ひぐらしのなく頃に~ただひたすら圭一と魅音がイチャイチャするだけ編~   作:Java-Lan

31 / 48
第29話_11日目(日)A「交差する運命」

[11日目(日):古手神社:昼:前原圭一]

 

古手神社の前で出会った魅音はタコのように頬を膨らませ俺を待ち構えていた。

怒っているのはわかるんだが、その顔は結構面白い。

 

「圭ちゃん嫌い。皆の前であんなことして。

 おじさん恥ずかしくて死にそうだったよ!」

 

昨日、エンジェルモートでみんなの前でイチャイチャを強行したことを怒っているようだ。

普段は自分から、イチャイチャしてくるくせによく言うぜ、全く。

 

しかも、口から「ぷすー」という効果音までつけている。

お前は、漫画のキャラクターか何かか?

 

「そんなこと言うなよ?試合場の時は何も言わなかっただろ?」

「あ、あれはその…いきなりだったし、試合の駆け引きだったってわかっていたからさ…エンジェルモートのアレは、じょ、冗談でもさ。あぁいうの良くないと、おじさんは思うんだよね」

 

魅音はしどろもどになって答える。

ふむふむ。この様子だと口で言うほどには怒っていないみたいだ。

なら、少し攻めてみるか?

 

「冗談だって?それは違うぜ魅音。俺はいつだって本気だ」

「ふぇ…?」

 

俺は魅音の両肩を掴み、顔を近づける。

 

「俺はあの時も、そして今も、魅音と全力とイチャイチャしたいと思っている。だから、それがわからないっていうなら、今、ここで。俺はイチャイチャする!」

「ま、ま、ま、待ってよ!ここ…みんながいるんだよ!?」

「俺は一向に構わんッ!」

「わーわー!待って!悪かった!おじさんが悪かった!圭ちゃん許して!」

 

暴れる魅音を押さえつけて、俺は額に軽くキスをした。

顔を真っ赤にして戸惑いを見せる魅音に、軽くウィンクする。

 

「しょうがないな魅音は。今回だけだぜ?」

「う~圭ちゃん嫌い!圭ちゃん嫌い!圭ちゃん嫌い!詩音並みに意地悪になった!」

「残念だぜ。俺は魅音のことが大好きだってのにさ」

「うがぁ~~~~!!!!圭ちゃんそういう所ッ!!!」

 

本当に魅音をいじくるのは面白い。

俺はお詫びに頬にキスをすると、沙都子の冷たい声が聞こえてきた。

 

「全く、お二人とも今日も全力でイチャイチャですの?早く設営をお手伝いくださいませ」

 

今はお昼の11時。境内には、多くの人が、焼肉パーティの準備をしている。

昨日一緒に戦った野球部の親たちだけではなく、地元の人達まで多くいる。

昨日の逆転大勝利で気を良くした野球部の父母さんたちの中に綿流し委員会の人がおり、

どうせなら「綿流し前夜祭」ということで、盛大にパーティを行なおう。と言うことになったらしい。

 

そのため、今回の焼肉パーティは、綿流し実行委員会や雛見沢会費から捻出されることになるらしく入江監督も懐を痛めなく済んだとニコニコしている。

 

「しかし、前夜祭で村民主催の焼肉パーティって。金持っているよなぁ」

 

綿流しのお祭りだけでも結構な費用がかかるはずだと思うが、そんなに雛見沢は金がある土地だったのか?

