四葉の影騎士と呼ばれたい男   作:DEAK

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今回は和人VS深雪という本来では有り得ない対決が描かれますよ。

あとサブタイが微妙にネタバレになるのをご了承ください。


記憶喪失した主人公かよォォォォ!?

「さて、和人?あなたはなかなか魔法の素質があるようですけど、己の力量を知る事も大事なことです」

 

「なるほど、ごもっともです」

 

というわけで、始まってしまった深雪と和人の魔法対決だが、まぁ模擬戦をやるわけでもなく軽いゲーム感覚なので九校戦にも影響がないからいいかと達也は静観している事にした。

 

「ほのかはどっちが勝つと思う?」

 

「え~と、流石に深雪じゃない?和人君、まだまだ魔法を知って間がないんだし」

 

「深雪もなんか知んないけど気合い入ってるしね」

 

「やっぱ、兄貴に言われた一言が聞いてんじゃねぇの?」

 

真面目にどちらが勝つか談義しているほのかと雫はいいとして、にやにやと意地悪い笑みを浮かべているレオとエリカには一度話し合いの必要があるなと思うが、かねがね達也の予想も周りと同じだ。

 

 

確かに和人の魔法の才能は優れているが深雪にも才能があり更に研鑽の差がある。流石に深雪の圧勝だろうと思っているが、それでも元が和人である以上予想がつかないのも事実だ。

 

(そういえば、懇親会でもこんな事があったな)

 

あの時は物理的ファイトだったが、深雪の圧勝だった。今回もそうなるだろうと達也は向かい合う和人と深雪に目を向けた。

 

「いいですか?まずは状況に応じて使用魔法を切り替える。これは魔法師に置いて初歩中の初歩です」

 

そこでは和人相手に深雪が熱弁をふるっていた。和人も物珍しいのかいちいち頷くので話しやすいのだろう。今の所特に間違いはないので達也も黙って聞いていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「という事で今から私とジェンガをして貰います」

 

「いやそれはおかしい」

 

確かにゲームとは言ったけども、と達也は早速おかしな方向に転がり始めた雰囲気に危機感を募らせる。

 

「しかし、手を使ってはいけません」

 

「つまり、魔法を使えと?」

 

そうです。と深雪が満足げに頷く。

 

「しかもそれだけではありませんよ?」

 

と深雪が指さした先には

 

 

 

 

(なんで私がこんな事を……)

 

大量のバレーボールを脇に控えさせた水波の姿があった。

 

 

「ゲーム開始と同時に水波ちゃんがドッジボールを仕掛けてきます、更に!」

 

ここで深雪が水波がいる反対側、つまり達也達がいる方を指さす。

そこにはテレビがあった。小型なのでゲーム観戦の邪魔にはならない。

 

「九校戦ライブで撮った叔母、ゲフン、四葉真夜さんの映像が流れ」

 

とここで深雪がテレビのスイッチを入れると、言葉の通り四葉真夜が写り

 

 

『この愚か者!』

 

 

なんかいきなりエンドレスで罵ってきた。

 

「このように愚か者と連呼してくる。果たしてこのうっとうしい状況でどれだけクールさを保ち魔法の切り替えができるか、それを競うゲームです」

 

 

「その発想が既にクールじゃないよね?」

 

幹比古が遠慮がちに言った言葉が皆の心情を表していた。

 

「ほう、一校ではいつもこんな実習を?」

 

「……そうです」

 

「やってないわよ!?」

 

「嘘教えないで!?ていうか私達を巻き込まないで!?」

 

和人が純粋に聞いてきた疑問に深雪は嘘八百で答える。何やらエリカとほのかから抗議の声が上がったが深雪はそれを綺麗に黙殺した。

 

「では私の先攻か……」

 

ら、という言葉で始めようとした刹那、バレーボールが深雪のこめかみ辺りに直撃する。

 

 

 

 

 

 

