ひぐらしのなく頃に~ただひたすら圭一と魅音がイチャイチャするだけ編~   作:Java-Lan

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第37話_16日目(金)B「共白髪の誓い」

[16日目(金):前原屋敷:夜:前原圭一]

 

魅音が帰宅した部屋の中で、おれは全身を投げ出して寝転んでいた。

嫉妬心を露わにさせた後は、もう勉強にならなかった。

 

お袋に呼ばれて俺と魅音は夕食を共にしたが、親父もお袋も魅音の暗い顏に気が付いたのだろう。

魅音が食事を終えて帰宅した後に「大丈夫なのか」と聞いてきた。

 

「あぁ、ちょっと魅音と喧嘩して。大丈夫、仲直りしたから」

 

俺はそう答えたが、おそらく俺の顔も暗かったに違いない。

 

俺は醜い嫉妬の面を見せてしまった。

もしかしたら魅音は家に帰って泣いているのかもしれない。

 

そう思うと、自己嫌悪で自分をどうにかしたくて仕方がない。

でもそれはたぶん意味の無い事で…誰も、魅音も、望んていない。

 

そんな時だ、詩音から電話がかかってきたのは。

 

「圭一、園崎の妹さんからお電話よ」

 

お袋から受話器を貰い声をかける。

 

「よぉ、詩音。どうした?」

「アハハハ、こんばんわ圭ちゃん。特に意味はないんですけれどね。

 定期連絡ってヤツですよ。今日もお姉とイチャイチャできましたか?」

 

ハァ…その言葉にどでかい溜息で答えた。

詩音は先ほどの魅音とのやり取りを知って、そういったのだろうか?

 

わからないが隠しても意味が無い。

正直に打ち明けよう。

 

「さっきさ、俺、嫉妬で魅音にあたっちまったんだ…」

「嫉妬って…お姉が浮気したっていうんですか?」

「悟史のこと、魅音、好きだったんだろう?」

 

詩音は答えなかった。

受話器の向こうでタメ息が聞こえる。

 

「お姉と私は…似た者同士ですから…」

 

それは何よりも雄弁な答えだった。

俺は天井を見上げる。そこには何も無い。電灯ぐらいしか。

 

「情けないよな。人間はさ、生きていれば色んな過去を持つにきまってるんだ。

 たまたま少し好きになった奴に嫉妬するなんてさ。自分の懐の小ささに泣けて来るぜ」

 

また、詩音に愚痴ってしまった。

これは、また説教コースだな。

そう思っていたら、意外な答えが返って来る。

 

「…仕方がないと思います。

 お姉が悟史くんを気に入っていたのは確かですし」

 

らしくない。

いつもなら「そんな事言わないで下さい」とか、叱咤するはずなのに。

 

「詩音が怒らないなんて珍しいな。てっきり、そんなこというな!自信を持て!

 って発破をかけられると思ったのにさ」

「あ、あははは…その、お姉に怒られちゃいまして…」

 

魅音に?

 

「その、私、今まで圭ちゃんには、お姉のためにしっかりして欲しくて…強く言っていたと思うんですけど、その話をお姉が知って…その、物凄く怒られちゃいまして…お姉は、圭ちゃんにもっと心を打ち明けて欲しいって、そう思っていたみたいで…」

 

あぁ、その話、確かに魅音ともしたことがあったな。

旧停留所で、雨の日に。

 

そうか、それでか。

詩音の様子がおかしかったのは。

 

そういえば昨日の興宮の写真館でも、

詩音と魅音はろくに会話をしていなかったような気がする。

 

だとするなら…

 

「もしかして、魅音とは仲直りできていないのか?」

「………」

 

受話器の向こうで、またタメ息が聞こえてきた。

どうやら図星らしい。

 

「大丈夫だ、気にすんなよ。魅音もさ、詩音には感謝していると思うしさ」

「でも、私…余計な事を…」

「大丈夫、大丈夫。だってさ、そんな状況でも詩音は、魅音と俺のために電話してくれたんだろう?魅音だってさ、そんなお前の活動をきっと見ていてくれるはずだぜ?」

 

詩音も、魅音とは違うと感じる事も多いが、

やっぱり姉妹だけあって似ているところがある。相手を思いやる所だ。

例え喧嘩したとしても、こうやって姉である魅音をフォローしようとしている。

 

これが姉妹愛と言っても良いのかわからないけれど、これだけ尽くしている相手を魅音が見放すわけがない。ただ、ほんの少しだけ怒っているだけだろうさ。

 

「…圭ちゃんと話していると、お姉が好きになった理由が、ちょっとだけわかりますよ」

「お、そうか?俺ってそんなにイケメンか?」

「あははは、顔はまぁ、普通だと思いますけどね」

 

おいおい、そういう落とし方は無いだろう?

まぁ、いいや。詩音がとりあえず元気になったみたいで。

 

とりあえず2.3適当に話をしてから、俺は受話器を置いた。

最後に詩音には、俺から魅音にフォローしてやると言ったが、慌てて断られた。

全く、人の親切を無下にしやがって。

 

ジリリン、ジリリン…

二階あがろうとしたとき、電話がなった。

俺は再び受話器を取る。

 

「はい、前原です」

「あ、圭ちゃん?」

 

魅音か。お袋が顔を出してきたので、かかってきたのは魅音だと告げる。

 

「圭ちゃん、電話繋がらなかったけど、随分長電話していたみたいだね」

「あぁ、詩音から電話があったんだ」

 

「…へぇー詩音から」

 

相手が詩音だと分かった途端に、ずいぶん棒読みで答えたな。

カンペか何かを見ながらしゃべっているのか?

