ひぐらしのなく頃に~ただひたすら圭一と魅音がイチャイチャするだけ編~   作:Java-Lan

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インターログ「鷹野三四」

[4日目(日):入江診療所(入江機関):深夜:鷹野三四]

 

あらあら、こんな時間になってしまったわ。

随分見て回ってしまったから仕方ないわね。

 

それにしても、圭一君はやるわね。あの歳でプロポーズするだなんて。

あの積極性は、ジロウさんにも見習ってほしいものね。

 

もう何年も一緒にいるんだから、勇気をもって一歩踏み出して欲しいわ。

そうすれば、私だって、ナース服を着て被写体になってあげるのに。

 

そりゃ、若い子には負けると思うけど、

これでも結構いける方だと思うわよ?

 

まぁ、それはいいわ。

今は、これね…

 

鷹野三四は、アタッシュケースをテーブルの上に置くと、暗証番号を入力しロックを外した。

この中には、鷹野三四の私的財産…億の金が積み込まれている。

 

この金は、元々鷹野三四が後援者から譲り受けた支援金であった。

しかし、意外にも上手く物事が運んだために、今まで使うことも無く保管されていたのである。

 

「…このお金を、使わせて頂きます」

 

かつて自分を信頼し、この多額の資金を渡してくれた老人の顔を思い出し。

彼女は黙祷を捧げた。

 

入江診療所・入江機関は、高野一二三博士が研究していた雛見沢症候群を

その孫である、鷹野三四が研究するために作られた施設であった。

 

そのため名目上のトップは入江京介であったが、実質的には鷹野三四が取り仕切っていたのである。

 

「東京」と呼ばれる超党派でつくられた組織の支援の元に「雛見沢症候群の治療」として

研究がおこなわれていた。だが、真の目的は、核兵器を持てない日本が、その代わりとして

もてる生物兵器としての運用であった。

 

当初は順調であったが、転機が訪れた。

彼女の支援者であり、東京という組織の有力者であった老人が亡くなったのである。

組織には派閥があり、トップが死ねば権力の再編成がおきる。

 

そして壮絶な内紛の末に「東京」の権力機構がかわり、方針も180度変わる事となった。

すなわち、生物兵器の開発を中止することが決定されたのである。

 

それは、生涯をかけて研究して誰も認められなかった祖父の研究を解明しようとしていた

鷹野三四の努力の終焉をも意味していた。

 

鷹野三四は怒りはすさまじかった。

祖父の夢をこんなところで終わらせるわけにはいかない。

祖父の無念を晴らすために、その研究を引き継ぐため、努力を重ねて勉強し、

人脈を得て、派閥をの力を後ろ盾にようやくここまできたのだ。

 

上層部の方針がかわりましたので、これで終わりです。

では納得しかない。彼女は上申し、直接上層部に訴えることにした。

なんとか、この説得で研究の続行を認めさせようとしたのだ。

 

しかし、ここで思わぬことが起きた。

 

出発前に、何気なく見た祖父との思い出のアルバムの中に、

自分あての手紙があることに気が付いたのである。

 

それは、鷹野三四への幸せを願う祖父の温かい心が書かれていた。

 

祖父・高野一二三が死ぬ直前の彼女に送った手紙には「研究が認められれば、それは人々に伝えられ神となる」だから、己が研究し認められなかった「雛見沢症候群」の解明を引き継いでほしいとの願いが書かれていた。

 

しかし、アルバムに挟まれていた手紙には、研究を引き継いでほしいとの思いとは別にもう一つ、

「自分の研究が三四の幸せの足かせにならないように」との願いが書かれていたのである。

 

この手紙を読んだ瞬間、鷹野三四は死んだ祖父、

そして次に富竹ジロウの顔が浮かんだ。

 

そして、彼女は嗚咽した。祖父の自分の対する優しい心に泣いて、泣いて、泣き続けた。

涙が止まった時、彼女の中にあった祖父の研究に対する狂想的な情熱は失われて、客観的に物事を見えれるようになっていた。

 

