CEFALÓPODOS -セファロポドス-   作:夜泣かし村

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10.弱いから勝てる

 結局来たのは御剣サンと髭ライオンこと笠木警部。課の違う二人だけど、戦闘能力はピカイチだから、だと。同じ理由でちゃっちゃんはお休み。だけどどっかで朽葉怜子にもしも用の依頼出してんじゃないかなぁ。

 そんなわけで、原作よりスムーズに、とはいかなかったけれど、紅守黒湖よりも早く宮本家へ来ることができたわけだ。

 

 ……なんで?

 

「お初にお目にかかる。宮本家現当主宮本右近という。警察の方が一体、なんの用ですかな」

「初めまして。警察庁捜査零課の」

「単刀直入に言う。蔵を開けて欲しい。あるいは──娘さんを引き渡してほしい」

「……お主は?」

「小高井金枝。一般未亡人」

 

 自己紹介を遮ったことで御剣サンも笠木警部も怒り心頭と言った様子だけど、事態は割と一刻を争う。紅守黒湖よりも早く来たということは、宮本玄流がまだ来ていないということだ。ならば今のうちに宮本玄乃の死体を撤去してしまえば、ここでの覚醒が起きなくなるかもしれない。

 姉がいなくなったことで暴走しなければ、の話だけど。

 

「一般未亡人が、何用でこの家の蔵に……そして、玄流を引き渡せ、などという要求を?」

「蔵の方は私が言うまでもないでしょう。そして玄流ちゃんは人」

 

 カクンと顎を引く。

 そのギリギリに、宮本右近の指先があった。数瞬遅れてから反応する警察二人。

 

「勝手なことを抜かす喉よ。今ここで突き破ってやろうと思ったが」

「鬼はまだ生きている。彼女の中で」

「!」

「そんなに面子が大事なら、捜索願なんか出さなきゃよかったのに。現実を受け止めてあげなよ、どっちもさ」

「……お主は……深淵そのものか?」

 

 ふむ。

 深淵からそちらを覗くのが鬼だとすれば、成程確かに。

 

「さぁて。それで、蔵は見せてくれるんですか? ──早くしないと、鬼が帰ってきますよ」

「……致し方ない」

「ありがとうございま」

 

 複数人の足音。トタトタと慌ただしい足音。ぞっとする。バッドタイミングが過ぎる。

 やっぱり僕の幸運体質程度じゃどうにもならない悪意!

 

「お、おじいちゃん、お客様が……って、あ、あ、ごめんなさいっ!」

「……御剣サン、笠木警部。()()()()()()()()()()

「なに?」

「何じゃと?」

 

 耳聡いな。聞こえていたか。

 

「はっはっは! これは驚いた、なんじゃ、今の今までお主の圧倒的な気配に踊らされていたが、まさか()()()()()()()()()()()()()()()とは!」

 

 これは、避け切れない。

 膨大過ぎる悪意。今までのが砲丸くらいのサイズだとすれば、これは自動車くらいの量。厚み。一年以上前から来ることがわかっていればギリギリで避けられたかもしれないけれど、こんな刹那でそんな悪意を吐き出されたら、僕の幸運じゃどうにもできない。

 

 だから、膝を突きあげた。

 

「ッ、う!?」

「──っぶな! 全員退避! この家から出て! どうやら狙いは僕みたいだから、完全退避して! でないと僕が動きづらい! っ!」

 

 裏拳がぶっ刺さる。

 僕に、じゃない。宮本玄流……の身体を借りた宮本玄乃にだ。

 

 いつか、テケリリランドで凛子ちゃんとの戦いにおいて感じた「これ以上踏み込んだらヤバい」という感覚。それが真後ろにある。つまるところ、彼女の中で、僕程度斬り伏せ終えているということだ。だけど、だからこそ僕の幸運は彼女の天敵となるらしい。

 僕の回避は見極めて動くとかそういうのじゃない。怪我をし無さそうに動いているだけ。だから膝蹴りも裏拳も、「そうした方が危なくなさそうだった」からやっているだけ。

 

 ゆえに、筋金入りの剣術家は間合いを乱す。剣の冴えに狂いが生じる。

 

 ……ということだと、思う! 僕戦闘のプロじゃないから!