 

「今日も、魅音、お前の事を心配していたようだぜ。そろそろ許してやれよ」

「…私と喧嘩をしたって話をしたんだ。圭ちゃんに。詩音が」

 

言い方に随分棘があるぞ。そんなに大喧嘩したのか?

詩音はしなくても良いとは言ったが、これはちょっとフォローしなきゃダメなヤツだろ。

 

「あのさ、魅音。そろそろ詩音を許してやれよ、喧嘩していてもさ、お前や俺を気遣って連絡してくれたんだぜ?姉妹想いの良い妹だと思うぞ」

「………」

「喧嘩の中身は良く知らないけどさ。あんまり長引くのは、その…良くないと思うぜ?」

 

魅音から返事が無い。

なんか、想像以上に仲がこじれているのか。

これはちょっと良くないな。レナや梨花ちゃんと話しておく必要があるかもしれない。

 

「…圭ちゃんってさ、優しいよね。詩音も、そう言ってなかった?」

「ん?あぁ、魅音が惚れた理由がわかるってさ!」

 

ようやく返事がきたので、俺は明るく返した。

これで少しは突破口が開かれるか?と、期待してはみたが…

 

「…へー…私が惚れた理由がわかるんだ。それって多分、自分も同じだって事なんだろうね」

 

だが、魅音の反応は冷淡だ。

さすがにちょっと俺もイラとしてきた。

 

「おい、おい、お前、何を言ってるんだよ?いい加減に…」

 

「…悟史くんをあげたのにさ」

 

最後の言葉は、余計だ。

俺は悟史の名前を聞いた瞬間的に頭に血が上る。

 

「あぁ、悟史って奴はいい男なんだろうな。

 詩音どころか魅音にまで気に入られているんだからな」

 

俺の口から、また憎悪に溢れた言葉が出た。

これほど棘まみれも言葉が出るとは自分でも想定していなかった。

よほど、俺は悟史に嫉妬していたらしい。

 

クソったれ。

 

受話器の向こうで魅音が絶句している。

そしてしどろもどろに話を始めた。

 

「ご、ごめん…そういう意味で言ったんじゃないんだ!

 わ、私…その…圭ちゃん、聞いて…!」

 

必死に何かを弁明する魅音。言えば言うほど俺のイライラは増すばまりだ。

かといって、何も話さなければ、話さないでイライラは止まらないだろう。

つまりだ、魅音は俺のイライラスイッチを押してしまったわけだ。

 

ちくしょう、魅音の奴!余計な事を言いやがって、

せっかく落ち着いたってのにッ!!!

 

そう思う自分の心の狭さにも腹が立つ。

さっき終わった話だっていうのに!どうして俺はこうもダメなんだ。

 

一通り、魅音の弁明…弁明と言ってい良いのかはわからないが…を聞くと、

俺はぶっきらぼうに受話器に向かって言い放つ。

 

「なぁ、もういいだろ。詩音を許してやれよ。この話をすると悟史の話もでるんだろ?

 俺さ、沙都子の兄貴だから悟史のことを嫌いたくないんだけどさ。これ以上、この話を続けると

 俺、きっと無条件で悟史の事、嫌いになっちまうぜ?」

 

「ごめん…圭ちゃん。本当にゴメン…もう、言わない…もう言わないから…」

 

魅音の悲痛な謝罪に心が痛くなる。

だからこそ、ここで終わらせないと。これで丸く収めるんだ。

 

「わかった。じゃさ、魅音は、もう詩音を許す。

 そして俺も悟史の話で嫉妬をしない。これでいいよな魅音?」

「…うん…うん。圭ちゃんがそれでいいなら、そうする…詩音とも仲直りする」

 

良かった。良かった。

想像とは違ったが、これで万事解決ってヤツだ。

 

俺は大きく息を吐き出す。

胸に罪悪感が残っている。嫉妬で感情的に声を荒げてしまった。

今度は俺が謝る番だ。

 

「ありがとうな。それと、ごめんな魅音…俺も、感情的になっちまった。

 魅音が好きなのは俺だけだって、わかっているのにさ」

「そんな…あやまらなくて良いよ!圭ちゃんは何も悪くない…

 無神経だった…私が悪いんだからさ…」

 

そういえば、詩音の話で聞きそびれちまったけれど

魅音は何で電話をかけてきたんだ?

 

「あ、明日の朝、圭ちゃんの家に行っていいか…聞きたかったんだよ。

 その…圭ちゃん成分が、ちょっと足りないから…」

 

朝、俺の家に来るのに許可を貰いに電話をかけてきた?

 

…そうか。魅音はさっき俺が嫉妬した時に、

 嫌われていないかと恐れていたのか。

 

いつのもの魅音なら「朝来るよ」と決定的に言うか、許可もとらずに勝手に来る。

それなのにわざわざ俺に許可を貰おうだなんてさ。

 

そんなに怖がらせちまったんだな。

ごめんな魅音。

 

わかった。詩音を許してくれたし、

罪滅ぼしも兼ねて、こっちから出向くぜ。

 

「ならさ、俺が今から、魅音の家に泊りに行っていいか?」

「え?今から…!?あ、あははは!もちんだよ!圭ちゃんならいつでも大歓迎だよ!」

 

魅音の声に明るさが戻る。

 

「考えてみればさ、俺も今日は魅音成分が十分取れて無かった気がするんだ。

 だからさ、今夜一晩…いいよな?」

「あたりまえだよ!圭ちゃんはおじさんのお婿さんなんだよ?すぐに来る?

