ひぐらしのなく頃に~ただひたすら圭一と魅音がイチャイチャするだけ編~ 作:Java-Lan
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貴方は身を沈めて進み続ける。
どのような濁流が押し寄せてきても、
貴方はその身を奮い立たせ、きっと進み続ける。
どのよう悲しみと惨劇に見舞われようとも、挫けることは無いだろう。
側に彼女がいる限り、いつかは美しい思い出になるのだから。
第21話_9日目(金)A「成人教育」
[9日目(金):入江診療所:朝:前原圭一]
朝起きると、既に魅音は学校に行く用意と朝食の準備を終えていた。
どうやら、それだけでは無いらしく、学校にも午前は病院にいくことを伝えたらしい。
「とは言っても、知恵先生に『子供の作り方を教えに貰いにいってきます』なんていうと卒倒すると思うから、そこは『入江先生に、圭ちゃんの事で相談したいことがあります』って伝えて来たよ」
魅音はそういって、悪戯っぽく笑う。
最近どうも、俺は便利なツールとして使われているような気がしてならないが、そこには目をつぶろう。
「しかしすげぇよな。次から次へと、そういう嘘…コホン。言い訳が考えつけて。
やっぱりそれって、園崎家の当主だからなのか?」
「えーなんでよ。心外だなぁ。嘘は言っていないよ。
だって、ほら、入江先生に楽しい家族計画の相談するのは間違いないでしょ?」
「…監督に聞きに行くことを、そういう言い回しで表現するのは正しいかどうかはわからんが、
色々と準備をしてくれた魅音には、素直に感謝したいと思うぞ」
「じゃあさ、圭ちゃん。頑張ったご褒美…くれるかな?エヘヘヘ」
魅音が両手を大きく広げて、キスを催促する。
まったく、朝から可愛い事だぜ。
俺は魅音に軽く三度ほどキスをすると、朝食を食べて一緒に診療所へと向かった。
診療所は、お年寄りの集会所みたいになっている場合があるが、今日はガラガラに空いていた。
これなら、もしかしたら今日講義を受けることができるかもしれない。
「前原さん。前原圭一さーん。お入りください。」
受け付けで、監督…入江先生の診察を受けたいと。申し込んで、ほんの数分で呼び声がかかった。
今日はどうやら、本当に暇な日らしい。
「よかったね圭ちゃん。大体金曜日って混雑するはずなんだけど、
こんなに誰も診療所にこないなんて、これは私達ツイているよ」
魅音も上機嫌だ。
これで入江先生に頼み込めれば完璧だ。
「これは、これは、おはようございます。
おや?前原さんと、魅音さん。今日はお二人ですか?」
入江先生は、いつものように屈託の無い笑顔で迎えてくれた。
この笑顔は、不安な時は安心感を与えてくれるよな。
「圭ちゃん…」
魅音にたされて、俺は頷く。
「監督、実は俺達。今日は病気の診察を受けに来たんじゃないんです」
「診察では無い?それでは一体どのようなご用件で?」
「俺達に、セックスのやり方を教えてはくれませんか!」
笑われるかもしれない。
そう思い。できる限り真剣な表情で伝えた。
俺達の真剣さは伝わるだろうか?正直、不安だ。
しかし、監督は笑顔であったけれど、笑い飛ばしたりはしなかった。
「どういうことでしょうか前原さん?
詳しく、教えては頂けませんか?」
監督はそういうと、診察カルテに何か文字を書き始めた。
外国語なのか、何が書いているかは読めない。
「俺達、実は…その昨日、婚前交渉をしようと思ったんです。
でも、やり方がわからなくて。魅音を傷つけてしまいそうになったんです」
「傷つける?魅音さんを?
