鷹の目は今日も極上の果実を射抜く   作:タイチ

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決着

 立ちはだかるウィザードに矢を連射する。

 狙いが正確であればあるほど、すべて敵の<シールド>によって防がれてしまっていた。

 

 気のせいで無ければ今俺は焦っている。

 盗賊の半分はここで片付ける事が出来たが、残り半分は行かせてしまった。おまけに肝心のウィザードのアントニーと呼ばれる男もこの場に残っているのだ。

 

「へへ、にいちゃんはいつまでもつかな! <ウォーターショット>」

 

「くっ」

 

 かろうじて水球の塊を避ける。

 幸い大きさはさほどでかくなく躱すことが出来た。

 

 しばらくお互いに矢と水の弾を撃ち合う形になった。

 アントニーは<シールド>で防ぎ、俺はその身のこなしでかろうじて躱す。互いに魔力と体力を削っていくだけで膠着状態である。

 

 しかし俺はふとある事に気づいた。

 

<ウォーターショット>が大きくないというのはすなわち魔法の熟練度が高くないということではないか。魔法はその者の熟練度や魔力量によって変化する。

 

 つまりこのアントニーはそれほど熟達していないウィザードという事だ。

 

 ならば勝機はそこにある。

 今この瞬間に奥の手を出し惜しみなく使う時だ。

 口で発破をかけて、準備を開始する。

 

「魔法使い”くずれ”だろ、あんた」

 

「な、なんだと!!」

 

 反応を見るに図星らしい。

 一刻も早く倒して奴らに追いつくために俺は手札を切った。

 

「<ウィンドアロー>」

 

「なに、魔法だと!」

 

 透明の弓をイメージして仮想の弦を弾く。

 不可視の矢が風切り音を上げてアントニーに飛来する。

 

「ぐあ」

 

 透明の矢がアントニーの肩を裂いた。

 身体能力で劣るウィザードは初見の魔法を躱すことが出来なかった。そしてなぜ魔法で防御しなかったのかと疑問が浮上する。

 

 答えは既に出ている。

 

「や、やるじゃねえかにいちゃん」

 

「やっぱり”くずれ”なんだな。お得意のシールドはどうした」

 

「へっ、<マジックシールド>が無くたっててめえなんてイチコロよ」

 

<マジックシールド>とは、文字通り魔法を防ぐ防御魔法だ。

 たしか有名な大学で教えてもらえるらしい事は噂で聞いたことがある。それを持ってないってことはつまり、このウィザードは魔法使いくずれか、もしくははぐれのなり損ないというわけだ。

 

「<ウィンドアロー>×3」

 

「くっ、<グランドウォール>」

 

 ドスドスドス!!

 

 肩を押さえたアントニーの前に土の防壁がせりあがる。

 俺が放った<ウィンドアロー>の3発は壁をえぐるのみに留まった。惜しかったがわずかに届かない。

 

 仕留めきれなかったことで一転、今度はアントニーの猛攻が始まる。

 

「<ウィンドスラッシャー>! <ストーンエッジ>! くそ、ちょこまかとっ」

 

「<スライドステップ>」

 

<スライドステップ>は左右に大きく飛び退くスキル。

 大きく躱す分、反撃の時間を持たせてくれない。そして俺自身がウィザードではないこの身に無理が祟る。

 

「くそ」

 

 MP切れが近いのだ。

 

 残り少ないMPをMPポーションを呑んで回復させる。

 MPポーションを持ってる事に相手は一瞬驚いた表情をしたが、さらに追撃をしかけてきた。

 

「はぁはぁ、くらえ、<ウォーターショット>×2」

 

「<スライドステップ>」

 

 敵もさすがにスタミナ切れと魔力切れが近いのか動きが鈍くなってきた。チャンスと思い、すかさず距離を詰める。奥の手はまだもう一つある。渾身の一撃を決めるべく俺はアントニーへと飛び込んだ。

 

 だが、

 

「ははあ! 油断したな<パラライズ>!!」

 

「ぐわあ」

 

 油断させていたのはアントニーの方だった。

 最後の最後に近寄るのを待ちマヒ魔法で痺れされるのが狙いだったか。

 

 俺は弓矢を取り落とし、思わず地面に倒れ込んだ。

 

「はっはあ! これでチェックメイトだぜにいちゃん! <ファイアーボルト>!」

 

 俺の頭上に火の玉が迫るももはや万事休すかと思われた。

 しかしなにも無策で突っ込んだわけではない。

 

 ぎりぎりのタイミングでそれは間に合った。

 震える指先から電撃の粒子が迸る。

 

「<ライトニング>」

 

「ばかな、狩人風情が中級魔法だと!?」

 

 バリバリッ!!

