ひぐらしのなく頃に~ただひたすら圭一と魅音がイチャイチャするだけ編~   作:Java-Lan

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第13話_6日目(火)A「膝枕」

[6日目(火):通学路:朝:前原圭一]

 

「アハハハハ!義郎おじさん、すっごく怒っていたよ!

『魅音ちゃんの婚約者と、その一族じゃなかったら、今頃鬼ヶ淵沼に沈めていた』だってさ!」

 

魅音はそういって笑う。

全く面目ない話だぜ。

 

出入り禁止になっていないのは奇跡かもしれない。

親父は俺に、というか俺の婚約者の魅音に感謝するべきだな。

 

今日はレナは色々用事があるからといって、先に学校へと向かっていった。

そのため、俺は魅音と二人っきりで登校している。

 

魅音が遅れることがあるので、レナと二人っきりで登校することはわりとあるが、

魅音と一緒に登校とは、かなり珍しいかもしれない。

 

今日の魅音は腕を組んでいないが、

ステップしたり、くるりと回転したり楽しそうだ。

 

俺も魅音のそんな姿をみて顏がほころぶ。

ふと、俺は昨日の詩音とのやり取りを思い出した。

 

「そういえば、昨日、詩音に亀田くんを紹介したら、物凄い剣幕だったんだが

 詩音って、今は恋人とかいないんだよな」

「えっと…」

 

魅音の顔が曇った。

これはつまり…

 

「その、悟志のことを…?」

「うん…」

 

魅音は立ち止まった。

 

俺も足を止める。

そこには苦渋に満ちた魅音の顔があった。

 

「悟志は、転校したんだよな…?

 去年の綿流しの祭りの時に」

 

転校とは行方不明の隠語だ。

俺達はそう言って、あまり表に出さないようにしてきた。

 

「うん」

 

魅音は、こっくりと頷いた。

 

「悟志は、つまり、恋人の詩音と、沙都子がいたのに転校したってことなんだよな」

「詩音は、その…どうだろう。恋人と、まではいってなかったかもしれない」

「でも詩音、好きだったんだろう。悟志の事?」

「うん。詩音は、今でも、悟志のこと、好き…だと思う」

 

歯切れが悪い。何かを隠しているのか。

それとも言いたくないことがあるのだろうか。

 

魅音はうつむき、

立ち止まったまま動こうとしない。

 

俺もあえて、声をかけなかった。

待っていた。魅音の次の言葉を。

 

「圭ちゃん、あのね。

 詩音は、悟志くんのために爪を三つ、剥いだんだよ」

 

爪を剥いだ?

一体何の話だ?

 

「圭ちゃんも聞いたことあるでしょ。去年、詩音は聖ルチーアを脱走したんだ。

 あれ、本家にも無断でおこなって、しばらく潜伏していたんだよ。でも、去年の綿流しの時に

 悟志くんが叔母殺しの容疑者になって、詩音は悟志くんを助けるために名乗り出た」

 

そんなことがあったのか。

知らなかった。

 

俺は何も言わず、

黙って聞く。

 

「園崎本家に知られた詩音は、爪を三枚剥がされた。詩音が本家に逆らい脱走し

 悟志君を助ける代償だった。それで、悟志君は助かるはずだった。でも!」

 

北条悟志は鬼隠しにあって失踪した。

 

「圭ちゃん私ね。爪、剥いだんだ。詩音と同じように。詩音があまりにも可哀想だったから。

 その痛みを少しでも分かち合いたかったから。物凄く痛かった。でも!でも!

 私、分かって無かった!理解していなかった!」

 

魅音の指先にある爪、三枚が少し歪んでいた。

自然に爪が歪む形になるのは、無い事も無い。

 

しかし、実際は違った。

それは、人間の意思で行われて歪んだものだ。

 

俺は想像もできない。爪を剥がすだなんて。

爪の間に針が刺さるだけでも壮絶な痛みだというのに。

 

「圭ちゃんを好きになって、付き合って、どれだけ詩音が辛い思いをしてきたから、本当の意味で理解できた!私も、圭ちゃんがいなくなったらと思うと、想像するだけで胸がはりさけそう!潰されそう!えぐられそう!」

「魅音!」

 

俺は、魅音を抱きしめる。

 

「圭ちゃんが、いなくなったらと思うと、私、それだけで頭がおかしくなりそうになる!圭ちゃんのいない世界なんて考えられない!それを詩音が去年体験した!私なら耐え切れない!今ならわかる、詩音が鬼になりそうだった本当の理由が!」

 