「雛見沢症候群」の研究は中止になったが、実をいうと、ある程度の全容は解析されており、

また、治療方法もほぼ確立されつつあった。

 

兵器としてではなく、治療法に重点を置いていた入江京介所長の努力により、

三年後の終了までに、一般的な病院でも治療が出来るレベルにまで到達できそうなのである。

 

つまり、「雛見沢症候群」という病状の治療という表向きの看板だけみれば、

確かにこの研究はもう既に終わりを迎えたと言っても過言では無い。

 

それでも鷹野三四が研究続行に拘ったのは、この病気の特質性でもある「人間の行動に影響を与える」という部分が解明されていないからである。

 

雛見沢症候群は、女王感染者を中心に活動を行っていることが予想された。

これは、感染者は蜂やアリのように、一人の女王に統率されているという説である。

 

雛見沢には「オヤシロ様の生まれ変わり」と言われる古手梨花という存在がある。

雛見沢の住民に信奉されている彼女こそ女王感染者であり、だからこそ、雛見沢の住民から崇められている…

だが、この論はある程度は構築されたものの、まだ実証できているわけではない。

 

人間の行動学見地から言っても、これらを解明できれば人類文化史と医学史に大きな足跡を残すことは間違いない。

 

「だけど、これらを信じる人がいるかしら、ね」

 

祖父の手紙を読んだことで、完全に冷静になった鷹野三四は、寄生虫が人間の行動を支配するという説が、あまりも一般的には受け入れがたく、逆に荒唐無稽にしか思われないことを理解していた。

 

いや、最初からわかっていたのかもしれないが、

今までは、ひたすら雛見沢症候群解明への情熱が先走り

無意識に蓋をしていたのかもしれない。

 

だので、上層部に直訴にいったときはその部分を伏せて行うことにした。

しかし、特に目新しい要素が無い事は、説得する意味もないということである。

 

当然のように研究続行は不可と判断された。

 

だが、鷹野三四はとくだん取り乱したり、不満をぶちまけることもなかった。

今まで研究に尽力してもらったことど、三年間の猶予を頂い事に感謝の意を伝えり、

深々と頭を下げるに留まった。

 

「君が、この研究で力を発揮したことは我々も十二分に理解している。

 また、何かあれば我々も力を貸そうではないか。君には期待しているよ」

 

リップサービスからもしれないが、

上層部から、このような言葉を貰ったのは得難い物であった。

 

たしかに今回、これで雛見沢症候群の研究はいったん中止になる。

しかし、これで自分の人生が終わったわけでも無い。

 

またいつか機会が訪れるかもしれないし、いつかは自分が力を持ち、

新たに研究を行うこともできる可能性だってあるかもしれないのだ。

 

とはいえ、長年追い求めていた祖父の研究が中止になったことによる

鷹野三四の精神的ストレスは相当なものだった。

 

そのため直談判に失敗した帰りの夜道に、

屋台で何杯も酒をあおるのも仕方が無い事とも言えた。

 

---三四の幸せを望む---

祖父の手紙を思い出しては、彼女は富竹ジロウの顔が浮かんでくる。

 

「私、そんなにジロウさんの事好きだったのかしら?」

 

そう自問するも、今まで出会った人間の中では確かに一番好意をもったのは確かだ。

 

次に好意をもったのは、竜宮レナだろう。

何故かは知らないが、一時期猛烈にアピールされたことがあった。

 

そのため、自分の妹分にしてあげようかと思ったほどであったが、

結局、最終的に竜宮レナに拒絶されてしまったため、なし得なかった。

 

この件を思い出すと結構はらただしい。

せっかく、毎朝タイを直してあげようとおもっていたのに!

