ひぐらしのなく頃に~ただひたすら圭一と魅音がイチャイチャするだけ編~ 作:Java-Lan
[昭和58年5月:雛見沢分校:朝:前原圭一]
気が付くと俺は、教室の入り口の前にたっていた。
ここは、どこだ?学校?
俺は確かに、死んだはずだ。
死ぬ直前の時のことを覚えている。
老境となり倒れ、家族に見守れながら俺はゆっくりと意識が遠のき、そして…
「前原くん、どうしましたか?」
後ろを振り返ると知恵先生がいる。
知恵先生が、なぜ?
知恵先生は、だって…
いや、待て、ここは見覚えがある。
まさか、ここは…雛見沢分校か?
「せ、先生。今年は何年でしたっけ!?」
俺はかすれた声で知恵先生に尋ねると
知恵先生はニッコリと笑った。
「あらあら、前原君は転校初日で緊張しているようですね。
今年は昭和58年5月ですよ」
昭和58年5月。
そして、転校初日…?
だとするなら、それじゃあ…
俺、教室のドアの上の方を確認する。
そこには、黒板消しが挟まっている。沙都子の罠、だ。
俺は、その黒板消しを手に取ると教室の中に入る。
クラスメイトの目が一斉に俺の方を向く。
特に沙都子は大きな目で俺を見ていた。トラップが破られたからだ。
前の俺なら胸を張っていただろうが、さすがにそんな気にはなれない。
よくよく考えれば、こんな初歩的なトラップに俺もよくひっかかったもんだ。
「それでは皆さん。今日は新しい友達をご紹介しますね。
今度、雛見沢に引っ越してきた前原圭一君です」
レナ、沙都子、梨花ちゃん…そして魅音。
部活メンバーが全員そろって、ここに…教室にいる。
俺は涙が出るのを抑えて、一歩前に出だ。
「園崎圭一です。よろしくお願いします」
クラス中がざわめく。
しまった。人生の大半を園崎圭一で過ごしたんで、つい癖で出しちまった。
今の俺は、前原圭一だ。
「す、すいません。間違えました。
前原圭一です。よろしくお願いします」
俺は、慌てて頭を下げる。
「前原くんは、転校初日で緊張しているようですね。
クラスの皆さんも、前原くんが馴染めるようにフォローしてあげてくださいね」
\ はーい /
元気な声がクラスから聞こえてくる。
知恵先生の指示されて席に向かう。俺の席は一番後ろの方だ。
そういえば、確か椅子には画びょう、机の中にはカエルの玩具が入っていたんだっけ…
俺はそれらを何事もなく全て片付ける。
沙都子が一人驚愕している。
なぜ自分のトラップがわかったのか理解できていないのだろう。
ふふん、甘いぜ沙都子。
この世界の俺は一味も二味も違うんだぜ?
俺が席に座ると、
その横には、魅音が、いた。
「こんにちは、私は園崎魅音。よろしくね。
ゲーム部の部長をやっているんだ。良かったらさ入ってみない?」
「あ、あぁ…よろしく頼むぜ。魅音」
魅音がニッコリと微笑んで挨拶をしてくる。
俺はというと、あの当時のノリを思い出すのに一苦労だ。
声をかけてくれた魅音も、
俺が、まさか見た目は十代半ばで、
中身がおっさんだとは思わないだろう。
「ところで、初めまして…かな?
さっき、園崎って言ってたみたいだけど…
どこかで会った事、あるっけ?」
答えに窮するぜ。
どうしようか。ここは、少しスピリチュアルな返事をした方が良いか?
こういう時は煙に巻こう。
「実はさ、ここだけの話なんだけど…」
「うん、うん。なに…?」
「実は前世で、俺達付き合っていたんだ」
「…はぁ…なにそれ!?」
魅音が顔を真っ赤にしている狼狽している。
反応が初々しくて実に楽しい。
まだ恋人もいない時代の魅音だからな。
この手の話には弱いだろう。
「…それって、あれ?都会流のナンパの手口ってやつ?
おじさん、そういうのにはひっかからないよ!」
少しムっとした感じで怒っている。
この時代の魅音には多少刺激の強い言い方だったかもしれない。
そりゃそうだ。詩音と違って女性週刊誌なんて読まないタイプだ。
魅音が、こんな話を正面から受け取るわけがない。
…例え事実だとしてもだ。
「圭一が転校初日で沙都子のトラップを解除するなんて初めて見たわ…本当に、前世の記憶があるようね」
その声に振り返る。
俺の机のすぐ横に梨花ちゃんが立っていた。
魅音と話している内に、朝礼は終わったようだ。
知恵先生はいなくなっている。
俺はどう返答したらよいか思案したが、
相手は”オヤシロ様の化身”たる梨花ちゃんだ。
それはこの世界でも変わらないだろう。
なら、嘘やごまかしは言わない方が良い。
「…あぁ、覚えている。前も、ここで皆と一緒に部活をしていた」
「それで…?」
「分校を卒業して…大学にいって魅音と結婚して…」
「け、け、結婚!?私とアンタが結婚!」
魅音が顔を真っ赤にして顔から湯気をだしている。
いや、いや、さすがに少し先走り過ぎたか。でも、まぁいいや。
せっかくだから全部伝えておこう。
「おう、そうだぜ!魅音とつきって、そのままゴールインだ!
子供も出来たぜ!」
「わー!!!ちょっと待った!ストップ!ストップ!
ナンパの手口も、そこまでいくと、ちょっとやりすぎだよ!
