ひぐらしのなく頃に~ただひたすら圭一と魅音がイチャイチャするだけ編~ 作:Java-Lan
[平成18年6月:旧園崎本家:昼:園崎圭一]
目を覚ますと、日本家屋の天井が見える。
体が動かない。縛られている?
違う、車椅子に乗っている。そして下半身が動かない。
首を動かす。
ここは広間か。屏風が見える。下は畳。
しかし、荒れ果てている。蜘蛛の巣が見える。
ここは見覚えがある。園崎本家の邸宅か?
だが、この家屋の状態は一体何なんだ。
思い出そうとするが、頭が痛みだす。
どこかにぶつけたのだろうか。
ふと、横路を見ると、サングラスをかけた黒服の男が正座をしてこちらを見ている。
この男は何者だ。敵意は感じられない。
「御目覚めですか。オヤジ」
親父?俺はこいつの父親か?いや、多分、違うな。
きっと、こいつはヤクザだ。すると俺は…ヤクザの親分ってことか?
「俺が誰だか知っているのか…?ここはどこだ?」
「ヘイ。オヤジ…もちろん、姐さんが園崎組組長だとは誰もが知るところではございます。
誰にも文句は言わせません」
「………」
「ここは旧園崎本家のお屋敷です。今、三船が襲撃しないか警戒を行っております。姐さんは例の『宝俱』を探しに出かけておりやすが、直ぐに戻ってこられることでしょう」
微妙に話がかみ合っていないようだな。
というか、三船が襲撃?ミフネは死んだんじゃなかったのか?
いや、行方不明になっただけか。
そうすると日本にいたってことか?
それとも海外から戻って来た?それを魅音が許している?
ダメだ。頭が痛くて何も考えられない。
そもそも、今は、いつなんだ?
「今は、何年の何日だ?」
「平成18年の6月21日です」
平成?聞いた事も無い年号だ。
西暦で言うと何年だ?
「西暦ですか?2006年です」
西暦2006年!
まて、昭和58年が西暦1984年だから…
あれから20年以上たっているってことか。
外から足跡が聞こえてくる。
黒服は懐に手を入れたが、障子が開くと黒服は一礼して下がった。
そこには黒い和服を着た一人の女性が立っていた。
一瞬、魅音の母親の茜さんかと思ったが違った。
魅音だ。
そこにいたのは20年後の魅音だ。
かなりの…いや、とてつもなく美人になっている。
「遅れてすまいないね。アンタ…どうかしたのかい?
そんな顔をして?」
「いや…魅音があまりにも美人になっているんで
ちょっと驚いただけさ」
「はぁ?…あはははは!さすがに太いねアンタ。
こんな時まで、おノロケかい?」
魅音は、顎でしゃくり黒服を外に出るように命じると、
俺の耳元に口を近づけて、囁いた。
「アンタだって、年々渋さがまして、かっこよくなっているじゃないか…」
顔を横に向けると、頬を染めた魅音の顔がある。
おいおい、20年たって美人組長になっても、
言っていることが昔と、あまり変わらないじゃないか。
俺と魅音はごく自然に唇を重ねわせる。
キスの仕方が激しくワイルドで、かなり熱を帯びている。
ううむ。これが大人のキスというものか。
唇を外すと、胸からハンカチを取り出して俺の唇を拭く。
魅音の口紅がたっぷりとついているんだろう。
なんだか気恥ずかしい。
足音が聞こえてきた。
今度は誰だ?
障子を開けて、二人の男が入って来た。
1人は眼鏡をかけた男。
もう一人は、若い男でなんだか見た事ある気がする。
この感じは・・・
魅音がニヤリと笑う。
「悟史に似ているだろう?」
悟史!北条悟史か!
いや、待て、北条悟史がこんなに若いはずがない。
だとすると、彼は一体何者だ。
「あ、あの僕は…乙部彰と言います。その、そんなに北条悟史っていう人と似ていますか?」
別人か。
そうだよな。当たり前だ。あれから20年後の世界だ。
20歳は歳をとっているはずだ。全く魅音の奴め。からかいやがって。
「あはははは!そうだろ?
私も最初に見た時には驚いたもんさ」
魅音め、なにを笑っていやがる。
驚いたにきまっているだろう。
こういうところも昔と一緒だ。
俺の知っている部分が残っていると、なんだか安心する。
もう一人の眼鏡をかけた男は誰だ。
この悟史似の若者のツレか?
「あ、俺はオカルトライターの荒川龍ノ介と言います。前原圭一さん…ですか?」
俺の名前を知っている?
