ひぐらしのなく頃に~ただひたすら圭一と魅音がイチャイチャするだけ編~ 作:Java-Lan
[4日目(日):園崎本家:夕方:前原圭一]
魅音の自宅はかなり大きい。
それもそのはずで、園崎家はこの雛見沢を支配する御三家の一つだ。
だから、邸宅はかなり大きいし、敷地も相当広い。
一度話を聞いた話では周囲の森や山まで園崎家が所有しているという。
普段、この家には魅音と、お魎のバァさんが二人っきりらしい。
だから自宅前は基本的に閑散としている。
だけど、葛西さんに乗せられた車の中から見る限り、屋敷前にはかなりの数の人達が集まっているようだった。そういえば、今日は親族が集まっているという話を魅音はしていたな。
邸内に入った俺は、葛西さんに誘導されるまま大広間へと入った。
上座には、園崎家当主のお魎のバァさん。
左右に、魅音の母親の茜さんと、魅音の父親がいた。
あと後方に何人かスーツ姿の人達がいる。
視線をずらすと…
魅音がお魎のバァさんの少し前のおかれた座布団の上に、正座をして縮こまっていた。
その隣の座布団が開いているという事は、ここに座ればいいってことか。
「魅音…」
俺は魅音に声をかけると「圭ちゃんごめんね…」と、呟いて下を向いた。
一体、どうしたってんだこれは?
何が何だかわからない。
だけど、一つわかることがある。
お魎のバァさんには、沙都子を助ける時に強力な後押しをしてくれた恩がある。
今度会う時はポン刀で追いかけまわされるとか何とか言われた気がするが…それは、忘れよう。
せっかくお礼を言う機会が訪れたんだ。
言わないわけにはいかないだろう。
「あの…沙都子の時はありがとうございました」
「…そんだらこっと、どうでもええ」
バァさんから想像以上に淡白な返事が返ってきた。
まだ「てめぇをぶっ殺して魅音を当主にする!」って言った事を怒っているのか?
…いや、さすがに怒っていても不思議じゃないよな。
「今日、何で呼ばれたか。アンタ、わかっているのかい?」
声をかけてきたのは魅音の母親の茜さんだ。
美人だが、黒い和服を着て相当な迫力がある。
誤魔化しても無意味だ。
正直に答えよう。
「いえ、わかりません」
「ハァ~なっちゃいないね」
茜さんは周囲に聞こえるように
大きな、ため息をしてきた。
くそ、一体何だってんだ!
こういう大人なやりとりってのは、俺はあんまり好きじゃねぇぞ。
「魅音のことさね」
俺の心臓が高鳴る。
「あんた、昨日の夜。魅音をキズものにしたろ?
どういう了見だい」
キズもの?俺が、魅音を傷つけた?
「園崎魅音ってのは、そんじょそこらの小娘じゃないんだ。
園崎家当主代行であり、次期、園崎家の当主であるんだ。
アンタ、そこをわかってキズものにしたってのかい?」
そうか、そういうことか。そうだよな。
詩音はああいっていたけど。やはり俺は魅音の心を大きく傷つけていたんだ。
それを茜さんに話して…
だから、この席を設けた。
そういうことか!
クソッ!クソッ!そうだよ。俺は魅音を傷つけちまった!
それは間違いの無い事だ!
「すいません。俺は確かに昨夜、魅音を傷つけました」
「ほぅ、アンタ、魅音をキズもんにしたこと…認めるってのかい?」
あぁ、すまない。魅音。俺は本当にダメな奴だ!
認めよう。魅音を傷つけたことを!そして言うんだ!
俺がどんなに、魅音を好きだってことかを!