そんなことを考えていると、梨花ちゃんがニパー☆と笑顔を向けてきた。

 

「圭一と魅ぃの結納も兼ねているので、お魎がいっぱい、いっぱい金を出してくれたのですよ☆」

 

今回の雛見沢綿祭りは雛見沢を統括する御三家の一つ園崎家の次期当主・園崎魅音の結納披露をも兼ねている。そのため、園崎本家から多額の出資金が出ているらしい。

 

「それだけじゃないんだ圭ちゃん。

 バっちゃんは、私達の結納を転機としてダム闘争の完全終結を宣言するつもりなんだよ」

 

ダム闘争の完全終結。

それはもう完全に、この時のことは水に流し、かつての反対派も賛成派も、全員が手にとって新たな未来へと進もうと言う宣言だ。

 

ダム闘争の推進派を両親をもっていた沙都子は、村八分とまではいっていなかったが、村人から敬遠される存在だった。しかし、沙都子を叔父の虐待から救出するため、雛見沢の人々は一丸となって団結した。

 

そのことにより、沙都子への対応はかなり変わっていた。

以前のように村の人達は沙都子を無視するようなことはしなくなっていた。

今回、ダム闘争の完全終結宣言があれば、雛見沢における沙都子の冷遇は完全に終わりをつげるだろう。

 

「じゃあ、もう沙都子はこれで安心して雛見沢で暮らせるんだな!」

「…うん。本当はね、私の代で決着をつけるはずだったんだけど、今回の結納は一区切りつける

 良い機会だって話が出てきてね」

 

確かに、次期当主の結納発表は新たな時代を到来を告げるのに、うってつけの儀式に違いない。

今回の綿祭りは、色んな意味で雛見沢の新たな門出になるはずだ。

 

「魅ぃちゃーん!圭ちゃーん!」

 

俺達を呼ぶ声が聞こえてきた。レナだ。

境内の階段をのぼって、こっちにやってくる。

 

「レナ、こっちだ!」

 

俺は右手を大きくふる。

 

レナの格好は特徴的な白い帽子と、上下一体型の白い服だ。

スカートの前中央の部分には、際どいスリットが入っている。

 

なるほど、今まで気にしたこともなかったが、これほど際どい切り込みだと

ハーフパンツを履いていないと、確かに色々見えてしまうかもしれない。

 

「どうしたの圭一くん?」

 

俺の目の前まで来たレナが、

不思議そうな顔をして見てくる。

 

「いや、レナが今日もハーフパンツを履いているのかな。って思ってさ」

「うん。履いているよ!ほら」

 

…ペラ

 

うわっ!?バカなにしてんだ!

レナが屈託なく、自分のスカートをめくりあげる。

 

確かにハーフパンツが丸見えだ!

いや、別に見えてもまったく構わないのだろうけれど。

 

しかし、下にハーフパンツを履いているかと言って、

自分でめくりあげるのはどうなんだ?はしたないぞレナ!?

 

「…圭ちゃん」

 

…うっ、寒気がする。

この冷気は、魅音か?

 

振り返る間もなく襟首をつかまれて引きずられる!

抵抗できない。なんて力だ!

お、おい、待て魅音!?レナが唖然として見ているぞ!?

 

「…圭ちゃん。今日の私の格好…見えてる?」

 

今日の魅音の格好?

そういえば、普段着なら黄色のTシャツにズボンのはずだが、

今日はスカートつきの学生服を着ているんだな。

 

「そうだよ。圭ちゃんがさ。好きだと思ってスカート履いてきたんだよ」

 

俺は神社裏まで引きずられると押し倒され

その上に魅音が馬乗りになった。

 

冷たい顏でおれを見下し、

両手でスカートの端を掴む。

 

「お、おい…魅音?」

「スカートの下、ホットパンツやハーフパンツなんて履いていないから。沙都子のようにストッキングも履いてないし、もちろん水着を着てもいないよ。圭ちゃん…意味わかるよね?」

 

魅音が少しずつスカートを上にあげていく。

 

スカートの端がめくりあがり、ふとももが露出する。

俺はつばを飲み込む。このままだと魅音のスカートが全部めくりあがって…

 

「待て、魅音!」

 

…ガシッ

俺は、魅音の手首を押さえつけた。

魅音は不快感を表して俺を見つめている。

 

「なに?圭ちゃん、さ。見たくないの?」

「見たいに決まっているだろ!でも、そんな顏したお前に見せて貰っても、嬉しくもなんともないぜ!」

 

魅音は、顔を歪めた。

今の魅音の顔は嫉妬と怒りに満ちている。

そんなのは、俺の好きな魅音じゃない!