なぜ、魅音さんは婚前交渉をしないと傷ついてしまうのでしょうか?」
監督は魅音をちら見する。
「魅音は、俺に見せてくれたんです。背中の刺青を…だから、俺はそれに答えなければ
いけないって、でも、その…やり方がわからなくて…せっかく、魅音が全てをさらけ出して
俺を求めてくれたのに。でも、こういうのって誰に聞いてよいかわからなくて。
だから、監督に聞こうって…今日は来ました。」
「そうでしたか。前原さん。私を頼ってくれてありがとうございます。
それは間違いではありませんよ」
「か、監督…!」
正直、どう言えば良いのかわからず、しどろもどろな感じで話をしてしまった。
だけど、監督は最後まで聞いてくれた。それが嬉しかった。
いつもは、変な人だと思っていたけれど、こういう時にしっかりと対応してくれる。
これが本当の大人なんだな。
くっそ。少し涙ぐんてしまったぜ。
「それでは、次に魅音さんにお聞きします」
「はい」
「なぜ、貴方は前原さんと婚前交渉をしたいと思ったのですか?
全てをさらけだしてまで」
「それは、前原圭一くんとの間に子供をつくりたいからです」
そうだったのか!?
俺は驚いた。てっきり行為そのものが目的だと俺は思っていた。
考えてみれば、もともと子供を作るためにするものだからおかしくはないんだけどさ。
ただ、その反応は監督にもわかったらしい。
一瞬だが、俺の方に視線をうつした。
「監督、それはおかしなことでしょうか?」
「いえいえ、全然おかしくはありませんよ魅音さん」
機械的に答える魅音に監督はほがらかに答える。
…おかしい。
魅音のしゃべりかたに違和感を感じて振り向くと、そこには昨夜のように、瞳から光を失い、
まるで何かに操られたかのように感情を抑制している魅音の姿があった。
監督も魅音の変化に気が付いたのか一瞬、厳しい顔つきになったが、
すぐに、笑顔に戻る。
「子供を作りたいと思った理由を聞かせてはくれませんか?」
「子供は望まれるものではありませんか?」
「もちろんです。私も、前原さんと魅音さんの子供、是非、見てみたいと思います。私以外にも
きっと見てみたいと思う人がいるんじゃないかと思いまして。」
「………」
魅音は無言だ。なんで答えないんだ?
まるで、答えると問題があるような。もしかして…問題が、あるのか?
「魅音のお母さんや、お父様もお孫さん顏、見たいと思っていますよね」
「………」
「そうだ。お魎さんも、きっと…」
「おバアさまは関係ありません。私が望んだことです。
先生は何か勘違いされているのではありませんか?」
反応を、した。
「いえいえ、とんでもありません。自分の孫の子供を見たいと思うのが、普通の家族としての心情ですから。しかし、お魎さんが望んでいないとは意外でしたね」
「そんなことはありません。おバアさまは子供を見るのを望んでいます」
「そうですよね。きっと、魅音のさんの子供なら見たいと思っていますよね」
「………」
…魅音?
魅音の体は震えていた。いつか瞳には光が戻っている。
そのかわり、その目には涙があふれていた。
「ばっちゃん…もう歳だから。だから死ぬ前に、ひ孫の顏が見たいって…」
「魅音さん…」
「私、バっちゃの願い叶えてあげたい。死ぬ前に。だってそれが、バっちゃの夢だから」
俺はどう答えて良いかわからなかった。
昨夜、あれだけ俺に迫っていたのは、そういう理由があったなのか。
あまり深くは考えていなかった自分が情けないぜ。
「ゴメンね。圭ちゃん。私…」
「何を謝るんだよ。魅音…俺の方こそゴメンな。何も、その…考えてなかった。お魎のバアさんのこと…」
魅音は右手で顔を覆い隠すと、声を抑えて嗚咽した。
俺は魅音の背中をさする。
昨日の夜のことはあくまでも、俺と魅音との間におきたことだと思っていた。
そこにお魎のバアさんが絡んでいたなんて考えてもみなかった。
いや、思い起こせば色々とふにおちることもある。
魅音と付き合い始めた当初から、俺と魅音が一夜を共にするように、園崎本家は背中を押していた。それはきっと、お魎のバアさんがひ孫を見たかったからなんだろうな。
監督が、魅音の左手にそっと触れた。
「わかりました。一緒にお勉強しましょう。
でも、魅音さんも、前原さんも一つ、約束して下さい」
「…はい。なんでしょう」
「子供を作ると言う事は、心身に重い負担がかかります。
それは、本来、貴方がたのような未成年者には耐えきれない場合もあります。
ですので医師としては…18歳まで待ってはもらえませんでしょうか?」
「でも、バっちゃの若いころは14、5でも出産したって」
「出産時の死亡率…ご存知ですか?出産は大変危険がともないます。
現代でも100%安全に出産できるものではありません。ましてや
体のできあがっていない貴方がたでは、そのリスクは大きく増加します」
「………」
「死んでしまっては元も子もありません。お魎さんは、貴方の命を捧げても、子供を見たいと言われましたか?いえ、貴方だけではありません。子供だって無事に生まれて来るかもわかりません。その時になって、後悔するのは魅音さん、貴方だけではありません。お魎さんもきっと後悔する事になるでしょう」
「………」
「少しでも早く子供を産みたい。そして元気な赤ちゃんをお魎さんに見せてあげたいんですよね?