俺の腕の中にいた魅音は振るえていた。

そして泣いていた。

 

「詩音に謝りたい。全然わかっていなかったって。貴方の苦しみの万分の一も理解してなかったって、でも、出来ない…だって、詩音はもう私を許したから。だから、もう許してくれない。もう、私は許されない!詩音ゴメン、詩音ゴメン、詩音ゴメン、詩音ゴメン」

 

魅音はまるで、子供のように顔をくしゃくしゃにして泣いていた。

俺は黙ってそれを受けとめ頭を撫でた。撫で続けた。

 

そして、落ち着いてきたところで、

魅音の耳元に、そっと呟いた。

 

「魅音、俺が許す」

「圭ちゃん?」

 

俺も前に、同じ事があった。いつの頃かは思い出せない。

自分の過ちに気が付き、許されることの無い罪におののき、苦しみ、悶えた。

その時、俺は梨花ちゃんに許してもらった事があった。

 

それがどれほど自分の助けになったことか!

今度は、それを俺がやる番だった。

魅音の梨花ちゃんに、俺がなるんだ。

 

「俺は詩音じゃない。だから本当の許しは与えられない。

 でも、俺は魅音を許す。魅音は気が付いた。それはとても偉くて尊いものだ、

 だから、俺は許す。魅音のしてきたことを全て」

「圭ちゃん…」

 

魅音は大量の涙を目に貯めて俺を見ていた。

俺はというと照れ臭くなくなって、思わず魅音の瞳から視線をそらしてしまう。

 

たぶん、今、俺の顔は真っ赤になっているんだろうな。

らしく無い事をするもんじゃないぜ。

 

「ま、まぁ、これは梨花ちゃんの受け入りなんだけどさ…

 それでも、魅音の心が少しでも楽になるなら、いいだろう?」

 

うん。うん…魅音は何度も頷くと、俺の胸に顔をうずめる。

セミの鳴く声が聞こえる。

 

あぁ、そうだ。もう夏なんだな。

 

「そうだ。魅音、これから川にいって水浴びでもしないか」

「え?学校は?」

 

魅音は、俺の突拍子も無い提案に驚き…というより不思議そうな顔で答えた。

それを俺は不敵に返す。

 

「こんな暑い日に学校なんていってられるかよ!

 川で水浴びでもしていた方が、よっぽどいいぜ!よし、いくぞ!」

「え、ちょっと圭ちゃん!?」

 

俺は、魅音の返事も待たずに手を引っ張って沢にむかう。

 

綺麗な川が流れる沢に到着すると、

おれは有無も言わさずに川の水を魅音にかける。

 

最初はとまどっていた魅音も、

何度も水をかけられるうちに応戦し始めた。

 

いつしか俺達二人は笑いながら、水をかけあい。

どちらも、体中をびしょびしょにぬらして、倒れ込んだ。

 

太陽が照り、風が気持ちいい。

だけど、川沿いというのは石がごつごつしていて、

そこに寝転ぶと、背中が痛くなるだけだ。

 

ちょっと気持ちよくは無い。

 

「ということで、魅音。

 俺のカバンを下にひいて、俺の膝に頭を乗せろ」

「へ…?なにさ、それ」

 

「なんでもいいから。魅音、早く」

 

俺はずぶ濡れの魅音を仰向けにすると

両ふとももの上に、魅音の頭を乗せた。

 

「あ、あのさ、圭ちゃん。こういうのって、普通、逆じゃない?

 膝枕ってヒロインがやるもんだと思うんだけど」

「なんだ。せっかく膝枕しているのに、嫌なのかよ」

「いや、嫌じゃないよ。確かに圭ちゃんの脚、硬くてちょっと寝心地はわるいけどさ」

 

ちぇ、人がせっかくやってるのに。

 

「圭ちゃん…」

「なんだ魅音?」

 

「…ありがとう」

 

沢のせせらぎの音がする。

 

俺が微笑みで返すと、

魅音も優しく微笑んだ。

 

しばらく見つめあっていると、魅音は目をつぶりしきりに顎を上に向ける動作をしはじめる。

 

これは、あれだ。キスして欲しいって事だな。

可愛い事してくれるぜ魅音。

 

おれは、ゆっくり上半身を前に傾ける。

が、体が今一、前に曲がらない。

 

そこで少し体をひねり魅音の唇に触れようと…

 

グギッ…!

 

「!!!!!!!!!!」

 

全身をつらぬくような音がした!

 

「圭ちゃん…?」

 

体中から力が抜ける。

倒れる。動けない!