俺はそのまま体を倒して土下座する。
「昨夜だけじゃありません。俺は魅音が何を考えているかも考えずに行動して、
何度も魅音を傷つけ、苦しめ、悲しませました。クソ馬鹿野郎です。それは否定しません。
謝ります。俺は確かに、魅音に辛い思いをさせました」
「…ほぅ。殊勝な心がけだね。で、どうするつもりだい?」
「もう二度と、こんな過ちを繰り返しません。
俺は、魅音を、魅音の心と体を守るために、全力を尽くします」
「圭ちゃん…」声の方を振り向くと、魅音が泣きそうな顔で俺を見ていた。
心臓が握られたような感覚がする。苦しい。だけど魅音はもっと苦しかったはずだ。
「言葉だけなら、なんとでも言えるさ。アンタにその覚悟はあるのかい?」
茜さんは手に持っていた鞘から日本刀を抜き
俺の首筋にあてた。
だけど、恐怖はみじんも感じない。
なぜなら、俺は仲間を、魅音の信頼を踏みにじり、裏切り苦しませた記憶があるからだ。
それはいつの記憶かはわからない。でも、はっきりと覚えている。
魅音に、苦しい想いをさせてきた。
それに比べれば、俺の首が斬られることなんて屁でもねぇ。
でも、今はクビを跳ね飛ばされる時じゃない!
俺は、魅音を幸せにする責任がある!
しなきゃダメなんだ!
俺は倒した体を戻し、
茜さんを見据えた。
「あります!俺にとって魅音は…」
仲間?恋人?友達?…違う!いや違わない!全部だ!
俺の愛する全部なんだ!だから言うんだ!はっきりと!
「俺の全てです!」
「…」
「魅音は、おれにとって友達で、仲間で、恋人で…
かけがいの無い存在です!許されるなら…いや、許されなくてもいい!
俺は何があろうとも絶対に魅音を支えていく!ここで別れろと言われても、
それだけは曲げられない!表からで無くてもいい!影からでも!
魅音の仲間として、家族として!そして、この世界が全て敵に回ろうとも、
俺は魅音を裏切らない!今も、そして、これからもずっと!」
「それは魅音と生涯添い遂げるって意味かい?」
血まみれの魅音の姿がフラッシュバックした。
これはなんだ?いつの頃の思い出だ?
だが、わかる。わかっている。
俺はかつて、魅音を殺したんだ。
バットで殴打して殺した。
何度も、何度も殴って、
俺の為に尽くしてくれた彼女を殺したんだ。
そして俺は、自分の罪深さに泣いて、泣いて、泣いた。
今の魅音は、あの時の魅音じゃない。
でも、同じ魅音なんだ。
だから、俺が全身全霊を尽くさなきゃダメなんだ。
あぁ、そうだ。
俺はこれから一生魅音につくそう。
それだけのことを俺はしたんだ。
それだけのことを俺はしなければならないんだ。
「はい。おれは一生、魅音と共にいます!」
俺の中に覚悟が芽生えた。
もう、良いも悪いも無い。
俺は魅音と一生共にいる。
もし、ダメだと言われたら?
速攻で、魅音を抱えて俺はここから逃げる!
できるか、できないかじゃない。やるんだ!
でも、それを魅音が望まなかったら?
その時は、茜さんの刀で首を刎ねられれば良い。
簡単なことだ。魅音が望む全てを行う事。
それが、俺にとって一番重要な事なんだから。
…ふぇ、ふぇへへへへへ
ん?なんだ?お魎のバァさんが笑った?
「アハハハハハ!」
「フフフフ」
あれ?茜さんも?
魅音の親父さんも?
ハハハハハハハハハハ!!!!
アーハハハハハアハハ!!!
ていうか、大広間の周囲から笑い声が聞こえるぞ?
どういうことだよ!
四方八方にある大広間のふすまがひらく。そこには
背広姿の大人が隙間なくずらりと正座している。
これはどういう…?
茜さんが、高々と刀を振り上げた。
「園崎家当主・園崎お魎の名において、
ここに園崎魅音と、前原圭一の婚約を認めるものである!
異議のあるものは、十を数える間に名乗りでな!
この園崎茜が相手になってやる!
そうでなければ、拍手を持って二人の門出を祝福するんだよ!」
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「おめでとう!前原君!」
「おめでとう!前原圭一君!」
自分の倍も歳をいっている人達が次から次へと近づいてきて、
俺に握手と祝福をしてくる。一体どうなっているんだこりゃ?