それなら、母子ともに健全であることが重要だとは思いませんか?ね?魅音さん」
「…はい」
監督の優しく、穏やかな説得で、魅音はゆっくりと頷いた。
俺はティッシュを取り出すと、魅音の涙と鼻水をぬぐい取る。
「少し、待っててください。今、鷹野さんを呼んできます。
やはり、女性には、女性が一番でしょうから」
監督はそうやって立ち上がり、奥のドアに入っていた。
魅音は、俺の肩に頭をのせて、うつろな表情をしている。
俺はそれがいたたまれなくなり、何度も、魅音の頭を愛撫した。
-…本気で、園崎…さんを説得?
-…もちろん…使命…です
-…されますわよ?…を連れて…
-…いえ…で行きます…
扉の向こうから声が漏れている。
何か話し合いと言うより、口論をしているようだった。
だが、それもしばらくすると終わり、監督と鷹野三四さんを連れて戻ってきた。
「それでは、魅音さんは鷹野さんと一緒に奥の部屋でお勉強しましょう。
前原さんは、ここで私と性教育のお勉強です」
「よろしくお願いします」
俺は頭を下げる。
魅音も、少し元気を取り戻したみたいで、
鷹野三四さんに声をかけらえると、いつも通りの感じで立ち上がった。
「じゃね。圭ちゃん。
また後で」
「おう、また後でな魅音!」
[9日目(金):入江診療所:昼近く:前原圭一]
「ありがとうございました!」
俺は監督に頭をさげて、待合室に戻った。
監督は思ったよりもしっかりと、婚前交渉のやり方を教えてくれた。
これで、魅音との初夜もなんとかなりそうだ。
最後のセションで監督からもらったコンドームを見る。
-コンドームを持つというのは、男性にとって愛する者を守るための権利であり義務なのです。
コンドームを使うという発想は、今までなかった。
そもそも避妊具って、病気を予防するためというものだと考えていた。
俺は、魅音以外の女性とそういうことをする気は無いから必要ありません。
とさえ監督に言い放った。
だけど監督の講義中に
-望まぬ妊娠をして傷つくのは魅音さんだけでは無く、それをもたらした貴方もなのですよ?-
と言われた時は色々とショックを受けた。
人間誰しも、おかしくなる時がある。
暴走したり、熱情にあてられ、一線をこえるときがあるのだ。
-そのために必要なのがコンドームなのです。
一時の感情で妊娠させてしまい、未成熟な体で妊娠させてしまった場合、どうなるか。
妊娠は母体に色々な負荷を与える。
出産による死亡率は決して低くはなく、今も出産時に死亡する例も多々ある。
未成熟な体ではその可能性は高まる。
最初に監督が言った通りだ。
-それでも圭一さんは、魅音さんに子供を産んで欲しいと思いますか?
