CEFALÓPODOS -セファロポドス-   作:夜泣かし村

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13.縁

 いやー。

 やっぱ旅館出るべきじゃなかったって。

 

 あの姉妹……血の繋がっていない姉妹、基本的に他人の話聞かずに暴走するし、殺人を手段として組み込むことに一切の忌避がないし。

 

 あとね、幸運の気配の量でわかる。

 バラの花畑の方角が。匂いも結構だねコレ。

 

 ……一応あれから狙撃は来ていない。くちばっちこと朽葉怜子は無駄なことはしない主義寄りだろうから、僕への狙撃は弾代が勿体ないと判断してくれた……のだと思いたい!

 これで桃山照美やカオリが仕向けられてきたら……まぁ桃山照美に関しては冷泉さんが対処可能だから良いけど。カオリは僕がやれるし。

 

「ひ、ひな子ちゃん、あんまり先に行かないで……」

「ム、なしてですか」

「私達は夜目が利くし、貴女の後も追えるけれど、小高井さんと千代さんはそうじゃないからよ。一般人に歩幅を合わせなさい」

「……フム。確かに?」

「あと……ひな子ちゃん? ここだけの話、金枝は幸運体質だから、あの子の側にいた方が──」

 

 聞こえてるよー、と思いながら、ふとキラリとしたものを視界に収めてそちらを向く。

 そこにキンキラキンのカブトムシが。

 

「な──確認を怠った覚えはないというのに!!」

「おか……小高井おばさん、すごい……」

「いやいや、これ別に僕にとっての幸運じゃないから本当にただの偶然……」

 

 視界に入る、七色に光るクワガタ。

 視界に入る、白金色のコガネムシ。

 視界に入る、赤い蝶──ってコイツはヤバいけど!?

 

「コタカイさん……もしや、全身さとう水!?」

「それ褒め言葉なのかなぁ」

 

 なんにせよ、あの化け物のことを考えると屠桜ひな子が近くにいるのはありがたい、のか?

 そういう意味では幸運は働いているのかもしれない。……逆に言うと、やっぱり千代ちゃんと冷泉さん凛子ちゃんは巻き込めていない様子だから、あんまり離れないようにしてもらう必要があるけど。

 

「実績は証明されたわね。彼女のそばを離れない方が良いわ」

「そのようでゴザル……が! コタカイさんを連れてもっと奥へ行けば、もっとレアものが……」

 

 それはやめよう?

 レアものどころじゃない化け物が出てくるよ?

 

「オリャー!」

「うわっ!?」

 

 それはもう華麗な動作で──背負われる。

 

 い……嫌な予感が。

 

「千代ちゃん! レイセンさん、凛子ちゃん! ついてくるべし!!」

「千代ちゃん、冷泉さん、凛子ちゃん、助けてくれたりは」

「無理でしょ」

「無理ね」

「ひ、ひな子ちゃん! 小高井おばさんは黒湖さんとかほど強くないから、気を付けて!」

 

 そうじゃないんだよね。

 そうじゃな──。

 

 

CEFALOPODOS

 

 

 ジェットコースターもメじゃない速度にぶん回されて……辿り着いてしまった。

 そのバラの群生地に。

 

「おお……なんという幸運! くーちゃんに言われてたバラ探しもできて、さらにレア蝶ばかり! スーパーさとう水!! もうコタカイさんを飼うべき!!」

「ひな子ちゃん、人権って知ってる?」

「くーちゃん曰く流々家じゃ無い物と一緒!」

 

 それはそう。

 

 ……さて、いるね。

 いるけど……鳴海ちゃんみたいに刺激しなければいい話なのでは? ここは穏便に、バラを見つけたという目標達成で、ゴーホームと行かないかい。

 

 赤い蝶が……ヤバい方向に。

 ひな子ちゃんの目もつられてそっちに。

 

 ──僕の幸運体質は、僕以外には作用しない。僕が意識的に巻き込まない限りは無理。

 

「アレは……幻のレッドエンジェル!?」

 