しかし、意外だったのは自分にレズビアンの要素があった事だ。

 

「いっそ、その道を進むのもありかもしれないわね」

 

鷹野三四が、そのような不埒な事を考えていると、一台の高級車が彼女の近くに止まった。

中から美女が車内へと誘っている。

 

ほとんど無警戒にその車に乗ったのは、酔っていた事と、

レズビアンに対する素養を自問自答したことに無縁では無いだろう。

 

だが、その美女…野村と名乗った女性が提示した内容は彼女の酔いを醒ますには十分なものであった。

 

「あなたの祖父を神へと昇華させる。それが貴方の願いではありませんか?」

 

その美女は巧みに数日前まで鷹野三四が望んでいたであろう願望を口にした。

そして、彼女と祖父の研究を蔑ろにした連中に目に物を見せるための計画を口にした。

 

それは、雛見沢症候群の女王感染者を殺す事で

一斉に雛見沢の住民を発病させ、大規模災害を引き起こすと言うものであった。

 

さすれば、鷹野三四と祖父が書いた論文を、政府機関の者達は必死に読んで対応することになる。

すなわち、もう誰も「雛見沢症候群」について、無視する事はできなくなるのだ。

 

一見すると魅力的な提案に見えた。

もし、鷹野三四が祖父の手紙をよんでいなかったのであれば飛びついただろう。

 

だが、実際は違った。

 

この計画を聞いた瞬間、鷹野三四の全身が焼け焦げるほどの激しい憎悪が沸き起こったのだ。

自分と祖父の研究を否定した、東京の上層部や世間にでは無い。この野村とかいう女にだ。

 

たしかに、上層部は彼女の研究を足蹴にした。それは憎い。

だが、ものをわからぬ愚か者どもに目くじらを立てるのは時間の浪費にすぎない。

 

しかし、この女は違う。

彼女の、そしてその祖父の研究を、踏み台にしようとしている。

いや、踏み台どころではな。研究を何かの政争に利用しようと考えているのだ!

 

それは祖父が一途に行っていた研究に対する許しがたい侮辱行為であった。

 

この女の言うとおりにすればどうなるか?

確かに多くの人が祖父の研究を見るだろう。

 

それは快感に違いない。

お前達が否定した研究を、こぞって読み漁る。痛快だ。

しかし、それは同時に、多くの犠牲者を出すことになる。

 

それは、優しい祖父が望むことだろうか。否。望むわけが無いのだ。

実の孫では無い三四に、あれほどの慈愛を望み、死後にまでその幸せを願った祖父ならば、

むしろ、多くの犠牲者を出すぐらいなら、研究を捨てても良いとさえ言い出しかねないだろう。

 

だからこそ、鷹野三四は怒りに震えた。

この怒りは、おそらく、この野村という女だけではなく、

 

きっと、祖父の手紙を読んでいなかったら応じていたであろう

自分自身に対するものでもあった。

 

「返事は、また今度で構いません。

 連絡先をお渡しします。しかし、チャンスがいつまでもあるとは思わないで下さい」

 

野村と呼ばれる女は、怒りに震える三四の姿を見て、

よもや、その怒りが自分に向けられたものとは思ってもいなかったのだろう。

 

自分の説得が功を奏したという確信に満ちた笑顔で

連絡先を書いたカードを渡し、去っていった。

 

しかし、鷹野三四は応じる気はいっさいなかった。

それどころか、祖父の研究を己の勢力争いに道具にする者達に対する怒りに燃えていた。

 

だから入江研究所に戻り、彼女が真っ先にやったことは、この事実を研究所の監査をしていた富竹ジロウに告げて、連絡先が書かれたカードを渡す事だった。

 

------恩人への黙祷が終わり、見開いた鷹野三四の瞳には

燃えるような激しい怒りの炎が宿っていた。

 

入江機関は東京と呼ばれる組織の中でもトップシークレットに位置する存在である。

それを知るだけでなく、そのトップである自分に接触しているのなら、施設内に奴らのスパイがいても不思議では無い。

 