 

 ただ、膝蹴りも裏拳も、僕のひよわボディから放たれていることを忘れないでほしい。

 

「……迅い、というわけでもない。鋭い、というわけでもない。研ぎ澄まされた感じもしない。腕力も脚力も人並み以下。……なのに、斬れない」

「暖簾に腕押し、糠に釘」

「無意味、って?」

「斬って斬れなかった相手は初めてでしょ。教えてあげるけど、もう一人いるよ。そっちは反撃もしてくれる」

「……いいわ。ここは退いてあげる。ただし、そのもう一人を早く呼ぶことね。──立っているだけでも精一杯でしょう、あなた」

「さぁて」

 

 障子を、庭を突き破り、宮本玄乃が消えていく。

 死後残る念……なんてふざけている場合じゃないか。

 

 がくん、と膝を突く。

 ごぼりと吐き出すは血。

 

「な、おい!?」

「どうした!」

 

 途端、全身に刻まれた裂傷が開き、僕の意識は暗闇へと遠のいて行った。

 

 あのね……真空で切るとかね、ファンタジーなんだよね……。

 

 

CEFALOPODOS

 

 

 病院で目覚める。

 

「起きたみたいね。ここ、全部羅列しといたから。安静にしておきなさいよ。何度もいうけどアンタよわっちぃんだから」

「……いつもお世話になります」

 

 羅列。成程正しい言葉だ。

 裂傷の箇所も、内臓へのダメージも、事細かに声に出して読み上げるのがバカらしくなるほどの量が書かれている。

 それがちゃんと綺麗に治っている辺り、流石はユリアさん、と言ったところか。

 

「こ……小高井、おばさん」

「うん?」

 

 向く。そこには、拳を握り締めた凛子ちゃんと、彼女の後ろに立つ冷泉藍子が。

 おばさん。

 まぁ、別にいいけども。おばさんの歳だけども。僕大学生だったんだけどなー。

 

「仇は、取ります……!」

「要らないよ」

 

 ぷち、ぷちと点滴を抜いていく。うーむ、自分で抜くのは初めてだけど、良い子は絶対に真似しないようにね、って感じだ。

 

「え、え」

「ちょっと……」

「凛子ちゃんでも冷泉さんでも無理。黒湖さんですら足元にも及んでいない。剣聖、宮本玄乃。ああいう手合いに勝つのは僕みたいな奇術師さ」

 

 屈伸を一つまみ。

 ひぃ、お腹いったい。全身ヒリヒリするし、いやもうホントなんで僕準備運動なんかしてるんだろうね。

 

「あなたでも、無理だと思うけれど……」

「大丈夫大丈夫。僕、これでも幸運なんだよね。夫と娘が死んでも生き残っちゃうくらいには」

 

 紅守黒湖に任せておけばいいものを、と思う自分もいる。

 何主人公ぶろうとしているんだ、と呆れる自分もいる。

 でもまぁ、なんだろうね。

 

 コバさんもだけど、売られた喧嘩はちゃんと買うし、勝たずとも引き分けにまでは持って行っていた僕だからさ。

 

 負け越しっていうのは、よくないよね。

 

「果たし合い。今日の夜でしょ。満月が真ん中に浮かぶ頃で、場所は威鷹映画村」

「なぜ、それを」

「……」

「あれ、黒湖さんから聞いてない? 僕占いもできるんだよ。……それより凛子ちゃん、どうしたの?」

「私も行きます」

 

 話の流れをぶった切る強い言葉。

 ……あーっと。

 

「冷泉さん」

「私も行きます!」

「君、凛子ちゃんの保護者になりつつあるんでしょ? 止めてあげて」

「わ、私の、二番目のお母さんは、小高井さんです!!」

 