 

それは初めから自分でもわかっていたんだろう。

魅音はうなだれると、両手で顔を隠した。

 

「圭ちゃん、私、嫌な女だよね?こんな事しても意味が無いのがわかっているのにさ」

「魅音…」

 

一瞬、どう答えて良いかわからなかった。

魅音が悪いわけじゃない。もとはと言えば、俺がレナのスカートなんて凝視していたのが悪いんだ。本当に悪いのは俺なんだ。魅音は悪くないんだぜ?

 

「泣くなよ、俺が…その、さ。一番悪いんだから」

「違うんだよ圭ちゃん…これは、自分自身が嫌になっているだけなんだ…だって、レナはあんなにも良い子なのにさ。嫉妬しちゃうだなんて…おじさん…本当、自分で自分が嫌になっちゃうよ…」

 

俺は何も言えない。

好意と嫉妬は表裏一体だ。どちらかが大きくなれば、どちかも増える。

 

嫉妬する必要はないぜ?

俺は魅音だけが好きなんだかさ。

 

それをどうやって魅音に理解できるように

上手く伝えれば良いのかがわからない。

 

「詩音は嫉妬の鬼になるなって言っていたけどさ…そんなの無理!

 だって圭ちゃんって…かっこいいんだもん!」

 

…はい?

 

「圭ちゃんって、包容力があって、皆に優しくて

 口も上手くで、誰からも好かれて…いつだって勇気と元気をくれる!助けてくれる!

 こんなの…誰かにとられないって思わない方がおかしい!」

 

いや、いやいやいやいや…

魅音、お前、何を言っているんだ?

 

…ハッ!

 

ここで俺は気が付いた。

恋人偏向フェルターだ!かつて俺は魅音を天使のようだと言ったアレだ。

ちなみに今は魅音のことを女神だと思っている。

 

悪化しているが、

俺のことはどうでもいい。

 

俺は上半身を起き上がらせると、魅音の両腕をつかんだ。

 

「あのな、魅音…」

「なに、圭ちゃん?」

「そう思っているの。多分、世界でお前だけだぜ?」

「へ…?」

 

魅音がキョトンとした顔で俺を見ている。

わかっていないだろ?分かっていないよな?

 

魅音。俺が現実を教えてやるぜ!

 

「前に夜中にさ。しおらしい魅音と攻める魅音、どっちが好きか?って話をしたとき、

 俺は熱弁してどちらも最高だ!と伝えた事があるのを覚えているか?」

「…うん」

「どう思った?」

「…正直、無いな。って思った」

 

そう、つまりそういうことだ!

 

「あれは俺の偽らざる本心だ魅音!

 しかし、お前が信じなかった!信じようとしなかった!違うか!?」

「え、あ、うん…」

「つまり、それと同じ事なんだ。お前が思う前原圭一論は…お前だけのもの!

 つまり、俺達はお互いにオンリーワンの存在なんだよ!」

 

ガガーン!

魅音が衝撃を受けて目から鱗が落ちた!…かのように見える。

実際はよくわからないが、目が泳いでいるので効果はあったはずだ。

 

「つまりだ。周囲の奴らはお前が思うほど、俺の事なんざこれっぽちも評価していないんだぜ?

