剣は魔法より強し   作:孤独なバカ

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心配していた女性たち

「うにゅ」

 

数時間が経ち俺はのんびりと今後のことを考えていると熟睡していた桐ヶ谷さんがようやく起きたらしい

 

「……」

「おはよう桐ヶ谷さん」

「……へ?」

 

すると俺に気づいたらしい桐ヶ谷さんが俺の方を見た後すぐに顔を真っ赤にさせる

 

「あ、あの、わ、わたし」

「……落ち着けよ。看病してくれてたんだろ?」

「……」

 

俺は軽く手を握っているので桐ヶ谷さんは逃げられないようにしてある。テンパると顔を真っ赤にして逃亡するってキリトさんに聞いているのと手を外したくなかったので握られていた手はそのままにしてあったのだ

 

「ありがとうな、看病してくれて」

「…ううん。こっちも助けてくれてありがとう」

「…動けなくなったことは気にするなよ。パニックになったり、動けなくなるのは通常の反応なんだ。だからほんの数人しか動けなかっただろ?つーか死銃事件でもシノンも命を狙われていることを知って動けなくなってたし普通なら死にかけて怖がらない人間はいないんだよ……」

 

そう誰もが恐怖を抱えているのだ。当然俺にだって怖いことがある

 

「…それに詩乃も、やっぱり不安はあるらしい。さっき少し話したけど、気づいたらこの世界に来てたって」

「うん、迷宮で演習訓練している時に神の指令が降りたって」

「……これどうなっているんだ?」

 

俺は少しだけ疑問に思うことがあるのだが…それは言葉に出さなかった

 

キュルル

 

「「……」」

 

俺のお腹の音が鳴る。そういえば起きてから何も食べてないや

 

「…まぁ挨拶ついでに少しなんか食べに行くか。桐ヶ谷さんも何か食べるか?」

「うん。いいけど」

「…んじゃ行くか」

 

俺は立ち上がり同時に桐ヶ谷さんも並ぶ

そして食堂に着くまで繋がれた手はお互いに離すことはなかった

 

 

「……あっ。三上くん」

「ん?八重樫?」

「……よかった。目覚めたのね」

 

ちょうど食事を待っていると訓練をしていたのか汗をかいた八重樫と白崎が食堂に来ている

 

「……悪い。助けられなかった」

「…えっ?」

「南雲仲いい方だっただろ?お前ら」

「わたしはそうでもないわよ。ただ香織は中学生の頃から知ってて」

「……そうなんだ」

「…私南雲くんも守るって約束したの。それでも、私は何も出来なかった」

 

白崎は告げ涙を流す

 

「……何かできると思ってたのか?」

「えっ?」

「南雲は錬成師であって戦闘職じゃないんだろ。根本的に俺も含めて戦闘技能がないやつを戦場に出したこと自体が間違ってたんだ。そもそも俺自身聞いてなかったことも、何故か全員が大迷宮に参加することになっていたのも間違えなんだよ」

「……そうね。いつのまにか流されてはいたけど南雲くんは」

「あぁ。まぁベヒモス戦の時はあいつに助けてもらったようなことだけどな。それでもおかしいだろ?こっち側の人間は非戦闘職であるなら戦争に参加しないのに南雲だけは参加するようになったのか。……全部最初の全員が戦争に参加するって流れが悪いんだよ」

「……元々三上くんは戦争には参加するつもりはないって言っていたわよね?もしかして」

「まぁ、こうなることは予想できたからな。元々俺たちは戦争のきっかけも、何が目的でどうやって対抗していたのか?その報酬も何も聞かされてなかったからな。それに、桐ヶ谷さんには人を殺すって経験をさせたくなかったのもあるんだけど」

 

すると八重樫ははぁとため息を吐く

白崎も少しだけ苦い顔をしている

 

「話を続けるぞ?根本的にどんな戦争なのかを理解してなかった。どんな理由で戦争になったのか説明があったならまだ納得はできる。でもな魔人族の冷酷非情さ、残酷さを強調するように話していたらそりゃ不自然に感じるだろ。それに戦争をしているんだ。別に当たり前のことだし俺たちにもそれが起こる可能性はあるんだよ」

「……頭が痛いわ。確かに私たちは何も知らないことが多いまま戦争をするように流されたってことね」

「そういうこと。だから俺は恐怖を与えていたんだよ。まぁ多少は効果はあったらしいけど……全て無下にされたけどな」

 