 えぇ。

 今までそんな素振り見せなかったやん……。

 あーでも子供だからなぁ。ずっと一人で思い悩んでたのかなぁ。

 

「冷泉さんは?」

「お姉さんです」

「まぁ、年齢で言ったら妥当」

 

 ふむ。

 多少、こじらせた感じはあるけれど。

 

 じゃあ行こうか。僕に足りない火力を二人に補ってもらうとしよう。

 

 反撃の狼煙を上げる時だ。

 

 

 

 

 

 

 

 威鷹映画村。

 そこに二つの影があった。

 

 片方は真白の剣客。

 そしてもう片方は──。

 

「あら、あなたが待っているとは思っていなかったわ。……傷、治りきっていないようだけど、それで戦えるの?」

「戦うのは僕じゃないよ。僕は避けるだけ。いわばデコイだね」

「囮ね。あなたにそれが務まるのかしら」

「少なくとも君の剣じゃ斬れないからね。君の剣で起こした鎌鼬で斬るのはできるみたいだけど、それって剣客としてどうなの、って感じ。あ、これ挑発とかじゃないよ。使っていい。全然、何をしてくれたって構わない」

「……一つ、疑問なのだけれど」

 

 満身創痍の僕が戦闘に参加すると言った時、警察一同は大反対した。驚くことに笠木警部が猛反発したのだ。というのも、僕はどこまでいっても民間人で、警察が二人そばに居ながら守れなかった、なんなら守られた、と。

 それで義憤に燃えている。だから僕が病院を抜け出してきたことは、それはもう怒りが天元突破したらしい。早く戻ってベッドで安静にしていろ! と怒られた。

 言葉は違うけど御剣サンも同じ感じで、ちゃっちゃんも良い顔をしていなかった。

 

 構わない。 

 元より歓迎されないのはわかっている。だけど、もしできるのなら──というお願いをして、今ここに立っている。

 

「A」

「?」

 

 飛来するものがあった。

 それはフラッシュグレネード。一気にすさまじい光が辺りを覆いつくす。僕はバックステップ。

 

「目を奪えばなんとかなると思った?」

「まさか。D!」

「っ!」

 

 光の収まって来た頃に、今度は一発の狙撃弾が飛来する。宮本玄乃のド頭直撃コース。それはもう華麗に弾かれて。

 

「!」

 

 もう一つの飛んできた弾丸にはじき返された。

 身を捻って避ける玄乃。……避けるかぁ。

 

「なぁに、今の曲芸。周囲にいる雑兵の手品……というわけでもなさそうね。そんなことができる兵士がいるのなら、とっくに私は蜂の巣でしょうから」

「もう一回D!」

「あなたが指示を出している。さしずめ女王蜂かしら。でも、同じ手は」

「クラウン!」

 

 銃弾で銃弾を弾く曲芸。しかも他人の放った銃弾を、だ。

 でもそれも一度見ただけで対処してきた宮本玄乃。あろうことかその弾丸を狙撃兵に撃ち返す、なんてことまでしたものだから、瞬時に違う指示を出す。流石に行きより帰りの方が遅いからね。

 

『暗視スコープがやられました!』

『ギリギリですが回避成功! ありがとうございます!』

 

 インカムから聞こえてくる狙撃班の面々の声。 

 欠けはない。そう、これが私のお願いした事一個目。

 集まった警備局──全員の指示権を一旦僕に渡す、というあまりにもあまりにもなお願い。だけど彼らを無為に殺すのは惜しい。技術がある人たちなわけだし。

 

「S!」

「色々バリエーションがあるのね。けれど、指示を出すあなたが死んでしまったらこの蜂の巣はどうなってしまうのかしら」

「ううん、残念。その程度の剣は当たらないんだな、これが」

 

 風を切る音。

 おもむろに玄乃が刀を後ろにやれば、そこで斬撃のぶつかり合いが起きる。

 

「……斬撃?」

「SにAを重ねて!」

 