 

「水波ちゃん?」

 

「……」

 

深雪がいい笑顔(怖い笑顔とも言う)で水波を見るが、彼女はそれを位にも介さず無言でひたすらバレーボールを投げつけてくる。

 

 

 

当然、深雪の顔面狙いだ。

 

 

「あの子プレイヤーガン狙いだよ!?」

 

「まぁジェンガには硬化魔法が既にかけられてるだろうし、いい判断ではあるな」

 

「水波さんが一番クールじゃん」

 

ほのかの軽く青くなった顔を隠しながら言った言葉に達也が現実逃避気味に答え、文弥がそれを受け上手く?纏める。

 

 

「ふふ、甘いわ。この程度ではね」

 

だが深雪は焦らず減速の障壁魔法を自身とジェンガの周りに展開し、ボールから自身の身を護る、そうする事でジェンガに硬化魔法をかける必要がなくなるのだ。

 

深雪はそのまま移動魔法でジェンガのピースを一つ抜きとり上へと重ねる。

 

 

減速の魔法と移動の魔法、それらを息をするように同時行使する技量はこんな状況じゃなければ素直に勝算に値するものだった。

 

 

 

「では、僕の番ですね」

 

と和人がCADを操作した瞬間

 

 

 

 

 

「オラァァァァァァ!!」

 

突如水波から先ほどの倍はあろうボールだ飛んできた。

 

(あ、クールが消えた)

 

 

「フン!あなたは!これで!鳥になればいいんだァァァァァ!!」

 

「完全に私欲だよ!?あの子完全に私欲で動いてるよ!?」

 

果たしてそれは誰の言葉だったか、和人は認識していない、否認識する必要がなかった。

 

 

和人が行ったのは移動系魔法ただ一つ、十数個になろうボールの一つに魔法を作用させ自らの制御化に置いた。

 

 

そして

 

 

 

「な!?」

 

「へぇ、ボールを移動系魔法で動かして全部弾くなんてやるじゃん」

 

先ほどの応用で一つのボールを移動魔法で高速で移動させ残り全てのボールを弾くと言う離れ業をやってのけたのだった。

 

(覚えた魔法を的確に使う……それも魔法師に必要な物だ)

 

「く、ならばこれで……!」

 

「はいはい、それまで」

 

「あぁっ!」

 

水波が完全に和人を仕留めにかかろうとしているのをみて穂波が後ろから羽交い絞めにする。

 

「離して下さい叔母様、もしかしたらショックで記憶が戻るかも知れないじゃないですか!」

 

「幾ら和人でもそこまで単純じゃないわよ。元に戻って欲しいのは分かったから落ち着きなさい」

 

「ぐぐぐ、コンドルが、いじり倒すコンドルが欲しいんですぅぅぅ……」

 

そのままずりずりと穂波に引きづられるようにフェードアウトする水波に一同生温かい視線を送るのだった。

 

 

 

「よっと、さて、深雪さんの番ですよ」

 

そんな顛末を魔法の行使に集中していた和人は気付かずそのまま危なげなくピースを抜き取り上に置くと魔法を解いた。

 

 

 

「あれ?」

 

「どうした美月」

 

「いえ、何でしょう。記憶を失ったからでしょうか?なんかオーラがいつもの和人さんと違ってて」

 

美月の言葉に達也は単純に興味を覚えた。美月はメガネをはずしておりその目は和人を凝視していた。

 

「ほう、そんな事があるのか?」

 

「僕にもよくわからないけど、精神状態によってはもしかたらあるかもね」

 

達也が美月でなく幹比古に話を振ったのは恐らく美月に聞いてもわからないだろうからである。が幹比古の方からも明確な回答は示されなかった。

 

達也もぜひとも知りたいわけではなかったので、幹比古の回答で納得しひとまず疑問を棚上げにした。

 

 

 

(人間でこんなオーラ見た事無いんだけどな。でも無害そうだし……)

