CEFALÓPODOS -セファロポドス-   作:夜泣かし村

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ムルシエラゴはいいぞ……


1.知らぬ存ぜぬ

 流々家町──。

 東京都に位置するこの町では、人が多く死ぬ。こんな簡単な言葉で片付けてしまえる程──命が軽い。

 女だろうと、子供だろうと、老人だろうと、勿論男だろうと。学生でも、警察官でも、OLでも、フリーターでも……全てが、簡単に、死んでしまう。

 路地裏で誰かが一人。そんなのは当たり前だ。日常茶飯事。

 連続殺人事件。そんなのも見飽きている。殺人事件が報道されない日は無いし、警察は日夜聞き込みと捜査を行っている。

 大量殺害。それさえも最近、増えてきている。爆弾が用いられたり、毒物が用いられたり。かと思えば刃物一本が凶器だったり。組織である事よりも単独犯である事の方が多いというのだから恐ろしい。まぁ組織だったらもっと自制するだろうから、当然の帰結といえばそうなんだけど。

 

 さて、そんな流々家町において、僕の立ち位置を見てみよう。

 

「愛美ー、気を付けて行くのよー?」

「はいはいー」

「はは、母さん。愛美はもう中学生なんだから、大丈夫だよ」

「そうは言っても、ねぇ」

 

 暖かい家庭。

 両親に見送られる子供──が、僕ではない。

 いつまでも子離れ出来ない母親を諭す夫──でもない。

 

「この町に住む以上、安全なんてないから……」

 

 僕は母親だった。

 

 

CEFALOPODOS

 

 

 いやまぁ、焦ったよね。

 気が付いた時には結婚していた──結婚して、出産後だったんだから。

 僕は元々、しがないエログロ好きな女学生だったはずだ。僕なんて一人称は大学デビュー時にとってつけたキャラ付けで、それは盛大に滑ったとはいえ、続ける事三年も経たば染みついてはなれなくなるというもの。

 そんな僕だ。僕の自己紹介なんてこの程度で、そんな僕。

 僕は、母親だった。二回目だけど。

 

 そしてここはムルシエラゴの世界っぽかった。うん。

 

「……」

「どうした、母さん。体調が悪いのかい?」

「ああ、いえ……貴方もさっき見たでしょう? 瀬良榎の……」

「集団児童誘拐事件か。でも隣町じゃないか。それに愛美は、もう児童という歳ではないよ」

「そう、ね……」

 

 やばい。

 もうやばすぎるんだよね、それ。ムルシエラゴの世界って事実。娘が通っている学校私立まりも學園だし。ここ流々家町だし。やばすんぎやばすんぎ。

 だってムルシエラゴだ。先にも述べたけど、あまりに人の命の軽い漫画。エログロ好きな僕が大好きなエログロ漫画だ。まぁエロとグロが噛み合う事あんまりないから、エロ&グロ百合漫画、と言った方が正しいんだけど、いやそんなことはどうでもよくて。

 

 ここでは、沢山の人が死ぬ。

 異常者ばっかりの町だ。単なる児童性愛者を恐れているわけじゃない。過去の幻影に囚われて児童誘拐を繰り返す大男とか、クスリで気をやった化け物プロレスラーとか、そういうのがやばい。

 だって、理屈が通じない。いや単なる児童性愛者に理屈が通じるかって言ったらまぁ話は別なんだけど。

 理屈だ。これがこうなれば、こうなる、とか。これがこうこうこうだから、こう動く、とか。

 

 一般ピーポーの常識が、通じない。

 

「さて、そろそろ出勤時間だ。母さん、行ってらっしゃいのキスを貰えるかな?」

「気を遣ってくれてありがとう、貴方。ふざけてないでとっとと行ってらっしゃい」

「ちぇー」

 

 だからこそ、そのために()()がいる、んだけど。

 彼女は正義の味方じゃないのがなぁ。

 

「いってらっしゃい、貴方」

「行ってくるよ、金枝(かなえ)

 

 手を挙げ振り返り、笑顔を見せる夫に笑いかける。

 行ってらっしゃい。心から、気を付けて、と。

 

 