お付き合いから結婚のストレートゴールインって、いつの時代の話さ!」
いつの時代と言われても、
昭和の時代としか言いようがないけどな。
「しょうがないだろう。俺とお前も、生涯つき合ったのはお互い一人っきりだったんだから」
「へ…生涯、その…本当に圭ちゃんと一緒だったの?」
「あぁ、何度か大げんかはしたけどな。まぁ、基本はイチャラブだったぜ?」
「そ、そう…ふーん。そうなんだ…」
魅音が顔をそむける。
可愛いな。本当に魅音は。
いつの時代でも。
ポロ…
あ、くそ…なんだ。涙がこぼれてきやがった。
なんてこったい。これだからガキの体は…すぐに感情に反応しやがる。
近くによってきたレナが俺の涙を見て驚いている。
「あの、前原くん。どうかしたの?」
「いや、俺の知っている園崎魅音と、今、ここにいる園崎魅音が違うって思うとな。
なんだかな…くそ…」
俺が何を言っているのよくかわからず首を傾げているレナを放置し、あふれ出る涙目をなんとか止めようと試みた。
でも、どうやっても無理だ。涙が止まらない。
天井を見上げても、両目からあふれる涙がポロポロと零れ落ちる。
あぁ、そうだ。ここは別の世界で、俺の愛した園崎魅音はこの世界にはいないんだ。
ここにいるのは、同じ姿をして、同じ性格をした。全くの別人だ。
ちくしょう。なんで、また過去に戻ってきちまったんだ。
魅音と心から愛し合った俺の一生が台無しじゃないか。
人生に二度目なんて必要ねぇんだよ。
「圭一、その…ごめんなさい。卒業したと言いましたけど…
僕は、昭和58年6月を…生きのびられたのですか?」
何かに怯えるように、おずおずと口をひらく梨花ちゃんの頭を撫でて、
俺はとびっきりの笑顔で答える。
「当たり前だろ?俺達は仲間の力で、どんな困難だって乗り越えてみせたぜ
だから安心しな梨花ちゃん。ちゃんと梨花ちゃんは分校を卒業したぜ」
梨花ちゃんは分校を卒業して…それからどうなったんだっけ?
そのあたりの記憶があいまいでよくわからない。
だけど、確実に言える。
梨花ちゃんは助かる。来月を生き延びられる。
あぁ、それはこの前原圭一のお墨付きだぜ!
「圭一…ありがとうなのです!そう言ってくれると、ボクも嬉しいのです。
…そうですか。僕は、分校を卒業できるのですね☆にぱー!」
周囲が困惑している最中で、俺と梨花ちゃんが笑い合う。
そりゃ、そうだ。俺達が何を言っているか、誰も理解できないだろう。
ふと、俺の背中を引っ張られた。
誰だ?魅音か。
魅音が顔を背けながら、俺の背中のシャツを引っ張っている。
「どうした魅音?」
「あの、圭ちゃんさ…もし…もしも、だよ?
おじさんにも前世の記憶があるって言ったら…どうする?」
…ドックン。
胸の鼓動が高鳴る。
え?まさか、本当に、魅音…お前、記憶があるのか?
俺とつき合った記憶が、俺と生涯を共にした記憶が?
魅音は顔を真っ赤にして、視線を背けている。
本当か嘘かはわからない。
いや、もうどっちだってかまわない。
俺がこの場で言う台詞は一つしか無いだろう。
「魅音、その…だとしたら。お前の人生…
もう一度、俺にくれないか…?」
俺は真顔でそう伝えた。
これは告白じゃない無い。プロポーズだ。
それは皆もわかったんだんだろう。
レナは真っ赤になって両手で顔を覆い。
沙都子と梨花ちゃんは絶句している。
そして、魅音は…
こっくりと頷いた。
「その…うん…いいよ…」
\おおおおおおおお!/
周辺から歓喜の声が上がる。
というか、いつの間に俺の周りにクラスメイトが集まってきていたんだ!
そして、一部始終を見ていたのか!
レナと沙都子が困惑気味に祝福してる。
「あ、あの…よくわからないけれど、二人ともおめでとう!おめでとう!」
「し、信じられないですわ。転校初日って…過去最速のカップリングでございますわよ」
そして梨花ちゃんが満面の笑みで喜んでいる。
「おめでとうなのですよ圭一!」
俺は、魅音の肩に腕を回して、体を寄せる。
目の前に魅音の顔がある。
「ありがとう。レナ、沙都子、梨花ちゃん。
俺、この世界でも魅音を幸せにしてみせる。絶対だ!」
「えっと、圭ちゃん…んっ!?」
俺は何か言おうした魅音の唇を塞ぐ。
さらに周囲で歓声があがった。
もし、これが初めてキスを経験する魅音だったのなら放心していたに違いない。
だけれども違った。魅音は俺の背中に両手を回した。
これだけで十分確信できた。
魅音は、俺の愛した魅音なんだと。
唇を離した魅音は、
顔を朱に染めながらも茶目っ気たっぷりに片目をつぶった。
「あははは、圭ちゃん…だからさ、言ったじゃん」
「…え?何がだよ?」
「何度生まれ変わっても、圭ちゃんは絶対におじさんに告白するって」
やられた。
なんだよお前…全部分かった上で演技していたのかよ。
ズルイ奴だな。
魅音は優しく微笑み。
俺も微笑みを返す。
まったく…魅音にはかなわないぜ。
俺はつくづくそう思った。
END