アークナイツ憑依転生   作:オルフェンズ

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プロローグ(4)

ーなんとか、上手くいった。

ドクターは作戦が成功したことによる達成感を得ていた。ふと、今まで実行していた作戦を振り返る。作戦を立てた上で前提として成り立っていたのは自分の予測が正しい事である。夏油の背後にある言いようのない違和感。そして彼自身の身体能力。レユニオンの急襲を受けた際、ターニャに抱えられながら医療オペレーターを避難させる夏油の動きを見ていた。彼は間違いなく、近接戦闘にとても秀でている。それは数多の指揮経験から裏打ちされる絶対的な確信だった。それが作戦を立案する上でのきっかけとなる。まずは彼の背後違和感の正体について、だ。彼が従えるもの、“呪霊“ 。その中でも武器を収納する役割の呪霊である「武器庫呪霊」だった。彼は近接戦闘に特化しているが、ターニャのように素手で戦うにしてはそれに適した肉体ではないと思っていた。だから彼の武器庫呪霊の存在を知ってもただただ納得しか感じなかった。しかし、その事実を知れたお陰で作戦決行の踏ん切りがついた。

捕縛対象である自分が囮として時間を稼ぎ、その間に通信機の録音機能を用いてエレナ達に端的な指示を吹き込み、武器庫呪霊に運ばせた。呪霊は夏油の任意にのみその姿を顕現させることができる。普通の人間には知覚できないそれは、運搬役には最適な存在だった。それによって離れた仲間との迅速な連携、離脱ができた。あの場に残してきた二人も危なげなく勝利を収めるだろう。彼らは放っておくと、必ず害になり得るだろう。特にあの重火器兵士は懸念材料になりうる。アーミヤがアーツで貫いていたが、それを差し引いても彼の存在は危険だと判断した。きっとターニャなら確実に処理してくれるだろう。

ーそして、そこから時は進み、現在。

 

「ーと、現状は今言った通りです。ケルシー先生」

「そちらの状況は把握した。アーミヤ、まずは無事で何よりだ。」

 

ターニャ、夏油を除いたロドスの一行は建物を無事脱出した。これからの方針としてはターニャと夏油という大きな戦力が抜けた穴を補う為のロドスの行動隊との合流と脱出までのプランの把握、それに先立っての通信だった。幸いにもジャミングの効果範囲内からは脱することができたので、作戦指揮を担当するケルシーとこちらの現状とロドス全体の状況について情報交換を済ませる。ドクターにとって久しぶりである空は曇天であり、これから起こるかもしれない出来事に対して不安感を募らせた。横ではアーミヤと当作戦の指揮官であるケルシーが話している。

 

「ターニャ、ゲトウの救援、回収には行動隊E-1を向かわせる。そちらには付近で行動していたオペレーターを二名向かわせる。その後、西の合流地点で合流し即時撤退とする。」

「わかりました、ケルシー先生。ドクターについてはー」

「・・・・・。」

 

僅かな沈黙。この間に彼女が何を考えていたのか、ドクターには知るよしも無い。

 

「ケルシー先生?」

「いや、すまない。アーミヤ、今はチェルノボーグの脱出に集中してくれ。その件はまた後で話そう。」

 

これからの方針が決まってきたところで通信を切り、移動を開始する。ふと、ドクターはさっきの通信相手、ケルシーのことを思い浮かべる。アーミヤが母親のように慕っているという彼女は、どのような人物なのか。自分の話題になった時に起こった僅かな沈黙。記憶を失う前の彼女とは何かあったのだろうか?こればかりは実際に彼女と話してみないとわからない。そう思い直し、思考を打ち切った。

まずは今後同行することとなるオペレーターと接触の後、ターニャと夏油を連れた行動隊と合流し撤退。今、この間にもレユニオンが襲いかかって来るかもしれないという緊張感を持ちつつ、チェルノボーグの町を進む。もしも今敵と遭遇してしまった場合、エリートオペレーターがいるとしても非戦闘員のドクターと医療オペレーターを庇つつ戦うにしても人数が心許ない。そのためにも今は少しでも戦力を補充しなければ。ロドスのオペレーター達は、そのような焦りに駆られていた。

 

故に、判断が遅れた。

脅威は少しずつ、しかし確実にロドスの一行を補足していた。

ーードクターは物事の変化に敏感である。人間の感情の機敏から環境の変化までありとあらゆる変化を違和感として察知できる。先の脱出作戦もそれで誰一人欠けず生き残ることが出来た。それは今のこの状況でも遺憾なく発揮された。

 

「ーおかしい」

「どっ、どうしましたか!?ドクター!?」

「エレナさん、落ち着いてください!」

「すみません・・・・・」

 

アーミヤに宥められ、しゅんとした雰囲気になるエレナ。それを横目に、違和感の正体を考察する。

 

「なぁ、アーミヤ。ここには霧がよく発生するのか?」

「えっ?」

 

アーミヤが何の事だという風に聞き返す。医療オペレーターも不安そうな目で見る。エレナはその言葉を聞いてハッ、とした顔になり、即座に臨戦態勢に入り、急に彼女の空気が変わったことに前衛オペレーターは驚いた。エレナの反応を見て違和感は確信に繋がった。

 

「やはり、おかしい。何故か建物から出た時、ケルシーと通信した時とは明らかに視界が狭まっている。それも我々がその変化に気が付きにくいよう、ゆっくりと。」

 

瞬間。ドクターの目の前に人影が現れる。フードを被った赤髪の女性。彼女が手に持っているナイフを振りかざすのと、エレナがドクターを庇うために前に踊り出たのはちょうど同じタイミングだった。

 

「エレナさん!!!!」

 