 あぁ、時間を合わせた方が良いよね…!」

 

俺は魅音と合流時間を決めると電話を切った。

お袋には、今夜泊まる事と朝ごはんは園崎家の方でとることを伝えておこう。

さて、行く前に明日の学校の準備をしておくとするか。

 

[16日目(金):園崎本家:夜:前原圭一]

 

予定時刻に園崎本家の正面門の前にくると、魅音が立って待っていた。

俺の姿を見ると手を振って走り出し、俺が返事をするやいなや思いっきりジャンプして抱き着いてくる。

 

「あ~圭ちゃん!圭ちゃん!圭ちゃん!

 スーハースーハー!圭ちゃんの匂いだ!!!あぁ~」

 

おい、待て…重いぞ。

俺は魅音を抱きかかえて、そのまま正面門近くまで移動して、ゆっくり降ろす。

 

「ゴメン、ゴメン、圭ちゃん。重かった?

 でもさ、これが愛の重さって、ヤツなんだよ」

 

何を言っているんだお前は。

しかし、お前、随分テンション高いな?

 

てっきり、もう少し落ち込んだ感じだと思っていたけれど、

全然そんな事無かったみたいだ。

 

「じゃあさ、入って。バっちゃは寝ているから、音をたてないように…ついてきて!」

 

まるで泥棒をするように、静かに正面門を抜けて園崎本家の中に入る。

抜き足、差し足、忍び足…

 

「バッちゃが寝ていて客間に布団を引けないから、おじさんの部屋にご招待するね。

 …その、いいよね、圭ちゃん?」

 

そう言って、魅音は、はにかんだ笑顔で俺を見る。

 

おいおい、もちろんOKに決まっているだろ?

この間は、あんなに恥ずかしがって、部屋見せてくれなかったのに大奮発だな。

 

「…それはその…圭ちゃん、だからさ」

 

そういって恥ずかしそうに視線を落とす。

ちくしょう、ここが外じゃなければ抱きしめてやるのに。

 

そうだ。抱き着くのはまだ早い。

落ち着け。

 

ここで妙な事をすると、沙都子のトラップが発動するかもしれない。

周囲を見る限り髑髏マークの看板は無いが、わかったものか。

俺は必死に自分の中にある衝動を押さえつけて、進んだ。

 

向かう先は魅音の部屋だ。

しかも、俺が魅音の部屋だと勘違いしていた本を置いてある部屋じゃない。

本当の意味での魅音の部屋だ。

 

なんだかワクワクしてきたぞ。

一体どんな部屋なんだ。楽しみだぜ。

 

[16日目(金):園崎本家魅音自室:夜:前原圭一]

 

魅音の部屋はこざっぱりとして綺麗だった。

確かに女の子っぽい部屋という感じはしなくもないが、

あまりにもさっぱりしすぎて生活感が感じられない。

 

女子の部屋に入った感動よりも、

むしろ、違和感の方が強すぎて謎の警戒感が沸き起こる。

 

「あのさ、ここ…本当に魅音の部屋なのか?」

「そ、そうだよ…正真正銘、おじさんの部屋だよ…」

 

魅音の目が泳いでいる。なんなんだ。

俺は周囲を見る。前に玩具屋で魅音に渡した人形があるかと思ったが無いみたいだな。

 

少し残念だぜ。

 

「前に渡したあの人形は、この部屋には無いんだな」

「へ…?あ、あるよ!もちろん、あるに決まっているじゃん!

 だって圭ちゃんから貰った人形なんだよ!ないわけないよ!」

 

そう言うが早いが、クローゼットの中から人形を取り出し俺の目の前に突きつけた。

その素早さに、俺は若干とまどう。

 

「なんだ、いつもはしまってあるのか?」

「違う!違う!いつもは鏡台の脇に飾って…あっ…」

 

そこまで言って魅音もバツの悪そうな顔をした。

 

そこでようやく俺も気が付いた。

もしかして、この部屋がやたらこざっぱりしているのは…

 

「魅音、そのクローゼットの中って…」

「圭ちゃんダメ―!!見ない―!!!見たら、おじさん舌を噛むからー!!!」

 

やっぱりそうか。俺が来るっていうんで、部屋の中のものをとりあえず全部クローゼットの中に隠したんだな。

 

可愛い奴め。

 

でも、俺が見たかったのは、

そのまんまの魅音の部屋なんだけどな。

 

「う~~~」

魅音は視線を落として、謎の唸り声をあげている。

 

俺は魅音の首に手を伸ばし、片手で頭を抱えるようにして抱き寄せた。

 

「残念だぜ。魅音の攻略度、まだ100%じゃなかったみたいだな」

「そ、そんなこと無いよ。圭ちゃんは100%超えているよ。

 でも、その…恥ずかしさが、まだ…」

 

徐々に小さくなる魅音の声。

ぼそぼそ呟くぐらいまで音が落ちたのを見計らって、

俺は顔を向けさると唇を奪う。

 

…んっ

 

おれは開いている方の手を魅音の肩に回し、体ごと俺の方に向けさせる。

少し強引だったかもしれない。でも、魅音は抵抗せずにされるがままになっている。

 

俺は舌を少し、魅音の口の中に入れる。

ビクっ体が揺れる。密着したのでどっちの体が揺れたのかわからない。

二人同時だったかもしれない。

 

俺はそのまま魅音の体を敷かれていた布団の上に押し倒す。

さらに深くキスをしようとしたら、肩をタップされた。

 

ん?なんだ。

 

「ご、ごめん圭ちゃん…今日さ、用意してない」

 

魅音が顔を真っ赤にしてそう呟く。

 

用意?用意ってなんだ?