 だから、ひな子ちゃんが僕を背負ったままそちらへ近づくことも当然あり得ることであり。

 そのひしひしと感じられる、いいや、警鐘のように鳴る「後ろに下がった方が良さそう」という気配が嵐のように──。

 

「ひな子ちゃん、屈んで」

 

 声は。

 ……自分でも驚くほど、低く出た。

 

 それに従ってくれるひな子ちゃん。伴って僕の位置も下がって、びゅん、という音と共に過ぎ去ったナニカが僕の頭のあった場所を抜けていく。

 

「む? ……コタカイさん……()()?」

「ま……っずい! あっちの方向は──!」

 

 僕の頭のあった位置を通り抜ける、ということは、僕らの後ろへ向かうということであり。

 そこにいるのは、爆走したひな子ちゃんを追いかけてきた三人。

 

「──敵う相手じゃない! 逃げて!!」

 

 叫びが届いたかはわからない。

 ただ、林を抜けてきた三人は瞬時に臨戦態勢を取り……ソレによって屠られた。

 

 かに、思われた。

 

 乾いた音。

 

「狙撃……良かった、依頼はちゃんと!」

「……ボスからの伝言だ。"比重が釣り合わないのは確か。ついさっきまでは貴女を仕留めるつもりだった。──少しだけ、事情が変わったから、依頼は受けてあげる"だそうだ」

 

 隣に降り立ったのは桃山照美。

 良かった。何があったのかは知らないけど、くちばっちが敵じゃなくなるだけで、味方になるだけで……ありがたい。

 

「……頭と心臓を貫かれても死なない、か」

「え、嘘今二回撃った?」

「成程。やはり自身が狙われていないとその幸運の気配とやらは何も働かないらしい」

 

 あ、うん、いや狙われてても別に攻撃手段とかわかるわけじゃないけど。

 というか、そう。

 

「ひな子ちゃん……冷泉さんと凛子ちゃん千代ちゃん連れて、()()()()()?」

「……逃げる?」

「そう。紅守さんの所まで。僕は連れずに」

 

 多分、吸い上げてしまうから。

 

「可能でゴザルが……なにゆえ?」

「ちょっとね。……貴方も、できれば僕から離れて、彼女らを守りにいってほしい。僕は誰かを守るとか、無理だから」

「そもそもそういう依頼だ、それは構わない。だが、その少女の保護者はいないのか?」

「ああ……ちょっとした手違いでね」

 

 何発も何発も、ライフルの音が響く。

 一切効いてはいない……ようではあるけれど、やっぱり頭蓋を撃たれると思考が鈍りはするらしい。くちばっちはそれに気付いてさっきからずっと頭部だけを撃っている。

 

「朽葉さんと、どっかにいるかもしれないカオリにも伝えておいて。機を見て逃げて、って。そこまで追いきれない」

「……」

 

 桃山照美は。

 

 構えのようなものを、取った。

 

「……話聞いてた?」

「聞いていた。だが、護れ、というのは依頼としてボスが受諾したもの。逃げろという依頼を受ける判断能力は持ち合わせていない」

 

 このままだとアレのヘイトがくちばっちか──桃山照美に向く。

 割って入れ、って。それは無理な話だ。けどどっちかに死なれると、多分色々困る。

 

 だから逃げてほしいんだけど……。

 

 跳躍したのが見えた。

 目で追い切れてはいない。だから何が、かは……地に残されたもので判断するしかない。

 けど、あんな跳躍力を見せるのはひな子ちゃんかアレだけだ。

 

 そしてひな子ちゃんが僕を背負ったままずっと疑問符を浮かべているのだから、当然。

 

「マズい──朽葉さんが危ない!」

「それは大丈夫。あんだけバカスカ撃ってたのは囮だから」

 

 声。

 

「あ、くーちゃん!」

「……紅守黒湖か」

「ハイ、ドーモォあたしです。というわけでひな子、ちょっと温泉入りにいこっか」

「……温泉?」

「そそ。──()()()()()()()()()()情報提供、ありがとうね、金枝さん」

 

 バレてる。

 そりゃそうだとは思ってたけど。

 

