ひぐらしのなく頃に~ただひたすら圭一と魅音がイチャイチャするだけ編~   作:Java-Lan

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第22話_9日目(金)B「大人の矜持」

[9日目(金):入江診療所:昼:入江京介]

 

前原圭一が診察室から出て行った後、直ぐに入江京介は各所に連絡をし、本日の予定をキャンセルした。本日中に、行わなければならない仕事が無かったのは幸いだ。

雛見沢分校の知恵先生に前原圭一と園崎魅音の事情を電話で説明したら、すぐに園崎本家へ出向くことができるだろう。

 

「あら、あら、本気でお魎さんの所へ行くつもりなのですか入江所長?」

 

鷹野三四が、入江を見て笑っている。

その笑顔の意味は分かっている。

 

入江京介を嘲笑っているのだ。無謀だと。

 

「圭一さんには性行為の講義を行いましたが、ことの最大の問題点は別にあります。

 未成年者同士の結婚だけであるなら、風習として片付けられましょう。しかし、

 それが健康と生命にかかわる事なら、医師として見過ごすわけには参りません」

 

だが、入江京介は、鷹野三四の嘲笑に毅然として答えた。

確かに、入江京介が行おうとしていることは、この雛見沢で生活している者からすれば、確かに無謀以外のなにものでも無い。

 

彼は園崎お魎に対して直談判しにいくつもりなのだ。

前原圭一と、園崎魅音の婚前交渉の件について。

 

「魅音さんのお話で、お二人がお魎さんに強いプレッシャーを受けていることがわかりました。

 これは未成年者へ妊娠を強要に等しい行動です。ともすれば児童虐待にも抵触する可能性もあるでしょう。そのような相談を受けて、動かないわけには参りません」

 

「村の有力者に喧嘩を売る。あまり賢いやり方とは思えませんわね」

「喧嘩ではありませんよ。考えを改めてもらえるように、お願いをしにいくだけです」

 

入江はニッコリと笑う。

ひ孫を見たいと言う老婆の気持ちは分からなくはない。

 

その気持ちは否定するものでは無いが、そうはいっても前原圭一と、園崎魅音はまだ若い。

しかるべき時期まで待ってもらう。それだけを入江は医師として伝えにいきたいのだ。

 

鷹野三四は処置無しと両肩をすくめる。その時、

不快な笑い声と共に診療室のドアが開き、一人の男が入ってきた。

 

むふふふふ…

 

入江京介と、鷹野三四が男をみる。

そこにいたのは興宮署の大石警部であった。

 

入江京介は眉を一瞬だけ動かした。

この男は”オヤシロ様の使い”と言われるだけに、いつもタイミングが悪い時に訪れる。

 

「いやぁ~今日は、飲み過ぎちゃってですね。ちょ~とみてもらおうかと思ったんですが、外で、お二人の話を聞いたら、調子、戻っちゃいましたよ」

 

「そうですか。それでは良かったです。それでは今、私は忙しいので…」

「むふふふ…じゃあ、入江先生、ちゃっちゃっと、通報しちゃいましょうか?」

 

空気が凍る。

 

入江は厳しい顔つきで大石を見た。

 

「なぜ、ですか?」

「なぜって、貴方も今、言っていたじゃありませんか?園崎お魎さんが、孫の魅音さんと圭一さんに、ひ孫をこさえろとプレッシャーをかけて、セックスの強要を行っていたんでしょう?