俺はもちろん、魅音が死んでまでも子供が欲しいとは思わない。
俺のいる未来には子供だけじゃなく、魅音もいなければダメなんだ。
そう思うと、コンドームがいらないだなんて言っているのが恥ずかしくなった。
今までいろいろと勉強してきたはずなのに、俺はてんてわかっちゃいなかったんだ。
「あ、圭ちゃん!もしかして待たせちゃった?」
「魅音か。いや、俺もさっき終わったところだぜ」
魅音も別室から、待合室に戻ってきた。
三四さんに連れられていかれた時は顔色は悪かったが、
今ははつらつとしていて、声の調子もよさそうだ。
「お、圭ちゃんもコンドームをもらったんだ」
「ってことは、魅音も持たされたのか?」
魅音はポケットからコンドームの箱を取り出す。
ピンク色の可愛い形をしている。
俺が監督に貰ったのとは種類が違うようだ。
「そうなんだよ!おじさんコンドームいらないって言ったんだけど
いやぁ~鷹野さんが教えてくれた。『女性に安全日は存在しない』
って話が中々強烈でさぁ、返すに返せなくて…」
「安全日って、なんだ?」
「圭ちゃん知らない?ほらレディコミであるじゃん。
今日は安全日だから、妊娠しないとかってヤツ」
お袋のレディースコミックとかは、たまにみるけど、そういうシーンは見た事無い。
まぁ、考えてみれば、そんなに激しい描写のある奴は、お袋も俺の目に届くような場所にはおいていないだろうけど。
「見た事無いけど、それって実際には無いってことか?」
「そうなんだよ!おじさんもビックリ!んで、鷹野さんは安全日を信じて妊娠したカップルの泥沼の別れ話とか、凶悪事件とか楽しそうに話すんだよ!」
「あぁ、なんか想像できるな、それ…」
鷹野さん、そういう話好きそうだし。
「で、最後に『魅音ちゃんも、そういう悲惨な目に合わないようにに
コンドームは常に所有していた方が、良いわよ。男の人ってほら、
無責任だから…クスクスクス』ってコンドーム渡されてさ。
なんかそんな話を聞いたら、突き返せなくてさ…」
よくよく考えたら、面白い話だ。
卵子は30日に1日しかたしか生存しないわけなのだから、つまり理論上29日は安全日なはずだ。
だが、鷹野三四さん曰く、実際にはそんなことは無いんだという。
排卵日であろうとなかろうと、女性はいつでも妊娠するなんて…
「人体の神秘ってやつだよな。うんうん」
「…圭ちゃんってさ。本当にそういう学問的な知識はよく知っているよね…おじさん感心するよ」
魅音はあきれたように俺を見る。
「し、仕方ないだろ。俺は今まで、そういう実践的なのは…なかったんだからさ!」
「クククク、まぁね。仕方ないよね。お互い、そういうのと無縁な生き方してきたからね」
二人して顔を見合わせて笑う。
恋愛初心者で、色々大変だけど、それでもお互いに付き合えてよかったと思う。
もし、別な相手だったら、今頃大ゲンカして別れていたかもしれない。
感謝しているぜ魅音。
「そうだ。監督が、今日は診察料はいらないから、今度の土曜に野球の助っ人に来て欲しいっていってぜ?俺は行くけど、魅音はどうする?」
「監督には恩ができちゃったしね。
それに圭ちゃんが行くなら、おじさんも行かない理由はないよ」
魅音が指を絡ませてきた。
指を巧みに動かして遊んでいる。
しばらく指を魅音の好きなように遊ばせていたら、
何かよからぬことを考えたの、悪い顔をして近づけてきた。
「クククク…圭ちゃん、お昼まで時間あるしさ…さっそく、試してみない?」
やぶから棒に何を言っているんだお前!?
「今からその…する気かよ…!?
待て、待て、待て、せめて夜まで待て!」
「…圭ちゃん、圭ちゃん。私が言っているのは
コンドームを試しに着けてみようって話で、そういうのじゃないって」
あぁ、なら、安心したぜ…
…ってえええ!?
「そうだ!レナや梨花ちゃんや沙都子とか呼んで、
一緒に保険体育の授業をするってのも有りだよね」
いや、本当にお前は何をいってんだ!?
ほ、ほ、ほ、保険体育の授業!!!!
「いや、だって知恵先生ってさ
保険体育ってほとんど力入れていないから、皆、全然知識がないわけじゃん
せっかくだから、おじさん達の知識のおすそ分けをしようってことさ。うんうん」
「レナはともかく、梨花ちゃんや沙都子はまずいだろ!?
避妊具つけるところを見せるって、完全に犯罪だろそれ!」
「いや、ただの勉強会だって…
それともナニ?もしかして圭ちゃんって、梨花ちゃんや沙都子がストライクゾーンなわけ?