アーミヤの悲痛ない声が響く。次の瞬間、前衛オペレーターが襲撃者の頭蓋目掛けて剣を振り下ろす。しかしそれは彼女のナイフに弾かれる。

エレナの身体から、溢れる血液。

医療オペレーターは必死に彼女に応急処置を施している。

もっと早く気づいていれば。ドクターは自らの迂闊さで彼女に傷をつけさせてしまった事に対する罪悪感を一旦飲み込み、目の前の相手に問い正す。

 

「お前は、誰だ」

「・・・・・」

 

彼女は返答の代わりにナイフで切りかかる。それを前衛オペレーターが応戦する。

一合、二合、三合と刃をぶつけ合う。

彼女の攻撃は素早く、一見軽い様に見えて重い。一瞬でも気を抜けば前衛オペレーターの剣は弾き飛ばされてしまうだろう。打ち合うごとに、自らの体力が削られて来るのを感じる。自分より小柄な体をしているのに、彼女の方は変わらずこちらに刃を振るってくる。これは彼からしたら非常にまずい状況である。彼は彼女の攻撃を長く受け切れないと判断した時点で一旦引き下がり、その都度仕切り直しを挟み少しでも自らの体力を持たせ、この不利な状況を転ばせるチャンスを待ち続けるのが唯一、前衛オペレーターに残された勝ち筋だろう。しかし、転ばされる側である彼女はそれを許さない。少しでも下がろうと隙を作ると一気に間合いを詰めて攻撃を続行する。重さ、速さ、手数において間違いなく彼女は前衛オペレーターの数段上を往っていた。これでいて、まだ彼女の全力を感じられない。前衛オペレーターはその事実に背筋が凍る様な気持ちだった。

前衛オペレーターはこれでも数々の戦場を渡り歩いて来た、と自負している。今目の前の不意打ちで倒れ伏しているエリートオペレーター程ではないとしても、ロドスのオペレーターとして様々な戦いを通して強くなっているという実感が確かにあった。

だがしかし、目の前の彼女は彼にとってそんな自信を踏み躙るほどの強さを誇った。自分は全力を尽くして剣を振るうのに、まるでそれすら歯牙にも掛けない様な振る舞いだ。それに彼女はまだ己の実力を出し切っていない。舐められている、という屈辱とこのままでは今すぐにでも剣を弾き飛ばされ、殺されてしまうという恐怖とごちゃ混ぜになった気持ちを味わいつつも必死に剣を振るう。今、この場には自分しかいないのだ。ロドスの最重要人物であるドクターとアーミヤ。これでも少々長い付き合いだと思っている医療オペレーター。そしてロドスでも選りすぐりの力を持ったエリートオペレーター。彼らを傷つける訳にもいかない。ましてや、殺させることなどあってはならない。

そんな、弱者のなけなしの覚悟も結局、圧倒的な強者の前では無意味で。

 

「ーーそんなものか」

 

剣が弾き飛ばされ、そのまま刃が振り下ろされる。

 

ーー何も、出来なかった。

 

いまにも死にゆく前衛オペレーターは、周りの世界がゆっくりになっているような錯覚をした。こちらに対して届かない手を伸ばすドクター。自分を巻き込む事を危惧していたのか、手を構えたままアーツを撃てないアーミヤ。

 

ーー何も出来ないだけじゃない。ただの足手纏いだった。

 

泣き腫らした目でこちらを見る医療オペレーター。

 

ーー自分なんかのために泣かないでくれ。

 

そして、

 

あれ?

 

彼女が、いない。

ロドスの最高戦力たる、エリートオペレーター。

「血染めの夜」

その異名を轟かせた彼女。その実、彼女は内気で、それでいて誰も彼も思いやる優しさを持ったお人好しで。絵を描くのが好きで。戦場で、何度も助けられてきた、彼女は。

 

 

自分の目の前の刃を、受け止めていた。

 

 

ーー自らの、身体で。

 

倒れ込む彼女。こちらを見て。ふと、笑った気がした。きっと初対面の人間が見たら縮み上がるようなその顔の笑みは、他人への慈愛をいっぱいに内包する笑顔だった。最後の最後まで、彼女は自分より他人を気にかけるお人好しだった。無力感が身体を襲う。今度こそ自分に対して刃が向けられる。もう出来ることはない。向かって来る刃に対して目を背ける。

 

どこからか、獣の様な雄叫びが聞こえた。

 

次の瞬間。襲撃者目掛けて凄まじい速度の矢が飛来する。

 

そして自分の目の前に一組の男女が並び立つ。

 

「えー、これって名乗りを上げた方がいい?」

「■■■ーッ!!!」

「わかった。わかったから!ちょっと落ち着いて!」

「改めて。カジミエーシュ無冑盟、騎士殺し(ナイトスレイヤー)のプラチナ。そしてこっちは相棒のーー」

「■■■ッ!!」

「ライカン。以後、御見知り置きを。」

 

 

 




「BIOHAZARD VILLAGE. 」より「ライカン」参戦です。モブ敵に転生とかたまげたなぁ.......書き手は屑運、はっきりわかんだね。

プロローグはドーベルマン教官と合流したあたりで一旦区切ろうと思います。
長い、長くない?

あと感想あるとやっぱモチベ上がるなって....いいなって思ったら書いてくれるとウレシイ.....ウレシイ.....
活動報告のコメント、リクエストも待ってるゾ

プロローグ終わったら何見たい?(上位2位までを並行して書きナス!)

  • 0章
  • プロローグ転生者視点
  • 夏油主役の「騎兵と狩人」
  • ライカン主役の「マリア・二アール」
  • ターニャ主役のオリジナルストーリー
  • エレナ主役のオリジナルストーリー
  • 転生者達のプロファイル
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