鷹の目は今日も極上の果実を射抜く   作:タイチ

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エピローグ

 あのあといろいろと事後処理があったらしいが、俺が目覚めたのはその日のうちの夜だった。

 

 眠い目をこすって起き上がろうと思ったが、妙に柔らかくて気持ちの良い枕だったので寝返りを打つ。

 

「あ、こらホクト」

 

 ん?

 

 なにか聞こえたな。近くでライラの声がする。

 しかしこの枕はとても気持ちが良い。可能ならずっと寝ていたい気分だ。

 

 ほのかな甘い香りがしてとても弾力のある柔らかな枕に我慢できず俺は一層頭を押し付けた。

 

「ん・・」

 

 ん?

 

 気のせいか、またすぐ近くでライラの声がしたような。

 そうかこれは夢なんだな。ならばじっくり堪能しよう……。

 

「もう、わざとやってるでしょ!」

 

「すまない、今、目が覚めた」

 

 何事も無かったかの様に俺は起きた。紳士は一線を越えたりしない。

 起き上がってみると俺を幸せに包み込んでくれたのはスカートの上からでも良くわかるライラの艶めかしい生脚による膝枕であった。

 

 出来れば戻りたいが、紳士は決して欲しがらない。

 

「起きたの、ホクト」

 

「あぁ、村の方はどうなった」

 

 聞けば、門と数件の家屋が焼損したらしいくらいで門番ら村の守り手の活躍で奇跡的にも被害は軽微で済んだらしい。

 

 他の村人は避難していて無事だし、金品も盗まれる前に盗賊団を撃退出来たのが大きかった。

 

 負傷者に関しても、重傷者はいるが幸い死者は出ていない。

 

 対して盗賊団の方はひどかったようだ。俺がほとんどやったが死者が半数に残りも重軽傷ばかりで、今は村の中に簡易の柵を立ててその中にまとめて縛ってあるようだ。

 

 そして生きている者の中に頭領はいない。

 奴はリックが首だけにした。

 

「丘の方は大丈夫だったか?」

 

「うん、それがね。ウィザードだけ見つからないらしいの」

 

「なんだって」

 

「丘の方はほとんどホクトがやっつけちゃってたから盗賊の遺品を持ち帰っただけみたいだよ。その中にウィザードはいなかったって」

 

 奴め、確かアントニーと言ったか。俺の渾身の一撃を食らっても息があったようだ。となると逃亡した可能性がある。まだ近くにいるかもしれないから警戒が必要だと思い立ちあがろうとした。

 

「うっ」

 

 怪我が疼き体制を崩した。実は<ライトニング>を放った時、不完全ではあるがアントニーの<ファイアーボルト>をもろに喰らってしまっていた。大きな怪我ではないが胸を少し焼いた傷が疼き思わずよろめく。

 

「ホクトっ」

 

 ひしと抱き着いて体制を立て直してくれたライラが心配そうに覗き込む。あぁなんて幸せなんだ胸板にあたる感触を確かに堪能しながら、されど紳士らしく、軽く彼女を突き放す。

 

「悪い、傷が疼いたようだが、もう大丈夫だ」

 

 名残惜しいがそろそろ本当に村の様子が気になってきた。

 寝かされていた小屋を出てライラと二人で外の様子を見る。

 ちょうどリックが目に入った。

 

「リック」

 

「あぁホクトか。無事そうでなによりだ」

 

「ウィザードが逃げたって?」

 

「あぁそうなんだ。どうやらまだ村の近辺を徘徊してるらしいから今、厳戒態勢で警備してる最中だ。ライラやホクトも気を付けてくれよ」

 

 なんてしつこい野郎だ。

 そのままどこへなりと逃げて捕まればいいものをなぜか逃げようとしてないらしい。

 

 いや逃げ場も無いか。

 盗賊団は壊滅し、拠点にしていた場所もあばいた。

 あと数日もすればライアンが冒険者を連れて帰ってくるだろうし、そのあとは付近一帯に指名手配されるだろう。

 