いや、一時有名人になっていたらしいからライター業の人間に知られても不思議じゃないが。
魅音は俺に耳打ちする。
「ほら、前に…アンタが入院したときにずかずか入り込んで失礼な質問した週刊誌のジャーナリストがいたろう?こいつは、そいつの息子だそうだよ」
あぁ…いたな。そんな奴。
病室にいた俺達に失礼な質問を投げ込んできた週刊誌のジャナーナリスト。
たしか、あんまり苛々したんで、水難にあうって予言してやったんだよな。
「そうか。アンタは、あの週刊誌の息子さんか…
で、親父さんは俺の予言通り、水の事故にはあったのかい?」
「あ、ははは…ええ、まぁ…クルーザーに乗っていた時に、海に落ちて危うく死ぬところだったらしいです。前原さんに呪われたって、それ以来水辺には近づこうともしませんよ」
そうか。少しは苦しんだのなら良い気味だな。
なら、それで許してやろうか。
魅音が男の脇をつっつく。
「こいつの親父さんは、その体験を元に『雛見沢・呪いの里』とか何とか書いて、大儲けしたそうだよ。まったく、取材費ぐらい払えってんだ」
俺は笑った。
まぁ、確かに人の不幸で飯をくっているなら、それなりの見返りは欲しいもんだ。
そうだ。それはともかく所で誰か水を持っていないだろうか?
先ほどから喉が渇いて仕方がない。
「誰か飲み物をもっていないか?
喉がカラカラで困っているんだが」
その場の全員が顔を見合わせている。
どうやら全員飲み物をもっていないようだった。
乙部と名乗った少年が、ポケットから何か取り出した。
「あの、よろしければこれでもどうぞ」
眼の前に出されたのは、木苺だ。
村の中に自生していたのを拾ってきたんだろう。
「ありがとう。助かる」
無いよりはマシかな。
とりあえず一つ口に入れる。
季節や物によっては酸っぱかったりするが、
この木苺は意外に甘くていける。
「ごめんねアンタ。急いできたもんで持ち合わせなくて」
「良いんだ。それよりも…」
魅音に聞きたいことがある。
三船が生きているってどういうことだ。
「魅音、ミフネが生きていたんだな?
アイツはてっきり死んだかと思っていたぞ」
「…残念ながらまだ生きているよ。さっき連絡があった。
興宮の実家が襲撃されて母さんが殺された。
三船の奴ら、こっちに向かっているようだ。
アンタを連れてきて大正解だったよ」
魅音の母さん!
茜さんが殺されたのか。なんてこった。
その時、記憶の扉が開いた。
…そうだ。思い出した…なぜ、こんなことになったのかを!
俺達、俺と魅音は昭和58年7月のあの日、婚前旅行で名古屋のホテルに泊まっていた。
だけど、雛見沢で大災害が起きたというニュースが流れ、俺と魅音は雛見沢に急いで戻った。
周囲は自衛隊により封鎖されて、近づくことはできなかったが、俺は何としてもレナや沙都子、梨花ちゃんを助けようと、山間から雛見沢に近づこうとして転落。腰の骨を折る重傷を負ってしまった。
後でわかったことだが、雛見沢は火山性の猛毒ガスの流出により全員死亡。
レナ、沙都子、梨花ちゃんを含む部活メンバーと雛見沢分校の皆も…
それに当日村にいた、園崎のお魎バァさんと、俺の両親も全員亡くなっていた。
こんな痛ましい状況の中にも関わらず、俺は間抜けにも自損により下半身不随となる始末だった。
それでも、雛見沢に入ったら有毒ガスで死んでいたことを思えば、まだ幸運だったと言えるだろう。
ただ、魅音の精神的疲弊は相当なものだった。
家族が死に、俺を介護していた魅音は一時的に精神に失調をきたしてしまった。
それを知った三船は「魅音の年齢の若さと精神失調」を理由に、
園崎家当主にふさわしくないと反乱を起こしたのだ。
詩音と茜さんに支えられ、魅音が復調すると、三船に対抗すべく活動を開始した。
俺達は、園崎家を継ぐために必要な宝俱『振鈴』を探しに、20年ぶりに封鎖が解かれた
この雛見沢に訪れ、園崎本家を探索していたのだ。
魅音は手に持っていた刀を俺の前に突き出した。
「随分、遠回りをしたけれど、古手神社の宝物殿でカギとなる刀を手に入れたよ
これで『振鈴』を手に入れられるはずさ」
この刀があれば、『振鈴』を手に入れることができる。
これで、魅音の正統性を確立できるはずだ。
そうすれば名実ともに、園崎魅音が園崎家の当主の座に座ることができる。
そうなれば、俺達の勝ちだ。
「なるほど。それじゃあ、その刀を渡して貰おうか」
声に振り返ると、障子が開き、黒服達が続々と入って来る。
そして奥からは、三船と若頭が現われた。
若頭は俺の後頭部に拳銃を当てる。
三船は、勝利を確信したかのようにニヤリと笑った。
「魅音ちゃんよぉ。これでゲームは終わりだ。その刀を渡せば命だけは助けてやるぜ?