 

「圭ちゃん!圭ちゃん!!!」

「魅、音・・・」

 

動けない。腰どころじゃない、足も、腕も、何もかも…

自分の体じゃないみたいだ。

力が入らない。まるで全身タコになったような感じだ…!

 

やばい。これはやばい!

 

「すぐに、学校まで連れて行くから、待ってて圭ちゃん!」

 

魅音は俺を背負うと颯爽と走り出す。

早い。そして機敏だ。

 

あっという間に、学校につく。

教室のドアを開けると、何か言おうとした知恵先生が、背負われている俺に気が付き、魅音を手伝いすぐに保健室へと向かった。

 

「圭ちゃん、大丈夫?すぐベッドに寝かせるから」

 

た、助かった…

ベッドに寝かされると、ようやく安心する。

 

知恵先生が教務室に戻り電話をしているはずだ。おそらく監督の所に。

直ぐにきてくれるに違いない。もう大丈夫。何も問題は無い…

 

[6日目(火):雛見沢分校:昼:前原圭一]

 

監督が俺の体に当てていた聴診器を外し、知恵先生の方に振り返った。

 

「ギックリ腰ですね。しばらく動けないと思いますので、

 保健室で安静にされていると良いでしょう」

 

知恵先生と、魅音が同時に大きく息を吐いた。

そして、知恵先生と魅音が話をしはじめた。

 

会話の流れから、どうやら今日、魅音が授業に遅れたのは、

姿の見えなくなった俺を魅音が探して、沢で倒れている所を発見した。

 

という感じに話をまとめたらしい。

まぁ、確かに、ずぶぬれでぎっくり腰になっている俺の姿を見れば、

その説得力は圧倒的だろう。

 

だけど知恵先生は頭をひねっている。

 

「なんで、圭一君は沢で倒れていたんでしょう?

 ま、まさか、世をはかなんで自殺を…?」

 

とんでもない事を口にして青ざめはじめる。

一応、そこに魅音が口を挟んだ。

 

「先生、それはないですよ。だって、こんな素敵な婚約者がいるんですよ?

 圭ちゃんが自殺なんてするわけないじゃないですか」

 

素敵な婚約者って、自分で言うのか。

 

「おおかた、圭ちゃんのことだから、悪戯心を出して

 遠回りをしようとして、足を滑らしたにちがいないですよ。ねー圭ちゃん」

 

流れるように嘘をつく魅音。

さすがだぜ。

 

知恵先生は今一納得しきれていなかったようだけれども、

魅音を連れて保健室から出て行こうとした。

 

しかし、

魅音は「私は圭ちゃんの婚約者ですから」の一点張りで離れようとしなかい。

 

最終的には、

「確かに誰か見ている人は必要かもしれませんね。お願いしますね魅音さん」

と言い残し、知恵先生は魅音を残して部屋を後にした。

 

ちなみに、知恵先生がいなくなったあと、

監督は俺達二人をニコニコしながら見て、

 

「ぎっくり腰は、筋肉の皮が、骨の間にはさまっておきるものです

 さて、前原さんは、どんな体制でぎっくり腰がおきたのでしょう?

 お二人とも、随分濡れておいでしたが、あまり変な態勢でオイタをするのは

 お勧めできませんよ」

 

そう言って立ち去って行った。

 

素晴らしい洞察力だぜ。

と、褒めたいところだけどさ。

 

監督には悪いが、ただ前に体を傾けただけで、

全然へんな体制じゃなかったんだよな。

 

つまりなんだ。

俺の体が硬いのが原因か。

今度から柔軟体操でもするか?

 

「圭ちゃん、また二人っきりになったね」

 

魅音は俺の手を取る。

が、ぎっくり腰で、体中の力が抜けている俺には握り返す事もできない。

 

「圭ちゃん、ありがとう」

 

…魅音

 

魅音は俺の拳を握りしめ

目に涙を浮かべて微笑んでいた。

 

あぁ、畜生。こんな時に限って力を入れられないとは、

前原圭一、一生の不覚だぜ!

 

今すぐにでも、魅音の頭を撫でて

「そんな顏すんなよ。恥ずかしいぜ魅音」って言ってやりたいのに!