 また飛んでくる閃光弾。それが破裂した瞬間、金属をこすり合わせるような音が七度ほど響いた。

 

「ワイヤーソー。なるほど、あの女がいるのね」

「そしていつの間にか僕がここにいる」

「!?」

 

 大きく下がる宮本玄乃。僕にほとんど攻撃力が無いと知っていても、間合いの内側に入られたことは……何の気配もなく入り込まれたことには動揺したらしい。

 

 そして、バックステップの最中である彼女に対し、業炎が降り注ぐ。

 業炎。そう、満を持してのご搭乗、紅守黒湖である。空中なら逃げ場がない。受けるにもいなすにもダメージを負わざるを得ないその剣に、宮本玄乃は。

 

「ぶへっ!」

 

 ……柄を地面に突き立てて簡易足場を作り、剣は刀で受け止め、さらには紅守黒湖の腹に蹴りを入れる、という所業で躱して見せた。

 

「B!」

 

 僕が言うより速かったと思う。言う前に動いていた。彼女は──凛子ちゃんは、宮本玄流の肉体の一切を無視して、その鞘を狙う。地面に突きたてられた鞘を、高周波ブレードで。

 

「削り、斬る!」

 

 斬った。

 

「わ」

 

 そんな無防備な凛子ちゃんが不自然な挙動で釣り上げられる。冷泉藍子だ。そしてそれはナイス判断。だって今にも玄乃の蹴りが彼女に届きそうだったから。

 これだけやって、こんだけやって、鞘一本を割断しただけ。

 

 いい塩梅だ。

 

「万事滞りなく進んでいる、という顔ね」

「うん。万事滞りなく進んでいるからね」

「本当かしら。あなた達の見事な連携で私の刀の鞘を叩き斬った……たったそれだけが?」

「君が無敵じゃないということがわかった。君が疲労を覚える存在だということが分かった。何より」

 

 踏み入る。

 また。

 

 彼女が気が付いた時には、懐の中に。

 

「さっきから、どうやって!」

「相性だよ」

「……相性?」

「そう。君は、宮本玄流を悪意から守る存在だ。あらゆる害意から、あらゆる敵意から。全ての困難を玄流ちゃんから遠ざけ、退け、撃滅する。そういう存在だ。ゆえに」

 

 何度も何度も。

 何度も何度も何度も何度も。

 

 宮本玄乃が退がるたびに、その懐へ潜り込む。

 

「僕みたいな無害な──あるいは隣にいると幸運を呼び込むようなやつは、排除対象にならない」

「幸運を呼び込む……? あなたが……あなたが来なければ、玄流は平和なままあれたというのに?」

「でも僕が来る前に佐々木と柳生を斬っていたじゃないか。あれは君が玄流ちゃんの身体を操れるようになって、自分の実力を試したくなったから、じゃないのかい?」

「……」

「僕に責任転嫁するのはダメだよ。君のせいだ、宮本玄乃。僕が不運を玄流ちゃんに持ち込んだんじゃない。君が彼女を悪意に晒したんだ。ただの守護霊のままでいれば平穏無事だったものを、わざわざね」

 

 また、懐に入る。

 入って手首を掴む。

 

「僕が幸運で、君が不運だ、宮本玄乃」

 

 チッと音が鳴る。

 その後、カランカランと刀の落ちる音が二つ。

 

 ま、あの時と同じ。凛子ちゃんの時とね。

 斬った。手の腱を。

 

「あ、なた、何が幸運……」

「しゃがんで」

 

 しゃがませる。その頭の上を通り抜ける銃弾二発。指示にないことをしないでほしいなぁ。

 

「黒湖さん、冷泉さん、凛子ちゃん」

「ん-?」

「まさかとは思うけど」

「はい!」

 

 全身の悲鳴を無視して宮本玄乃を担ぎ上げる。

 あ、いや、無理だ。これは無理。とか思ってたら、紅守黒湖が代わってくれた。

 

