鷹の目は今日も極上の果実を射抜く   作:タイチ

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進級

 昇級試験は各ランクにもよるが、まとめて行われるものである。

 例外はBランク以上で極端に連なるパーティ数が少ない為個別に行われるが、Cランク以下は定期的に希望者がいれば開催されるものであった。

 

 さて昇格についてだが、改めて考えると俺にとって得るものは実は少ない。メリットはCランクの依頼を単独で受けられるというものとCランクなりの発言力が付加される程度のものであった。

 逆にデメリットはそのCランクの依頼が個人で達成出来るほど生易しいものではないという事と、緊急時の出動依頼がDランクよりも重くなるという事であった。

 

 両者を見比べるとデメリットの方が大きい様に感じるが俺は今回敢えてCランク昇格試験を受けようと思う。それは昨日報告したウィザードの件についての対応がCランク冒険者であれば違ったものになっていたかもしれないという考えがあったからだ。

 

 直接的に関係ないかもしれないが、Dランクの昇格試験の内容は山賊や盗賊討伐、または襲われる可能性のある馬車の護衛など実際に人と対峙出来るかを見る。

 

 そしてCランクは冒険者ギルドが時には顔役として多方面に送り出す事もある為、それ相応の振る舞いが求められる。すなわち昇格試験もそういった事を見られる事になるだろう。

 

 さて長々と考えたが結局俺は受けると言いたかったわけだ。

 

「あぁ、それなら俺も受けようと思う。当然だがマルコ達も昇格基準を満たしているのか?」

 

「うん、俺達は今日ので丁度満たしたってわけだ」

 

「なるほど、なら少しの間だがまた頼む」

 

「おうよ」

 

 お互いに握手を交わす。難しい話はここまでだ。

 俺はいつもの様にエイナが出してくれる手料理を待った。

 その為に、宴会でも飯を抜いてきた。

 

「お待たせしました。今日は奮発してお肉もありますよ」

 

「それは良いな」

 

 今日はオーク肉のステーキに黒パンとストレイフィッシュのカルパッチョに肉入りスープだった。こんなに肉が使われているのは初めてだ。

 

「上手いな。ん、そういえばマルコ達は食わないのか?」

 

「俺達は食ってきたから良い。明日ご馳走になるよ」

 

 そう言って2階の奥の部屋へ戻っていった。

 そうか。エイナの手料理を逃すとは持ってない奴らだな。

 俺はステーキをパクつきながらスープで喉に流し込んだ。

 もちろん、追加で彼らが食べなかった分のお代わりももらう予定だ。おっとそれよりも言わねばならぬ事があった。

 

「上手い」

 

「ふふ、ありがとうございます」

 

 再び、せわしなく手を動かし食べる。旨い。

 エイナはきっといい嫁になるな。いやすでに炊事洗濯なんでもござれだからなる事は確定しているだろう。野暮であった。

 

 全て食べ終わったのでフォークとスプーンを置きナプキンで口許をぬぐった。

 

「ご馳走様」

 

「お粗末様です」

 

 しばらく余韻に浸っていたが、いつもより遅い時間であるため、部屋に戻る事にした。

 

 今日からは一人さみしい湯あみとなるのかと思うと憂鬱だ。

 何時ものようにコンコンコンとノックがしたので俺は湯桶につかる準備を始めた。

 

「こちらお持ちしました」

 

「ありがとう」

 

 さぁ今日からは一人湯あみだ。しっかりと自分で背中を洗わねば。

 背中を流すのに使うタオルを取っていざ背中をゴシゴシと擦りかけた。

 

「待って下さい。私がやります」

 

「しかし……」

 

「大丈夫です、内緒ですよ」

 

 内緒……なんと甘美な言葉か。

 同じ宿に住んでいる『鉄の歯車』には内緒で俺は今日もエイナに背中を流してもらえるのか。小さな桃源郷はまだここにあった。

 

 などと妄想していたが、いつも通り洗い流してもらいエイナは行ってしまった。

 

 だが、俺の心の中は温かいモノで包まれた。

 

 ◆

 

