ひぐらしのなく頃に~ただひたすら圭一と魅音がイチャイチャするだけ編~   作:Java-Lan

37 / 48
第34話_15日目(木)A「記念写真」

[15日目(木):前原屋敷:昼:前原圭一]

 

目が覚めた俺は、大きく体を伸ばした後にベッドから降りた。

そう言えば、今日は親父とお袋は朝早くから出かけているんだっけ。

朝食の用意をしないと。

 

一階に降りようと階段までいったとき、

包丁で何かを刻む音が聞こえてきた。

 

タンタンタンタン…

 

あれ?お袋、まだ出かけていなかったのか?

台所を覗いてみると、そこには…

「あ、圭ちゃんおはよう!」

魅音がいた。

 

お袋がいないことを知って、

俺のために、わざわざ朝早くから来てくれたのか。

嬉しいぜ魅音。

 

そのまま台所に入ると、まっすぐ魅音のところに向かって歩き、

後ろから優しく抱きしめた。

我ながら実に迷いがないもんだ。

 

「おはよう魅音」

「わ、わ、わ…圭ちゃん、危ないって!」

 

戸惑っている魅音に、

構わず俺は頬ずりをする。

 

「ありがとな。朝は大変なのにさ、俺の為に来てくれてさ」

「あ、アハハ!い、嫌だな圭ちゃん!どうってことないって!

 ほら、おじさんの家、お手伝いさんとかきているし!アハハハハ!」

 

そんなわけがないだろう。

お手伝いさんが来ると言っても、朝はそれなりの準備をしなければならないはずだ。

 

感謝しているぜ。

 

頭にキスをすると、すっと離れる。

後ろからでもわかるぐらい、魅音が赤くなっていた。

 

おっと、頭から蒸気が出ているみたいだ。

久しぶりに見る光景だな。

 

「け、圭ちゃん。お皿用意して、それとご飯もって!」

「おう、わかった」

 

朝は魅音特製のハムエッグだ。

ハムと目玉焼きのすばらしハーモニーが生み出す逸品。

香ばしくて実に美味しい。

 

「美味しい圭ちゃん?」

「うまいぜ!魅音も早く食べろよ!」

 

朝食にがっつく俺の姿を見て魅音が微笑んでいる。

本当に嬉しそうだ。それを見ている俺まで嬉しくなっちまうぜ。

 

「違うよ。圭ちゃんが嬉しそうに食べるから、おじさんは嬉しくなっちゃうんだ」

「じゃあさ、二人で一緒に嬉しくなっているってことだよな?」

「あははは、そだね!」

 

二人は同時に笑った。

本当に魅音と一緒に取る食事は楽しい。

結婚したら、いつもこんな感じで食事ができるんだろうか。

 

うん、きっとそうにちがいない。

根拠は無いが俺は確信しているぜ。

 

「今日のお弁当なんだけど、量が少なくてゴメンね圭ちゃん」

 

食事が終わると、魅音はピンク色の可愛らしいお弁当箱を二つさしだしてきた。

俺と魅音の分、ということだろう。学校ではどうせ皆でつっつきあって食べるんだから、

どちらが俺の分かは、あまり関係は無い。

 

「いや、全然かまわないぜ。重箱三段は確かに凄かったけどさ、作るのは大変だろ?

 弁当はこれぐらいで丁度よいと思うぞ。それに弁当箱もおそろいだしさ」

「圭ちゃん…うん。ありがとう」

 

魅音の頭を撫で、弁当箱を二つカバンを入れると玄関に向かう。

魅音に先に靴を履いて欲しいと頼まれたので、

玄関で靴を履いていると、魅音はおもむろに俺の方を向き、両手を前にそえておじきをした。

 

「それでは旦那様。いってらっしゃいませ」

 

うおっ!?なんだこれは!

もしかして、夫婦プレイか?いや、実際俺達は夫婦だけどさ!

 

俺は一瞬戸惑ったが、魅音がそうくるのであれば、

乗らざるをえまい。なぜならば前原圭一は、園崎魅音の夫なのだ!

 

「う、うむ!今日は遅くなるかもしれないが…えーと、まっすぐ家に帰る」

 

下手くそか、俺?