一瞬何を言っているのかわからなかったが、コンドームのことだと気が付いた。

俺は思わず笑ってしまう。

 

「ぷ、ははははは!」

「え?え?なに、圭ちゃん…?え?」

 

別にそんなことをしたくてやっているわけじゃないんだけど、

どうも最近そいうふうな感じで進むので、魅音を勘違いさせてしまったみたいだ。

いや、原因は俺にもあるんだけさ。

 

これ以上やると俺の自室でやっていたように止まらなくなるかもしれない。

今日はこの辺で止めにしておくか。

 

俺は魅音の額に軽くキスをすると上半身を起こすと、魅音の体を引っ張り座りなおさせる。

 

「今日はイチャイチャしにきたんで、子作りの予習をしにきたわけじゃないぜ?」

 

目を丸くして真っ赤にしている魅音。

なんだか、脂汗をかいているようにも見えるが、錯覚か?

 

「あはははは、そうだよね!そうそう、わきまえないとダメだね。うんうん」

 

うむ。わかってもらえたようで何よりだ。

それでは、魅音の部屋を調べてみるか。

 

「ちょっと、圭ちゃん!?何をする気?」

「物色。いやぁ、女の子の部屋に入るなんて経験、そうはないからさ。興味津々だぜ!」

「け、け、圭ちゃん!?面白いものなんて何もないって!いや、本当!だって、おじさんの部屋なんだよ?」

 

とりあえず、俺は立ち上がると、魅音の部屋を見て回る。

魅音は慌てふためているが、見る限り綺麗さっぱり片付けられている。

大した念の入れようだが、せっかくきたのに何もないのは面白くは無いよな。

 

「なぁ、魅音。写真アルバムとかは無いのか?」

「え?あぁ、あるよ。ちょっと待ってて」

 

そう言うと、またもやクローゼットの中を開く。

おいおい、もしかしてその中を探した方が色々早いんじゃないのか?

気になる。後で覗いてみようか。

 

「ちょっと、今覗こうと思ったでしょ!?だ、ダメだからね!

 下着とか入っているんだから!」

 

何をいっているんだお前は。

なんでクローゼットの中に下着が入っているんだ?

普通は下着ってタンスとかに入れるもんじゃないのか?

 

いや…そう思っているのは俺だけで、

女子の部屋っていうのは、クローゼットに入れるものなのか?

 

比較対象がわからないから、なんとも返事がしずらい。

今度、詩音に聞いてみるか。

 

「詩音に聞いてもダメだよ。あの子はかなり特別だからね。

 少なくても一般女子と比べるっつーのは、どうかと思うよ。本当」

 

なんなんだお前は、さっきから人の思考を先読みして。

サイキックかよ。

 

「ククク、フィアンセを舐めて貰っちゃー困るよ圭ちゃん?

 沙都子じゃないけど、圭ちゃんの思考なんて手に取るようにわかるんだからね」

 

わかった。わかった。俺の負けだぜ。

魅音はクローゼットからアルバムを取り出すと、俺の横に座り、パラパラとめくり始めた。

 

大体は、興宮の写真館で見せて貰ったのと同じだが、

こっちの方はよりプライベートに重点が置かれた写真が多い。

人に見せるようなものではないので、当然なんだろうけれど。

 

写真は雛見沢ダム建設阻止の時代のものが若干多いようだ。

魅音が、梨花ちゃんや沙都子と同じ10~12歳ぐらいの頃の写真か?

 

「こうやって見ると、知らない人も結構いるな」

「まぁ、遠い親戚もいるけど、雛見沢の人がメインだから、あっている人も多いはずだよ。この頃は皆が殺気だっていたからね。今だと、別人のように好々爺になっているからわからない人とかもいるかも」

 

よく見ると写真の切り抜きとかも入っている。

機動隊への攻撃とかなんとか、結構物騒な内容のもチラホラあるな。

 

「こういっちゃなんだけどさ、本当にこの頃は悪かったからね

 本当に極悪って感じ。あははははは」

 

写っている写真の中にも何だか、反対運動というよりも、

革命ゲリラ部隊のような感じのものもある。相当な事をしていたんだろう。

ただ、そうなると気になる事がある。

 

「なぁ、魅音。その極悪って話の中身は、婚約者の俺が知らなくても良い話なのか?

