吸えって…三上くんは多分HPと引き換えに自分のステータスを上げるスキルか、剣を使ってたんじゃないかしら。この世界にはHPがないから血を代償にして南雲くんを救おうとしたんじゃないかしら」
八重樫さんが私の近くに来ている。その後ろには白崎さんも付いてきていた
「それじゃあ、三上くんは?」
「血液生成剤を飲ませてあげて。いつ起きるかわからないけど…ショックで多分寝込んでいるだけだと思うわ。昨日少しだけ話したのだけど…三上くんはSAOでパーティーメンバーを失ったらしいから同じ状況に陥ってショックを受けているのよ」
八重樫さんがどうして知ってるの?と聞きたかったが、今は三上くんに血液生成剤を口に入れる
だけど起きる気配はしないで意識も失ったままだ
「とりあえず上層に上がりましょう。……このままだったら崩壊するわ。香織も、直葉も…ショックを受けているのは分かるけど…でも私たちは何もできなかったのだから」
「…うん」
「…」
私は頷く。そういえば私は三上くんのことを知らないことの方が多い
キングくんはお兄ちゃんと仲が良くて、少し怖いし、意地悪で変態だけど、心配症で、ムードメイカーで、面倒見がよくて、頼りになって
嫌なところも多いけどそれでもアスナさんと一緒にいたときからずっとパートナーだと思っていた
でも、リアルの三上くんは?
家族が何人いるのか?何が好きなのか?休日や配信がないときは何をしているのか?
私は何も知らない
知ってるとしてもリアルでKINGとして活動している三上くんだ
三上くんを背負うと小さいながらずっしりとした重さが伝わってくる
泣きそうになるがそれでも今は地上に戻るための足を進み始めた
春馬side
身体が重い
俺は暗闇から目が覚めるとすーすーと耳元で声がする
「……」
起きあがろうとするが何かに身動きが防がれている
「……ん」
焦点が合わず、俺は軽くじっと今の状況について確認する
すると俺の目の前には俺の右手を枕代わりとして熟睡している桐ヶ谷さんの姿がいた
「……」
そういやオルクスの大迷宮に演習に行った時、クラスメイトがトラップにハマって
「……」
そっか。また守れなかったのか。しかもまた庇われて奈落に落ちたのだ
……覚悟をしてたんだけどなぁ
全員を救えないってことも
俺は小さくため息を吐く。塞がってない方の手で撫でる。体温が伝わり少しだけぬくもりを感じる
俺のエクストラスキル復讐剣
自身の体力と同じ追加ダメージを与えるってものであり、俺がキリトさんと分かれた時に手に入れたエクストラスキルである
とりあえず、このままじゃ風邪ひくし布団を被せようか
するとコンコンとノックの音が聞こえる
「スグ。キングは起きたかしら?」
「……えっ?」
すると聞こえるはずのない声が聞こえてくる
何でここに?と俺は反応が出来ずにただ呆然としてしまう
「スグ入るわよ」
「……何でここに?」
俺は呆然とその姿を見て呆気に取られる
別の学校の制服を着たショートカットのメガネをかけた少女は俺の方を見ると少しだけ困ったようにしている
「何でシノンが?」
「……久しぶりね。キング。こんなところで会いたくなかったけど…」
「……こっちのセリフだよ。……菊岡さんまた何かしたのか?」
俺は少しだけ地球にいる食えない男を思い出す
この少女は朝田詩乃。俺がやっているゲームGGOでシノンというプレイヤーで入っていて俺とコンビを組んで様々な大会を食い荒らしている
キンシノって名前で同人誌を書かれるほど有名で何かとそれを見つけては俺を発砲してくるのだ
そして一番この世界に来てほしくなかった一人でもある
その言葉に呆れるようにしているシノン
「……やっぱりあの人と交流があったの?」
「あいにくお得意様なもんで。結構バイトの報酬もいいしな」
「……はぁ…その答えはNOよ。あの人は全く関係ない。ただ、……気づいたら私はこの服装で王宮にいたのよ。私と後もう一人、同じ地球から呼び出されてる」
「……もう一人?」
「えぇ。でも、地球にいた時は病気にかかっていたらしいんだけど……どうやらこっちでは回復魔法があるらしいから先に治療してから合流ってことになっているらしいわ?その人曰く勇者パーティーに役立たずが二人いるからって」
「まぁ、俺と……南雲のことだろうな」
「あなたが?冗談言っているのかしら」
「冗談も何も本当だよ。俺魔法使えないし、この世界では魔法を使えない人間は人間扱いされてないんだよ」
実際そうだ。それに俺は教会と対立しているしな
「それで?もう一人は?」
「…奈落に落ちた」
「えっ?」
「……救援に行ったけど間に合わなかったというよりも助けられたかな。元々クラスメイトの一人がトラップにかかって」
と事の顛末を話し始める。しばらく話し続けると暗い顔をする
「そう。……それでこれからは?」
「リーファの回復を見ることかな?ここでリタイヤってこともあるけど……正直リーファは教会から神聖視させているだけあって王宮から少し離したい。これからリタイヤするクラスメイトもいるだろうしメンタルケアが優先になると思う。リーファ結構傷つけたぽいし」
「あなた少しは自分のことを考えて行動しなさいよ。 HPがレッドになっていたらしいわ。リーファも私も心配するのだから」
「善処するけど、多分できないだろうな。体が勝手に動いてしまうから」
「…はぁ、ここまでくると病気ね」
「俺もそう思うよ」
苦笑してしまう。実際俺は体が動いてしまうのは事実
今回も体が勝手に動いてしまったのだ。代償も何も気にせず
「でも、私もリーファもあなたが傷つくこと悲しむことだけは覚えておいて」
「了解」
俺は小さく笑顔を作る
今度いつ危機に陥るのかよく分からないけど、ただその心だけでも嬉しかった
畑山先生について
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主人公のサブヒロイン
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ハジメのハーレム