 

それを聞くと、魅音は美しい所作で正座を行い、

三つ指をついて頭を下げる。

 

「旦那様のお帰りを、お待ちしております」

 

魅音のその姿を見て全身がゾクゾクする。

 

昭和の男達は、自分の奥さんから、このように送られて行ったのか!?

羨ましいぞ、昭和の男子!

いや、俺も昭和の男子なんだけどさ!

 

ぴんぽーん。

 

チャイムが鳴った。レナが来たようだ。

ドアをあけると、レナの元気な声が飛び込んできた。

 

「圭一くん、おはよー!あ、魅ぃちゃんもいたんだ!魅ぃちゃんもおはよー!」

「あぁ、実は俺と魅音は同棲しているんだ。今日も朝食つくってくれたんだぜ?」

 

「ちょ!?圭ちゃん、何をいっているのさ!」

 

「あははは!そうなんだ。いいなー!いいなー!魅ぃちゃんのお料理、はぅ~☆美味しいんだよ」

「うむ!今朝も、おれは堪能させてもらったぜ!実に美味であった!」

 

「ちょと!レナまで乗らないの!そこで夫婦漫才しないッ!」

 

「あははは!夫婦なのは、魅ぃちゃんと、圭一くんだよぉ☆」

「そうだぜ魅音、設定忘れるなよな!あはははは!」

 

「うぎゃー!お前達、覚えてろー!!!」

 

そう言って、ふくれ顏した魅音だが、

俺がほっぺたに軽くキスをすると途端に機嫌をなおす。

 

うむ、ちょろいぜ魅音。

 

「そうだ。もう梨花ちゃんと沙都子には連絡してあるんだけど、

 圭ちゃん、レナ、今日は結納披露のための試着と、結納披露時に配るアルバムを製作するから

 興宮の写真館まで一緒に来て欲しいんだ」

 

三人で学校へ向かう道すがら魅音は話をきりだした。

結納披露ということは俺の出席は当然だろうけれど、レナの予定は大丈夫なのか?

 

「うん。2.3日前から、

 開けて欲しいって魅ぃちゃんからお願いされていたからレナは平気だよ☆」

 

そりゃそうか。

あらかじめ連絡があって当然だ。

 

いきなり、今日言われて、今日来て欲しでは幾ら何でも無茶ぶりすぎるんもんな。

しかし、結納披露で配るアルバムってなんだ?聞いた事もないぞ。

 

「おじさんと圭ちゃんが着飾った写真と、

 子供の頃の写真を合わせて簡単なアルバム冊子を作るんだって」

「ちょっと待て…じゃあ、うちの両親が朝早く出かけたのも…」

「クククク…圭ちゃんの子供の頃の写真、おじさん、楽しみだよ」

 

くっそ、親父とお袋!なんでいっつも俺の事なのに、俺に黙って動いているんだよ!

サプライズのつもりか?胃に穴が開きそうだぜ…

 

そんな俺の気苦労もしらず、レナは楽しそうに手を叩いている。

 

「楽しみだね!楽しみだね!きっと魅ぃちゃん。お姫様のようになるんだね☆」

 

そんなレナの言葉に、

魅音は少し照れながら頭を掻く。

 

「ま、まぁ、お姫様といっても純和風テイストのお姫になっちゃうけどね」

 

そうなのか。結納披露ってウェディングドレスとまではいかないけど、

てっきり、そういったドレス系統の服を着るのだとばかり思っていた。

 

「あ~、雛見沢では古手神社で挙式をするのが基本だからね。

 そうなると神前式で文金高島田の和装になるし、結納もそれに準じた形になっちゃうんだ」

 

「そういえば、魅ぃちゃん。興宮にゲストハウスができたけど

 そこでは挙式はしないの?」

 

俺はまだ行った事が無いが、興宮には園崎資本が入ったヨーロッパ風の大規模な貸切タイプのゲストハウスが作られたらしい。そこでは、教会風の結婚式も可能だと言うが。どうなんだろう。

 

レナの言葉に、

魅音は少し困った顔をしている。

 

「バっちゃんが、伝統にこだわっているんだよね。仮にも雛見沢御三家の一つ、

 園崎家の次期当主が古手神社で挙式をあげないでどうする!って感じで」

 

しかし、そうなると挙式後の披露宴はどうするんだ?