アンタの大事な亭主…死なせたく無いだろう?」
「くっ…この卑怯者ッ!それでもアンタ極道かい!」
「はははは。勝てば良いのよ!
てめぇの母親のように、人を殺さない甘ちゃんに極道は務まらねぇよ」
この男は、俺と、そして魅音を殺す気だ。
今、刀を渡しところで同じだろう。いや、渡した瞬間に殺すに違いない。
それじゃ、なぜ今殺さない?
抵抗されるのを恐れているからだ。
なら、俺が取るべき方法は一つだろう。
俺は魅音の目を見て叫んだ。
「魅音、構わんッ!俺ごと、こいつらを斬り捨てろ!」
「なっ…!てめぇ、余計な事を言うんじゃねぇ!」
若頭を銃口を押し付けてくる。
しかし、俺の腹は決まっている。顔を歪める魅音の顔に俺は口端をあげた。
「魅音、愛している。生きろ」
グギッ!!!
俺の口から赤い物が噴出し、俺は項垂れた。
それを見た瞬間、三船が絶叫した。
「バカがてめぇッ!!!」
-アンタぁああああああああああああ!!!!-
魅音の電光石火の居合抜きがさく裂した。
若頭の首が飛び、さらに勢いよく飛び出した魅音の手によって、黒服達が次々と倒されていく。
それを見ていた三船が、情けない声を出して逃げ出す。
…あぁ、そうさ。お前は結局”そう”なんだ。
圧倒的に有利な立場位にいながらも、結局は最後に負ける。
それはどこの世界でも変わらない事実なんだよ。
俺は口端をさらに大きく歪めた。
三船の逃亡はすぐに終わった。
後ろ向きでゆっくりと、俺の前に倒れる。
その腹には深々と赤匕首が突き刺さっていた。
三船と視線が交差する。その目には恐怖がありありと浮かんでいた。
黒い和服を着た一人の美人が、別の一団を引き連れてあるいてきた。
あれは詩音か…?これまた凛とした美人に育ったもんだな。
「三船、往生しな。極道なら最後ぐらいきばらんかい」
魅音と詩音。そして敵対する黒服達に囲まれて、三船は怯えた目で懇願した。
「…わ、わかった!俺が悪かった。認めるぜ。お前の当主就任をッ!
お、俺を殺したら、俺の縁者が許さねぇ、それを分かっているんだろうな」
だが、魅音は無表情で言い放った。
「血の天秤。極道のルールを忘れたのかい?喧嘩の仲裁には血の量に見合う対価が必要なんだよ。当主代行していた母を殺し、私の夫まで自裁に追い込んだアンタが生き残れるわけがないだろう?」
「よせッ!…おッ…」
三船が最後まで良い終わらないうちに魅音は刀を振り下ろした。
ゴロリ。と、三船の首が畳の上に転がる。
…全てが終わったんだ。これで。
俺の方を向いた魅音は涙にくれていた。
「なんでアンタはいつも…私に命を捧げようとするのさッ!!!
圭ちゃんが死んだ世界なんて、私、生きていけないってのにッ!!!!」
俺に抱き着いた魅音に、俺も照れ臭そうにつぶやいた。
「俺も、同じさ魅音…」
「…え?」
俺は口から、先ほど食べた木苺の葉っぱを出した。
呆然とする、魅音にウィンクをする。
魅音は、何が起きたのか理解できなかったのか、
振り返って、詩音と、荒川・乙部の三人の顔の顔を見る。
「あ~お姉、気が付かなったのかな?私は見た瞬間わかったけど」
「いやぁ~圭一さんの演技、上手かったですよね。口からイチゴの汁を出して。あはははは」
「あははは。前後の見境が無くなるなんて意外でした。魅音さんて、そういう乙女チックな一面があるんですね」
黒服達も笑い始め、
皆の笑い声が一面にひびく。
ようやく、理解が追いついた魅音の顏が、みるみる真っ赤に染まっていく。
すっと立ち上がると、すぐ近くにいた黒服の脛を蹴り上げた。
「なに笑ってんだい!まだおわっちゃいないよ!