 だってさ、俺自身がそんな評価を聞いてもハァ?だしな」

「…そう…なんだ?」

「だからさ、奪われるとか、奪われないとか、そんなこと気にする必要なんてないんだ。

 だって俺の事をさ、そういう風に思っているのは魅音だけなんだからな」

「…圭ちゃん」

 

俺の上半身を馬乗りになった魅音が抱き着く。

絵面にすると、相当おかしな場面だなコレ。

 

「…おじさん、レナに悪い事しちゃった」

「だったら謝っておけ。まぁ、そんなにひどい事してないから笑って許してくれるだろうぜ」

 

俺は魅音を抱きあげて立ち上がった。

背中が若干痛い。魅音が笑っている。

 

笑顔の魅音は輝いているよな。

本当に女神のようだぜ。

 

「へへへ…でも嬉しい。

 じゃさ、世界で圭ちゃんだけは、おじさんをそういう風に思ってくれているんだ」

「当たり前だろ?何度言わせる気だよ。園崎魅音は俺の最高の嫁だぜ?」

 

実際には嫁ではなく、俺が婿に入るんだろうが、そういうのは気にしない。

その場の勢いってヤツだ。

 

俺は魅音のおでこにキスをすると、バーベキューの設営場所まで戻った。

 

すでに鉄板と食材の配置は終わっており、皆が肉を焼き始めている。

沙都子とレナも、肉を焼いてご満悦のようだ。

 

俺は沙都子の頭を後ろから撫でる。

「なんだ沙都子。いつもは俺達を追跡しているのに、こんな時はお肉優先か?」

「圭一さん達の逢引きに興味があるのは梨花とレナさんだけですわ。

 私は一ミリも興味がございませんのことよ?」

 

そういえば、沙都子は俺と魅音がつき合いはじめた時から反応が淡白だったよな。

 

「だいたい、私、何度圭一さんと魅音さんのイチャイチャを見てきたとお思いでして?

 お二人のイチャラブなんて、私にとってみれば、六月のひぐらしの鳴き声と同じでしてよ」

 

言われてみればその通りかもな。

告白して10日間も、俺と魅音はずっとイチャイチャしっぱなしだ。

見飽きたとしても不思議じゃない。

 

するとレナの場合はどうなんだ?

「アハハハ。レナの大好きな魅ぃちゃんと圭一くんが仲がいいんだもん☆

 レナはずっと見ていたいかなぁ~☆はぅ~!」

 

レナの場合は推しと推しのカップリングを見ているようなものか。

つまり、リアルやおい本の世界…

 

「圭ちゃん、それだとおじさんが男みたいじゃない…」

「そうだよな。魅音はすっごく女の子らしいのにな!」

「ふぁっ!?け、圭ちゃん、不意打ちはダメだって!」

 

何が駄目なのかはわからないが、魅音をからかうのは面白いな。

くせになりそうだぜ。詩音が魅音をからかうのもよくわかるってもんだ。

 

「はい。魅ぃちゃん!お肉だよ!」

 

レナがニコニコしながら紙皿にのせたお肉と野菜を魅音に差し出すと、

魅音は申し訳なさそうに受け取り謝った。

 

「…そのさレナ、御免ね。さっきの私さ…嫌な感じだったよね」

「ううん。いいんだよ魅ぃちゃん☆だって圭一くん好きだからやっちゃったことなんだよね?

 だったら仕方ないよ」

 

レナの言葉に目を潤ませて、魅音が抱き着く。

「レナ、本当にアンタは良い子だよ!

 おじさん、レナが悪い男に騙されないか心配で仕方がないよ!」

「アハハハ、魅ぃちゃんも大げさだよ!悪い男なんて、レナがパンチして撃退しちゃうから!」

 

…うむ。レナは結構したたかだから大丈夫だと思うぞ?

そういえば梨花ちゃんはどこにいるんだろう?周りを見てもいないようだが。

 

沙都子が口の中に肉を頬張りながら、箸で梨花ちゃんのいる方向を指し示す。

「梨花でしたら、先ほど富竹のおじさまと、三四さんと一緒に高台の方にいきましたわよ?」

 

高台っていうと、雛見沢を一望できるあそこか。

確かに景観が良い場所だけど、バーベキューも始まっているのに、何をしに行ったんだ?