二人の前だと我慢できないとか?」
どさくさ紛れに何をいっているんだ!?
そういえば昔、詩音にも言われた気がするぞ
「圭ちゃんストライクゾーン。物凄くひろくありません?」とかなんとか…
いやいや、風評被害だ!
「んなわけやねぇだろ!
そもそも俺の好きなのは園崎魅音だけだ!」
「アハハハ、そうだよね。
圭ちゃんが大好きなのはおじさんだもんね!」
そういうと魅音は俺に抱き着いてきた。
「当たり前だろそんなの!まったく、変な事を言うんじゃねぇよ」
「まぁ、冗談はさておき…どう?
おじさんと二人だけで、シ・て・み・な・い?圭ちゃん?ウヒヒヒ…」
魅音は俺に抱き着いたまま、耳元でそうささやく。
おいおい、なに、エロ親父みたいな事をいっんだ?
お前、仮にも女の子だろうが!?
「だって練習するにも圭ちゃん以外とする相手いないじゃん」
「そりゃそうだけどさ…」
「大丈夫、おじさん、とって食いやしないって!」
…本当かよ。
魅音の顔がよく見えないが、
舌がへびみたいにチロチロ出ている気がするぞ!
時間を見る。まだ午前11を少し過ぎた所だ。
今から学校へ行っても、10分、20分ぐらいしか授業を受けられない。
ならいっそ…
ゴクリ…
唾をのみ込む。
「魅音、本気か…?」
魅音は俺の頬にキスをする。
「私はいつだって本気だよ。圭ちゃん」
振り向くと上目遣いで頬を赤らめている魅音がいた。
12時に学校につくまで、俺達が何をしていたのかは…
うん。まぁ、察して欲しい。
トピック: [ カルテ内容「前原圭一」 ]
※トピックでは「ひぐらしのなく頃に」のネタバレが含まれます※
カルテ:No.○○○○○○○
昭和58年6月○日
名前:前原圭一 (1×歳)
住所:○○○○○○○○○
電話番号:XXX-XXX-XXX
主治医:入江京介
問診内容:以下のように記す。
「正しい性知識を学ばせるのも医師としての大切な役割ですからね。
魅音さんには、鷹野さんについてもらいましょう。やはり女性の体は女性が一番よくわかるはずですから」
「ありがとうございます監督!」
「分かっているとは思いますが体が成熟しない内の妊娠は大変危険です。
医師として18歳になってから、子供作りを推奨します」
「あ、はい。わかりました」
「パートナーに必要なのは愛です。いわばメイドとご主人様のようなもの」
「はぁ…」
「愛とは、お互いの信頼があってなりたつものです。
若い内は体の衝動に捕らわれでしょうが、それを愛と誤解してはいけません。
相手を思いやるのであれば、待つのが愛です」
「は、はい」
「だから私も佐都子ちゃんの成長を見守っているのですよ!」
「(…おい、おい、もしかして、聞く相手間違えたか?)」
※という顔をしている。
「それではまず最初に、
前原さんの性知識がどれぐらいあるのか、
教えては抱けませんか?」
「えっと、卵子と精子が受精すれば子供ができる。
女性には生理があって、月に一度、血を流す…ぐらいです」
「すばらしい。前原さんぐらいのお歳で、
それだけの知識があるのなら十分でしょう」
「え、あ、はい」
「それを踏まえてできるだけ簡単に、
わかりやすく、ご説明させて頂きます。
前原さんは、ご自身の性器が大きくなる時は
どんな時がご存知ですか?」
「えっと…その…」
「恥ずかしがらずに、これは大切なことなんですから。ね?」
「エッチな本とか、見た時…です」
「そうですね。正解です。でも、もう一つ、
朝起きた時も大きくなっているのではありませんか?」
「あ、はい。たまに」
「性器と言うのは、基本的に心が穏やかな時、
静かで平和な時に活動を開始します。
男性器は少し構造が複雑で、交感神経と副交感神経の兼ね合いで
落ち着いたときに大きくなり、興奮したときに精子を出す構造になっていますが。」
「でも、それって矛盾していますよね?