 

美月がこんな事を思っていたと知ったのは随分後だった。

 

 

 

 

「ふう、なかなかやりますね」

 

深雪は余裕の笑みでまずは移動魔法でピースを抜き取る。かなりきわどい所をとったのにも関わらずジェンガがピクリとも動かないのは硬化魔法を併用しているからだろう。使用魔法の使い分けの手本を今の所深雪は和人に示していた。

 

 

「おい、これ硬化魔法使ってたら永遠に決着つかなくないか?」

 

ジェンガは倒れたら終わりだが、硬化魔法を使って位置を固定してしまえば確かに倒れない。そうなればただただピースを積むだけの単純作業と化してしまうのだが、レオの言う事は最もだが流石に深雪もそれを考えてないとは思うが……

 

 

 

 

 

考えてるよね?

 

 

 

達也の胸に一抹の不安が去来したが、決着は直ぐついた。

 

 

 

 

 

『この愚か者が!』

 

 

「和人?移動魔法だけでなく、硬化魔法も使わなければこの勝負には勝てませんよ?」

 

『この愚か者が!』

 

「えぇ、でも上手くイメージがわかなくて……」

 

『この愚か者が!』『この愚か者が!』

 

「そうね、硬化魔法は物質の硬化ではなく分子の相対位置を固定する魔法なの」

 

『この愚か者が!』『この愚か者が!』『この愚か者が!』『この愚か者が!』

 

「イメージとしては」

 

『この愚か者が!』『この愚か者が!』『この愚か者が!』『この愚か者が!』『この愚か者が!』『この愚か者が!』『この愚か者が!』『この愚か者が!』

 

「……で」

 

『この愚か者が!』『この愚か者が!』『この愚か者が!』『この愚か者が!』『この愚か者が!』『この愚か者が!』『この愚か者が!』『この愚か者が!』『この愚か者が!』『この愚か者が!』『この愚か者が!』『この愚か者が!』『この愚か者が!』『この愚か者が!』『この愚か者が!』『この愚か者が!』

 

「だから…………」

 

『この愚か者が!』『この愚か者が!』『この愚か者が!』『この愚か者が!』『この愚か者が!』『この愚か者が!』『この愚か者が!』『この愚か者が!』『この愚か者が!』『この愚か者が!』『この愚か者が!』『この愚か者が!』『この愚か者が!』『この愚か者が!』『この愚か者が!』『この愚か者が!』

『この愚か者が!』『この愚か者が!』『この愚か者が!』『この愚か者が!』『この愚か者が!』『この愚か者が!』『この愚か者が!』『この愚か者が!』『この愚か者が!』『この愚か者が!』『この愚か者が!』『この愚か者が!』『この愚か者が!』『この愚か者が!』『この愚か者が!』『この愚か者が!』

『この愚か者が!』『この愚か者が!』『この愚か者が!』『この愚か者が!』『この愚か者が!』『この愚か者が!』『この愚か者が!』『この愚か者が!』『この愚か者が!』『この愚か者が!』『この愚か者が!』『この愚か者が!』『この愚か者が!』『この愚か者が!』『この愚か者が!』『この愚か者が!』

 

 

「……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ブチッ

 

 

 

 

「今私が喋ってるでしょうがァァァァァァァ!!」

 

クドイくらい連呼される言葉に遂に深雪がぶち切れ、淑女にあるまじき粗暴さでテレビを蹴飛ばす。

 

がその際、魔法の制御を怠ってしまい……

 

 

 

「あ」

 

 

ガラガラガラと音を立ててジェンガが崩れてしまった。

 

「……」

 

「……」

 

二人の間に気まずい静寂が訪れる。

 

 

 

 

「勝者・四方坂和人~」

 

それを打ち破ったのは亜夜子のこの言葉だった。

 

 

「深雪……」

 

「あ~」

 

「なんですか!?その感じは!?」

 