たしか、古手神社の中にある集会所でやることになると思うけど、

魅音の結婚式ともなれば、結構な人数が来るはずだぞ。

 

「披露宴に関しては、古手神社で挙式した後に、

 うちの方でやるから、そこは考慮しない感じかな?」

 

そうだった。魅音の家は大きいし、親族会議を行うための大広間も設置されている。

なにも、普通の人のようにわざわざ集会所でやる必要は無い。

 

だとすると、後は魅音の心持一つだよな。

そもそも魅音はどっちの式をあげたいんだ?

 

「じゃあさ、魅音。

 お前自身は、和風か洋風、どっちの結婚式をあげたいんだ?」

 

…大事なのはそこだろう?

 

何気ない俺の一言に、魅音は大きく目を見開くと

視線を落として小さく呟いた。

 

「その、さ…圭ちゃんと…

 結婚式挙げられるんならどっちでもいいよ」

 

くっそ、なんだ魅音。可愛すぎかよ。

レナが見ていなければ今頃キスの嵐だぜ?

 

ほら、レナが興奮して、

可愛いモードに突入して俺達を見ているじゃないか。

 

「み、み、魅ぃちゃん可愛いよ!可愛いよ!!

 きっと今日の試着でも、とっても可愛い魅ぃちゃん、見れるんだろなぁ☆はぅ~!」

 

その言葉に魅音は照れまくっている。

どうやら、今日もレナが大満足の一日になりそうだぜ。

 

[15日目(木):雛見沢分校:放課後:前原圭一]

 

学校が終わり、俺達は魅音の指示を受けて校内で迎えを待つことになった。

魅音の話によれば、詩音も来る予定だそうだが興宮に家があるため直接写真館に向かうらしい。

 

最初は部活メンバーだけ一緒に向かうのかと思ったら、どうやらクラスの皆も一緒に行くという話を聞いて少し驚いた。

 

病気などで出席できない数人を除いて、クラスの子供達全員も一緒に写真に参加するそうだ。

 

教室で待機中していると、富田君と岡村君が何故か男泣きをしていて俺に語り掛けてきた。

 

「圭一さん、本当に結婚するんですね!」

「頑張って下さい!応援しています!」

 

俺はどう返事して良いかわからず「ありがとうな二人とも」と笑顔で答えて頭を撫でてやった。きっとこの二人も、素敵な伴侶にいつか巡り合えると思うぜ。

 

授業が終わり30分ぐらい過ぎたころ、一台のバスが学校に到着した。

既に中に何人か乗っている。どうやら魅音の親族の人達のようだ。

 

梨花ちゃんが指さす方向を見ると、バスの中にはお魎のバアさんと公由の村長さんも乗っているのが見えた。

 

名前は良くわからないが綿流し実行委員会で見かけた顏も何人かいる。

公由の村長さんの後ろに座っているお年寄りは確か書記をやっていた人だ。

 

どうやら雛見沢の重鎮も乗っているってことか。

 

バスの中から、俺の親父とお袋が出て校門の前にいる知恵先生と海江田校長先生と何か話をしている。

まさか、知恵先生はクラスの引率があるからわかるが、校長先生も来るのか?

 

どうやら来るみたいだ。

何度か頷いた校長先生はバスに乗り込んだ。

 

村中総出でのお祝い写真を撮る気なんだな。大ごとだぜ。

さすが魅音、御三家の次期当主様の結納ってところか。

 

自分のことながら、よくもまぁ園崎家なんて大変な家に

婿入りすることを決めたものだと関心する。

 

そんな感じで、まるで他人事のように窓から外を見ていた俺の肩を魅音が軽く叩く。

どうやら、俺達の番がきたようだ。

 

魅音がクラスの皆をまとめて誘導をはじめる。

 

「さ、圭ちゃん!みんな!バスに乗ろう!」

 

クラスの皆や部活メンバーの皆と一緒に教室から出ると、玄関口にいた知恵先生と合流してバスに乗り込む。

 