 未成年児童に対する性行為の強要は立派な児童虐待。犯罪ですよ…それとも…」

 

大石は笑顔から一点。

獲物を狙う猛獣の如き目で入江をにらみつける。

 

「入江先生、アンタ、お魎のバアさんに味方する気かい?」

 

だが、入江は動じない。

入江京介にも矜持がある。医師としての矜持だ。

 

WHOでは健康の定義は、こうなっている。

 

健康とは、肉体的、精神的及び社会的に完全に良好な状態であり、

単に疾病又は病弱であることでは無い

 

医師として、前原圭一と園崎魅音の健康を考えるのであれば、単に安易な妊娠をいさめるだけではすまない。二人が、妊娠を強要されることなく、正しい性知識を持って、社会的に平和で安全で問題無く過ごさなくてはならないのだ。

 

そのためにも園崎お魎を説得し、納得してもらい、誰も傷つくこともなく終わるのがベストだ。

事を荒立てる気は無い。問題が大きくなれば二人の将来に禍根を残すかもしれない。

 

だからこそ、無茶だと思われても自ら説得に赴こうと決意したのだ。

そんな気概を持つ入江京介が、百戦錬磨の大石の眼光にもひるまないのは当然である。

 

「大石警部、何か勘違いをされているのではありませんか?」

「…あん?」

「確かに、私は園崎魅音さんと前原圭一君に相談を受けました。しかし、彼らの話を聞く限りでは、お魎さんにひ孫を見せたくて自発的に行ったことです。さらに言えば、あの二人はまだ婚前交渉をしておらず、実害はまだでておりません」

「おい、おちょくっているのか?アンタ、セックスの仕方おしえたんだろ!共犯関係ってことで、取り調べてもいいんだぜ?」

「正しい性教育を行うのは医師の務めです。そして18歳に満たない段階での婚前交渉はしないようにと伝えてあります」

 

正論だ。大石は顏をゆがめる。

虐待を受けた児童を通報する義務はある。だが、大石が本人達から直接虐待の話を聞いたわけではない。さらに医師が事実を持って虐待では無いと主張している以上、それより踏み込むわけにもいかない。

証拠が無ければ行動ができないというのは、沙都子が叔父に虐待されていたと言われた時と同じだ。

 

「ただ、大石さん、貴方の言い分にも一理あります」

「ほぅ…どの部分が、ですかね?」

「お魎さんが、前原さん達にプレッシャーをかけている部分にです」

「ふむ…」

 

入江京介は大石という男を良く知っている。この男は、口で言うほどに児童虐待の問題に関心があるわけではない。

もし、そうであるならば、沙都子が困っている時に、もう少し真剣に行動していたはずである。

大石が興味があることは、ただ一つ。それが、園崎家への突破口になるか否かだ。

 

大石警部は、毎年雛見沢の地で綿祭りの日に起きる殺人事件…通称「オヤシロ様怪死事件」の真犯人は園崎家だとにらんでいる。

だが、その捜査は難航していた。園崎家には強固な防御システムが存在する。それは弁護士であったり、政治家であったり、身内の警察であったり、様々な場所に園崎家の人間が、園崎家の本家を守ろうと活動をしているのだ。

 

大石警部は、今年で定年を迎える。それまでに、これらの事件を解決したいと焦っている。

園崎家という巨大ダムに開けるハリの一穴にしたいのだ。この前原圭一と園崎魅音の婚前交渉を児童虐待問題にして。

 

「今から私はお魎さんに、あの二人へプレッシャーをかけないようにお願いしてくるつもりです」

「そんな話を、お魎のバアさんが聞くとは思えませんがね」

 

大石は鼻で笑う。

鷹野三四と同じように「あの頑固ババアが聞き入れるわけががない」という確信に満ちた反応だ。

 

だが、入江は微笑む。

 

「大石さん。喧嘩はルールにのっとってやるものではありませんか?私は沙都子ちゃんを救出する前原圭一君にそのことをよく教わりましたよ」

「…ほぅ、つまり聞き入れなかった場合はどうすると?」

 

大石は、園崎家に対して妄執を抱いている。

だから信用できないし、だからこそ信用できるとも言える。

相手が園崎家であったのならば、大石は一歩も引かないだろう。

 

「…その時は、大石さん。よろしくお願いします」

 

もし、お魎さん自分の説得を受け入れない場合、一番頼りになるのは大石なのだ。

それはおそらく、間違いないことだろう。

 

[9日目(金):入江診療所駐車場:昼:大石蔵人]

 