静かな時に大きくなって、興奮した時に精子が出るって」
「アハハハ。まぁ人体の不思議。というものですね」
「それにエッチな本とか読むときに大きくなるって
それは興奮しているってことじゃないんですか?」
「いえいえ、大きくなるには、周囲が平穏な時だけなんですよ
考えてみてください。野犬が周囲を取り囲んでいる時に
大きくなると思いますか?縮あがっちゃいますよね?」
「えっと…そう言われれば、はい」
「ここで覚えて欲しいのが、男性であれ、女性であれ
もし行為に及ぶのであれば、そういう心が落ち着ける静かな場所で、
魅音さんを安心させた状態で行って欲しいということなんです」
「魅音を安心させる。ですか…」
「はい。そうです。お互いに初めてだと、緊張をしているでしょう。
そこは、頭を撫でてあげたり、キスをしたり、魅音さんが心が落ち着くまで待ってあげてください。急ぐのはNGです。魅音さんも怖がってしまいますからね」
「わ、わかりました。
でも監督…」
「なんでしょう?」
「時代劇とかで女性を戦場で
襲う人とかいますよね?あれはどうなっているんですか?」
「それについては、色々と面白い話があるのですが、
今回は割愛しましょう。今日は、あくまでも一般的な性行為について
学びましょうね…それについては、また次回ということで」
「はぁ…」
「それとも前原さんは魅音さんを力づくで襲いたいのですか?」
「い、いえ、そんな!
魅音を傷つけるなんて…俺は、したくありません」
「前原さんは優しい人なので、そういうと思いました。
それでは次にまいりましょう。
…場所が決まり、二人とも落ち着きました。
前原さんなら、次はどうしますか?」
「えっと、男性器を女性器に入れる。ですか?」
「はい。正解です。
ですが、そのままでは入れてはいけません。
性器が、傷ついてしまいますからね。
うまく接合できるように、濡らす必要があります」
「えっと、それじゃ、水をつけるとか。するんですか?」
「惜しいですよ、前原さん。
確かに水や石鹸、ローションを使うなど方法はあります。
ですが、今回はもっと体をつかった基本的な方法をお教えしましょう
体に点在する性感帯を使うのです」
「性感帯?」
「簡単に言えば気持ちよくなる場所。ですね。
もちろん女性器も性感帯になります。ですが、慣れないうちに
直接触っては傷つける恐れがあります。ですから、最初の内は
下着や服の上から触るのが良いでしょう」
「服や下着の上から…」
「ですが、最初から女性器を触るのは、心にも体にも刺激が強すぎます。
そこでで唇や胸などの代用で、少しずつ興奮させていくのが良いでしょうね
興奮をすれば女性器から分泌液…つまり濡れて、男性器が入りやすくなります」
「唇って…
えっと、それってキスするってことですか?」
「その通りです。さすが、わかっていますね。
ちなみに前原さん、魅音さんの胸を触ったり、キスをしたことはありますか?」
「えっと、胸はありません。
でも、キスは…はい。あります」
「そうですか。羨ましいですね。
ごちそうさまです」
「いえ、その…ははは…」
「ここで注意して欲しいのが、唇や胸といった場所は、元々は触るようにできていない。という点です」
「えっと、そうなんですか?」
「はい。唇が気持ちよいのは食料を摂取するため。
胸を触って気持ちよいのは、赤ちゃんに母乳をあげるためなんです。
ある意味において、キスをしたり、胸をさわったりして気持ちよくなるのは
脳の錯誤を利用した方法とも言いかえることができますね」
「錯誤?勘違いですか」
「えっと。ここで伝えたいのは錯誤の部分では無く
元々、触るものでは無いので、優しく触れて欲しい。という部分なんです。
強くもんだり、握ったりしたら、相手の女性の方はとても痛みを感じます。
ですので、キスや、胸を触る場合は、ソフトに強くしない事。これが基本になります」
「はい」
「もちろん、慣れてきたら相手に合わせて
力加減をかえるのもよいかもしれませんね。
それでは次に「処女膜」というのはご存知ですか?」
「えっと、一度もしたことが女の人についている…その、膜ですよね?」
「ええ、そうです。ですが厳密には膜ではありません。