魅音…
目を向けると、右手を挙げて片目をつぶり、
しきりに態度で「ゴメン」と語りかけている。
「つまり、圭一は、魅ぃと結婚するのですよ☆にぱー!」
梨花ちゃん?
大人達の群れが二つに分かれ、梨花ちゃんが現われた。
その手に二つの指輪の入った箱を持っていた。
俺と魅音は、それぞれ指輪を受け取ると梨花ちゃんの
指示にしたがって左の薬指に指輪をはめる。
「これで二人は正式に婚約者同士なのです☆
圭一、魅ぃ、おめでとうなのですよ!」
その言葉に周囲は盛大に沸き起こる。
…なにがなんだかわからない。
梨花ちゃんに手を引かれ、
俺と魅音は、お魎バァさんのいる上座に誘導された。
いつのまにか、茜さんの前に3つの座布団が敷かれている。
俺と魅音は梨花ちゃんに足されるまま座り、なぜかお猪口を持たされた。
左から、梨花ちゃん、俺、魅音、茜さん、お魎バァと、魅音の親父さん
という順番だ。
大広間にきていたおっさんとおばちゃん連中は
梨花ちゃんにお祈りし、俺のお猪口に何か液体を注ぎ、魅音に言葉をかけ、
茜さん、バァさん、親父さんに頭を下げると言う流れになっていた。
この段階になっても、今一状況を把握しきれなかったが、
俺の親父とお袋が来てからようやく完全に理解できた。
…ハメられた!
よくわからんが、俺はハメられた!
「圭一、やったな!父さんは嬉しいぞ!」
親父とお袋、今日は大切な用があるから出かけたと書いていたが、このことだったのか!
どうりで俺の指にジャストフットする
完璧なサイズの指輪が用意されていたはずだぜ!
おふくろはさめざめと泣いていて、対処に困ったが、
親父には遠慮なくグーで顔面パンチをくらわした。
「ははは、うちの息子は恥ずかしがり屋で…」
うるせぇ!次は本気で殴るぞ!
そんな心温まる俺の親子の触れ合い(?)
を見ていた梨花ちゃんはニコニコしながら周囲を指さす。
「圭一のお父さんとお母さんだけではないのですよ。喜一郎もいますし、皆もきているのです」
喜一郎?って、公由喜一郎?雛見沢の村長さん!?
よくみれば、立派なスーツを着た大人が、マイクの前で「私は興宮の市長ですが…」とか言っているじゃないか!
もうわけがわからない。
お猪口に入れられた濁った飲み物を口の中に入れると
なんだが、苦い味が広がる。
「梨花ちゃん。もしかして、これ…未成年が飲んじゃいけない泡麦茶じゃないのか?」
「気にしなくてもいいのですよ圭一。ボクなんてオリジナル版だとワインを飲んでいたのに、
コンシュマー版だとブドウジュースに置き換わっていたのです。でもここは、良い子が見る
場所では無いので、何も問題は無いです☆にぱー」
梨花ちゃんが、
なにを言っているのかさっぱりわからない。
「圭一には、甘くて透き通った水の方がよかったですか?」
そして、梨花ちゃんは背後から大きな瓶を取り出す。
ラベルには「大吟醸」の文字が…
「いや、これ、絶対にダメな奴だろ!」
「甘いので、これなら羽入でも大丈夫なのですよ☆にぱー」
羽入って誰だよ?
全く、梨花ちゃんはたまにわけのわかないことを平気でいってくる。
俺が視線を前に戻すと
黒くて大きい影が眼前に広がった。
「へへへ、こりゃえらい若いボンが、婿養子にきたもんですな」
誰だ?一人のいかつい顔をしたおっさんが、
汚い笑顔で、俺のお猪口に濁った液体を注ぐ。
その目は、笑顔に反して笑っていない。
俺を値踏みするかのような目で睨んでいる。
妙な不快感を感じる。
いや、このオッサンを一目見て思った。
…こいつ、嫌いだ。
これが、生理的嫌悪って奴なのか?