大石蔵人は診療所を出ると、駐車場に止めていた覆面パトカーにすぐさま乗りこむ。

助手席にいた刑事の熊谷勝也は、今出て行ったばかりの大石がすぐに戻ってきたので少し驚いた。

 

「随分早かったっすね大石さん」

「ん~ふふふっ。熊ちゃん。少年課の課長だれだっけ?あ、あと児童相談所、児童福祉センターに取次お願いできる?」

「そりゃ、構いませんが。一体、どうしたんですか大石さん?」

 

大石は煙草を吸おうとして胸ポケットに手をやるが、禁煙していたのを思い出した。

最近は署内でも禁煙する者が多い。署長に言わせれば、今どきの警察官は煙草を吸うと出世できないらしいが、今年定年の大石にはもう関係のない事だ。

とは言うものの大石も協調性がないわけでもない。

周囲に合わせて、ここ数日は健康のために煙草を吸うのをやめていた。

 

「ふむ。熊ちゃん。最近、園崎家で結納あったの知っているでしょう?」

「えぇ、園崎のお嬢さんが、前原屋敷の息子さんと婚約したんですよね」

「それなんですがね…園崎のバアさんが、ひ孫見たいって、その二人に子供を作るように要求しているようなんですよ」

「はぁ?だって、あの二人未成年ですよね?子作りしろって、それ児童虐待じゃないですか!」

 

児童虐待の定義には

・児童にわいせつな行為をすること又は児童をしてわいせつな行為をさせること。

が存在する。

 

未成年者に性的行為を行うだけが虐待では無い。

性的行為を強要するのは立派な児童虐待にあたる。

 

児童とは厳密にいえば、小学生ぐらいの子供を指すが、この場合は成人していない未成年者、すなわち20歳に満たない人間を含む。

つまり、前原圭一と、園崎魅音に対して子供を作れと圧力をかけるのは児童虐待にあたるのだ。

 

「ただね。入江先生が言うには、まだあの二人していないらしいですよ。やり方がわからないらしくて。んふふふふ…初々しいですねぇ」

「いや、だからと言って通報しないってのは無いんじゃないですか?」

 

熊谷刑事はそう言ったが、

この時代(昭和58年)の定義では、あくまでも『虐待を受けた児童を通報する義務はある』が『虐待を受けたと”思われる”』場合には、通報の義務はない。

『虐待を受けたと思われる場合』に通報する義務が生じるのは平成20年に児童虐待防止等が改正された後である。

 

つまり、この時点では警察と同じで『確たる虐待の証拠』が無ければ、医師に通報する義務が無いのだ。

 

「そこなんですよ。入江先生は、お魎のバァさんを説得するって息巻いているんですよね」

「無理でしょそんなの」

 

熊谷は即答した。

大石と同じ意見だ。雛見沢や近隣一帯を牛耳る首魁が、そんな簡単に人の意見を聞くわけが無い。

おそらく入江先生が出向いたところで、一喝されて終わりだろう。

 

だが、問題はその先だ。

 

「入江先生は、ああ見えて気骨のある方ですからねぇ。きっと通報しますよ。んふふふふ…ただ、そのままってのは面白くありませんよね?」

 

大石達が何をしなければどうなるのか。それは火を見るよりも明らかだ。

児童相談所に通報がされ、児童福祉司が園崎家に訪れても、お茶と菓子を受け取って終わりだろう。多少、茶飲み話は出るだろうが、そんな深い話もでずに退散し、書類に「様子見」と書かれて判子を押されて終了になることは間違いない。

 

これは何も、園崎家があらゆる公的機関…それは警察や役所、保護施設など…に親類縁者がおり、その力を発揮するからという理由では無い。

むしろ、そのような園崎家の力を使う必要もないだろう。なぜなら、当の前原圭一と、園崎魅音に虐待されている意識が無いからだ。

 