「千代ちゃんたちを保護しないと」

「あー、だいじょびだいじょび。三人には今旅館に戻ってって伝えたから。くちばっちも誘ったんだけど、普通に断られちゃったし……今回はあたしとひな子だけで行ってくるよ」

「話が見えない。どういうことだ」

「ん? ああ、もうくちばっちのトコに戻っていいってこと。依頼満了。金枝さんが払う予定だったお金はあたしが建て替えとくから、あとで請求して」

「……わかった」

 

 どう……どういう、ことだろう。

 なぜ紅守黒湖と朽葉怜子が繋がっている? 犬猿の仲も良い所な関係性なのに。

 

「さて、じゃあいこっか。美禰子ちゃんの説得だけで収まりきるかどうか不安だしニー」

 

 よく、わからないけれど。

 幸運の気配はある。脅威は……過ぎ去ったらしい。

 

 ……良かった。本当に僕一人じゃどうしようもない事態だったから。

 

 

 

 で。

 

「ふぃー……いやホント、何が起きたのかさーっぱりわかんないけど、いい湯ね」

「あ、うん。……客室備え付けのお風呂でもこんな豪華なんだね」

 

 僕たちは旅館に戻って、客室の方の温泉に入っている。

 幸運の気配のする旅館。つまり、悪意は全員死んだあと、ということ。

 

 ホントは……女将さんくらいは救いたかったけど、既に、だったらしい。

 はなれにいるのだろう当主葉蔵さんと美登利さんには一切出会っていない。

 

「……なんだかとんでもないことになってしまったけれど……貴女が旅館へ入るのを渋っていたのって、まさか」

「まぁ、うん。そういうこと」

「そう……。ごめんなさい。ちゃんと忠告を聞いておくべきだったわ」

「はいはい、何があったか知らないけど暗くならないの。……凛子ちゃん、この旅行……もう気付いてるんでしょ?」

「え……」

「ちょ、千代ちゃん?」

 

 ずっと俯いていた凛子ちゃん。

 彼女に千代ちゃんが問いをかければ……小さく「……はい」という答えが返ってきた。

 

「聡い子よ。あとあんたらがわかりやすすぎるってのもあるけど」

「う……」

「僕まで?」

「んー。まぁ、金枝はいつも通りだったわね、そういえば」

 

 だろうね。

 僕そこまで人情に厚くないし。

 

「……藍子お母さんと、小高井……お母さん。ここのところずっと私が塞ぎ込んでたから……この旅行、組んでくれたんですよね」

「そう……ね。否定はしないわ」

「僕の家に乗り込んできてまで企画してきたよ」

「ちょっと、あなたね!」

「……。ごめんなさにゅい」

 

 にゅいーっと。

 謝罪を口にした凛子ちゃんの頬を千代ちゃんが引っ張る。

 

 うん、だと思ったよ。

 安心してる──千代ちゃんなら任せられるって。

 

「ぁ、あにふるんぇふか」

「はいここで問題。子供が落ち込んでました。大人たちはそれを見て旅行を計画しました! ……なんのためか、わからない?」

「……わらひを、励ます(はへまふ)はめ……」

「不正解。……あんたを喜ばせるためよ。だから今言うべきはごめんなさいじゃなくて」

 

 千代ちゃんは凛子ちゃんの身体を持ち上げ、自分の膝に座らせて……僕らへ向き直らせる。

 

「はい」

「……。……ありがとう、ございます」

「んー、硬すぎるけどまぁ今はそれでも良し! ……それで? 隠し事大会してないで、吐いちゃいなさいよ。凛子ちゃんは何を後ろめたく思ってるの?」

「……その」

 

 ぽつ、ぽつと凛子ちゃんの口から語られ始めるのは、まぁ、想像通りの話。

 自分が危ない事件に巻き込んでしまったとか、傷つけてしまったとか、いろいろしてもらってるのに何も返せていない、とか。

 

 段々目に涙まで溜めてきた凛子ちゃん。

 

 を、持ち上げる。

 

「へ!?」

 

 そして抱きしめる。

 

 正直に言うと、僕は精神が大学生だから……うん、わかんない。

 こういう時にどうしたらいいかとか、こう、お母さんらしい、格好いいこと言うとか、そういうのはわかんないしできない。

 