言いたくないのなら別に構わないけれどさ。伴侶だからこそ、知っておいた方が良いって話なら、今の内に教えてくれよな」

「…え~と」

 

明らかに魅音は困惑している。どこまで、話して良いか決めあぐねているようだ。

もし、話しにくいのなら、こちらからネタを渡して反応を見るのも良いかもしれないな。

 

「そういえば前に誰かから聞いたんだけどさ…」

…確かレナだったような気がする。

 

「園崎家は暗殺部隊を作って、米国で訓練をして、政庁への自爆攻撃を試みたとかなんとか」

「へ?…圭ちゃん、その話を知っていたの?いや、まぁ、参っちゃうな…あはははは」

 

魅音は苦笑いをして頭を掻く。

 

「あれはプロパガンダ…宣伝工作って奴だよ。こんなに危険な存在なんだよって圧力をかけるために、それっぽいことをやっただけ。確かに何人かと海外へいって銃のインストラクターから撃ち方とかならったけれど、ほとんど海外旅行みたいなもんだったんだ」

 

なんだ。そんなものだったのか。

じゃあ、アレはどうなんだ?

 

「オヤシロ様連続怪死事件の犯人。あれって、園崎家の仕業なのか?」

「圭ちゃん!?その話、知っていたの!誰から聞いたの!?」

 

魅音は驚いている。そりゃそうだ。この事は皆はシークレット、秘密にしていた。

多分、引っ越してきたばかりの俺に、悪い印象を与えないためだろう。

 

ん?すると、俺は誰にこの話を聞いたんだ?よく覚えていない。でも知っている。

確か富竹さん?いや違うな、園崎家が犯人と言っていたのは確か…

 

「…大石さん、だったかな」

「あの野郎か…圭ちゃんに余計な事をッ!本当、アイツは生かしておくんじゃなかったッ!!」

 

大石の名前を聞いた途端、魅音から殺意の波動がほとばしった。

前回の児童虐待問題で俺との子作りを阻止された一件以来、大石に対する憎しみが尋常では無くなっている。一時は落ち着いたかと思っていたけれど、やっぱり根には持っていたようだ。

 

俺は、再び魅音の頭を引き寄せて、頭にキスをする。

 

「どうどう。落ち着けよ魅音。あんな奴ほっとけって、

 どうせ俺達が何もしなくても、さっさとくたばるさ」

「…ふぅ、ふぅ…うん…そうだね。あんな奴、すぐに死ぬよね…」

 

しばらく落ち着くまで魅音の頭を撫で続ける。

幸せそうな顏で撫でられる魅音。

 

本当にちょろくて助かる。

ま、人の事はいえないけどさ。

 

魅音が落ち着きを取り戻してきた矢先だった。

信じられないという顏を俺に向けて、凝視してきた。

 

…一体なんだ?どうした?

 

「じゃ…じゃあさ、圭ちゃんは私が…私達園崎家が”オヤシロ様”かもしれないのに、求婚を受けてくれたってことなの!?」

 

あ、ごめん魅音。

今の今まで、全然そんなこと考えていなかった。

 

でも、それをストレートに言うと、多分、というかかなり白々しい。

だったら、少しキザだけど、前にも言った台詞を、ここでも言うとしよう。

 

「魅音、俺は前にも言ったはずだぜ。地獄の果てまで一緒だって」

「………」

 

…ん?どうした?

 

「…圭ちゃんッ!!」

 

ガバッ

 

…うおっ!?

思いっきり抱き着かれて押し倒された!!

嬉しいのはわかるが、落ち着け。魅音!!!

 

「圭ちゃんッ!!圭ちゃんッ!!あはははッ!!

 やっぱり圭ちゃんは、私と結ばれるためにここに来たんだよ!

 絶対そう!圭ちゃんと私は一緒になる運命だったんだ!あはははは!」

 

わかった。わかったから落ち着け…

苦しいって…

 

「これさ、絶対誰にも言ったらダメだよ?

 圭ちゃんが、おじさんのお婿さんだから聞かせてあげるんだからね?」

「お、おう」

「園崎家当主に代々伝わるやり方があって”園崎家に都合の良い事象があったら黒幕のふりをする”んだよ」

 

つまり、こういうことか。

この雛見沢で何かしら、園崎家にとって都合の良いことがおきれば、それが誰がやったにせよ。

園崎家の当主は、さも自分が命じたかのように振る舞う。

それによって、園崎家の名声と権威は高まり、人々は恐れ敬うようになるという寸法か。

 

「なるほど、じゃあ、俺も…その、知ったかぶりをした方が良いのか?」

「いやいや、圭ちゃんは実際に何も知らないんだから、そんなことをしなくてもいいよ。聞かれても”知らない”って、答えてくれればそれでいいんだよ。そういうのはさ、全部、おじさんがやるから。”俺は魅音の夫だが何もしらない。知っているのは当主である妻だけ”って言うのも、十分効果として有りなんだよ」

 

そういうものなのか?

 

「ククク…そもそも圭ちゃん、思った事は顔に出るからね。

 そんな人に、こういう役は任せられないよ」

 

確かに、思った事が表情に出てしまう俺では、そんな腹芸なんてむりだろうな。

いや、まてよ。それじゃあ、園崎家がオヤシロ様連続怪死事件の犯人ってのは…?

