ある晴れた日、アタシは湖の畔でモローと釣りをしていた。
モローはその外見に似合わず、手先がとても器用だ。オルチーナやハイゼンベルク曰く、モローの作る海鮮料理は絶品とのこと。アタシは食べられないから、ひたすら写真を撮ってツブヤイターに投稿して飯テロをかましているのだが。
「・・・・・・釣りは良いよなぁ」
「ん?突然どうしたのモロー?」
「いや、おれさ、こうやって釣りをしていると、落ち着くって言うか・・・・・・心が穏やかになるんだ」
「あー、分かるかも。なんか、のんびりした時間を過ごせるって言うか・・・・・・時間を贅沢に使ってる感じがするよね」
『時間の無駄遣い』って言われればそれまでだが、人生にはこういう何も考えずにのんびりした時間を過ごすことも必要だと思う。アタシは人形だけど、魂は人間なのだ。アタシにも必要な時間だ。決してドミトレスク城でメイドとして働いたことの反動ではない・・・・・・筈だ。
そうして2人でボーッとしていると、モローの釣り竿が小刻みに揺れていることに気付いた。
「なあ、モロー!オマエの竿に何か掛かってないか?」
「え?あっ!本当だ!」
「逃がさないようにしろよ!」
「う、うん!・・・・・・んん、ぐぐぐ・・・・・・お、重いよ、これ!」
どうやら苦戦しているらしい。よほどの大物か、あるいは地球でも釣ってしまったのか。長時間粘ってようやく来た獲物だ。どのみち手伝う以外にないよなぁ!?
「アタシも手伝うよ!そら、行くぞ!」
「うん!」
そうして2人で釣り竿を力一杯引く。思ったより抵抗が激しい。この動き、岩肌に引っかかってるわけじゃなさそうだ。生きている獲物だ!アタシ達は更に力を込めて・・・・・・
遂に力比べに勝った!大きな水音を立てて、獲物が水面から飛び出した!
「ギョギョギョギャギャギャアアア!!!」
「うおわああああああああ!?」
「ひええええええええええ!?」
針に引っかかって水面から飛び出した獲物はただの魚ではなかった。言い表すなら『人の形をしたグロテスクな魚』だ。首にだぶついた皮のようなものがある。あれはエラだろうか?
「な、なんだよアレは!?」
「し、知らないよぉ!あっ、ひょっとしたらおれの親戚かも・・・・・・」
「落ち着けモロー!記憶を捏造するな!」
ソイツは陸に上がると腕をだらりと垂れ下げて、左右にだらしなくゆらゆらと揺れながらこちらに歩いて来る!アタシは即座に菌根ネットワークに接続し、ミランダに連絡を取る。
「ミランダ!助けてくれ!」
『アンジーか?いったいどうしたと言うのだ。騒々しい』
「湖でモローと釣りしてたら変な半魚人が釣れたんだよ!アンタの実験動物じゃないのか!?」
『?・・・・・・いや、私は知らないぞ。見間違いではないのか?』
「今まさにアタシ達の方に歩いて来てるところだよ!どうすれば良い!?」
『邪魔なら殺してしまえば良かろう。私は忙しいから切るぞ』
「あっオイ!ミランダ!ちょっと待っ・・・・・・切りやがったあのババア!」
あの鴉ババアもう許さねえからな〜?(憤怒)
って、そんなことしている内に奴が近づいて来てる!
「アンジー!ど、どうしよう!?」
「クソ!仕方ない!モロー!奴に酸弾を浴びせろ!外皮が脆くなったらアタシがマグナム弾をぶち込む!」
「わ、分かった!」
モローの吐き出した強酸の塊が半魚人にクリーンヒットする。避ける素振りを見せなかった。よほど防御に自信があるのかと思ったが、もがいているところを見るとそうでもないのか?
「グギギ・・・・・・ニンゲン・・・・・・ヨクモ!」
「英語!?コイツ喋れるのかよ!」
「と言うか、おれたちを見て人間って言うんだ・・・・・・(困惑)」
「ニンゲン、イケニエニシテヤル!」
「うるさい!これでも喰らえ!」
すかさずマグナム弾を撃つ!フルカスタムのリボルバーだ!そのまま脳味噌ぶち撒けな!
「グギャアアアアアアア!!!」
「やったか!?」
「それ、フラグってやつじゃなかった?」
ソイツはアタシ達の攻撃を受けて倒れた。頭を破壊されてそのまま死んだようだ。マジで怖かった。
■
その後のことはよく覚えていない。
ハイゼンベルクに半魚人の死体を引き渡した後、あの悍ましい怪物が残っていないかモロー(水棲形態)と一緒に湖をしらみ潰しに探し回った。だが何も見つからず、その時の精神疲労で家に帰るとすぐにベッドに飛び込んで寝てしまった。
今でもあれは夢だったんじゃないかと思う時がある。だが死体が残っている以上、あれは現実で起きたことなのだ。
アタシはそれ以降、未知の存在に警戒するようになり、同時に力を欲することにも繋がった。ドナや村の仲間達を守るには、やはり力が必要なのだと。
I need more power.