 凄腕のウィザードならまだしも、ただのウィザードくずれなら捜索隊で十分だろう。なんせそちらには本物のウィザードがいるのだから。

 そんな事を考えていたら、不安そうにしているライラを安心させようとリックが励ましていた。

 

「なんだか怖いわ」

 

「大丈夫だ、ライラ。ホクトほどじゃないが俺にまかせろ」

 

「えぇ」

 

 くそ、俺の役目をリックに奪われた。

 リックは唯一俺と酒を飲み明かせるいいヤツで気遣いも出来るイケメンだ。だからそこまで腹立たしくはないが、紳士として女性を守る立場は常に俺でありたいとそう思った。

 

 そう可憐なお嬢さんに手を差し伸べるような。

 

「呼んだかい、ホクト」

 

「ババアは呼んでねえ」

 

「お嬢さんと呼べと言ったろう」

 

「いてっ、なんだバ、お嬢さん」

 

「村長が呼んどるよ、リックも来いってね」

 

 逃げたアントニーの件だろうか、早めに片をつけたいものだ。

 

「いこうぜ、ホクト」

 

「ああ」

 

 リックと丘の方の詳しい事情を聞きながら村の集会所へと足を運ぶ。冒険者が来るまで二日は最低でも警備しないといけない。

 

 そんなときだった。

 背後から突然か弱い女性の悲鳴があがる。

 

「きゃあ!?」

 

「ライラ!?」

 

 見ればライラとついでにババアの二人を人質に取ったアントニーの姿があった。頭と肩に包帯を巻いているが隠れた部分もけがをしていて満身創痍といった風体だった。

 

「へへ、にいちゃんまたあったな。武器を捨てな、魔法もナシだ」

 

「ライラとご老人を放せ!」

 

「助けてリック、ホクト」

 

「リック、ご老人じゃなくてお嬢さんと呼びな。さっさと助け出しておくれ」

 

 アントニーとなぜかババアは余裕な表情を浮かべているが、よくみるとアントニーは怪我で冷や汗を大量にかいている。かなり限界に来ているらしい。

 

「諦めろ。もうお前の頭領はいないぞ」

 

「うるせぇ! この女を頂いていく! 死ぬなら最後はこいつと極楽を味わって死んでやる。へへへ」

 

「いやっ」

 

 アントニーの手が無遠慮にもライラの胸を揉みしだく。

 俺はかつてない激しい怒りに包まれた。もはや1秒たりとも許しておくことは出来ない。

 

「な、なにしやがる。武器を捨てろ。この女やババアがどうなってもいいのか」

 

「ホクト、まさかっ」

 

 関係無い。

 狙いはただただ一点のみ。

 弓を引き絞る様に魔法の矢をつがえ、マナを集中させていく。

 縦方向に回転し、まるでドリルのように螺旋を描いた暴風の矢は周囲の風をざわつかせ、ただ一点へと研ぎ澄まされていく。

 

「わかった、放す! やめろっ、死にたくない!!!」

 

 もはやすべてが遅かった。

 俺にとって極上の果実を汚した罪は万死に値する。

 

 くらえ。

 

「<ウィンドランス>」

 

「ストーンウォ・・、ぐあああああ!!!」

 

 風は周囲を巻き上げ突風を起こしながらアントニーの眉間へと吸い込まれていった。突き刺さったアントニーの体は錐揉みしながら飛ばされていく。壁に打ち付けられた魔法使いくずれのアントニーは今度こそ絶命したのだった。

 

 

 

 やがて周囲の風が止み、開放されたライラがこちらへと走ってくる

 なぜだか近寄るライラの顔は赤く染まって見えた。

 

 

 

「ホクト、リック!」

 

「あぁ無事だったかライラ」

 

「‥‥‥‥‥‥見た?」

 

『いや見てない』

 

 

 

 紳士達は何も見ていない。

 レースが際どく編み込まれた白い純白の紐パンツなんて。




こういうのが書きたかった。

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