 

「そんなのは大石のバカ野郎の妄想だよ。

 まぁ、もちろん、都合が良い時に振る舞う園崎家も悪いとは思うけれどさ、あいつは異常だよ

 圭ちゃんも、できるならあいつと関わり合いになるのは避けた方が良いよ」

 

「あ~じゃあ、オヤシロ様を狂信的に信奉する奴らの活動とかは…」

「なにそれ?確かにお年寄りの信仰心は深いし、梨花ちゃんは好かれているけど、狂信的ってのは無いと思うよ?誰が言ったのそんな話?これも大石の奴?」

 

いや、これは確かレナ…いや、鷹野三四さんだったかな?

たしか、どっちかから聞いた話だと思ったけれど、自信がないな。

 

「あははは、それだったら鷹野さんだよ!あの人、色々面白い説となえるからね。

 オヤシロ様UFO説とか、面白かったなー」

 

なるほどな。園崎家は関係無かったのか。

安心したような、がっかりしたような複雑な気分だ。なんだろうこれ。

中に蛇が入っていると思ったら、実は何も入って無かった的な感じか?

微妙に例えが、みつからない。

 

「圭ちゃん、これも誰にも言わないでね。

 実はさ、バっちゃんは”オヤシロ様”を探しているんだよ」

「え?バアさんが?なぜ?」

「う~ん、これも圭ちゃんには教えておいた方が良いよね。

 雛見沢って結束力が固いのは身を以って体験したよね…?」

 

雛見沢はダム闘争に見られるように非常に結束力が固い。

それは沙都子を救出した時に発揮した団結力を見れば十分にわかる。

 

ただ、魅音が言うにには”それゆえ”雛見沢独自の風習というか命令系統があるらしい。

つまり、御三家の支配体制だ。

 

現在は御三家の中でも特に園崎家が力を持っている。

事実上の雛見沢のトップであり、その当主のお魎の命令は絶対だという。

 

ただ、普通は命令という形をとることはない。当主のお魎が憂慮すれば、それを感じとった”誰か”が独自で実行に移す。そして、村全体でそれが表に沙汰にならないように隠そうとするのが通例らしい。

 

「…ということはだよ、圭ちゃん。雛見沢の誰かが、バっちゃんの意思をくみ取って”オヤシロ様”をやっていたとしたら、それを保護する義務と責任が園崎家にはあるんだ。もちろん、逆の場合もある。園崎家や雛見沢全体の利益を考えずに行動をしている場合は”止める”という必要もあるしね」

 

なるほど、しかし、そう考えると”オヤシロ様”は園崎家はもとより雛見沢の住民でも無い気がするな。

 

「そこなんだよね。雛見沢の住民がやれば、必ずバっちゃんの耳に届くはずなんだ。でも、それがない。とういうことは、それ以外の”ナニカ”かもしれない。本当に神様ならいいけど、もしそれが地元住民以外の誰かであった場合は大変なんだよ。雛見沢で勝手やられて、それを見過ごしたとあれば御三家…園崎家の面目が丸つぶれだからね。しかるべき対応をしなきゃならない」

 

なんか本当に任侠映画とか、あっちの方向に話だな。

普通の世界とはかけ離れすぎた話で、とても現実とは思えないぜ。

 

魅音がニヤニヤしながら俺を見ている。

 

「圭ちゃん的には、むしろ、そういうダークな設定な家の方が、男心をくすぐられたりしたりしないわけ?」

 

何をいっているんだこいつは。

 

「あのなぁ。男の最高のロマンってのは惚れた女と添い遂げることだろ。

 家なんて関係ねぇよ。魅音のいる所が、俺のいる所だぜ?」

 

…あ、しまった。これは言い過ぎたか。

魅音の顔が真っ赤になって湯気が出ている。

しかも、なんだから体が妙に震えている。

 

「圭ちゃん…圭ちゃん…」

 

魅音の目から涙が溢れ出てきた。

この展開は、嬉しすぎて魅音が号泣するパターンだな。

 

大きく手を広げて、迎える準備をするか。

さすがは二回目だぜ、俺もなれたもんだ。

 

「こいよ、魅音」

 

歯も光るエフェク付きの笑顔で俺は迎える。

これが、大人の余裕って、やつか?ふっ…

 

「けいちゃあああああああああんん!!!!!!」

 

ぐえッ!!!!!!!

魅音ッ!!!オチツケっ!!!そんなに激しく抱き着くなッ!!!

ぐああああああ!!!!!!!

 

[16日目(金):園崎本家:深夜:前原圭一]

 

魅音は30分以上も俺に抱き着いて泣いていた。

思いっきり抱き着かれたので、俺はへとへとだ。

 

幸いな事に魅音の部屋の中なので、今回は倒れようが疲れて寝ようが問題無い。

 

泣きつかれた魅音に腕枕をしている。

魅音の頭の重さで腕が痛い。痺れてきているが我慢だ。

 

映画とかドラマとかで、よく見るけど、これって凄い大変だぞ。

よく皆はやっていられるよな。

 

「圭ちゃん…本当に、お婿さんになってくれて、ありがとう」

「ん、なんだ魅音?」

 

魅音の顔を見ると微笑んではいたが、

その瞳には哀しみをたたえていた。

 

「私は、御三家の一つ、園崎家の次期当主として…そして、この村の、雛見沢の代表として生きていけなければならないんだよ。産まれてから、死ぬまで…そう教えられてきた。それが正しいことなのだと」

 

「………」

 