そそくさと離れて行ったので、俺は隣に座る魅音に耳打ちする。
「なぁ、魅音、今の奴なんだけどさ…」
「今、圭ちゃんに注いだ人?ミフネっていうお父さんの組の偉い人。
たしか対外交渉を任せられているっていったかな?ほら、外国のマフィアとか
そういうの担当。バァちゃんに忠実でさ、可愛がられているらしいよ」
お魎のバァさんと仲良しか。
よく見るとバァさんとおっさんが、向かい合って笑っているな。
見た感じ、完全に悪だくみをしている代官と越後屋だな。
「というか、さらりとマフィアとか言うな。
周囲に聞かれても大丈夫なのか?」
「大丈夫だって、ほら、あの市長にお酌している人、
あの人なんてさ…」
あー、もういいや。とりあえず今日は。
現状でも頭パンパンなのに、裏社会の情報は、お腹いっぱいだぜ。
人の流入はおさまらないどころか、ますます増え、
大広間の中の喧騒も、ますます過熱していく。
お膳も次々と並び、いつのまにかやってきた芸者さんが中央で踊り、さながら年越しの大宴会状態となっている。
俺の目の前にも、それはそれは立派な膳が並べられたりもしたが、正直、今何を食べても味がしない。大人達が祝いと言って次々とお猪口に入れてくる苦い水にもうんざりだ。
芸者や、酔っ払ったオッサンの踊りをみても楽しいとも何とも追わない。
とはいえ、俺はこの宴の主賓らしかったので離れるわけにもいかない。
ちょっとした拷問だな、これ。
そのうち、羽目を外した、おっさんたちが俺の周囲にあつまり、
「そうだ、圭一君、雛見沢の綿流し実行委員をやらないか?」
とか言い始めた。
はぁ?何をいってんだ、この人たち!
綿流しって、確か祭りだろ?俺に祭りの実行委員になれって!?
俺が実行委員なんて大層なもの、やれるわけないだろ!?
「そうだね。圭ちゃんは口が上手いから、
今年やるオークションの司会とか、うってつけかもしれないね!」
よせ、やめろ魅音。お前、酔っているのか?
泡の出ている麦茶、飲みすぎじゃないか!?
「おめぇらよ。うちぃの婿養子にたたき売りさせようっていうのか?」
おっさんたちがビビっている!
よくいってくれたぜ、お魎のバァさん!
「お魎、叩き売りした後に、魅ぃと圭一のお披露目をするのが良いと思うのですよ」
何を言っているんだ梨花ちゃん!?
「どうだね、お魎さん。圭一くんに親しみやすさを覚えて貰って、梨花ちゃまの演舞前後に、
魅音ちゃんとの婚約を大々的に発表するってのは良い考えかもしれないね」
き、公由の村長さんまで何をいっているんですか!?
「ふん、まぁ、好きにすりゃええ。
ただ…名、落す真似だけはすんなよ」
うぎゃああああ!?
なんだこの展開は、もうついていけないぞ俺は!!!
さすがに、一度に色んなことが起きて、頭がオーバーヒートする。
俺は風にあたりたいと切り上げて、外廊下へと逃げだした。
トピック: [ ワインを飲む梨花ちゃん ]
※トピックでは「ひぐらしのなく頃に」のネタバレが含まれます※
オリジナル同人版ではワインを嗜んでいた梨花ちゃんですが、コンシュマー版では、良い子も遊ぶためか、ワインでは無くブドウジュースに置き換わっています。
ブドウジュースは、自酒ならぬ自ジュースの場合だと結構、ワインと味が似ています。梨花ちゃんが作った(あるいは田舎のだれかに譲り受けたジュースなのかは明確には書かれていませんが)かどうかはわかりませんが。羽入は最後までブドウジュースをワインだと思い込んでいました。
なおアニメ版では飲んだ物はボカされ、ジュースなのかワインなのはよくわかっていません。
(羽入ちゃんには「そんなものは飲んではダメです!」と怒られてはいた)