だが、それがただの職員や研究者ならまだ良い。

警備隊に、奴らの手が伸びていたら最悪だ。それは籠の中の鳥を意味している。

 

なら、どうするか。鷹野三四が出した答えはこうだ。

「敵に寝返る前に、こちらに抱きかかえれば良い」

裏切り者は、裏切っている最中には裏切らないものだ。

 

「失礼します。なんばようですかい?」

 

男が一人、入ってきた。

この入江機関を守る「山狗」部隊の隊長である小此木鉄郎だ。

カモフラージュとして雛見沢で造園会社をいとなんでいるため、妙な訛りをしている。

 

「あら、時間どおりね。小此木二尉。

 今日は貴方と山狗部隊に、私から個人的に特別ボーナスを支給したくて、お呼びしたのよ」

「へぇ、ボーナスですか。そりゃありがたいですね。それで、何を頂けるんでしょうか?」

「良いものよ。このアタッシュケースの中にあるもの。全部、貴方達にあげるわ」

「アタッシュケース?へへへ、あけてびっくりってヤツですかい?」

 

ヘラヘラ笑っていた小此木だったが、

鷹野三四が開いたアタッシュケースの中身を見ると、目つきが一瞬にして変わる。

 

「…で、俺達に何をしろと?」

「別に、任務に支障がでるようなことは命じるつもりはないわ。

 えぇ、そうよ。貴方達にはただ命令を忠実に実行して欲しいだけ…

 この入江機関を守り、梨花ちゃんを守ると言う任務を、ね」

 

小此木は無論、目の前にある札束が、ただの任務続行にともなうボーナスとは考えてはいない。

そう言い放つ鷹野三四の瞳に燃えるような怒りが彼にも見て取れたからだ。

 

何か重要な命令が下されるに違いない。だが、それが何であれ拒否することはできないだろう。

その目の前に提示された億という金銭は、受け取る者に身命を賭して命令を実行させるには十分な額なのだから。




トピック: [ レナの鷹野三四への猛烈アピール ]
※トピックでは「ひぐらしのなく頃に」のネタバレが含まれます※

「ひぐらしデイブレイク」及びそのノベル版「昼壊し編」の逸話より。
古手家に古代から伝わる秘宝であり、白い玉を持つ者を赤い玉が持つ者が一方的に好きになると言うフワラズの勾玉を巡る争いで、一時期赤い玉を飲み込んだレナが白い玉を持っていた鷹野三四に猛烈アピールをしていました。

そのさい、鷹野三四は覚醒し、汚らしい男よりもレナの方が良いことに気が付き共に雛見沢の謎を解き明かそうと約束したのです。
ちなみに、鷹野三四の覚醒は勾玉の効能では無かったため、梨花ちゃんがフワラズの勾玉を封印後も、しばらくレナに付きまといドタバタしていたようです。

トピック: [ アルバムに挟まれていた祖父の手紙 ]
※トピックでは「ひぐらしのなく頃に」のネタバレが含まれます※

「ひぐらしのなく頃に業」で追加されたエピソードです。
様々な世界線で破滅した記憶の累積から逃れようとした鷹野三四が、なにげなく祖父のアルバムをひらいときに手紙を発見します。その手紙を見た鷹野三四は武装決起をとりやめ、富竹ジロウに自首をするという内容となっています。

この手紙の宛名が「美代子へ」ではなく「三四へ」となっていることから、実は沙都子が鷹野三四の武装決起を思いとどまらせるために書いたという説もありますが、定かではありません。

大切なのは、破滅の累積記憶に悩まされていた鷹野三四が、この手紙を読んだことで心情が変わる引金になったという事実でしょう。

原作「ひぐらしのなく頃に業」では、その手紙は野村と接触した後に読んだことになっていますが、この世界の鷹野三四は野村に合う前に手紙を読みました。
それが本作の物語にどのような影響を与えるのでしょうか…?
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