俺と魅音は今日の主役と言う事でバスの前の席に乗せられた。

俺のすぐ横に魅音が座り、微笑みかけてくる。

 

真後ろに俺の親父とお袋が座っていなければ、いちゃつきたい所だぜ。

もっとも興宮まではそう時間はかからない。

 

バスの中で会話らしい会話も無く、

魅音と手を握って微笑みあっているだけで、バスは目的地についた。

 

[15日目(木):前原屋敷:夕方:前原圭一]

 

写真館前に到着したバスから降りると、

一組のカップルが目に留まった。

 

あれは、富竹さんと鷹野さんだ。

なんでこんなところにいるんだろうか。

 

幾ら俺達部活メンバーと仲が良いと言っても、

さすがに魅音が二人に知らせたとは思えない。

 

「富竹さん、鷹野さん!どうしたんだすか?」

 

「あれ?圭一くんじゃないか。今日は団体行動かい?」

「こんにちは圭一くん。ジロウさんの撮った写真を、ここで現像してもらっているのよ。

 皆もいるみたいだし、出来た写真をみてみる?」

 

ただの偶然なのか。

でも、なんてタイミングで出会ったんだろう。

 

…そうだ。

 せっかく、二人ともいるんだから、撮影会に来てもらおう。

 

俺が頼み込むと、富竹さんは困った顔をしていたが、鷹野さんは俄然乗り気だ。

 

「鬼の一族の結納衣装をまじかでみられるなんて、そうあるものじゃないわよジロウさん。

 お言葉に甘えましょう…うふふふ…」

 

なんというか、鷹野さんは嫌いじゃないけれど、

この微妙に嫌な感じの言い回しはなんとかしてほしいぜ。

 

バスの方から魅音が手をふってやってきた。

俺を探しにきたんだな。

 

「あ、富竹のおじさま!鷹野さん、こんにちはわ!

 圭ちゃん、こっちこっち来て!」

 

魅音に手を引かれて写真館の中に入ると、俺達が当日着用する衣装が置いてある場所まで連れてこられた。

 

…うん。

 

なんか、衣装について専門家の人に小難しい事を色々言われたが、よくわからない。

俺の第一イメージは、お内裏様とお雛様だ。

 

五人囃子はいないようだが、そこは沙都子と梨花ちゃんとレナが補ってくれるだろう。

沙都子の五人囃子か。めちゃくちゃ似合わなそうだな。

 

「…圭一さん、今、ろくでもないことを考えておりませんでした?」

 

すぐ横にいた沙都子が目を座らせて俺をにらみつけてきた。

なんだ沙都子、お前サイキックか?

 

というわけで用意された結納衣装に着替えるため、さっそく試着室に入る。

手慣れた手つきでスタッフに服を脱がされ、お内裏様の服を身に着けた。

 

思ったほどは重くは無いが、

軽いわけでは全くない。というか動きにくい。

 

試着室から出ると、お雛様になった魅音も出てきた。

俺の衣装よりも遥かに重そうだが、機敏に動いている感じがする。

 

しかし、お雛様になった魅音は、こう…

 

「どうしたの圭ちゃん?そんなにじっと見て…」

「いや、綺麗だな…て思ってさ」

「あははは…もう、おじさん照れちゃうな!」

 

照れ隠しに笑う魅音の頭を、魅音の母親の茜さんが軽く叩く。

よく見ると、黒い服をきた魅音の家族がそろっている。魅音の父親と学生服を着た詩音もいた。

 

親父とお袋も俺と魅音の服を見て色々話をしている。

両親から「似合っているわよ」と言われると、なんだか照れくさい。

 

村の人達やクラスの皆からも囃し立てられる。

 

「それでは、ご両家の皆さま、撮影を行います」

 

カメラマンに促されて、撮影場所に移動する。

 

一段目の中央左が俺、右が魅音。

左が俺の親族、親父とお袋。

右が魅音の親族、親父さんと茜さんと詩音。

 

二段目に沙都子などのクラスメイトの幼年組が並び、

三段目中央に、お魍の婆さん。

その右に公由村長さんと、あと園崎家の親族や村の重鎮連中。

その左に梨花ちゃん。そして知恵先生と校長先生、クラスの年長組のレナといった顔がならぶ。

 