 さて。

 専業主婦というのは、案外暇なものである。大変な時が死ぬほど大変だからみんな大変だって言うけど、暇なときは死ぬほど暇だ。どれくらい暇かっていうと、ベッドに横になって韓流ドラマとか海外ドラマとかを煎餅バリバリやりながら見ていられる程暇だ。

 多分この時の僕は酷く死んだ目をしていると思う。原作のデフォルメ顔である▽-▽みたいな顔。別にドラマの内容が面白くないわけじゃない。表情を動かし、声を出すのが面倒くさいというだけだ。

 バリボリ、バリボリ、バリバリボリボリ。そうやって過ごしていれば、すぐにお昼になる。

 

「ん?」

 

 ふと、足音がした。庭の方から。

 来客なら玄関から来るだろう。玄関から来るような客が来訪する予定が入っていた覚えはない。なら、来訪する予定もなければ、玄関から来るような客でもないという事だ。

 さて。さて。

 

「犯罪率高すぎでしょこの町」

 

 ベリ、と何かを剥がす音。

 コツコツと何かを確かめるように叩く音。

 

 それが庭に面した部屋の方から聞こえてくる。とりあえず手元のケータイで110。この漫画の警察は有能と無能のピンキリ和えって感じなのだが、駆け付けてくる速度はある方だ。どこぞの小さな名探偵のいる時空と違って、みだりに一般人を現場に入れたりしないし、市民の安全を第一に考えてくれるし。いやまぁあの時空でも市民の安全は第一か。

 けど、流石に。110番に通報して直後に駆け付ける、は無理だろう。一番近い交番からでも500mくらいはある。歩いて5分、走って3分くらいか。住宅街なので車ぶっぱなして、は無理だろうし、頼りになる度で言えばダンチな彼女も流石に市民通報には来ない。

 

 つまるところ、警察が来るまでの5分強を一人で耐えなければいけないという事である。

 

 110の通報ガイダンスには、自分が声を発せられる状態で無い事をショートメッセージで送信。すぐに「声を出さず、隠れていてください。もし見つかってしまった場合は、抵抗せずに要求を飲んでください」と来た。すごい、機械じゃない。ちゃんとオペレーターがいる。感涙。

 

 ガシャ、と。小さな音。割れる音だ。そのまま小さな金属音。これは多分、窓の鍵が開けられた音。

 空き巣の常套手段だ。窓にガムテープを貼って、そこをハンマーでたたき割り、手を入れられる隙間を造ったらそこから内鍵を開ける。あとはらくらく侵入、と。

 やめてほしい。そんなありきたりな手法で侵入しないで欲しい。

 

 そんな、そんな。

 

「一般人みたいな手法、勝てそうとか思っちゃうじゃん」

 

 やめてよね。

 

 

CEFALOPODOS

 

 

「申し訳ございませんでした」

「い、いえ……その、抵抗しないで、と言われたのに、すみません……」

「駆けつけるのが遅れたこちらの責任です。それに、襲い掛かってきた相手に抵抗するな、というのは、無理がある。お怪我がなくてよかったです」

 

 めちゃくちゃ紳士だ。真摯で紳士。まだ若いのだろうその警察官……お巡りさん? は、先ほど、息を切らしてこの家に到着した。到着して、伸びている男と花瓶を手にへたり込んでいる僕を見て、全てを察したらしい。

 「大丈夫です」と強い目で言って、すぐさまどこかへ連絡。倒れた男の手に手錠をかけた。

 そこからずっとこれだ。

 ずっと、頭を下げている。いやもういいて。

 

「すみません……それで、今回の件についてなのですが」

「はい、はい」

「進展がありましたらお伝えしますので、連絡先をお教え頂けますでしょうか?」

 

 ──。

 いや、おかしなところはない。別にそういう事もあるのだろう。あの男は死んではいないから、殺人罪とかに問われる事は無いと思うけど、正当防衛だと思うけど、万一、とかもあるだろうし。

 何より相手は警察。聞かれたのだから、教えないのはまぁむしろ不自然だ。こっちが。何かやましい事があるような感じ。

 

「小高井さん?」

「そういえば」

「はい?」

 

 彼が駆けつけてから、もう5分は経っている。

 だというのに。

 