 

「バーベキューが始まったって伝えに行ってくる。魅音はここで待っててくれ」

「いってらっしゃい!圭ちゃんの為に、肉焼いておくからね!」

 

おう、ありがとうな魅音!

俺は高台まで走る。

 

…っていたのね…ええ…

…なのですか?…本当…

…何があっても…守っ…

僕たちは…絶……みせる

 

近くまでいくと話し声が聞こえてきた。

 

これは富竹さんと、三四さんの声?

なんだ?守るって一体…

 

俺は隠れて聞くべきかどうか悩んでいるうちに

高台まできてしまう。

 

「誰!?…みー☆圭一でしたか」

 

そこには、富竹ジロウさん、鷹野三四さん、

そして鷹野三四さんに抱きしめられている梨花ちゃんがいる。

 

一体ここで何の話をしていたんだ?

梨花ちゃんは顔だけ俺の方に向ける。

 

「圭一、何かようですか?」

「あ、あぁ…バーベキューの用意ができたから、梨花ちゃんも、さ…」

 

梨花ちゃんは、まじめな顔をすると

聞いた事も無いような大人びいた声で語った。

 

「圭一…貴方にも、いえ皆にも後で話をするわ。

 だけど今は何も聞かずに戻って、私にも整理する時間が必要なのだから」

 

俺は無言でうなずくと、元来た道へと戻る。

今のは一体なんだったんだ?守るって一体…?

 

得体のしれない感覚が全身を巡る。

自分の知らない所で、何か大きな動きがあるのだろうか。

自分の運命を勝手に他人が決めているような薄気味悪さを感じる。

 

頭の中がクエスチョンで満たされた俺が次に目にしたのは、

沙都子を抱っこしようとして抵抗されている入江監督の姿だった

 

「ダメですよ沙都子ちゃん!火傷していたらどうしますか?」

「肉を手の平に落しただけですのー!圭一さんたすけてー!誘拐犯ですわ!」

 

さっきまでの緊張感が台無しだ。

物凄く下らない気もするが、一応助けてやるか。

 

「あの、監督…そろそろ、止めないと本当に捕まりますよ?」

「そうですか…?仕方ありませんね。それでは塗り薬を…」

 

「塗り薬があるのなら、最初からお出しくださいませ!」

「それではお持ち帰りできないではありませんか?」

「監督は欲望の権化でございますの!?」

 

権化なんて難しい言葉、良く知っているな沙都子。

そういえば、沙都子ならさっき梨花ちゃんの話、わかるかもしれない。

 

「なぁ、沙都子。梨花ちゃんって鷹野さんと仲が良いのか?」

「鷹野さんって、鷹野三四さんのことですの?別に悪くは無いとは思いますけれど、仲というのなら私の方が良いかもしれませんわね。鷹野さんの車のお人形、私が名前をつけているんですわよ?」

 

なるほど、じゃあ次だ。

 

「梨花ちゃんが、鷹野さんに守るって言われていたけれど、何か知っているか?」

「あぁ、それならきっと、私たちの生活のことではございませんか?」

「生活…?」

「私たち、監督が研究している栄養剤のお手伝いをして謝礼を貰っているのでございますわ」

 

「そうなんですか監督?」

「…ええ、特に沙都子ちゃんには重要な部分をお手伝いさせてもらっておりますので、お礼をさせて頂いています」

 

そんなことを梨花ちゃんと沙都子はしていたのか。

沙都子は腕を見せると注射痕を俺に見せてくれた。

 

監督の研究の為に、試薬品を注射しているらしい。

基本的に一日三回打っていたらしいが、今は二回に減ったそうだ。

 

確かに少女二人で生活していくのには金がかかる。

梨花ちゃんは公由村長が後見人を務めているが、沙都子には虐待して捕まった叔父しかない。

園崎家か公由家のどちらかが後継人になるという話があったようだけど、まごついているという話を前に魅音から聞いた事がある。

だとするなら、生活費を稼ぐのは重要なのは当たり前だ。

 

