ひぐらしのなく頃に~ただひたすら圭一と魅音がイチャイチャするだけ編~ 作:Java-Lan
[4日目(日):園崎本家:夜:前原圭一]
外は日も落ち、綺麗な月と満点の星空が広がっていた。
都会にいた時はこんな風景を見ることは無かった。
スモッグが凄すぎて、星空なんて一切見れなかったもんな。
ひぐらしが鳴いている。
朝と夕方ごろにしか鳴かないとおもっていたけれど、今の時間でも鳴くのか。
もっとも、もっと遅い時間になったら聞こえなくなるのだろうけれど。
俺は腰をかけてのんびりと月夜をみていたら、
足音が聞こえてきた。魅音だ。
「圭ちゃん、ここにいたんだ」
「おう、魅音。月が綺麗な夜だよな」
「あははは…こんな月夜なら、死んでも…いいかな?」
おいおい、婚約した途端に死ぬつもりか?
月が出ているとは言え、随分とルナティックな事を言うんだな魅音は。
「おいおい、ロマンチックだけど。そう簡単に死んでもらったら困るぜ?」
「あはははは、そうだよね」
「俺はいつまでもこうして魅音と月をみていたいぜ。月は、ずっと綺麗なままだろうしさ」
「うん…そうだね。あなたと見る月なら、ずっと…」
「だろ?」
「あ、あのさ…圭ちゃん、わかってて…言っているんだよね?」
「ん?何がだ?とりあえず、立ってないで早く座れよ」
「あ、あははは!まぁ、いいか!」
随分笑うが、やっぱり、
泡の出る麦茶を飲み過ぎたなコイツ。
魅音は俺のすぐ横にすわると、
俺の体に寄り掛かった。
「今日はゴメンね。圭ちゃん」
魅音が言うには、こういうことらしい。
興宮の実家から本家に来た母親の茜さんに、
昨夜、どれだけ素晴らしい体験を俺としたかを語った所、
それを聞いていたお魎のバァさんにより
「そんだらいい男だったら、先に結納を済ませっか」
という話になったらしい。
普段なら、そんな話が出てもさすがに一旦は冷静に考えるものだが、
まず魅音の母親の茜さんが乗り気だった上に、不幸にも(幸運にも?)ちょうど、
親族が集まっていたのが決定打になり、実行にうつされたそうだ。
「ほら、バっちゃも歳だからさ。早く私の結婚相手の顏が見たいって、
言ってきかないかったんだよ」
「そうか。なら、仕方ないよな」
ん?それじゃあ、「魅音をキズモノにした」ってどういう意味だったんだ?
「あ、アハハハ。それは、おじさんもよくわからないや」
「そうか、俺はてっきり…」
…圭ちゃん。お姉の中では昨夜の思い出は、宝物になっているんです。
だから、圭ちゃんが傷つけたりしたと思ったり、謝ったりしたら、その思い出を足蹴にしたことになるんですからね。二度と、そんなことを言わないで下さい。
「ん?なに?」
「いや、知らないうちに魅音を傷つけちまったのかな。って思ってさ…」
「…圭ちゃんは、私を傷つけたことないよ。でも、あんなに真剣に母さんの前で言ってくれて、
その…さ。すごく嬉しかったよ」
「魅音…」
俺は魅音と見つめ合う。
月の光に照らされた魅音は、神秘的で神々しく美しかった。
「圭ちゃん、嫌じゃなかった?」
「何がだよ」
「えと、いきなり、その…婚約って話が出て…」
あぁ、なんだ。そんなことか。
まぁ、付き合っていればいつかはそうなっていたと思うぞ。
それが少し早まっただけだ。
それに魅音の母親の茜さんに言われて、俺もすっかり覚悟完了したし。
おそらく、あの場で言われなくても、いつかはプロポーズしていたはずだぜ。
だから、それは気にはしていないけどな。
「ただ、まぁ…」
「なに、圭ちゃん?」
「プロポーズだけは、してみたかった…なんて、思っただけさ」
「………」
「今日、みたいな月夜の綺麗な晩とかに」
見晴らしの良い所で、二人っきりで向かい合い、
緊張して震えた体で指輪を取り出してプロポーズを行う。
そういうシチュエーションは、
もう出来ないかと思うと少し残念だぜ。
「今じゃ…ダメ、かな?」
「え?」
うるんだ瞳で魅音は見つめてくる。
年齢は足りない、収入も無い。指輪だってもっていない。
だけど、想いだけは伝えられる。
本来ならプロポーズはずっと先のはずだった。
しかし、周りの人たちによって、良くも悪くも俺達は婚約することになった。
だから、もうプロポーズをすることは無い。
だけど、もしも、するのであれば、おそらくそれができるのは今夜だけだ。
俺は魅音の両肩に手を置いた。
心臓の鼓動が高まっていく。
おいおい、既に婚約をすませているってのに、何を緊張しているんだ前原圭一?