 

「ぐあああああ!」

 

 直前に完成していた<ライトニング>がアントニーを貫いた。

 俺はなんとかウィザードに勝利する事が出来た。

 

 ◆ side リック

 

「敵は思ったよりも少ない! やれるぞ。門を固めろ!」

 

 嘘だ。少ないと言っても力量は相手の方が上。

 だけれども聞いていた半分にウィザードまでいないということは、ホクトのヤツがやったくれたんだ!

 

 だから必死で守る。そして可能なら一人でも相手を減らしたい。

 無い知恵を絞って決して一人にはならず、二人一組で相手に応戦した。

 

 その甲斐あってか、いまだにこちらの被害は負傷者数名のみ。

 相手も同じく負傷者を出しているので互角といって間違いなかった。

「くそがぁ、俺たちゃ泣く子も黙るハンフリー盗賊団様だぞ! さっさと死にやがれ」

 

「やらせるな! 二人一組だ! 絶対に一人になるな。生き延びろ!」

 

 こんな指示を出すのも、きっとあいつが駆けつけてくれるはずだから。俺達は必死にあの目つきの悪い冒険者を想像し、頑なに門を閉ざした。

 

(早く来てくれ、ホクト!)

 

 期待の主はまだ辿り付けそうに無い。

 

 ◆ side ホクト

 

 遠くに見える村には火の手が上がっていた。

 門が突破され村の入り口付近まで燃え広がっている。

 間に合わなかったかと思ったが、近付くにつれまだ剣が盾を叩く音が聞こえる。

 

(間に合った!)

 

 盗賊団は目の前の門番や冒険者達に夢中でこちらには気づく余裕も無い。奇しくも2回目の奇襲となる形だ。

 

「くらえ、<ウィンドアロー>!」

 

 馬上から風切り音とともに不可視の矢が背後から敵を貫いた。

 かんぱつ入れずに立て続けに放った結果大部分の敵に命中することが出来た。

 

「ホクト!」

 

「な、アントニーの野郎はどうした!!」

 

 リックと敵の頭領であるハンフリーがそれぞれ声を上げる。

 押されていた村人達はいっきに形成が逆転し、攻勢へと変わる。

 

「いくぞ、好機だ逃すな!」

 

「ぐああ、お頭ったすけ」

 

「ちくしょう、俺様がこんなちんけな村で死んでたまるか!」

 

 二人一組で戦う村の守り手達は残った少数の盗賊どもを圧倒していく。だが、流石に盗賊の親玉は違ったようで腕っぷしも強く。エイワスとリックのコンビをものともしない。

 

「さっさと死にやがれ! <ストレングス>!」

 

 ずがんと斧が地面に突き刺さる。

<ストレングス>は肉体強化のスキルで通常の倍の力を得ることが出来る。増幅した筋肉に身をまかせ振り回す。

 

 二人は当然近づくことが出来ずにいたが、その間に二人のそばへと追いつくことが出来た。

 

「間に合ったぞ」

 

「ホクト、助かった!」

 

 生きてたか、リック。それにエイワスも。

 ならあとはあいつを仕留めて終わりだ。

 ”ヌシ”に比べればただ得物を使うだけの筋肉ダルマなんて敵じゃない。

 

 俺は懐から短剣を取り出して間合いを詰める。既に魔力は尽きた。

 風圧だけでも裂傷を生み出す強烈な振り回しに腰が退けそうになるが、なけなしの残った体力で勇気を持って飛び込んだ。

 

「はあああ!」

 

「くっ!? なんだそれは。ただの切り傷じゃ俺様はびくともしないぜ!」

 

 いやそれで充分だ。

 MPはとっくに空っぽなんだ。

 だから代わりに返すぜ、やられた分はきっちりお返しだ。

 

「ぐは、痺れる!? 貴様何か塗ったな!!」

 

 ババアから買った痺れ粉をたっぷりと塗りかけておいた。

 アントニーにやられた分のお返しだぜ。

 

「リック、俺は疲れた。とどめは頼んだぞ」

 

「任せろっ! うおおおおお!!」

 

「やめ、やめめろぅおおおお!!!」

 

 ザシュッ!!

 

 大勢は決した。村は守られたのだ。




何が書きたいのかわからなくなってきました。
次でこの話のエピローグ予定。
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