「応援の方は来ないのでしょうか? まさか、あの空き巣をおひとりで担いでいかれるのでしょうか」

「いえ、もうすぐパトカーが到着しますよ」

「では、パトカーの到着を待たせてもらえますか?」

「……どうしてでしょう」

 

 はい。

 いやマージで、どうなってんだこの町。確かにチンピラとか不良とか、軽犯罪者もそれなりにいたけど……なーんでピンポイントにウチかねぇ。

 

「小高井さ」

「ちなみに私、先ほど110番したんですけど、それも貴方が拾っているんでしょうか?」

「──……」

 

 彼から、人好きのする笑みが消える。

 しかし動機が見えない。空き巣強盗ならさっきのへたり込んでる僕を襲えばいい話。仲間が殴られて気絶させられているんだから激昂してもいいだろうし、動揺の一つも見せない。

 僕の連絡先を聞く意味は? 単純詐欺だとして、連絡先だけでなんとかなるもんなのかな?

 

「大人しく従っていればいいものを」

 

 言って。

 彼は腰からそれを抜いた。

 真っ黒な穴が、僕を向く。

 

「動くな、手を上げろ。……へへ、言ってみたかったんだこれ」

「ちなみにそれ弾込めてあんの?」

「よく口が回りますね、奥さん。アンタこれから死ぬかもしれないってのに」

「ソレに入れられる銃弾って5発までだからさ*1。僕さ、流石に死なないよ、たったの5発じゃ」

 

 もう取り繕う必要もない。

 手元にあった花瓶を思いっきり投げつける。乾いた音。直後、割れる音。撃たれたのだ。いやまぁ花瓶が、だけど。

 その間に姿勢を低く彼に近づき、銃口から外れる。

 指の動きを注視。指というのは曲げきるためにいくつかの動作を必要とする。まず基部骨が外側に膨らみ、第二関節が曲がる。次に末節及び第一関節が曲がって、ようやく力が入る。拳銃の引き金はそれなりに重い。力を込めれば指は白むし、照準を合わせようとすれば気も逸れる。

 二発目が床に刺さる。残念ながら銃弾というのは真っ直ぐにしか飛ばない。跳弾とかいう埒外の技術は置いておいて、基本は全部真っ直ぐだ。いやまぁ重力の影響とか空気抵抗とかで多少はぶれるんだけど、こんな至近距離なら考えなくていいので割愛。

 

「貰うよ──ッ!?」

 

 中指。他の指より少し長い爪を、彼が拳銃を持つ手に向けて振る。手そのものでなく、手首だ。脈ではなく健。低い姿勢だからこそ狙えるそこに腕を伸ばし──瞬時に引いた。

 引いて、飛び退く。

 

「あ、あぶねえ……助かったよ、相棒」

「ああ……」

「いやいや……結構強く殴ったんだけどなぁ」

 

 先程まで居た場所には、空き巣の男。額から血液こそ流しているが、組み付こうとしてくるくらいには回復したらしい。どんなだよ。脳震盪起こして気絶してたんじゃないのかよ。

 

「さて──形勢逆転、だなぁ、ええ? 小高井さんよ」

「逆転も何も、最初からそっちが有利でしょ。僕は素手で、そっちは拳銃。いつ逆転してたのさ」

「おいおい、少しくらい恐怖に震える顔を見せてくれたって──あ?」

 

 あ? と。発言した。

 いや。

 

 発声した。

 

「あ──が、い──ぇ?」

 

 威圧になっていたのだろう。その顔に、フォークなんかが刺さっていなければ。

 疑問と共に、彼は崩れ落ちる。深さ的に脳にまで達している。いやいや、どんなだ。頭蓋骨って硬いんだぞ。投擲物でそうやすやすと貫けてたまるものかよ。

 隣の空き巣男は何が起きたのかわからない様子で、けれど「こ、この──(あま)ッ」なんて言って僕に寄ってくる。多分僕がやったと思ったのだろう。仲間がやられて激昂するくらいの感情は、この男の方にはあったらしい。

 

 それが。

 目の前で。

 

「もう大丈夫ですよ、奥さん」

 