 だからまぁ、幸運の気配のすることをしよう。

 

「僕もう多分、凛子ちゃんには殺されないよ」

「……え」

「なんとなくそんな感じがするんだよね。さっきの旅館で、レベルアップ、みたいなさ。だから……んー、なんていうのかな。まず巻き込む巻き込まれたの話は、そもそも結構僕が事件に首突っ込むタイプで。ね、千代ちゃん」

「そうね。こっちが善意で忠告してやってんのに、危ない場所にポンポン行くわよね金枝って」

「あと傷つけてしまった度合いで言えば、冷泉さんの方が格段に上だよ」

「……まぁ。そうね。……入院させる、まで行ったわけだし」

「で、返してもらうに関しては、確かにそうなんだよね。ずーっと色々してあげてるのになーんにも返してもらってない」

 

 最後の言葉でずぅんと落ち込む凛子ちゃんを、もう一度抱きしめる。

 

「だから……ホラ、一応僕って未亡人なワケですよ。夫と娘を失った可哀想な主婦。……別に代わりになれっていうわけじゃないし、そういうことしてきたらむしろ怒るけどさ。……お母さんって呼んでくれるの、嬉しいよ。それが充分なお礼」

「……」

「あとはまー、どーしてもっていうなら、今度稽古つけてくれない? 僕、生存能力特化で攻撃力極低だからさ。攻撃の面では千代ちゃんにも劣るからさ」

「それに……ついては……多分誰が教えても無理です……」

「突然刺すじゃん」

 

 え、……なんで千代ちゃんも冷泉さんもうんうんって頷いてるの。

 ちょっとくらいはなんとかなる世界なんじゃないの!? 鍛えれば……こう……!

 

 ま。

 

「一人目のお母さんは冷泉さんでいいから、これからは無理してでも僕のこと小高井お母さんって呼んでみよう! あ、金枝おねーさんでもいいよ?」

「歳を考えなさい歳を」

「最年長が何言ってんのよ……」

 

 精神年齢精神年齢。

 

「わかり……ました……」

「まだ暗い。ので、今から冷泉さん千代ちゃん僕の三人で凛子ちゃん丸洗い計画に移りたいと思います」

「へ──」

「それは腕が鳴るわね!」

「ちなみにこれはくすぐり計画も兼ねるものとします」

「小道具の使用は?」

「ワイヤーソー以外ならいいよ」

「……お風呂につけてきているワケないじゃない」

 

 それはそう。

 

 まーまー。

 子供は我儘言ってりゃいいんだから。負い目なんか感じなさんな、ってコトで。

 

 

CEFALOPODOS

 

 

 事の顛末。

 どうやらアヤコちゃんと美禰子ちゃんは無事紅守黒湖のもとへ行ったらしい。

 そして残された葉蔵さんと美登利さんもまた原作通りの展開を迎えた。

 

 結局どうして紅守黒湖と朽葉怜子が協力していたのか、朽葉怜子が僕を狙うのをやめた理由はなんなのか、なんかは一切わからないまま──山津神家の一族は終わりを迎えたのだった。

 

 

 で、今。

 

「まさか仕事先が被るとはね」

「う、うん。先日命を狙われたばかりだから色々思うところあるけど、うん」

 

 だから時系列時系列、と思わないでもないけど……これ、幻の蝶だ。

 いや山津神家の時に見かけた蝶がブラッディアゲハじゃなかった時点で何かしらは感じていたんだけど、まさかそう繋がるとは。

 

「ただ、そのー……」

「別にブッキングしたわけでもないし、何をおろおろしているの?」

「いやそうなんだけど。……まぁ、うん。近付かないでくれたらいいか」

 

 流々家総合病院。

 彼女らは幻の蝶の依頼で呼ばれたから、早々に依頼人のもとへ。

 

 僕は全くの別口。柳岡総合病院からの出向依頼だ。

 

 だから、ちゃっちゃと手続きを終えて、その病室へ入る。

 

「……お願いいたします」

「正直言って五分だってことは」

「わかって……おります」

 