 

「魅ぃちゃん!圭一くん!」

 

レナの声がする。

保健室にレナが来たのか。視線をずらすと

梨花ちゃんと、沙都子も来たみたいだ。

 

「みー、圭一大丈夫ですか?ギックリ腰はつらいのですよ」

「しかし、ぎっくり腰ってお年寄りがなるものだとばかり思っておりましたわ。

 圭一さんのような年齢でもなるものでございますのね」

 

魅音が満面の笑みでレナ達に振り返る。

 

「いやぁ~よかった圭ちゃんが無事で。

 結婚前に未亡人って、本当に洒落にならない所だったよ」

 

「だね☆圭一くんは魅ぃちゃんに感謝だね!感謝だね!」

「感謝、感謝なのです。圭一は魅ぃの尻にしかれること決定なのですよ☆にぱ~」

「まぁ、これにこりたら、お一人でどこかへ行くなんてお止めあそばせ。

 そうでなくとも、圭一さんはわりと突っ走るクセがあるんでございますから」

 

このぉ~好き勝手いいやがって、

でも、まぁいい。俺が悪いってオチになれば、それで丸く収まるならそれで。

これは、いわばお約束ってヤツだ。

 

[6日目(火):前原屋敷:夜:前原圭一]

 

結局、その日は丸一日立ち上がる事すらできなかった。

夕方ごろに、連絡を受けた親父が車で迎えに来て、俺は魅音と親父に担がれて帰ることになった。

 

魅音も一緒に車に乗りこみ、家の中まで運ぶのを手伝う。

どうやら、そのまま俺の部屋まで入りこんで看病したかったようだが、

バアさんと家の世話を無視するわけにもいかず、しぶしぶと家へと帰っていった。

 

ちなみに、帰り際に俺の頬にキスをして

「明日、迎えにくるからね」と部屋から出て行こうとしたので、

動かせるようになっていた右手で、頭を撫でてやった。

 

「おう、待ってるぜ魅音」

「アハハハ、なんだ。そんなに元気なら安心だね圭ちゃん」

 

照れ笑いしながら、親父とおふくろに挨拶して、家から出て行く後姿を見て、

全く、可愛い奴だと思うのは、まぁ、俺の恋人偏向フェルターによるものだろう。うん。

 

夕飯頃になって、ようやく体を動かせるようになり、

ぎこちない動きで歩けるようになった。

 

今夜はカレーだ。

スプーンだけで食べられるようにしてくれたらしい。

ありがたい。お袋に感謝だ。

 

「圭ちゃん。園崎の妹さんからお電話よ。

 まだ回復していないんだからほどほどにね」

 

食事を食べ終わって部屋で休んでいると、

詩音から電話が来た。

 

どうせ、今日の俺の話をどこからか仕入れてきたんだろう。

まったく、耳ざとい事だぜ。

 

「やっほー☆圭ちゃん、腰、大丈夫?ギックリしたんだって?」

「あぁ、詩音か。何とか体を動かせるまで回復したぜ。しかし、ギックリ腰って凄いんだな。

 全然、体が動かせなくなっちまったぜ」

「アハハハ、ギックリ腰はクセになるらしいから、注意した方が良いですよ

 ほら、お姉と腰の運動をしているときにグギってなったら、最悪ですから」

 

魅音と腰の運動って何だよ。

 

「まぁ、しばらくフラフープで遊ぶのはナシだな。

 ところで、今日はなんだ。もし笑いものにしたいってんなら、明日にしてくれないか?」

「あ、ごめん圭ちゃん。そうだよね。

 まぁ、お姉の話を聞きたかったんだけど、調子が悪いなら、また今度ということで…」

「魅音のことか?何かあったのか?」

「何か。って…それは圭ちゃんの方じゃないんですか?」

「どういう意味だよ」

「だって、圭ちゃんが、悪戯心で遠回りで学校へ向かっている途中でギックリ腰になって、

 それを、たまたまお姉が発見したって、なんだかおかしくないですか?」

 

鋭い。

 

「………」

「思うに、お姉と圭ちゃんが、ちょっとロマンスして、それでやらかしたんじゃないかなーって」

「………」

「いやいや、言いたくなかったら話さなくてもいいんですよ。大体、想像ついちゃいますから!」

 

どうする?

おため誤魔化しても、いい。

 

だけど、それだと不誠実な気がする。

 

…不誠実?誰に?

魅音か、詩音か、それとも俺の良心か?