「例え、一時は外の世界に出ようとも、結婚をして子供を作るために、また戻らなければならない。これは私に課せられた運命…私にとって、この村が全てなんだ。でも、圭ちゃんに出会えた。本当に心から、自分を受け止めてくれる人と出会えた。圭ちゃんと共に雛見沢で生きられるだけで…もう、それだけで十分、私の人生は満ち足りると思えるから…だから……」

 

「…魅音」

 

魅音の境遇は過酷だ。

貴人にはそれに見合うだけの責務があるという話をどこかの本で読んだことがある。

 

確かに、魅音は将来はこの辺一帯を牛耳る権力者になるだろう。

それは同時に、永遠にこの地に生きることを余儀なくされることを意味している。

 

魅音には自由が無い。

人生を自分自身で掴みとるという当然の権利が存在しない。

この雛見沢で生き。この雛見沢で死ぬ。

 

園崎家次期当主に定められた魅音の宿命だ。

 

それを思うと、俺は自然に涙が出てきた。

魅音は、そっと俺の頬に手を差し伸べて、涙を親指でふく。

 

「私のために泣いてくれるの…圭ちゃん?」

 

俺は、頬に差し伸べられた魅音の手に、

自由になっている方の手を重ね合わせた。

 

「さっきもいっただろ?家なんて関係無いぜ。

 俺は、園崎家に婿養子に入るために結婚するんじゃねぇ。

 お前の、園崎魅音の夫になるために結婚するんだ。

 魅音が園崎家の掟だかルールに縛られるのが嫌なら

 俺はそれを消し去ってやる。運命なんてクソ喰らえだ。

 お前が望むのなら、お前を苦しめる世界のルールを

 全てを潰してやるぜ魅音」

 

俺が口に出したのは本心だ。

相手がどれだけ強大かは関係無い。

 

魅音を苦しめるのなら、

園崎家も、雛見沢も、俺は滅ぼす覚悟だってある。

 

俺は、魅音のためなら世界を敵に回したってかまわない。

 

「ありがとう圭ちゃん…本当に、ありがとう。

 それだけで、その言葉だけで…もう十分に満たされるよ…」

 

たけど、涙を湛えて笑顔で答える魅音を見ればわかる。

それを魅音は決して望んではいない。

 

園崎家を、雛見沢を魅音はとても大切にしている。

そして、そのために自分の心を抑制し、おし殺して生きて行こうと考えている。

 

そんな魅音に対して俺ができることは、

胸の奥に深くしまい込んでいる想いを受け止めてやることだけだ。

 

「魅音はさ、いっつも周りの事ばかり考えているよな。

 仲間のこと、家族のこと、そして雛見沢のこと…」

「圭ちゃん…?」

 

「もう我慢しなくていいぜ。お前の本音もワガママも全部全部…受け止めてやるよ…これから一生さ…だから、何もかも俺に吐き出しちまえ」

 

それを聞いて魅音は俺の胸の中に顔を埋めた。

どんな表情をしているのかは外からはわからない。

 

でも俺は、魅音が今どんな顔をしているのかわかっていた。

 

「圭ちゃん…圭ちゃん…」

 

魅音は小さく、何度も俺の名前を言い続けた。

そんな魅音の頭を撫でて、やさしく抱きしめて頷く。

 

「…うん」

 

俺の名前を言うたびに、魅音は一つ、また一つ。

心の中にある抑圧されていたものを出しているに違いない。

 

だから、俺は黙ってそれを聞き続け何度も頷いた。

何度も、何度も、魅音が俺の名前を言い続けるたびに。

 

魅音、お前は全てを背負って生きて行こうっていうんだよな。

大した奴だ。本当に尊敬する。俺には真似はできないぜ。

 

だから、

俺は魅音の望む全てを肯定しよう。

俺達が生きる世界が狭く、辛く、息苦しくても、

 

少しでも、魅音が安らかに生きて行けるように。

魅音が幸せに生きて行けるように。

 

そのためなら、俺は何だってしてやる。

それが、例え俺自身を失うことになったとしても。

 

魅音、お前は俺にとってかけがいの無い宝石だ。

 

俺の名前を呼ぶのが途切れてしばらくした後、

魅音が顔をあげた。

 

少し泣いたせいか、

目が赤くなっている。

 

「圭ちゃん、ありがとう…私の全てを受け止めてくれて…」

「当たり前だろ。俺はお前の夫だぜ」

 

魅音の頭と額にキスをすると、

二人とも自然に笑みがこぼれた。

 

「あははは。今日は圭ちゃんに会えて本当に良かったよ…今夜はきてくれてありがとう。

 こんなにいっぱい甘えさせてくれて…すっごい、感謝だよ」

「気にするなよ。俺が甘えたかっただけなんだからさ」

 

そういって、俺は腕枕した方の腕をなんとか曲げて、魅音の頭を撫でる。

魅音は満足そうに俺の頬に顔をすりつけてくる。なんだかくすぐったいぜ。

 

「圭ちゃん…

 私もさ、頑張るよ…」

 

ん?頑張るって何をだ。

魅音が微笑みながら顔を近づけ額と額をくっつける。

 

「…前にさ、沙都子に教えてもらったんだ。

 圭ちゃんが、婿養子に入ることで悩んでいるって」

 

沙都子、電車での事を魅音に話したのか。

おしゃべり娘め。

 

だけど、まぁ、俺も口止めしていなかったしな。

 