そうすと梨花ちゃんは”生活を守ってあげる”と言われていたのか…

富竹さんと、鷹野さんに?なんだろう、何か違和感を感じる気がする。

 

「おや、おや…皆さん、おそろいで…んふふふふ…!」

 

特徴的な笑い声と共に、恰幅の良い男が近づいてくる。大石さんだ。

後ろには、梨花ちゃんが赤坂と呼んでいた人とは別の男性がついてきている。

大石さんの部下か誰かなのだろうか。

 

魅音が前に出てきて挨拶をする。

「これは、大石のおじさま。バーベキューを食べにいらしたんですか?」

「一応、私も綿流しの実行委員の1人ですからねぇ。んふふふふ…」

 

確か大石さんは綿流しの警備担当だったかな?

 

魅音は大丈夫か?冷静か?

先日、殺したいほど憎んでいたようなので気が気じゃないぜ。

 

でも、まぁ、今見た感じだと落ち着いているようだから問題はなさそうだけど…

 

「バーベキューは良いですが、あまり食べ過ぎると血がドロドロになって

 脳溢血になって昇天するそうなので気を付けて下さいね☆おじさま」

 

いや…言葉の節々に悪意が感じられるな。

やっぱり魅音の中じゃ憎しみマシマシなようだ。

 

「ん、ふふふ。大丈夫ですよ。これでも鍛えておりますので、ところで魅音さん…」

「なんですか?」

「…最近、園崎家で大きな荷物が他県から大量に入ってきているようですね」

 

大石の目の色が変わった。

周囲の空気が嫌な感じに変わる。

 

「あ、よくご存じですね!

 綿流しで私と圭ちゃんの結納披露を行うので、他県にいる親類縁者からも

 そのための道具や、祝いの品が結構おくられてきているんですよ」

「ハハハハ、さすが園崎家ですなぁ。その中には表に出せないようなものもあるんでしょ?」

「もちろん!結納式のために、いつもは表に出せない伝家の宝刀や、高級染物。

 表に出せない逸品も色々と用意してありますよ」

「こりゃ、今年の綿流し、楽しみですねぇ!んふふふふ…」

 

二人とも口では笑っているが、目は笑ってはいない。

これは…駆け引きをしているのか?

 

だが、なんでだ?

この会話にどんな意味があるっていうんだ?

 

「それじゃ、みなさん。他の委員の人にあいさつにいかなければいけませんので。

 失礼します。んふふふふ…」

 

大石が離れていくと、俺は魅音に近づいた。

 

「どうしたの圭ちゃん?」

 

どうしたのって、お前…

だが口に出す前に気が付いた。

 

声をかけてどうする?何か秘密があるのか?大石さんとトラブルになっているのか?

って問いただすのか?それとも、夫の俺に隠し事は無しだろ!って叫ぶつもりか?

 

どちらも違うような気がするし、間違っている気もする。

俺は魅音を信じている。その魅音が何か俺に隠し事をしていると思うのなら…こう聞いた方が良いだろう。

 

「魅音、お前が何を秘密にしているのかはわからないが、

 教えてくれないのは全て俺のためなんだよな?」

「………」

 

風が吹く。

魅音は俺の顔を見て何も言わない。

おそらく言葉を選んでいる。

 

魅音が口を開くまで俺は待つ。

いつまで見ていたのだろうか。

魅音の髪が風でたなびくを見ていたら、ふいに魅音が口をひらいた。

 

「圭ちゃん。圭ちゃんが私と結婚をすれば、おそらく不快になったり、気分がわるくなるような話を聞くこともあると思う。だけど、それですら全てじゃない。園崎家当主が知るべきことと、そうでない者が知るべき情報があるんだ」

 

それは理解できる。全ての情報が全てオープンなら良いとは限りない。

無用な情報を知ることで混乱し、よりひどい結末になる場合もあるかもしれない。

 