それも最悪の方向に話は進んだ。人を救うばかりで考えていない勇者は自分の身近にいる人たちを、本来の目的を忘れているのだ

まぁ今頃言ったところで後の祭りなのだが

 

「だから誰もが責任を感じる必要があるんだよ。戦争を軽視していた誰もが南雲を奈落に落とした。南雲を落としたのは俺たちの責任ってことを」

「……えぇ」

「まぁその話は置いとくぞ。これ以上誰かを責めても南雲が落ちた事実は変わんないからな」

 

実際その事実は変わらない。俺たちは取り返しのつかないことをしたのは変わらないのだ

 

「…貴方はどうするの?」

「ん〜俺は詩乃と桐ヶ谷さんに合わせようかな?これと言ってやりたいことはないしなぁ。正直なところ俺は八重樫も含めてあまり戦ってほしくないんだよ。まぁ訓練に潜ってたから迷宮に潜るつもりだろうけど」

「…えぇ」

「……まぁ。俺はともかく桐ヶ谷さんは正直限界だろうし俺は少しだけ戦線を離れた方がいいだろ。観光とかしているさ」

「観光って貴方」

「観光もバカに出来ないんだよ。この世界の文化、歴史的背景が見えてくるからな。それに詩乃がこの世界に入った以上は俺は少し真面目に地球への帰還を考えることにしようかな。元々戦争に参加するのを決めたのは俺たちだ。でもその戦争に巻き込むことを考えるとなるべく詩乃が人を殺さないようにしないといけない」

「…そういえば朝田さんと知り合いなのよね?」

「あぁ。俺がGGOでコンビを組んでる少女だよ。大会を優勝するほどの実力で、天職はやっぱりというか狙撃手だったよ」

 

GGOはガンゲイルオンラインの略で日本で唯一プロがいるゲームで俺のメインゲームである

その大会で俺はアメリカサーバーと同時開催されたゲームで第一回BoB優勝を経験し、第二回BoBをシノンと俺と同時優勝。そして団体戦をチームを組んで優勝した実力を持っている

ついでに俺にはスポンサーもついていたが学生と聞いてかなり驚かれたが

 

「……あなたって本当にとんでもない人と友達なのね」

「八重樫さん。とんでもないのは三上くんだから」

「そうなの?」

「その話はいいだろ?まぁ桐ヶ谷さんの傷が癒えるまでは一緒にいようかなって。多分あんまり前線に行ってほしくなさそうだし、少し王都に遊びに行こうかなって」

「それって直葉が傷が癒えたら……あなたはまだ戦うつもりなの?あんな目にあったのに?」

 

八重樫は怯えたようにしている。当たり前だ。俺は一度死にかけている。HPがレッドゾーンになったことも、一週間も気絶してたこともある

それでも俺は逃げるわけにはいかない

 

「八重樫が前線で戦う限りは付き合うさ」

「私?」

「現状お前を理由以外に俺が戦うわけないだろ。まぁ完全に守ることはできないしその

余裕はないけどな。強くもないかもしれないけどそれでも誰かに頼りたいんだろ?単純に心配ってこともあるしな」

「雫ちゃんが?」

「……心配だよ。この世界に入ってからも弱い八重樫を俺は見た事がない。嫌なことを愚痴を吐くこともない。……人は絶対に弱いところがあるはずなのにな」

「……私も見たことないかも」

 

一番仲のいい白崎が言うのであればずっと隠してきたんだろうな

 

「だから危険なんだよ。迷宮の時だって休憩時間中だから話に来てもいいはずなのに八重樫羨ましそうな顔と不機嫌な顔でこっち見てたけど結局話かけなかったしな」

「……」

 

すると八重樫は顔を赤くする。何か隠し事が見つかった子供のような顔をしている

 

「…俺が言うのもおかしい話だけど八重樫ってもう少し我儘になってもいい気がする。俺が見てないところでストレス発散させてるんならいいけど」

「…三上くんは?」

「ん?」

「三上くんはどうなの?怖くないの?」

 

八重樫は不安そうな顔をしている。怖いか

 

「……俺はSAOでよくも悪くもなれたから。フィールドにでて怖いって感情は殆どないかな。……でもあの時も言っただろ。俺は大切な人を失うことが怖い。正直こうやって話すだけでも少しだけホッとするんだよ。まだ生きてるって」

「……」

「俺だけ生きてても意味ないんだよ。そこに桐ヶ谷さんや詩乃、八重樫がいなければ俺は意味がない。多分皆とは違って帰ることやこの世界の事を救うより、生きて帰ることに力を入れてたからな」