おちつけよ。俺の心臓。これはある意味、ただの確認作業のようなものだろう?
だけど、心ではわかってる。
これは、違うんだ。周りが勝手に決めた婚約じゃない。
本当の意味での、
魅音に俺の心を伝えるプロポーズなんだ。
「…魅音」
「…は、はぃ」
「俺と、結婚してくれないか?」
「………」
「………」
「…うん」
魅音が恥ずかしそうに頷いたのを確認すると、
胸の中に何かが広がっていくのを感じた。
言葉には言い表せないこの感情は、
なんというか、幸福感のようなものなんだろう。
魅音の体を引き寄せる。抵抗はしない。
目をつぶり、俺に全てを任せている。
俺はそっと顔を近づけ唇を重なり合わせた・・・
ひぐらしの音が聞こえてくる。
まるで、俺達の婚約を祝福するように。
そう、俺達は今、結婚したんだ。
\パシャ!パシャ!パシャ!!!!/
な、なんだ!?突然の発光がッ!?
「お~ほほほほっ!トラップは、最後の最後、ほんの少し行うだけで良いのでございますのよ!」
沙都子!そして、その後ろにいるのは…
フリーカメラマンの富竹さんじゃないか!
「やぁ、ごめんね圭一君。
今日は境内にいた梨花ちゃんに、圭一くんの婚約披露宴があるからって誘われてね」
「そ、そうだったんですか」
ん?婚約披露宴があるから誘われた?って…
梨花ちゃんも、沙都子も最初から知っていたのか!
葛西さんの車が来た時点で!
「それで、沙都子ちゃんと梨花ちゃんが、
どうしても月夜に佇む二人の写真を撮って欲しいって言うもんだから。つい、ね。
許可も取らずに、写真を撮ってごめんね圭一くん」
な、すると、今のフラッシュは、カメラのシャッター音と富竹フラッシュ!?
まさか、プロポーズした瞬間のキスを俺はとられてしまたのかぁああああ!?
「はぅ~☆み、み、み、魅ぃちゃん!か、か、か、可愛かったよぉ!可愛かったよ!!」
「最高の瞬間が撮れたのです。これでコンテスト入賞は間違いないなしですよ、富竹☆にぱ~」
いや、沙都子と富竹さんだけじゃない。
鼻血をダラダラ流すレナと梨花ちゃんもいるじゃないか。
「ボクは最初から、全員いると圭一に伝えておいたはずですよ?」
そういえば梨花ちゃん、そう言っていたな。
ニヤニヤ笑いながら詩音も現れる。
「ま、一夜を共にしても手が出せない
ウブな二人には、これぐらいが丁度良い関係ですよね?」
詩音の奴も、今夜の事を知っていて学校に連れてきたんだな。
すると何か、俺は全員に騙されていたってことか?
ちくしょう、油断したぜ。
完全に隙をつかれた。
これが祝い事じゃなかったら、完全に人間不信真っ逆さまルートだぞ!
魅音なんて真っ赤になった顔を抑えて悶絶しているじゃないか。
わかるぜ、魅音。俺もこの場で顏を覆って、ゴロゴロしたいぜ。
ん?もう一人、奥から出てきた。
あれは富竹さんの恋人?の、看護師の鷹野三四さん?
「あら、あら、圭一くんやるわね。その年でプロポーズだなんて、
ジロウさんにも見習ってほしいわ」
「あ、いや、困ったな…アハハハハ…」
鷹野さんが、
なんでここに?
「それはもちろん、鬼ヶ渕村を支配する御三家のトップ。
鬼の血を引く正統なる後継者である園崎本家の邸宅に入る機会があるだなんて
そうそうは無いもの。こんな機会を逃すわけはないわ…クスクスクス…」
あぁ、そうだ。オカルトマニアの鷹野さんは、こういう人だった。
というか、その言い方だと今の園崎邸は、誰でも入れる状態なのか?