たかだか結納式の写真に、こんな大きな写真撮影が必要なのか。

とは思ったものの、魅音に「圭ちゃん、結婚式になれば園崎家の親類縁者が総出で集まるから、もっと凄い事になるよ」と耳打ちされたら納得するしかなかった。

 

富竹さんと鷹野さんも入って欲しいと頼んだものの、

着ている服がラフすぎるという理由で、二人には断られた。

 

たしかに富竹さんのYシャツとズボンといういで立ちは。ラフにもほどがある。

 

「そうだ。なら富竹さん、

 この後、俺達の仲間達だけで写真とりたいんで、その時一緒にどうですか?」

 

俺は富竹さんに断れると、とっさにそう答えた。

もちろん予定外の行動だけれども、やり取りを聞いていた部活メンバーの皆も嬉しそうに賛同してくれた。

 

なんだかんだいっても、皆は富竹さんが大好きなのだ。

富竹さんも苦笑いをして、それなら大丈夫だとOKしてくれた。

 

「それでは写真をとりますー」

 

カメラのフラッシュが三度あり、

最後にもう一度フラッシュがたかれた。

 

撮影は無事に終了。

 

特に問題無く早々に終わった。

外が暗くなり始めたので、校長先生と知恵先生はクラスメイトの幼年組を引き連れて早々にバスで雛見沢まで帰っていった。

 

帰り際、知恵先生は目に涙を浮かべて「二人とも、これからも色々あると思いますが頑張るのですよ」と固く手を握り締めてくれた。

 

まだ結婚式は先の話なんだけどな。とは言え、その心遣いを無駄にするわけにもいけないので「ありがとうございます。俺達頑張ります」と力強く答えた。

 

親父たちはというと魅音の家族と話し込んでいる。

きっと大人同士の会話ってやつを存分にしているんだろう。

 

聞き耳を立てていると、結納の段取り以外にも、

仕事関連の話もどうもチラホラ混じっているようだ。

 

まぁ、親父がどんな悪だくみをしているのかは興味が無いが、

あまり魅音の家に迷惑をかけてないで欲しいぜ。

 

周囲の人達が散開すると、今度は俺達だけ…詩音を含めた部活のメンバーと富竹さんと鷹野さん…で写真を撮るために集まる。

富竹さんが自動シャッターで撮影しようとしていたら、写真館のスタッフさんが好意でシャッターを押してくれる事になった。

 

「それでは、皆さん。はい、チーズ」

 

カシャ…!

 

俺、魅音、レナ、梨花ちゃん、沙都子、詩音、

そして富竹さんと鷹野さん。

 

俺達だけの結納披露写真だ。

これは宝になるに違いない。

 

撮影が終わると、衣装を脱ぐためにすぐに試着室に向かう。

スタッフの人に手伝ってもらい、この動きにくいお内裏様衣装を外すが、脱ぐ時も大変だ。

昔の人は、よくもこんな服で生活できたもんだよな。

 

日々の業務が大変じゃないか、これ?

 

試着室から出ると、部活のメンバーは休憩室にあるテーブルに集まっていた。

そこには、富竹さんが撮った写真が並べられている。

 

「圭ちゃん!こっち、こっち!」

 

魅音が元気に手を振っている。

というか、俺よりもめんどくさそうな衣装なのに、なんでそんなに早く脱いでこれるんだ?

 

そんな疑問をよそに、魅音は俺の腕に抱き着き、

手に持っている一枚の写真を突き付けてきた。

 

それは、園崎本家でプロポーズをした時の写真だった。

月を背景に、俺と魅音が口づけをしている姿が写っている。

 

…綺麗だ。

 

恥ずかしさよりも、美しさの方に見とれてしまった。

魅音も気に入ったようで「富竹さんから貰ったんだよ!」と喜んでいる。

 

あの時は”なんてタイミングで写真をとるんだこの人は!”と憤慨したけれど、この写真の出来栄えを見ると撮ってもらって本当に良かったと思う。

 

写真を見てプロポーズした時の思い出がまざまざと脳裏によみがえる。

きっと魅音も同じ気持ちだったんだろう。

 