 翌朝いつものようにギルドに向かう。今日はやることがいっぱいだ。まず『千剣の風』に会ってパーティへの誘いに断りを入れなくてはならない。そしてCランク進級試験の申し込みと日程を聞くのと、その後ウィザード達の追加情報が無いか確認しないといけない。

 

 最悪『千剣の風』については、会えないかもしれないので後回しでも可能だ。

 

 とりあえず辺りを見回したがライオットはいなさそうだ。と思ったらライオットをノネットだけなぜかいた。一人で何をしてるんだろうか。

 

「ノネット、ライオット達はどうした?」

 

「え? あ、あんた。1度パーティを組んだからって気安く呼ばないでよね」

 

 気安くと言われても。他にどう呼べと言うのか。

 おっぱいが小さいと心も狭量になるのか。

 

「すまんな。ノネットさん。で、ライオットに用があるんだがいないのか?」

 

「そうそう、きちんとさんをつけてね。ライオットはギルマスと話してるのよ。あんたと話してる暇はないの」

 

「そうか、それは邪魔したな」

 

 最後までツンツンしたやつだった。

 ひとまず千剣の風は後に回そう。受付の列に並ぶか。

 

「待ちなさい。あんた、ライオットが誘ったんだからわかってるんでしょうね?」

 

 話は終わったと移動しようとしたところに声がかかる。

 

「それは本人にいう事にする」

 

 答えは決まっているからな。ライオットに言う前にノネットに伝えたら何を言われるかわからない。

 

 ノネットと別れて今度こそ列に並ぶ。

 今日はさほど混んでいない様子で、すぐに順番が来た。

 

「いらっしゃいませ、ご用件は何でしょうか」

 

「Cランクの進級試験を受けたい」

 

 かしこまりました、と認識票を求められたので渡す。

 基準にはこの町に到着した時点で満たしているので問題なく処理してもらえたようだ。

 

「問題ありません。次回の進級試験は1週間後となっておりますが大丈夫でしょうか? また他にも1パーティ申請がありますので混成パーティとなりますのでよろしくお願い致します」

 

「あぁ、わかった」

 

 そのパーティというのが『鉄の歯車』だろう。まぁまだ期間があるし増える可能性もあるが。

 進級試験の登録も終わったことだし、最後にウィザード達の事について確認しよう。あれから目撃情報等は来てないだろうか。

 

「ほかにご用件はありますか」

 

「先日の逃げた盗賊についてはどうなっている」

 

「先日と言いますと?」

 

「報告したウィザード達についてだ」

 

「それでしたら今上で会議中でございますね」

 

 会議? 何か進展があったのだろうか。

 

「詳しい報告は聞けるのか?」

 

「すみません。まだ会議中ですので詳しい事はお伝えできません」

 

「そうか」

 

 どうやら俺では聞けないらしい。

 仕方なく受付窓口から離れた。

 

 用事のうち1つは無事終わったが、残り二つは終わらず仕舞いになってしまった。手持無沙汰になってしまったので、依頼でも探すかと依頼リストの方へ歩こうとしていたとき、偶然ライオットが降りてくるのでが見えた。

 

 しめた。ライオットからなら話も聞けてパーティの事も伝えられる。一石二鳥だと思ったので彼に近付いていった。

 

「ライオット。今いいか?」

 

「ライオット、遅いわね。ずいぶん待ったのよ」

 

 声を掛けるタイミングがたまたまノネットと被った。いや、ノネットは待っていたんだから当然か。

 

「なっ、アンタまだいたの。邪魔だからどっかいきなさいよ」

 

「いや、すまないが俺も用があってな」

 

 せっかくのチャンスに引き下がるわけにはいかない。

 ノネットがいるのは我慢してライオットに今聞こう。

 

「やあ、待っていてくれたのかい二人とも。ちょうどよかった僕からもホクトには伝えたい事があったんだよ」

 

 と、ライオットも何か俺に用があるらしい。

 ひとまずノネットは無視して──当然付いてくるわけだが3人でギルドのカフェスペース部分に座る事にした。

 

 ライオットの話とはなんなのだろうか。




元々ストックも無いですしペースが遅くなります。
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