「せいぜい、お魎のバァさんに『ひ孫が見たいのはわかりますが、未成年に無理は言わないように』と、一言添えられて終わりですな。ダーハハハハ!」

「で、大石さんは、それで終わらせるつもりは無いんでしょ?」

「んふふふ、もちろん。こんな好機、めったにあるものではありませんからねぇ」

 

園崎家の防衛システムは鉄壁で隙が無い。通常では突破口を開くのは無理だ。

しかし、児童保護を名目に園崎邸に踏み込むことができれば、多くの物証を握ることができるかもしれない。

 

「たしか署内に児童虐待対策チームがあったはずです。そっちの方にも連絡をつけておきます」

「では、熊ちゃん頼みますよ。私の方でもちょ~と色々と調整をしますから」

 

園崎お魎は老いた。残りの余生の短さから、未成年者の孫に婚前交渉を強要すればどういう事態を招くのか想像もできなくなっているらしい。

 

(…マスコミに情報を流し『地方の田舎町に残る悪しき因習!未成年者同士をセッ○スさせる旧家!』なんて記事を書かせて、世間を煽るのも良いかもしれませんねぇ。B級イロモノ雑誌なら喜んで食いつきますよコレは)

 

「…大石さん。今、すっごい悪い顔をしていましたよ?」

「いやいや、人間なんて勝つためには、無限に卑しいことを考えちゃうもんですからねぇ」

「ちょっと洒落にならない手段はやめてくださいよ。一応、うちら正義の味方なんですから」

「いやいや、悪い奴らに勝ってこその正義でしょ、熊ちゃん?んふふふふ…」

 

ヤクザは、相手の家に乗り込むとき、少し開いたドアにつま先を入れ、それを前に押し込んで少しずつ入りこみ、最終的に体全体を家の中に押し込むのだと言う。

しかし、なにもこの方法はヤクザだけの専売特許では無い。得意とするのはヤクザだけでは無いのだ。ただ、それが正しい方法であったかどうかは結果を見るまでわからないが。

 




トピック: [ 前原圭一と園崎魅音の年齢 ]
※トピックでは「ひぐらしのなく頃に」のネタバレが含まれます※

本作品はイチャイチャが目的であってHが目的ではありません。そのため、残念ながら二人には未成年ということで全力で周囲の大人たちが阻止を行います。

さて、そうなると重用なのは、二人の年齢です。
実をいうと作品中では二人の年齢は明確には語られている場面がありません。

『ひぐらしのなく頃に祭』では、園崎魅音は1966年生まれの17歳となっています。
しかし『ひぐらしのなく頃に命』では、どうやら中学生に設定されているようです。
アニメ版では特に年齢については語られていませんが、見た目はどうも幼い感じではあるようです。

全ての世界の共通設定では『園崎魅音は受験前』ということだけです。

ただ小学生と高校生が同じ学校(雛見沢分校)というのも不自然なので、中学生が正しいとも思えますが断言はできません。とりあえず本作品では、園崎魅音と前原圭一は二人とも中学生~高校生という前提で話を進めています。

※他のVerに設定がある以上、どちらの可能性も否定しているわけではありませんが、表現的にはどちらかに偏る描写もあることはご了承下さい。

トピック: [ 大石は禁煙している? ]
※トピックでは「ひぐらしのなく頃に」のネタバレが含まれます※

大石はオリジナル版でもコンシュマー版でも作品中では喫煙をしている描写はありません。
このことについて作品内では特に言及されてはいませんが『皆殺し編』では、熊谷刑事に自前の煙草を差し出す描写があり、また『祭囃し編』では吸殻を落す場面がありますので「煙草を吸った」という文章は無いものの、喫煙自体はしているようです。

昭和58年の健常な成人男子なら喫煙をしているのが一般的です。
そのため、初期の映像化作品でも大石は喫煙をしている描写があります。

しかし、後年つくられた映像作品では大石は喫煙をしていません。
おそらくコンプライアンス的な問題のためだと思われます。

ちなみに、テレビ版「ひぐらしのなく頃に卒」の10話で煙草を吸っている場面が入っていましたが、かなりレアなシーンと言えるでしょう。
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