「……私も?」

「八重樫もだよ」

 

あの夜中に遠回しながらSOSを出していたと俺は判断している

遠回りながらあの時だけは本当に羨ましそうな顔をしていたし、オルクスの大迷宮では嫉妬もしていた

それだけ八重樫自身が背負ってきたものは、形は違えどとても大きなものだったのだろう

 

「強いかどうかはわからないけど、助けるくらいならできるだろ。それに八重樫も少しだけ我儘を覚えろ。泣きたい時は泣けよ。人前でも、甘えることが出来るのが女の子の特権だろう」

「…そうなの?」

「桐ヶ谷さんにも言えることだけど、男って女性にカッコつけたがるもんなんだよ。極端に強さに憧れて、女性に凄いってカッコいいって言われたいだけに生まれてきたみたいなところがある。だから好きな人の前では強くなるとか言うだろ?男子は単純なんだよ。大事な人の前では強くなる。女子も同じだよ。好きな人や大事な人の為なら頑張れるんだ。オシャレや料理など努力してその男にアピールする。人間って単純なんだよ。好きな人や親友、友達の前なら普段よりも強くなれるし、努力できるんだ」

 

少しだけ苦笑してると全員がきょとんとしてる。まぁわかりづらいか

 

「まぁまとめると、俺は八重樫みたいに可愛い女の子から頼られたいんだよ。それは誰でも同じ。白崎も頼ってもらいたいって思っていると思うぞ。頼られるのが迷惑だなんて思うはずがない。友達や恋人に頼られたら嬉しいと思うから誰でもいいから頼れってことだよ。反対に頼ってもらえなかったらどうして頼ってもらえないんだろうって不安に思うときだってあるんだ」

「…そうなの?」

「言い方はひどかったと思うけど、大体友達の隠し事なんて分かるだろ?八重樫も白崎のことを理解しているように白崎も八重樫のことを理解しているんだよ」

 

白崎は少しだけ苦笑している。多分だけど同じことを思っていたのだろう

時々だけど八重樫から頼ってもらえなくて寂しそうにしてる時だってあるしな

 

「桐ヶ谷さんも同じだよ。まぁまだ八重樫みたいに初手謝罪じゃないだけマシだけど、迷惑かけただなんて俺に関しては思うなよ。もう一年以上ALOでパートナー組んでいるんだ。気を使わないように振るまっているほうが気を使うことになるから」

「…そっか。じゃあ三上くんって何でシノンさんのことを詩乃って呼んでるの?」

「……最初に聞きたいのはそれかよ」

 

俺は少しだけため息を吐く

もうちょっとSAOのこととか聞きづらい話をされると思っていたのでどう反応すればいいのか分からないのだ

 

「呼びやすいから。あっちもハルって呼んでくるから別にいいかなって」

「…そうなんだ。それじゃあ私も名前で呼んでいい?」

「別にいい。それなら俺もスグって呼んでいいか?和人先輩も桐ヶ谷だから時々使いづらくて」

「それだったら先に言ってくれたらよかったのに」

「いや。スグって和人先輩くらいしか呼ぶ人いないからな。スグって和人先輩に呼んでもらうための特別な名前だと思ってたし、何か同級生で噂されたらスグが嫌がるかなって」

 

こっちだって気を使うんだって。ふざける分にはいいけど応援してたんだからな

 

「噂はされてたと思うけど…私もいいかしら」

「別にいいけど……天之河がいる分どっちにしろ面倒だろうから」

「雫」

「へ?」

「雫って呼んでくれないかしら?……もしかしたらやっかみは受けるかもしれないけど」

 

遠慮がちにいう八重樫に俺は少しだけ苦笑してしまう

本当に甘えられてないんだなって思ってしまう

 

「了解。雫」

「ありがとう。春馬」

 

すると少し嬉しそうに頰を赤く染める雫。少し恥ずかしいのか照れているらしい

 

「……てかとりあえず飯食おうぜ。さすがに腹減った」

「一週間ぶりの食事だからスープとパンだけだけどね」

「それでもご馳走だよ。めちゃくちゃお腹減ってたし」

「そうだね。私も何かもらおうかしら。香織もお願いしたいことがあるんでしょ?」

「…うん。あのね。三上くん……春馬くんは南雲くんが生きていると思う?」

 

畑山先生について

  • 主人公のサブヒロイン
  • ハジメのハーレム

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