 なら、いいけど。

 ──その患者に触れる。

 

「……反応があった! やっぱり……流石は藤浪医師の遣わした人だ……!」

「となると……ぼ……じゃない、私が勤めている柳岡総合病院に」

「はい。移送となるでしょうね。ああ……良かった。これで彼女は助かる……!」

 

 ベッド脇のネームプレート。

 そこに書かれている名前は、弔村撫子。

 

 僕の幸運体質は以下略。

 だから……反応があった、ということは、それが僕にとっての幸運になるということ。

 

「それじゃあ、諸々の手続きはまた」

「はい! ありがとうございました!」

 

 

 病室を出る。

 出て、克ち合った。朽葉怜子と。

 

「……この病室に、何の用?」

「柳岡総合病院からの出向で……」

「……。……そう。この前の」

 

 ああそう、多分そう。

 時系列時系列ゥ! とは思ってるけど、もうアラーニァに関してはわからないので良しとする。

 山津神家の一族で、紅守黒湖と朽葉怜子が協力していたヤツ。

 あれが終わってすぐくらいにこの話がユリアさん経由で僕へと持ち込まれた。一酸化炭素中毒で目を覚まさない女の子が違う病院にいて、「ちょっと診てきて」と。

 たかだか受付事務に何言うとるんや、と思ったんだけど、続け様に「黒湖から聞いたけど、アンタとんでもない幸運らしいじゃない」と。

 

 それで……僕が近くに行くだけで「打つ手なし」とされた相手でもなんとかなるかもネ? みたいな話を紅守黒湖が朽葉怜子にしたぽくて、それが依頼とあーだこーだなんやかんやあったっぽくて、今僕がここにいる。

 

「……反応は」

「あったよ。多分目を覚ますのはそう遠くないかな」

「そう……」

 

 心なしか安堵した顔の朽葉怜子。

 ……時系列がおかしいから、一応聞いておく……べきだろうか。

 アレは多分過去の話なんだと思うんだけど……本当に一応ね。

 

「朽葉さん関連の……占いが一個手元にあるんだけど、聞いておくとか、ある?」

「私の?」

「正確には、鴇さんの」

 

 名前を出した瞬間、気温が低くなったような気がした。

 けど、幸運の気配はここでたじろぐな、と言っている。

 

「……いくら?」

「押し売りはしないし、そもそももう終わってる話かもしれないから……先に聞くだけきいてほしい」

「わかった。……場所を移しましょう」

 

 そうだね、それがいい。

 もうすぐ彼が後ろを通りかかるはずだから。

 

 

 して、屋上。

 

「……人違いによる誘拐。それも……撫子が目を覚ました後」

「うん」

 

 やっぱり、前後してる。

 聞いといて良かった、かな。

 

「言い値を払うわ」

「なら、今後。どんな依頼者に依頼されても、僕を狙うのはやめてほしいかな」

「……損失額が、そのまま言い値、ね」

「そういうこと」

 

 これが幸運だったのか。

 うん……うん。

 単独行動は、するべきだね。単独で動いている時は、あるいは守るべき者がいない時は……本当に上手くいく。幸運で在り続ける。

 

「……いいわ。ただし、追加の"占い"があるなら、今言って」

「Dr.フレイマー。……撫子ちゃんが火事に遭った直接の原因、その犯人について」

「……上乗せするから、全部吐きなさい」

 

 クトニア大使の件からアラーニァ側での時間は何も経っていないものと見て、過去の話を含めてすべて話す。

 大学、製薬会社、病院、副院長。

 

 本当に洗い浚い、だ。

 

 その全てを話したら……朽葉怜子は満足した様子で。

 

「一件だけなら。──護衛依頼程度は、無償で引き受けてあげる」

 

 と。そう言って去っていった。

 追従する桃山照美。

 

 あとに残るは僕と──カオリ。

 

「……今のさ」

「言いたいこと、あーしわかるかも」

「デレ、だよね」

「ですよね!?」

 

 カオリごとしゃがませる。

 そこを通り抜けて行く銃弾。

 

 うん。

 護衛依頼無償クーポンの前に、殺されないようにしよう!

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