鷹の目は今日も極上の果実を射抜く   作:タイチ

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新調

 俺はあのあと直ぐに町に戻るとギルドへ報告するために向かった。

 

 直接職員を捕まえてありのまま見てきたことを話そうとする。

 

「ひっ、なな、なんですかっ」

 

 おっと突然捕まえたせいで驚かせてしまったか。

 ここでクロナが言った事を思い出してゆっくりと説明する。

 そうすると怯えていた職員もだんだん警戒心を解いて耳を貸してくれた。

 

「はぁ、盗賊が兵隊紛いに規律だって行動していたと?」

 

「そうだ」

 

 すると背後から笑い声が聞こえてきた。「にいちゃん、寝ぼけてんのか。そんな盗賊がいるわけねーだろが」とギャハハとデカい声が響き渡る。

 俺は無視してとにかく職員に伝える事に専念した。

 だが、職員の反応も良くなかった。

 

「そ、そうですか。一応上に報告しておきますね。目撃情報ありがとうございます」

 

「あ、あぁ」

 

 いまいち反応の薄い対応となったが、今回俺はただそれを見ただけなので相手の反応もこんなものかとも思った。

 

 後ろで笑っていたスキンヘッドの男が近づく気配を感じたので俺は相手にしていられないと早々にギルドを出る事にする。

 

 ただし、俺の感は異常だと告げて居たため後ほど装備を揃え直すつもりだ。手持ちの金貨はエイナ達の宿に払った分を引いても6枚以上残っている。

 

 ◆

 

「おにーちゃん、おかえりぃ!」

 

「ホクトさん、おかえりなさい」

 

「あぁ、遅くなったが土産があるぞ」

 

 サイレントバードを片手に宿屋に帰ってきた。

 それを見たエイナがまあと手を合わせ、クロナがぴょこぴょこ跳ねて喜ぶ。それだけで仕留めてきた甲斐があったなと俺は思った。

 

 さっそくエイナに調理を任せ、テーブルの席に着く。

 今日はクロナが膝の上に乗って来たので一緒におしゃべりしながら待つことにした。

 

「おにーちゃんはどうしてエルンの町に来たの?」

 

「あぁそれは傷ついた心を癒しにだ」

 

「いじめられたの?」

 

「いや、そういう傷ついたじゃない」

 

「じゃあクロナでも癒してあげれる?」

 

「クロナがもう少し大きくなったらな」

 

「ええー、なんでー」

 

 そんな会話をしながら食事を待っていたらエイナが食事を運んできた。サイレントバードの香草とふっくらジューシー胡椒焼きだ。

 

 他にも黒パンと野菜のスープにサラダも付け足して完成だ。

 

『いただきます』

 

 3人で美味しく頂いた。

 

 

 

 その後、昨日と同じ様にエイナに背中を流してもらった後、川の字になって3人で寝る。クロナの寝つきは良く、ものの数秒で小さな寝息が聞こえてきた。

 

「すっかり、ホクトさんに懐いてますね」

 

「それは嬉しい限りだ」

 

 クロナの頭髪を優しく撫でるとくすぐったそうに身じろぎする。

 しばらくその感触を楽しんでいたが、ふいにエイナが背後から真剣な口調で聞いてきた。

 

「最近、盗賊が多いってほんとですか?」

 

「……あぁ、かなり増えている」

 

「気を付けてくださいね」

 

「あぁ装備もきちんと揃えるつもりだ」

 

「それなら良い所がありますよ。私が冒険者時代利用していた所です」

 

「助かる」

 

 しばしの沈黙が流れる。

 やがてエイナの静かな寝息も聞こえてきた頃に俺も意識を手放した。

 

 ◆

 

 翌朝、エイナに聞いた武具屋にさっそく訪れる事にした。

 熊の手の看板が目印らしいと簡単な住所を聞いて町の中を探す。

 行き交う人々は盗賊など知ってか知らずか、活気に満ちた表情で過ごしている。俺は眼前のこの平和な町と宿屋で待つエイナ達を今度こそ守ると心の中で誓った。

 