『振鈴』を取りにいく、さっさと用意しな!」
魅音が怒声をあげて、皆を散開させる。
鬼のような形相で振り向き、のっしのっしと俺に近づいて来る。
「いい。アンタ…二度と…いや三度目か、あんな真似したら許さないんだからね!」
「わかっている。でも、俺はこんな体だから、命以外にお前に尽くす方法を知らないんだ。すまないな」
「あぁ…もう、本当、アンタって男はさ…!」
魅音は俺に抱き着き、頬をすりよせる。
俺の顔は魅音の化粧で真っ白になっていないかコレ?
魅音は三度ほど、俺の頬にキスをするとゆっくりと離れ、
車椅子を押し始める。
向かう先は『振鈴』のある部屋だ。
俺達が部屋に入ると、既に黒服達が整列し、詩音が直立不動で俺達を待ち受けていた。
詩音の後ろに、刀を収める鞘みたいなものが置いてある。
その鞘の両脇に荒川・乙部の二人がたっている。
その鞘に、魅音が古出神社の祭具殿から持って来た宝刀を差し込めば良いのだろう。
魅音が車椅子のストッパをかけて離れると、刀を抜いて、その鞘にゆっくりと入れる。
全て収まった次の瞬間。
鞘から温かな光が溢れ、それが人の形になった。
あれは…梨花ちゃん…?
確か、雛見沢大災害で死んだはず…
なら、今目の前にいるのは…
”クスクス、圭一久しぶりね。いえ、違うかしら…?
貴方は迷い込んだ子猫ちゃんみたいね”
…迷い込んだ子猫?
何を言っているんだ?
「…魅」
俺が魅音に声をかけようとして気が付いた。
この場にいる全員の動きが止まっている。
あたかも時間が停止したかのように。
”貴方はここにいるべき人では無いわ。
ちょっとした混線で、ここにいるだけ
早く帰りなさい。貴方の愛しき人が
待っているでしょう?”
…でも、魅音を置き去りにするわけには。
”クスクス…やはり貴方は圭一ね
大丈夫、こっちの園崎圭一も、貴方と同じぐらい
魅ぃを愛しているから…心配しなくて良いのよ”
俺は急激に意識が落ちていくのを感じる。
まるで沼の底に沈んでいくような…
”気をつけて、沙都子は…”
沙都子?沙都子は…なんだ…?
梨花ちゃ…
…………………………
……………
……
俺は目が覚めた。
正面には白い天井。俺はベッドの中にいる。
右を向くと眠そうに目をこする魅音の顏があった。
「ふわぁ、どうしたのこんな夜中に…」
「なぁ、魅音。今は、昭和58年7月、俺は前原圭一で…あっているよな?」
「そうだよ。ついでにいうと美人妻と名古屋まで婚前旅行中。
数年後には前原じゃなく、園崎圭一に代わる予定。あと聞きたいことは…?」
俺は魅音の頭を優しく撫でる。
そうか。全部夢だったのか。
しかし、えらく生々しい夢をみたもんだぜ。
「変な夢を見ちまった。ミフネと若頭が生きて、反乱を起こしたって夢だ」
「ふぁ~そうなんだ。まぁ、そういうこともあるかもね。印象深かったし」
「でさ、あいつら、園崎家を継承するために『振鈴』を狙って…」
「ちょっと待って圭ちゃん…!園崎家を継承するために『振鈴』が必要だって話…まだしてなかったよね!?どこで聞いたの」
魅音が目を大きく見開く。
まさか、そんな…もしかして、あれはただの夢では無かった…?
そういえば、夢の中では、婚前旅行中に雛見沢で大災害が起きていたはず。
だとするなら…
俺はベッドから降りてテレビに向かうと、
恐る恐る起動スイッチに指をあてる。
ゴクリ…
唾をのみ込み、ゆっくりとスィッチを押す。
だが、テレビはつかない。
まさか、やはり何かが起きたのか!?
「み、魅音…?」
俺はベッドにいる魅音に振り返ると、
魅音は何かを俺の足元に放り投げた。
「圭ちゃん、そのテレビ…
お金が必要なヤツ…ふぁ~」
足元の小銭を拾いテレビをつけると
今日の天気予報が軽快に映し出された。
俺は大きく息を吐く。
どうやら、今日は絶好の旅行日和になりそうだ…