周りの何とも言えない視線に居心地の悪さを感じた(今更である)深雪は声を大にして叫ぶがそれでも和人相手に負けたのは事実だ。深雪は何となく言い訳しなければならない気持ちになってしまう。

 

「い、今のはほんの小手調べです。一応花くらい持たせておくかという私の気遣いだと言う事をお忘れなく」

 

『この愚か者!』

 

「やかましいぃぃぃぃぃ!!」

 

深雪は淑女は愚かもはや性別すら捨て去り、せっかく達也が再成で直したテレビをドロップキックでまたもやスクラップにする。

 

 

「続いて二つ目です!」

 

まだやるのかという周りの視線を全力で無視し深雪は二つ目のゲーム内容を説明する。

 

 

「魔法戦闘はお互いに魔法を撃ちあう性質上、必ずや魔法の作用領域がかぶる場合が出てきます。その時に必要なのが干渉力です!」

 

「確かエイドスに働きかける干渉力が大きいほうの魔法が発動するんでしたよね」

 

「そうです。今回はその干渉力が肝のゲームをします」

 

ここまではいいんだよなぁと達也が半ばあきらめ気味に思った通り……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「というわけで私とリバーシをして貰います!」

 

やっぱりこういう流れになったが、今回は少しルールが違うようだ。

 

「当然ですが手の使用は禁止です。更に裏返す際にそうならないよう抵抗する事も可能です」

 

「なるほど、そこで干渉力が必要という事ですか」

 

「えぇ、そして互いのコマには相手の悪口が書いてあります」

 

「え?なんで?」

 

深雪の言葉通り確かに白黒のコマには

 

『コンドル』

 

『ブラコン』

 

『コン$』

 

『さすおに』

 

と互いの悪口?が書いてあった。

 

「弱みを晒したくなければ、出来るだけ相手のコマをめくるしかありません」

 

「それ何の意味があんの!?汚れていくだけの暴露ゲームじゃん!?」

 

「この司波深雪の弱み、晒せるものなら晒してみなさい!!」

 

 

 

行くぞぉぉぉ!という気合だけは素晴らしい深雪の先手により、白さが全くない黒だらけのリバーシが始まるのだった。

 

 

 

 

そして、数分が経ち……

 

 

 

「ウフフ、アーッハハハハハ!どうしました~?どんどんあなたの弱みがめくれていきますよ~」

 

「いや、どっちかというと深雪の黒さがめくれていってるけど」

 

こんな顔が出来たのかと驚くぐらい邪悪な笑みを浮かべている深雪に一同はドン引きしている。

 

元々異常なまでの干渉力があった深雪だ。和人がコマをひっくり返そうとしても、深雪の停止魔法がそれを許さない。こうなるのは火を見るより明らかだった。

 

「とっちゃいますよ~角とっちゃいますよぉ~?そこめくった方がいいんじゃないの~ね~え~?」

 

「なんかもう弱みむき出しなんだけど達也君、達也君?」

 

エリカが先ほどから喋っていない達也に目を向けると

 

 

「あんなの深雪じゃないあんなの深雪じゃないあんなの深雪じゃないあんなの深雪じゃないあんなの深雪じゃないあんなの深雪じゃないあんなの深雪じゃないあんなの深雪じゃないあんなの深雪じゃないあんなの深雪じゃないあんなの深雪じゃないあんなの深雪じゃないあんなの深雪じゃないあんなの深雪じゃない……」

 

「達也ーーーーーーーっ!?」

 

「しっかりして下さい!?達也さんがしっかりしないともうどうしようもないんですよーー!?」

 

白目で念仏のようにあんなの深雪じゃないと唱えて現実逃避していた。レオとほのかが必死に揺さぶるが達也が遠い世界から帰ってくる様子はない。

 

 

 

「あららぁ?これはもう勝ってしまいましたかね~え?」

 