勘違いしている人も多いんですが、処女膜には穴が開いているのです」
「穴、ですか?」
「はい。穴です。穴の大きさは人それぞれのため、一概にはいえませんが
穴の大きさによって、男性器を入れても特に痛くない場合があります。
これは良く覚えておいてください。大事になることもありますからね」
「大事って、そんなことあるんですか?」
「実際、たまにあるんですよ。初めてなのに痛がらないし、血も出ない。
これは浮気をした証拠だと言って事件になる時が。
ですが、先ほども言った通り、穴の大きは個々に違いますので、
全く問題無く男性器を入れる人や、穴が大きく膜が破れない人もいるのです」
「そうなんですか。
てっきり、必ず破れて血が出る者だと思っていました」
「…まぁ、一般の人でも、そう思う人は実に多いですからね。
漫画や小説の記号として使うには確かに便利なのでしょうが、現実は違います。
前原さんも、もし、魅音さんが痛がらなくても、それは必ずしも浮気を意味していないと
いうことだけは覚えておいてくださいね」
「はい。わかりました。
でも、その逆も、あるんですよね?」
「もちろんです。穴が小さすぎたり、繊維の密度が濃すぎて
中々破れないという場合もあります。また、とても可能性が低いですが
穴が開いていない人もいます。そういう人は無理に開けようとすると激しく破れて、
血が出たりする場合がありますね」
「そういう時は、どうすればいいんですか監督?」
「そういう場合は、一気に行おうとせずに、
ある程度まで行ったら一旦止めて、抱きしめてあげてください。」
「抱きしめる。ですか?」
「そうです。穴は徐々に広がっていきます。
無理をせず、焦らないで少しずつ進めて行ってあげてください」
「それでもダメな場合は?」
「その時は、穴をあけるための外科手術をします。
そう多くありませんが、実際に処女膜が厚すぎて切開するという
事例もありますよ。まぁ、これは例外中の例外ですから、
気にしないでも結構だと思います」
「切開、ですか」
「大丈夫。その時は私では無く、鷹野さんにお願いしますから」
「え?あ、はい…」
「それでは次に参りましょう。処女膜を抜けて、前原さんの性器が
女性器の中にはいったとします。この時も十分注意してください。
女性器の中は、いわばむき出しの内臓です。初めてならとても
痛く感じるでしょう」
「その時は、どうしたらいいんですか?
止めたら方が良いんでしょうか」
「そうですね。
先ほどと同じように動き止めて、抱きしめてあげてください。
慣れないうちはとても痛いと思います。ゆっくりのペースで
少しずつ鳴らして言った方が良いでしょう。これも同じように
何度もおこなっていけば慣れていくので、それまでは、相手に
無理をさせないように気をつけましょうね」
「はい、わかりました」
「前原さんの興奮が最高潮になれば、精子が出されます。
この辺りは、まぁ説明しなくても良いでしょうけれど。ただ…」
「ただ…?」
「…前原さん。ここはとても重要なポイントです
いいですか、今から言う事を、よく覚えておいてください」
「は、はい…?なんですが監督?」
「賢者タイムというのを御存じですか?」
「いえ、ちょっとよくわからないです」
「…男性は射精をすると、その後しばらく副交感神経が優位になり
心が平常へとなります。つまり、クールダウンです。いわゆるこれが
賢者タイムと言われるものです」
「さっき話があった。平穏だと大きくなって、興奮すると精子が出る
という奴ですか?」
「その通りです。問題は、行為が終わった後です。
前原さん。男性は射精をしてしまうと、女性にタンパクになってしまうのです。
これは人間の、いや人体の機能的にどうしようもないことなのです!」
「は、はい…」
「ところがです!女性側から見ると、これは『あんなに激しく求めていたのに、
いきなり冷静になるなんて、彼は私の体しか興味が無かったのね!』って
なってしまうわけですよ、前原さんッ!!!」
「か、監督!?」
「違う!そうじゃないんだ!これは人間の機能の問題!生理的反応の問題であって
決して体だけが目的じゃないんだ!しかも!このクールダウンは、むしろ、
相手が好きであれば、あるほど、心を許せば許すほど顕著に出てしまう!