前に誰かに教えてもらったはずだ。

世の中には、伝えなければならないことと伝えなくて良いことがある。と。

 

「わかったぜ魅音。俺はお前を信じる。お前がしゃべらなかったということは、俺が知る必要が無かたってことで理解する。それでいいか?」

「…うん。ありがとう圭ちゃん。そう考えてくれると、私も嬉しい」

「でも、もしも、だぜ?一人でかかえきれないときは絶対に言うんだぞ?俺は役に立たないかもしれないけれど、それで楽になるってんなら幾らでもきいてやるから、さ」

「ありがとう圭ちゃん。それだけで、おじさん…100人の味方を得た思いだよ」

 

魅音が爽やかに微笑む。

 

そうだ。きっと大人になった魅音は、園崎当主として大変な人生を送るのは間違いない。

俺は、魅音の人生を守る大黒柱として、立派に魅音を支えられるのだろうか?

 

…否!

何を言っている前原圭一!支えられるのか?…じゃねぇ!

弱気になるな!支えるんだ!それが夫ってもんだろ!

 

「そうだ。これ、圭ちゃんの分のお肉」

「お、サンキュー魅音」

 

魅音から山盛りに肉が盛られた紙の皿を受け取る。

俺が魅音を支える覚悟と決意を新たにして肉を頬張っていると、梨花ちゃんが近づいてきた。

 

「魅ぃ、圭一。喜一郎が結納披露をするにあたりスピーチをお願いしたいそうなのです」

 

喜一郎って、雛見沢の村長さん?スピーチって何の話だ?

魅音が俺の手を引いて走り出した。

 

「行こう、圭ちゃん」

 

いや、いや、待て!スピーチをしろってことか!?

何も考えていないぞ俺は!?

 

俺は残りの肉を飲み込み走る。

俺の困惑をよそに俺と魅音は神社の広場に到着した。

大勢の村人達が眼の前に集まっており、全員が俺達を見ている。

 

公由村長が魅音と俺の名前を呼ぶと、正面に立たされる。

やばい。緊張してきた。

 

魅音が一歩前に出て頭を下げる。

 

「この度は、私、園崎魅音と前原圭一の結納のお披露目を、綿流しの祭りにて行うことを許可して下さりありがとうございます。当主園崎お魎に代わり…」

 

魅音は手慣れたもので、綿流しに結納を許してくれた実行委員の人達への謝辞を述べた。

感心してみていると、スピーチを終えた魅音に背中を叩かれる。

 

「はい、次は圭ちゃんの番だよ」

 

…おれ!?いや、何を言えばいいんだよ!

一歩前に出されると、俺は覚悟して口を開く。

 

「その…みなさん。俺と魅音の結納に集まって下さってありがとうございます。

俺はこの雛見沢が好きです。まだ未熟ですが、魅音と一緒に、これからも精一杯盛り上げていきたいと思います」

 

頭を下げると、拍手が沸き起こる。

自分でも情けないほど無難な言い回しだが。

これでなんとかなったのか?

 

「圭ちゃん。素朴で良いスピーチだったけど、今日は結納披露の場じゃないよ?クククク…結納に集まって下さってって何さ?」

 

魅音が意地悪そうな顏してそういうと、俺は赤面した。

ちぇ…魅音の奴!

 

俺がそうやってむすっとした瞬間。

 

…チュ

唐突に魅音が俺の頬に口づけをしてきた。

 

「お、おい魅音!?」

「なに?ほっぺにチュぐらいアメリカじゃ、日常茶飯事でしょ?」

 

ここは日本だぞ!しかも衆人観衆の前で!

 

「クククク…だってさ。赤面している圭ちゃん、可愛かったからさ仕方ないじゃん」

そういうとイタズラっぽく笑みを向けてくる。

 

それを見ていた周囲から笑い声が起き、はやし立てられる。

くっそ。魅音め!エンジェルモートでの仕返しのつもりかよ…!