いつもは清楚でおしとやかな雰囲気の深雪が真っ黒い(どす黒いと言い変えてもいい)笑みのまま言っている通り、盤面は見事に黒一色に染まっていた。

 

「真っ黒いんだけど、盤面も人間もここまで黒くなれるものなの!?」

 

「参りました、完敗です」

 

「残念でしたね。これも魔法師としてのキャリアの差です」

 

こうまでされてしまっては流石の和人もなすすべがない、素直に頭を下げ敗北を認める彼に深雪は何故かしたり顔で頷く。

 

「そうですね。実は……」

 

とここで何故か和人は言いづらそうに口ごもる。

 

「記憶を失った僕にここまでよくしてくれた深雪さんの悪口を書くことがどうしてもできなくて……」

 

「え?」

 

和人は盤面を埋め尽くすコマを一つ掴む、そのコマは白い面がなく両方とも黒く塗られていた。

 

「仕方がないから、白い面も黒く塗って自分の弱点を書いてみたんです」

 

「」

 

「僕は自分が何者なのか思い出せない。でも思い出そうとするならまず自分の弱さや弱点と向き合うべきだと思いまして」

 

(あ、あばばばばばば……)

 

当然和人が光りを放っているわけではなく、その純粋無垢は思想にけがれた自分が浮き彫りにされているようで深雪は直視が出来ない。

 

 

勝負は決した……

 

 

 

 

 

「勝者・四方坂和人~」

 

 

「「「勝負に勝って人間性で負けたーーー!?」」」

 

もう膝を抱えて泣きそうな表情になっている深雪に情け容赦ないツッコミが入る。

 

「和人に人間性で負けるってそれもう」

 

「しっ!深雪さんに聞かれたらどうしますの!」

 

(ぐうっ!?)

 

文弥がうっかり口を滑らしかけたのを亜夜子が慌てて口を押さえるが、しっかりと深雪の耳には届いていた。

 

「ぐ、えと……まぁそうですね。魔法の才能におぼれず自分を磨きあげる材料とする。あなたは心のありようもしっかりとした人物のようで……」

 

『この愚か者!』

 

「そうです私が愚か者ですぅ!!」

 

再び達也が再成したテレビを深雪が破壊する。今日のお兄様は大忙しである。

 

「じゃあ最後の勝負はこれです!」

 

深雪が指さしたのは噴水だ。

 

「この噴水の水を先に凍らせた方の勝ちです!何故なら私は冷却系の魔法が大得意だから!!」

 

「遂にプライドすら投げ捨てた!?」

 

「深雪、必死」

 

雫やほのかが白けた目線を送るも深雪は気付かない。絶対に負けられない戦いがそこにはあるからだ。もう二敗してるけど

 

「いいですか?『よ~いドン』の合図で同時に魔法をかけます」

 

「僕が左半分、深雪さんが右半分、早く頂上まで凍らせた方の勝ちと」

 

「そうです。判定はお兄様がしてくれます」

 

「いや、あなたのお兄様白目剥いてますよ?主にあなたのせいで」

 

「では行きます!」

 

「聞けよ」

 

残念ながら有象無象の声は深雪には届かない。あるのはただ一つ、勝利のみだ。もう二敗してるけど

 

「では…………よドン!」

 

「よドン!?」

 

(((セコっ!!)))

 

あっけに取られ思わず声に出してしまった和人を尻目に深雪はCADから起動式を呼び起こす。

 

(勝った……!)

 

見れば和人はまだCADのテンキー操作もまだ行っていない、この状況なら間違いなく自分の方が先んじて魔法を発動できる。深雪は勝利を確信して笑みを浮かべた。

 

 

 

 

 

 

「っ」

 

完全に出遅れた和人は何故か深雪の方に右手をかざす。すると

 

「あれは……!?」

 

「あ、達也君復活した」

 

深雪が読みこんだ起動式が深雪の方でなく、和人の方に向かって行くのを達也だけが視認出来た。

 

「っ!?起動式がっ!?」

 

深雪も異変に気付いたのだろう、自分の中に取り込まれる筈の起動式が存在しないのを知覚して驚愕に眼を見開く。

 

(他人の起動式を奪い取るだと!?)