「本当はさ、沙都子に教わることなく、

 自分で圭ちゃんの気持ちを察しなきゃダメだったんだ。

 でも、私さ…圭ちゃんの優しさと愛情に甘えて、それを怠っていた気がするんだ。

 詩音にもさ、最初に言われたってのに

『一方的に圭ちゃんに与えられる愛に浸るだけで

 何の努力もしないで、心をつなぎ留められますか?』って」

 

そういえば、そんな事を俺達がつき合った当初に詩音は言っていたな。

今更そんな話を聞くことになるとは思わなったぜ。

 

何気に詩音も良い事を言うんだよな。

 

「だからさ、おじさん頑張るよ。

 圭ちゃんが今日、私の心を理解して優しく受け止めてくれたように…

 圭ちゃんが辛くて、苦しくて、悲しい時、それを包み込めるようになれるように」

 

ちくしょう。

魅音の優しい語りを聞いて涙が出そうだ。

ありがとうな魅音。

 

でも、言っておくけどな。

魅音だって、いつも俺の事をちゃんと抱きしめてくれているんだぜ?

 

お前がそういう決意を示すなら、俺だって宣言しなきゃダメだよな。

 

「じゃあ、俺も…もっともっと大人になってさ、

 魅音に見合う男になるように頑張らないとだな。

 少なくとも…変な嫉妬をして魅音を困らせないように努力する」

 

「うん。じゃあお互いに手を取り合ってさ、大人になろうね圭ちゃん」

「おう、一緒に頑張ろうぜ」

 

そういって、俺と魅音は、

額を見合わせてクスクスと笑った。

 

俺達はまだまだ子供で、

世の中の事も、お互いの事も、てんでわかっちゃいない。

でも、きっと魅音と一緒なら、ゆっくりでも大人になっていけるはずさ。

 

…まだまだ子供、まだ子供か。

 

天井を見る。電気の光が眩しい。

俺は先ほど見たアルバム写真を思い出した。

 

「さっきの写真を見て思ったんだけどさ。魅音の昔の思い出の中に俺がいないんだよな」

「…え?」

 

当然と言えば当然だ。

俺がこの雛見沢に来て一か月もたっていない。

魅音はその倍以上もここに住んでいる。

 

だから俺の知らない魅音が写真にいても、それは不思議じゃない。

だけど、俺の知らない魅音がそこにいる事実が、少し、悲しい。

 

「だったらさ、圭ちゃん。これからはおじさんと二人で歴史を作っていこうよ」

「…魅音」

 

魅音の優しい笑顔が俺を包み込む。

 

「おじさんも写真館で同じ事を思っていたんだよ。

 圭ちゃんの過去の写真に、なんでおじさんがいないんだろう、って…」

 

考えてみれば当然だ。俺の過去の思い出の中にも魅音がいない。

だとすれば、俺だけ悲しむだなんて、不公平な話だ。

 

あぁ、そうだよな。

過去は変えられないけど、未来は一緒に進んでいけるもんな。

 

「そうだよな。俺達、これから50年は一緒にいるんだから幾らでも思い出を作れるもんな」

「あははは、そうだね。共白髪ってやつだね!」

「共白髪って、なんだそれ?」

「圭ちゃん、知らないの?【共に白髪が生えるまで、一緒にいよう】っていう口説き文句」

 

共に白髪が生えるまで、か。

俺達が白髪になるだなんて全然想像がつかないな。

でも、そういう日がいつかやってくるんだろう。

 

「だからさ、これからいっぱい楽しんで、思い出の写真を撮ろうよ」

「あははは。だったら富竹さんにお願いしないとだな」

 

俺は魅音と笑いあう。

 

「魅音、愛してるぜ」

「うん。圭ちゃん…私も…

 心の底から愛してるよ。圭ちゃん」

 

そうさ。

これから俺は一生魅音と一緒に過ごすんだ。

そこには幸せな日々しかないはずだよな。

 

過酷な将来なんてお呼びじゃないぜ。

俺達の未来は光輝いているんだからな!

 




トピック: [ 圭ちゃんから貰った人形は鏡台の脇 ]
※トピックでは「ひぐらしのなく頃に」のネタバレが含まれます※

玩具屋で圭一から貰った人形の置き場については、オリジナル同人版でも、コンシュマー版奉でも特に書かれていません。

アニメ、ひぐらしのなく頃に卒では、圭一から貰った人形を鏡台の脇において、髪を襲るシーンがありますが、その部屋が園崎魅音の自室であるかは明言されていません。

本作の園崎魅音の自室描写(それはクローゼットの配置や有無を含め)すべて、本作独自の設定となります。

トピック: [ 下着の入れる場所は? ]
※トピックでは「ひぐらしのなく頃に」のネタバレが含まれます※

女性週刊誌によると、2020年度においてクローゼットに下着を入れる女子は60%に上っているようです。その理由は『とくに無い』がほとんで、特に置く場所をきめていない場合は、消極的にクローゼットに置く場合がほとんどのようです。ただし、これは洋風建築が多い2020年度だからとも言えます。

昭和58年の雛見沢は和風建築が多く、とりわけ園崎魅音が住んでいる園崎邸は純和風邸宅と思われますので、下着はタンスに入れていると思われます。
(なので、あくまでも本作の魅音は恥ずかしがってはぐらかすために言った事になります)

本作の園崎魅音の自室描写(それはクローゼットの配置や有無を含め)すべて、本作独自の設定となります。
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