 吹き飛ばされる──前に、僕の視界は肌色のぱふぱふでいっぱいになった。

 

 

CEFALOPODOS

 

 

 娘と夫が死んだ。

 それを聞かされて、そっかぁ、なんて気の抜けた感想が出た僕はしっかりおかしいのだろうか。

 血肉塗れになってしまった自宅は専門の人達が清掃中ということで、総合病院の方に一時的に入院させてもらう次第となった僕は、けれど別にどこか悪い所があるわけでもないので、暇を過ごしている。

 

 娘と夫が死んだ。

 ……僕にとっては、愛し合った記憶も、腹を痛めて産んだ記憶もない二人。それでもちゃんと家族だったし、恋愛こそなけれど、親愛はあったのだろう二人。それが死んでしまったらしい。

 

「……」

 

 流々家町において、殺人はそう珍しい事じゃない。犯罪者の温床。異常者の坩堝。そんなところに一般人が紛れ込めば、当然、簡単に轢き潰される。悪意があろうと、善意で動こうと、無為な日々を送っていようと。

 突然、死はやってくる。

 

 集団児童誘拐事件。朝に危惧したそれが、まさに。

 愛美を巻き込んだそうだ。児童といえど中学生の彼女は、目撃してしまった、らしい。目撃者だから消された。その後組織は壊滅したという。壊滅させたのは──。

 

「奥さん、大丈夫ですか……?」

「あ……紅守、さん」

「黒湖でいいですよ、奥さん」

 

 柔和な笑みを浮かべ、しかし凛々しい姿で近づいてくる、真っ黒で、グラマラスで、背の高い女性。

 紅守黒湖。

 空き巣犯達を()退()し、大規模誘拐組織を()()させた人。

 

 そして、夫を殺した人。

 

「……夫は、罪を犯していたんですね」

「はい。……気持ちの整理は、難しいですか?」

「いえ……。そういうことも、あるのかな、と」

 

 夫は。

 僕が、というか小高井金枝が愛し、愛された夫は──大規模児童誘拐組織の主犯格だった、と。

 そう聞かされた。

 

 瀬良榎で組織を広く展開していたのは、流々家町(こっち)に自分の家庭があったからか。ともすれば自分の娘が対象になりかねなかったから。

 それがどうしてこっちで展開する気になったのかまではわからない。どうか愛美を殺すと決意した下手人が夫で無い事を祈るばかりだけど、彼の悪意を欠片たりとも見抜けなかった僕に、真意の推測など夢のまた夢だろう。

 

 紅守黒湖。彼女が僕の家なんかに出向いたのは110番通報を受けて、ではない。

 主犯格に家族がいる事が判明したため、事情聴取に来た……なんでもその組織には、手を引いている存在がいた、とかで。

 主犯格の妻。成程、手綱を引くには絶好のポジションだ。

 

「……紅守さん。私は何も、知りませんよ」

「ええ、わかっています。とてもではないですが、貴女は悪事に手を染められるようには見えない」

「それなら……」

「奥さん、私が心配しているのは、貴女の心です。事件の黒幕などより──貴女の心」

 

 うわ、来た、と思ってしまったのは、まぁ仕方がない事だろう。

 

 紅守黒湖。散々引き延ばしたけど、彼女は主人公なのだ。

 ムルシエラゴの。エロ&グロ漫画の主人公。肩書きを、国選処刑人。700人以上を殺し、死刑が決まっていた所を、()()であると判断されて雇われた、対悪人専用の殺し屋。

 基本情報はこんな所だ。けど、なにより特筆すべき事は、そんな血生臭い事ではなくて。

 

「奥さん……いえ、小高井金枝さん。貴女が今、そうして乾いた笑みしか出し得ないのは、心に傷を──」

 

 レズ、なのだ。

 それもクレイジーでサイコな。まぁ相手を気遣う心はあるから、レズ部分でクレイジーやサイコが出てくる事は滅多にないのだが。

 今は真摯を装っている。紳士っぽく振舞っている。が、一度ベッドに上がればもう手が付けられない。

 人並み外れた長い長い舌と、余りにも豊満なばでー。秘所の一つとっても曰く極上で、レズのために生まれた身体といっても過言ではない。

 そしてその節操は、ゼロに等しい。

 可愛い子がいればどれだけ緊迫した状況でもナンパするし、頻繁に出会い系を利用して女の子を食うし、侍らしているのも女の子ばかり。

 僕が彼女の"可愛い女の子"たるお眼鏡に適ったのは嬉しい限りだけど、やはり原作を知っている身としては、「うわ来た」が正解だろう。

 