 

そんな魔法は、いやそんな『異能』は見た事も聞いた事もない、そのまま和人は深雪から奪い取った起動式に変数を加え魔法式へと変換させる。

 

 

そして……

 

 

 

 

「えと、こんな感じでしょうか?」

 

見事に和人は左半分の水が凍っている噴水を作り上げた。

 

 

「え……まさか」

 

「「「深雪が普通に負けた!?」」」

 

「はぐぅ!?」

 

言葉の刃が容赦なく深雪に突き刺さる。確かに達也や深雪以外には普通に和人に先んじられたとしかわからないだろう。そこにどんな異常があったとしても

 

しかし、それを言うのは言い訳しているようで恥の上塗りしているようにしか見えないだろう。

 

「……ふ、ふふ」

 

深雪もそれをわかっているのか、何も言わない代わりに和人が凍らせた水の一部をポキリと折る。それは水しぶきがそのまま凍っており、ツララのように鋭利に出来ていた。

 

「深雪?」

 

「死にます」

 

 

え?

 

「深雪!?何を言っている!?」

 

「離して下さいお兄様!深雪は、深雪は……っ!!」

 

鋭利なツララをいきなり自分の喉元に向けた深雪に全員目を剥き、達也にいたっては八雲に鍛えられた体術をいかんなく発揮し即座にみゆき近づきツララを取り上げようとしたほどだ。

 

「落ち着け深雪!」

 

「私は、お兄様の妹に相応しくない醜態をさらしてしまいました!もう、もう……!」

 

 

「落ち着け、そんなのもう今さらだ」

 

「……うわあぁぁぁぁぁぁぁぁんっ!!」

 

(あれ?)

 

本格的に泣きだしてしまった深雪に達也は己の失態を悟る。

 

「達也さん、それトドメ」

 

「流石に女心がわからなすぎですわ!」

 

雫と亜夜子二人から半眼で睨まれ決まりの悪さは増大する。弁明しなければいけない気がして口を開くが、こういうときは黙っていた方がいいと学んだのは少し後になってだった。

 

「いや、今のはフォローのつもりだったんだが」

 

「フォローになってませんよ。バカなんですか?」

 

「ば、バカ……?」

 

エリカならともかくまさか美月にそんな事言われると思っていなかったので動きだけでなく思考も固まってしまう。

 

「深雪~?大丈夫よ~」

 

「ひぐ、ぐすっ……」

 

「悔しかったんだよね?よ~くわかるよ。ほら思いっきり泣いちゃっていいから」

 

ほのかに優しく背中をさすられ、深雪はしゃくりあげながらも彼女の胸に頭を預けた。なんというか微笑ましい場面である。

 

 

 

「えっと……」

 

「和人、お前はなんも悪くないぞ?」

 

「そ、そうですかね?」

 

「そうだね、言っちゃ悪いけどこれは司波さんの自爆に達也がトドメを刺してこうなっちゃっただけだから」

 

どうすればいいか途方に暮れている和人にはレオと幹比古がフォローに入る。朝見たいに凹まれたら困るし

 

 

一方で子供のように泣く深雪をなだめるグループ

 

 

もう一方で和人に対してフォロー入れるグループ

 

一見決裂するかに見えた達也達だが……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『この愚か者どもが!!』

 

 

 

「「「「うるせぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!」」」

 

 

 

 

 

 

テレビに憂さを晴らす事で決裂はしなかったがテレビは再び大破した。

 

 





記憶喪失といったらもうこれやるしかねぇな!ということでやってしまいました。


将ちゃん凄いいいキャラしてて好きでした。
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