 

 宿屋から西に歩き、中央の商いエリアにつくと北に登る。

 大通りを少し行った先の脇道を入り、小道を進んでいく。

 一番奥の行き止まりにその店はあった。

 

 武具店『熊の爪』

 看板には可愛らしい熊の手に爪が生えた絵が描かれている。

 

 ひとまずここで間違いなさそうなので中に入ることにした。

 

「あいてるか」

 

「らっしゃい」

 

 中にはある意味予想通りの大きな熊獣人のおっさんが腕組みをし、堂々とカウンターで仁王立ちしていた。武具屋の店主より戦った方が稼げるんじゃないかと思ったことはひっそりと心のうちにしまい込んでおく。

 

「何か捜しものか?」

 

「狐獣人のエイナに聞いてきた。ここには良い物があるそうだな」

 

「ほう。エイナの小娘の紹介か。俺は熊獣人のグライドだ。じゃああんたも冒険者だな。東の国に伝わるカタナとやらはどうだ?」

 

「ちょっとまってくれ。俺は狩人で名前はホクトだ。そのカタナとやらは片手剣かなにかだろう? 俺には合わない」

 

「なんだエイナと一緒ではるか東の島に伝わる武器が欲しいのかと思ったぜ。じゃあ弓だな。今ある変わり種はこいつだけだ」

 

 と奥に引っ込んで翡翠色の装飾が施された一本の弓を持ってきた。

 

「これは?」

 

「俺も詳しくは知らんがウィザード用の弓らしいぜ。魔力で矢を放つんだとよ」

 

「本当か? じっくりみたい。良く見せてくれるか?」

 

「あぁ」

 

 試しに弓を構えて矢をつがえるイメージをする。

 ウィザード用というらしいのでMPを少し込めてみる。

 その瞬間に頭の中でイメージした矢が出現した。

 

 後でグライドが「おまえさん魔法も使えるのか」と驚いた様子だが、構わず姿勢を固定したまましばらく感触を確かめた。

 

「こいつがほしい。いくらになる?」

 

「ん-そいつはウィザードに人気がねえが何分レアな武器だからな。金貨8枚でどうだ?」

 

「だめだ高すぎる。金貨5枚にしてほしい」

 

「おいおい安く見積りすぎだろ。金貨7枚は出さないと売らないさ」

 

「無理だ手持ちが足りない。金貨6枚でどうだ?」

 

「だめだ、金貨6枚と銀貨50枚。それ以上はまけられん」

 

「買った」

 

 なんとか有り金全部で買う事が出来た。

 大金を手にして二日目で全部使ってしまうとは浪費癖があるのかもしれない。「まいどあり!」とグライドがホクホク顔で金貨を手にしている。

 

 あの顔を見るにきっともっと安く手に入った気がしたが、しかし分かった所で後の祭りであるため、大人しく代わりの弓を受け取った。

 

 ひとまずこれで装備を新調することが出来たので武具屋を後にした。

 

 ◆

 

 場所は変わって今日もギルドに顔を出す。

 依頼リストの山を見れば、昨日にも増して盗賊被害が増えていた。

 それならばと、混成パーティでも組んで盗賊討伐依頼を受けようかと思案する。

 

 前回の反省を活かし、多勢に無勢にはならず、武器を改めて挑もうというわけだ。

 

 ちょうどいくつかのパーティが討伐依頼の紙を持っていくのが見えたので俺も便乗させてもらうことにする。

 

 するとそのまた後から誰かに背中をつつかれた。

 

「やあ、奇遇だね。僕たちもコレを受けるんだ」

 

 俺が持つ討伐依頼を指さしながら『千剣の風』のリーダー、ライオットが気さくな笑みを浮かべていた。

 




迷走中です。
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