写真と俺の顔を交互に見ると、とても嬉しそうな表情をする。

俺は魅音に微笑みを返すと、富竹さんに頭を下げた。

 

「富竹さん、良い写真を撮ってくれて、本当にありがとうございます」

「あははは。気に入ってくれたようで嬉しいよ。他にも写真があるんだ。もし、欲しい写真があったら、テーブルの上に置いたメモ帳に書いてくれれば焼き増しするよ。代金は気にしないで。これは僕からの結納祝いさ」

 

テーブルの周りにいる皆は、並べられた写真の見て騒いでいる。

沙都子や梨花ちゃん、それとレナや詩音に言われて、富竹さんはメモ帳に焼き増しする写真と枚数を書いていた。

 

魅音も、俺から離れて写真を見入っている。

 

「な、なんですのこれはー!こんな写真ハレンチですわ!」

「沙都子が監督に抱きしめられているのです☆嫌がっている姿が可愛いのです」

「あははは、こっちの写真はもっと面白いよ梨花ちゃん!」

「あ、おじさん、この写真好きだなーレナはどう思う?」

 

メンバーの華やかな声が響く。

俺も脇からテーブルを覗いてみる。

現像されているのは、どうやらわりと最近の写真ばかりのようだ。

その中に、先日行ったバーベキュー大会の写真を見つけた。

 

梨花ちゃんが、写っている。

 

…そういえば、あの話はどうなったんだろう?

 心の整理がついたら、話すとか言っていたけど。

 

バーベキューが開かれた時、

梨花ちゃんは、富竹さんと鷹野さんの三人で話していた。

困惑する俺に梨花ちゃんは「整理が付いたら話をする」と言ってくれたが、

今だに話をしてくれていない。

 

…聞いてみるか。

 

「梨花ちゃん、ちょっと良いか?」

「みー☆なんですか圭一?」

 

俺は梨花ちゃんの手を引き、物陰に連れ込んだ。

梨花ちゃんが不思議そうな顔をして俺を見ている。

 

もしかして、聞くのも野暮なのかな?

とは思ったが、ここまで連れてきて何も無いというも変な話だ。

俺は意を決して話しかける。

 

「先日、バーベキュー大会で俺に『整理したら話す』って言っていたろ?

 結局、あれってなんだったんだ?」

「………」

 

梨花ちゃんは押し黙ったまま答えようとしない。

話したくないのだろうか。それならそれで構わないんだけど。

 

「もし、話したくないのなら話さなくてもいいけれどさ…」

「圭一、その…ボクは…」

 

一瞬、俺を見て口を開こうとしたが、また押し黙ってしまった。

 

「梨花ちゃん…?」

「………」

 

梨花ちゃんは目を泳がせている。

まだ、考えがまとまっていないのだろうか?

 

俺がもう一度声をかけようとした、その時、

背後から呼びかけられた。

 

「…圭ちゃん。何をしているの?」

 

…魅音?

逆光で顏がよく見えない。

 

魅音が体を揺らして、

ゆっくりと歩いてくる。

 

「梨花ちゃん…圭ちゃんと何を話していたの…?」

「…えっと、魅ぃ」

 

梨花ちゃんがしどろもどろに答える。

 

魅音の声がやたらと低い。

どうしたんだ。怒っているのか。

 

いや、違うな。面倒見の良い魅音のことだ。

きっと梨花ちゃんを心配してそんな声質になったんだろう。

 

「どうしたの、梨花ちゃん…黙っていたら何もわからないよ。

 圭ちゃんと、なんで二人っきりになったの?」

「み、魅ぃ…?」

 

梨花ちゃんの顏がこわばっている。

おい、おい、梨花ちゃんが怖がっているじゃないか。

 

心配だからって、そんな声を出すなよ。

少し度がすぎるぜ魅音。

 

「梨花ちゃん…ねぇ、梨花ちゃん?答えてよ…

 私に言えないことなの…?ねぇ…?」

 

魅音がゆっくりと、梨花ちゃんに手を伸ばす。

梨花ちゃんが戸惑って一歩下がる。

 

俺も一瞬、考える。

どうする?どうした方がいい?