あぁ、なんてことでしょう!好きだからこそ、嫌われてしまうのですよ!
何という悲しみ!何という悲劇!あぁ、神はなぜこのように男子の体を作りたもうたのか!!」
「か、監督、わかりましたから、落ちついて下さい!!わかりましたから!」
「…失礼。少々取り乱しました。
…前原さん」
「は、はい」
「行為が終わったら、間一髪入れずに、彼女を抱きしたり、腕枕をするなり
『俺はお前が好きなんだぜ』アピールを忘れずに行ってください。
さもないと大変な事になります。これは医師では無く、男としての忠告です」
「わ、わかりました。
でも、監督、気が付いたんですけど」
「はい、何でしょう?」
「対応方法が、その、全部優しくする。とか、抱きしめるなんですが
これでいいんですか?」
「その通りです。よくわかりましたね前原さん。
性行為に必要なのは相手に対する深い理解と優しさです。
相手が何を求めているのか。相手が辛く無いかをよく吟味して
優しくしてあげて下さい。そうすれば上手い下手は関係なく
きっと、前原さんは受け入れてもらえると思いますよ」
「は、はい。俺、がんばります」
「それと最後に、避妊具についてです」
「それって、性病とかに対するヤツですよね?
だったら俺は魅音以外の女性と関係を持つ気は無いんで…」
「…前原さん。これは冗談でも、誇張でもありません。
この話を聞かないと、貴方はきっと後悔することになります」
「…監督」
「前原さんが、魅音さんをお好きなのは重々承知しています。
しかし、人間はどうしようもなくなることも、また、あります。
ホルモンのバランスや、病気、あるいは私の父のように
脳をやられて正常な思考ができなく場合も時としてあります」
「しかし、俺は…」
「ない、と言い切れますか?
おかしくならない時が?」
「………………いえ」
「人は時としてどうしようもない行動をとるときがあります。
そして避妊具とは、その最後の砦なのです。望まぬ妊娠をした時
傷つくのは、相手だけではありません。前原さん、貴方自身も傷つくのです」
「でも、俺は…魅音との子供なら」
「えぇ、分かっています。前原さんなら
きっと、生まれて来た子供を深く愛するでしょう。
でも、もし、未成熟な体で出産を行って魅音さんが死んだら、
前原さん、貴方はそれに耐えきれますか?」
「…う、ぐっ」
「一時の情熱に頭をやられることも若いうちはあります。
それは仕方ありません。ですが避妊具は、そのことによる悲劇を防げます。
コンドームを持つというのは、男性にとって愛する者を守るための権利であり
義務なのです」
「…すいません。俺、魅音の事、考えてませんでした」
「いえ、謝ることはありません。
その考えに至れない人は山ほどいます。特に日本の学校では、
欧米と違って突っ込んだ性教育は、あまりされていません。
前原さんの同学年では、おそらく考えた事すら無いでしょう」
「……………」
「ですが前原さん。貴方は今日、この大切さに気が付いた。
それはとても立派な事です。誇っても構いませんよ」
「あの…避妊具って、どこにいけば買えるんでしょうか?」
「薬局や薬店で販売しているはずです。
今のご時世なら、おそらく自動販売機が店前に置いてあるかもしれません。
そうだ。今日は私の持っている医療用コンドームを、差し上げますよ」
「え?いいんですか」
「もちろん。とはいえ、これは医療用メーカーの試用品としてもらったものですから
サイズなどは合わないと思います。色々試してみて自分にあう大きさのものを探すと良いでしょう。」
「その、監督。
今日は色々ありがとうございます!俺、頑張ってみます
あ、そうだ。今日の支払いは…」
「あははは、今日は結構ですよ。そうだ明日、試合がありますので助っ人に来て頂けますか?
何しろ、前原君は、あの亀田君を打ち倒した我が野球部の切り札なんですからね」
「はい!もちろんです!明日ですね、いかせてもらいます!」
入江診療所
※本カルテを児童相談所に提出する場合は外3-665に照らし合わせ行う事。
※児童保護の観点から本カルテはE-45に分類。なお所長の許可無き者は閲覧を禁止する。