防御力は低いくせに、自分から攻めるときは本当に強いな!

 

でも、恥ずかしいが…

正直嫌では無い…うん。

 

俺のスピーチが終わると、境内の奥から、氷でキンキンに冷えた缶や瓶の酒類が現われた。

それらはすべて、園崎本家からの差し入れらしい。大人達は次々と泡の出る麦茶を飲み始める。

 

見渡すと、その大人たちの中に俺の親父が紛れているのに気が付いた。

俺に手を振っているので、振り返すと親父は周囲の大人達に話しながら俺を指さしている。

 

どうやら、ここでも園崎家婿養子の父親としての力を存分に発揮して、甘い汁を吸っているようだ。

 

「魅音。三国志とかで外の親戚で国が亡ぶとかってあるけど、親父見ているとなんだかわかる気がしてくるぜ」

「あ、あははは。まぁ、園崎家の名を利用したいっていう人は、いるからね」

「やはり結婚したら、まっさきに親父を斬るべきか…?」

「い、いや。お義父様は芸術家だから、そこまでしなくても良いと思うけど…」

 

ち、親父。命拾いしたな。

魅音に感謝しろよ!

 

バーベキューも、一通り肉が喰い終わり、鉄板に焼かれているものは、

イカの脚だ、キノコだの酒のつまみになるようなものが多くなってきた。

時間を見ると、まだ午後1時ちょい過ぎだ。

 

周囲を見れば、飲めや歌えやの状態だ。

真昼間から宴会やっているとは、大人達もいい気なもんだぜ。

 

これ以上ここにいても、絡まれるだけなのでずらかるとしようか。

 

「魅音、これからどうするんだ?特に用が無いなら、一緒に穀倉の本屋に行こうぜ?」

「う~ん。行きたいのはやまやまなんだけさ。園崎家の代表としては…」

 

「お姉、その必要はありませんよ」

声の方を振り向くと、詩音がコップを片手に立っていた。

 

「詩音。アンタきてたの!?」

「そりゃ来てますよ。私、マネージャーですから。ところでお姉。公由のおじいちゃんとも話したんですけど、もう帰ってもいいですよ。後片付けは私達でやりますので」

 

俺と魅音は顔をわせる。どうやら詩音と公由の村長さんが気を利かせてくれたらしい。

魅音は何かいおうとしたが、レナと梨花ちゃんと沙都子が現われて後押しをしてくれる。

 

「いいよ、いいよ。魅ぃちゃんは。圭ちゃんと一緒にどこかへ遊びに行くといいよ」

「たまには皆がいないところで、いちゃついてみるのですよ☆にぱ~」

「食事も、片付けもしないのでしたら、さっさとどっかへいってくださいませ。二人ともお邪魔ですわ」

 

「そういえばお姉と、圭ちゃんって一度もデートをしたことがなかったんじゃないですか?今日は時間もありますから、二人で穀倉まで行って来たらどうですか?」

 

圭一&魅音「「で、デート!?」」

 

何を言っているんだお前は!?

俺と魅音はもうデートをするとか、そういう以上の関係だろ。

今更、デートだなんて…

 

詩音は手を口元にあてると内緒話をするように俺達に囁く。

「圭ちゃん。私と買い物を付き合ってくれる約束しましたけど、その権利をお姉にあげます。

 これは約束なんで必ず実行して下さいね」

 

ぎゅ…

俺はいつの間にか…いや、魅音かもしれない…

気がついたら魅音と手をつないでいた。

 

俺と魅音はお互いに顔を見合わせる。

口には出さなかったが、何を言いたいのかはわかった。

…行こうか?

 

そのまま二人は無言でうなづいく。

 

「それじゃ、圭ちゃんとお姉。いってらっしゃい!」

詩音に背中を押され、俺達は初めてのデートへと向かった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。