魅音をたしなめるべきか?

 

>>わああああああああああああ!!!<<

その時だ、猛ダッシュで沙都子がやってきた。

 

「圭一さん!私から梨花を奪う気ですの!?」

 

はぁ?突然、何を言っているんだお前は!?

 

沙都子は梨花ちゃんをしっかりと抱きしめると唸り声をあげる。

何があったのかと、レナと詩音がやって来る。

 

部活メンバーが集まったのを確認すると、おもむろに沙都子は声を上げた。

 

「レナさん!聞いて下さいまし!圭一さんが、私から梨花を奪おうと言うのでございますわ!」

「え?圭一君が梨花ちゃんを…?ど、どういうことなんだろう?どういうことなんだろう?」

 

おいおい、

こんな突拍子も無い話を信じるな。

 

「あのな、俺がなんでお前から梨花ちゃんをとらなきゃならないんだよ。

 俺には魅音がいるんだぜ?な、魅音?」

「え?あ、うん…そうだね。アハハハ!」

 

魅音はぎこちなく笑っている。

というか、なんだそのわざとらしい笑い方は?

 

それでも沙都子は謎の警戒心を俺に向けてくる。

一体何なんだお前は?おかしな奴だな。

 

「それでは何で梨花を物陰まで引きずり込みましたの?」

「それは…梨花ちゃんが、その…相談があるとかなんとか…でさ…」

 

今度は俺が口ごもる。そう言われると答えにくいな。

魅音も、なんか俺を怪しげな目で見ているし。

 

おいおい、勘弁してくれ。

俺が梨花ちゃんを口説くわけないだろう?

 

沙都子は俺と話すのは無駄だと思ったのだろう、

梨花ちゃんの方に振り返った。

 

「では、梨花はどうなんですの?」

「ボクが一緒にいたいのは沙都子だけなのです。圭一には1mmだって興味も無いのですよ☆にぱー」

 

こぼれるほどの素敵な笑顔で、梨花ちゃんは俺を全否定する。

 

…うむ。真正面から笑顔で拒絶されると、結構ショックがあるな。

 

これが、クラスメイトの男子を次々と撃破した、難攻不落の梨花ちゃんの姿か。

なるほど、心が折られるわけだぜ。

 

梨花ちゃんの言葉を聞いてようやく安心したのか、沙都子が梨花ちゃんから離れた。

それを見ていた詩音が後ろでケタケタ笑っている。

 

「圭ちゃんはストライクゾーン広そうですからね。そりゃ沙都子にだって警戒されますよ」

 

…勝手に人のストライクゾーンを広げるんじゃね!

 梨花ちゃんも沙都子は可愛いとは思うが、変な意味でそう思っているわけじゃないぞ!

 

「いっておくが詩音。確かに俺は小さな子…沙都子とか好きだが、それは妹キャラだからだ。男ってのは皆すべからず妹キャラがすきなんだよ!」

 

「え!?梨花ではなく私が標的でしたの!いやー!ケダモノ!!!」

 

なんでそうなるんだよ!

思わず、チョップをくらわしてやろうと思った。華麗によけられた。

 

さらに追撃をするも、素早い動きで俺にふれさせない。

ムキになって俺が追いかけるが、沙都子が笑いながら逃げる。

 

その足の速さたるや、お前はトンビかネコか、それともタヌキか!

 

周囲の皆もゲラガラ笑いながらそれを見ている。

くそ、悔しいったらありゃしない!

 

沙都子は思う存分俺をひっぱり回すと、

魅音の周囲を三週ほど回って目の前に立った。

 

沙都子はゆっくりと魅音に視線を向ける。

その視線が妙にイヤラシイのは何なんだ?

 

困惑してる魅音に沙都子は口端をあげた。

 

「聞いた通りですわ魅音さん。これで梨花に嫉妬する理由が…なくなりましたわよね?」

「え?うん、まぁ…」

 

おいおい魅音、なんで、しどろもどろに答えているんだよ。

まさか、本気で嫉妬していたわけじゃないだろ?困った奴だぜ沙都子は。

 

俺は、ようやく沙都子に追いつくと後ろから頭を乱暴に撫でた。

 

「あのなぁ、魅音が梨花ちゃんに嫉妬するわけないだろ?