 

「え~と、圭ちゃん?調子悪かったら、本当にいいですよ?話さなくても…」

「…詩音」

「はい」

「本当に、聞きたいのか?」

 

俺は、十分注意して、

覚悟を問うように聞いた。

 

これで、おちゃらけて返すようなら

おれも、そうやって返そう。

 

でも、真剣に聞いてくるなら、その時は…

 

「…圭ちゃん。沢で何があったんですが?」

 

真剣に聞いて来た、か。

わかった。なら話す。ゴメンな魅音。

 

「悟志の事だ」

「悟志…くん?」

「魅音は、お前に、詩音に謝っていた。俺と付き合って、

 ようやく詩音が、悟志のことについてどれだけ辛い思いをしていたのかわかったらしい。」

「………」

「だけど、詩音、お前はもう魅音のことは許している。だから魅音は苦しんでいた。

 ようやく詩音の気持ちが理解できて、どれだけ辛かったのか実感できても、

 もう謝ることもできない。だって、詩音、お前はもう許しちまったんだから」

 

「…そう、だったんですか。

 アハハ、バカですね、お姉。もういいって言ったのに」

 

受話器の向こうで、詩音が力無く声を出していた。

口ではそういっているが、詩音の心に、なにかしらの衝撃を与えたことは受話器越しでもよくわかる。

 

「だから、俺、その、詩音には悪いんだけど…許しちまった」

「…圭ちゃんが、許す?」

「あ、いや、そのゴメン!もちろん、俺は詩音じゃないし、

 詩音の代わりになんて全然ならないんだけどさ、魅音が苦しんでいたから

 俺、とっさに…魅音を許しちまった」

 

沈黙。

 

受話器の向こうから何も聞こえてこなかった。

長い静寂の時が訪れた。一分、二分。五分。

 

俺はどうしてよいか、少し途方にくれはじめたころ、

受話器の向こうから笑い声が聞こえてきた。

 

「アハハハハ!全くですよ、圭ちゃん、一体何様なんです?

 私の代わりに許すって、何の、どの立場で物を言っているんですか?

 全く、圭ちゃんは、本当に困った人ですね!アハハハハ!」

 

予想外すぎる反応で、俺は若干戸惑う。

てっきり怒鳴られるのかと思ったのに。

 

「あ、いや、本当にゴメン!俺…」

「ま、いいです。許してあげましょう。じゃあ、

 今度、買い物に付き合ってくださいね☆」

「あぁ、もちろんさ…いつでも大量の買い物袋もってやるぜ!」

 

「…それで、お姉。圭ちゃんに『許す』って言われて

 なんて返したんですか?」

 

 …え?

 一瞬声が出せなかった。

 

 俺は今日の記憶を遡る。

 あの時、魅音は俺の膝枕の上で、こう答えはずだ。

 

「…ありがとう。って言っていた」

「そっか」

 

再び、少しの間が開いた。

詩音が何を考えているのかはわからない。

でも、俺はその答えを待たなければならないはずだ。

 

そして、それはたぶん、間違っていないと思う。

 

「あぁ、お姉が羨ましいなぁ。そこまで丸裸の心を抱きしめる人が側にいるなんて、さ」

「詩音…」

「悔しいけど、今日の圭ちゃんに100点あげます。

 まぁ、園崎魅音の恋人としては、及第点ってところですね!」

 

100点で及第点って、ちょっとハードルが高すぎないか?

もしかして500点満点とかか?

 

「あ、でも、勝手に他人になりかわって許しを与えるなんて、

 ふとどき千万なのでマイナス70点かな?」

「うぉ、ペナルティが結構大きいぜ…!」

「あははは。まぁ、いいですよ。今回だけは特別です。感謝してくださいよ?

 それと圭ちゃん。圭ちゃんに私から謝辞を送りたいと思います」

「…なんだよ」

 

「…私の代わりに、

 お姉を許してくれて、ありがとう」

 

電話口から俺は確かに、

詩音の、魅音に対する温かい心を感じた。

 




トピック: [ ぎっくり腰について ]
※トピックでは「ひぐらしのなく頃に」のネタバレが含まれます※

ぎっくり腰はメジャーな病状であるものの、その機序…すなわち『なんで起きるのか?』という部分はよくわかっていません。
それというのも、ぎっくり腰になった瞬間を捉えることができないからです。
つまり、医師が見れるのはあくまでも「ぎっくり腰が起きた後の症状」ということになります。

しかし、一応ぎっくり腰については、筋肉の表面を覆っている筋膜が、神経ごと骨の間に挟まって起きるのものだと言われています。

ちなみに、人体の構造上、体を前に倒してぎっくり腰になる可能性は低いです(ゼロではもちろんありません)
基本的に重い物を持ったり、後ろに倒したりするとぎっくり腰になりやすいです。

この話の前原圭一氏もぎっくり腰になりましたが、
おそらく、体をひねった態勢で前に倒れたためにぎっくり腰になったと思われます。
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