「紅、守さん……」

「黒湖と」

 

 いつの間にか、その長い髪を僕の脚に垂らして。

 いつの間にか、病院のベッドに膝を突いて。

 

 いつの間にか、顔を凄く近付けて、顎に手を添えられて……。

 

「看護師さん、来るよ」

「!」

 

 がら、と扉が引かれる。その時にはもう、紅守黒湖は直立姿勢に戻っていた。

 看護師さんはハテナマークを浮かべて僕らを交互に見るも、職務を全うせんとしたのか、気にせずに入ってくる。

 

「お取込み中でしたか?」

「いえ。あ、もしかして清掃が……」

「はい、完了したと警察の方から。これで退院となります。一応尋ねますが、どこか体調不良などは」

「大丈夫です。ありがとうございました」

 

 ベッドに座ったままという不躾で申し訳ないけれど、ぺこりと頭を下げる。病気でも怪我でもないのに病床を使わせてもらったのだ。悪い事をした。

 それでは、と出て行く看護師の背を見送って、紅守黒湖に向き直る。

 

「お預けだね」

「せ、せめて連絡先だけでも」

「あ、うん。改めて。僕の名前は小高井金枝。危ない所を救ってくれてありがとう、紅守黒湖さん」

「おひょ……ボクっ娘? 人妻で? 未亡人で……?」

 

 先程までの凛々しい顔はどこへやら、おひょむひょと奇声を発する紅守黒湖に、痛い所を突かれた僕は苦笑い。

 いや、そうなんだよね。前世の僕ってばまだ大学生で、盛大に滑ったけれど一応僕って一人称が定着して、そういう子なんだ、みたいな扱いを受けてたんだけど……この世界の僕、もう20代後半なんだよね。華の大学生終盤+新社会人生活をすっ飛ばして専業主婦だったんだよね。

 専業主婦が僕はちょっと、キツイよなぁ、って。だから封印してたし、取り繕ってたんだけど。

 

「あ……そっか、働かなきゃ」

 

 もう専業主婦ではいられない。夫の残したお金も考えたけど、でもそれって誘拐事業で稼いだお金なわけだよね。何千万、下手すれば何十億とあったのだろう巨額は、けれど血まみれって考えると……うん。無理無理。

 というかそんな金で今まで家族サービスしてたのかよ、って感じ。心苦しい限りですたい。

 

「……それなら、私のセフレに……あ、勿論お金は払うから!」

「あ、もう直接的な表現を使うんだ。ちなみに一回何万円?」

「むふーん」

 

 鼻息荒く、両手をパーに広げる紅守。

 ……ええー、なんだよ、魅力的じゃんか……。

 

 一回のおせっせにかかる時間は二時間、多くて三時間くらい。時給三万三千円? やばすんぎでしょ。しかも気持ちよくなるだけでいいとか。

 ……うわ、完璧なまでの援助交際する側の思考回路じゃん。僕やば。

 

「お願いします」

「やたー!」

 

 別に忌避感とかないしね。願ったり叶ったりだよね。

 

 

CEFALOPODOS

*1
ムルシエラゴでは警官に支給される銃はニューナンブM60であるため




今日のわるい人。

なまえ小高井(こたかい)真治(しんじ)
さつがいにんずう0人(誘拐児童数270人)
もくてき海外の好事家への売却
すきなもの家族
きらいなもの家族を害するモノ
しょぐう大勢の手下と共に船舶の燃料爆発で焼死
びこう大規模な児童誘拐を行っていた組織の主犯格。
その手腕は見事なもので、今日(こんにち)まで警察は足取りの一つも掴めていなかった。部下からの信頼も家族からの信頼も厚い、出来る上司。
事業は順調だった。まさか部下の一人が、鼠を殺したなどと言って娘の死体を見せてくるまでは……。
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