 同世代のレナならともかく、お前らチビッ子なんて範疇の外の外だぜ。

 梨花ちゃんが心配だから、ああいう声をだしていたんだ。なあ、魅音?」

「え、うん、アハハハ!梨花ちゃんがなんか深刻な顏していたからさ!」

 

レナが心配そうな顏をしている。

魅音の言葉を聞いて、初めて、梨花ちゃんの様子に気が付いたんだろう。

 

梨花ちゃんの元に向かうと、しゃがんで目線を合わせる。

 

「梨花ちゃん、どうしたのかな?何か、心配事があるのかな?」

「…みー」

 

梨花ちゃんはレナの視線から目を背けた。

一体なんなんだろう?言いたく無ければそれもで良い。

だけど、そういうわけでもないらしい。

 

言いたいけれど、言えない。そんな感じだ。

 

「圭一、魅ぃ、レナ、沙都子、詩ぃ…ごめんなのです。まだ、上手く説明できないのです。

 一晩、ううん。二晩だけ待って欲しいのです」

 

俺もレナと横でしゃがむと、梨花ちゃんの頭を軽く撫でる。

 

「…いいぜ、幾らでも待つ。言いたくなったら言ってくれ」

「圭一は、ボクを助けてくれますか?」

 

当たり前じゃないか。仲間を助けない奴がどこの世界にいる?

魅音と詩音も前に出た。

 

「梨花ちゃん。問題がある時は皆で話会った方が解決できる。

 内にため込むのは良くないよ」

「梨花ちゃま。話すと楽になりますよ!手伝えるかどうかはわかりませんが、

 とりあえず話してみてください」

 

レナもニッコリと笑って梨花ちゃんの手を取る。

「レナも皆も、梨花ちゃんの仲間だよ」

 

そして最後に、梨花ちゃんの後ろから沙都子が抱きつく。

「心配ありませんわ。私達ならあらゆる困難を乗り越えて、必ず幸せな結末にたどりつけましてよ」

 

梨花ちゃんは、少し涙ぐんでいるようだった。

俺が優しく頭を撫でると、何度も頭も下げて「ありがとう」と呟く。

 

梨花ちゃんの身に何が起きているのかはわからない。

だけれども、どんな状況であっても俺達は救ってみせる。

 

「約束だぜ。梨花ちゃん」

 

決意を新たにした、そんな俺達を見て、

富竹さんと鷹野さんは遠くから優しく微笑んでいた。




トピック: [ 雛見沢では古出神社で挙式をするのが基本 ]
※トピックでは「ひぐらしのなく頃に」のネタバレが含まれます※

アプリゲーム「ひぐらしのなく頃に命」のイベント「Wのから騒ぎ」より。

このイベントによると、雛見沢では古手神社で結婚式をあげるのは一般的で、
神前式で文金高島田の和装でとりおこなうそうです。
なお、披露宴は古手神社内にある集会場で行うとか。

洋風の結婚式をあげたい人は、穀倉にある式場までいかないとできないそうです。
(県庁前に教会などがある)

ただし、これがひぐらし世界共通設定なのかは不明。

トピック: [ 興宮のゲストハウス ]
※トピックでは「ひぐらしのなく頃に」のネタバレが含まれます※

アプリゲーム「ひぐらしのなく頃に命」のイベント「Wのから騒ぎ」より。

このイベントによると、興宮に最近、園崎資本の入った
完全貸切式のイベント会場「ゲストハウス」が作られたという話がでてきます。
そこで洋風の結婚式をあげることができるとか。

ただし、これがひぐらし世界共通設定なのかは不明。

トピック: [ 男はすべからず妹キャラ好き ]
※トピックでは「ひぐらしのなく頃に」のネタバレが含まれます※

アプリゲーム「ひぐらしのなく頃に命」の「第二部昭和編第四章」より。

妹キャラの鳳谷菜央が、あまりにも可愛いために思わず前原圭一が発した言葉。
その後「お姉さんキャラ好きだって男の人もいるでしょう」と突っ込まれていた。

ただし、これがひぐらし世界共通設定なのかは不明。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。