沙都子が玄関を指さす。
「圭一さん、入口の方を見てごらんあそばせ。
雛見沢中の皆さんが、圭一さんと魅音さんを祝うために駆けつけていらっしゃいますわ」
ゲッ…なんだこれは…?
入り口の前が、ちょうちん行列になっているじゃないか!?
というか、出店まで出て無いか?これは、ちょっとした祭りだぞ!?
「園崎家の次期当主、跡取り娘の魅音ちゃんの結納だからね。
これぐらい盛大にやっても不思議じゃないかな?」
そういうと、富竹さんは、ちょちん行列や、出店の写真も撮り始めた。
こういう風景を見ると、改めて自分は凄い家にはいることになったのだと身震いするぜ。
「ところで、圭一君。
覚悟は良いのかしら?」
そんな俺を見て、
鷹野さんは笑みを浮かべた。
「覚悟、ですか?」
「そうよ、鬼の住処に入る、覚悟…」
雛見沢村には陰惨な過去の歴史がある。
それはこの村が、かつてに鬼と交わり。半鬼半人の仙人として住み着き、
恐ろしくも、おぞましい数々の所行をしてきたという歴史だ。
その因習が今でも残っている。
園崎家は、この雛見沢の支配者であり、
そして、それらの歴史の暗部を引き継ぐものとして君臨しているのだ。
いや、歴史だけでは無い。
現在も、雛見沢、そして興宮周辺のに顕然たる勢力を持ち、
暴力団などの裏社会への影響力を持っているのだ。
「圭一君、貴方が園崎魅音さんと結婚するということは、
闇の歴史と、裏の社会を引き継ぐと言う事なの
それは、貴方の心に、魂に、とても重くて、辛く、絡みつくものよ?」
まったく、鷹野さんらしい御祝だぜ。
冗談でも本気でも、目出度い席上でいうものじゃないだろう。コレ。
実際、この話を聞いて、富竹さんは困った顔をしているし、レナも沙都子も梨花ちゃんも詩音も露骨に嫌な顏…というより非難するような顔で鷹野さんに向けている。
でも、まぁ、俺にとっては、この問いはいつか通る通過点だってことぐらいわかっていた。
そういう意味じゃ、鷹野さんに感謝しないとな!
不安そうに俺を見つめる魅音の肩に手を回して、引き寄せる。
「そんな辛い環境なら、余計、魅音一人に抱えさせるわけにはいかないよな!」
「圭ちゃん…」
「一人より、二人の方が重荷は軽いってものだろ?
裏の歴史だぁ?上等だ。裏だろうが闇だろうが、そんなものは全部飲み込んでやる!
心配するな魅音。お前が鬼ってんなら、俺だって鬼になってやる!
いや、鬼を従える閻魔大王になってやるぜ!敵がいるなら上等だ、かかってこい!
魅音の敵は俺の敵だ!それが家族を守るってことなら、いつだってやってやるさ!」
「圭ちゃん!」
ぎゅううううううう!!!
おわっ…魅音、嬉しいのはわかるが全力で抱きしめないでくれ。く、苦しい…
お、おいお、レナも沙都子も、梨花ちゃんも詩音も…笑顔で拍手していないで助けてくれ…
「あらあら、ごちそうさま。ふふ…いらぬお節介だったわね。
では、そろそろいきましょうか、ジロウさん?」
「あ、あぁ…じゃあ、皆。また!」
と、富竹さんッ、鷹野さん…!
た、助けてから行ってくれ!!!く、く、くるしい!!!
「圭ちゃんッ!!好きッ!好き!もう、私、恥ずかしがらないよ圭ちゃん!
圭ちゃんの事好きだった!ずっと前から大好きだった!これからは、ずっと一緒だよ圭ちゃん!もう、圭ちゃんが嫌だっていっても離さないんだからね!!だって、もう夫婦なんだもん!圭ちゃんを独占したって誰も文句は言わないよね!」
おぉ、初めて、魅音に好きって言われたぜ…!
だけど、ちょっと…苦しい…!
わかった。わかったから離してくれ魅音…
い、意識が…あ…
俺は薄れゆく意識の中、
仲間達の喜びの歓声が悲鳴に代わっていくのに気が付いた…