「ォォォオオリャ──────!!」

 

 そしてあまりにもいいタイミングで飛び出してくるスポーツカー。

 

「ズラかるよ!」

「あらほらさっさー」

 

 ノリがいいのは紅守黒湖だけだ。あるいはほかの面々は知らないまである。怖。

 

『おいどういうことだ! そいつは重要参考人だぞ!』

「彼女は冷泉藍子と同じで紅守黒湖の監視下に置く。君達のお上の判断だよ」

『なんでアンタがそんなこと知って──まさかお前』

 

 スマホの電源を落とす。

 そうして。

 

「代わりにユリアさんに謝っといてくれない?」

 

 僕の意思も落ちた。

 

 

CEFALOPODOS

 

 

 暗い、黒い空間。

 そこに女性がいる。スラりとした背丈の女性。凛とした──いや、鬼のような。

 

 対するは、久方ぶりに大学生な僕。

 

「……なぁに、それ。もしかしてあなた、精神年齢が大学生で止まっているの?」

「似たようなものかな。もう一つ共通項があるよ。なんだと思う?」

「さぁ、なんでしょうね」

「僕も同じでさ。一度死んだ者同士、だったりする」

 

 宮本玄乃は死んだ。

 宮本玄流の中にいる宮本玄乃は、玄流の憧れが生み出した第二人格だ。

 

 違う。

 彼女は本物の玄乃だ。そういうオカルトがあり得る世界なのだとは、まだ明かされていない時期だけれど。

 

「死ぬべきよ、私は。玄流の毒になる」

「じゃあ僕も死ぬべきだ。小高井金枝の毒になる」

「……あなた、成程。それでそんな姿なの」

「うん。気付いたら結婚していて、気付いたら出産も終えていたよ。そうしてあれよあれよの間に夫と娘が死んだ。夫が大犯罪者のリーダーで、娘がその目撃者で」

「そう。でも全く悲しくなさそうね」

「そりゃね。流石に三年じゃ他人だよ。……僕が留まっている、いられる理由は、小高井金枝に僕が必要だから、だと思うんだ。多分、夫と娘を愛していた彼女じゃ、今もまだ事実を受け止めきれていない。心が壊れる寸前にある。だから僕が繋いでいる」

 

 これは常々考えていたこと。

 どうして僕が排出されないのか。僕という魂がどうして拒絶されないのか。

 小高井金枝には、できないのだ。それくらい弱っている。もしかしたら夫のしていることにも薄々気づいていたのかもしれない。あるいは何か、他に何かもっと凄惨な事件を目の当たりにしたのかもしれない。

 とにかく小高井金枝には繋ぎ止める誰かが必要だった。

 

「僕は彼女が戻るまで、彼女に幸運を与え続ける。──で、君は?」

「……玄流に、私は必要かしら」

「少なくとも今の玄流ちゃんじゃあ、自分を守れない。そうそう、僕占いができるんだけどね。君がいなかったら玄流ちゃん、近い内に死ぬよ」

「……もういいわ。言いたいことは分かったから。……眠る。その時が来るまで」

「うん。それがいいよ。幸い玄流ちゃんの心は壊れていないからね。僕は紅守黒湖と一緒に住んでいないから、いざという時は」

「言われるまでもないわ」

「そっか。じゃあ──君との勝負、僕の勝ちってことで」

 

 急激に白んでいく世界。

 夢が醒めるのだとわかった。そして恐怖した。

 

 もし、起きた時――目の前にユリアさんの顔があったら。

 僕は、僕は。

 

「小高井おばさん!」

「……あ、凛子ちゃんか」

「良かった、起きた……私、皆に伝えてきます!」

 

 そう言って爆速で消えていく凛子ちゃん。

 全身を見ると。

 

 点滴点滴オブ点滴。

 包帯包帯飛んで包帯。

 

 マミーかな?

 

「……思ったよか重傷説」

 

 思ったよか重傷だった。

 

 

CEFALOPODOS

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