エースコンバット7 FLIGHT REZON   作:ブレイブ(オルコッ党所属)

1 / 59
 


CHAPTER0【ZERO】
STAGE ZERO【Little Light(小さな光)


 空を制する者が地上を制する

 

 ベルカの空軍特務大臣、フランクリン・ゲルニッツが掲げたスローガンから始まった大空戦時代。

 

 ベルカ公国。

 今の空を築いた始まりの国。

 当時のベルカ空軍は粒揃いのエース部隊に加え、他国を圧倒しうる未来を先取りしたかのような軍事技術を持ち。その技術は今もなお、世界に深く根付いている。

 

 【伝統のベルカ空軍】と呼ばれるぐらい。当時のベルカの空戦能力は壮絶の一言。間違いなく世界最強の軍事国家だった。

 

 そんなベルカ公国が、色々あって各国に宣戦布告。

 【ベルカ戦争】と呼ばれた戦争でのベルカの勢いはそれはもう凄まじく。

 短時間で一回りも二回りも領土を拡大していった。

 

 誰も止められない。この戦争は間違いなくベルカの勝利だと思った。

 

 結果、ベルカのボロ負けで終わった。

 

 円卓の鬼神。そう呼ばれたウスティオの傭兵がたちまち空の色を変えていったからだ。

 

 たった一つのウスティオ傭兵部隊にベルカのエースパイロットは全部落とされた。

 当時のオーバーテクノロジーの結晶である巨大レーザー兵器【エクスキャリバー】もその鬼神にポッキリと折られて、防空の要を失ったベルカは総崩れ。

 

 その傭兵が戦争を終わらせたのかって? 

 厳密には違う。いや違うというのは語弊があるが。

 

 確かに円卓の鬼神はベルカを追い詰めた。

 だがとどめを差したのは、他でもないベルカ公国だ。

 

 なんと追い詰められたベルカ軍の急進派が自国の領土内に核爆弾を放り投げたのだ。

 1発どころか7発も。

 ベルカの真ん中に落ちたその核爆弾で7つの街が消し飛び、12000人を越える死者を出した。

 

 もう戦争どころじゃない。

 ヤケを起こした自爆攻撃にベルカは色んな意味で孤立した。

 

 それから少しして戦争終結。

 核爆心地より下の南ベルカはオーシア国の物になりノースオーシアとなった。

 

 そのあと国境なき世界という組織がクーデターを起こしたというが。まあこの話はまた今度。

 

 すっかりこじんまりとしたベルカという国は大人しく故国復興にいそしんだのだった。

 

 

 

 ベルカ戦争終結から7年後。

 

 それは雪の降る寒い夜だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 漆黒の夜に光る星々が舞い降りたかのような白い雪がしんしんと町に降り積もる。

 

 町の灯りが消え、皆が寝静まる夜。

 

 明日の朝日を見る前のひとときの休息。明日も幸せな日々が続きますようにと願い、子供たちは夢を見る。 

 

 そんな静寂の中、何処からか一定のリズムを刻みながら走る人がいた。

 

 積もった雪を踏み抜き、白い息を吐きながら。誰もいない屋外の道をひたすら走る男。

 

 いや、男というよりはとても幼い。

 少年の足音だった。

 

「はっ、はっ、はっ、はっ、はっ、………」

 

 10歳にも満たない、まだあどけなさを残していた。

 少なくともこんな夜更けに外に出るような年齢ではない。

 

 青黒い髪と同じ瞳は虚ろに揺れていた。

 

 小柄な身体に釣り合わない大きさのコートを掴み、引きずり。ただひたすらに少年は走った。

 まるで何かから逃げるように。

 

 走る。

 

 走る。

 

 走る。

 

 走る…

 

 走る……

 

 走………

 

「っ!!」

 

 ドサッ。

 

 雪の下に隠れていた凍った水溜まりに足を取られた。

 幸い雪が積もっていたので少年に怪我はない。

 

 ………だが少年は起き上がらなかった。

 

 いや、もはや起き上がる力がないと言った方が正しい。

 

 コートから出てきた手は痩せ細り、ピクリとも動かない。

 驚くことに足には靴どころか靴下さえもない裸足。雪の冷たさに赤く腫れ上がり、血も滴っていた。

 

 少年の上に雪が積もる。

 

 刻一刻と少年の体温が地面の雪に吸い取られていく。

 それでも少年は動くことはない。

 わずかに漏れる白い息も、あとどれぐらいもつだろうか。

 

 死。

 

 実感も持てない感覚が少年の脳裏を覆う。

 

 命が終わる。命が絶える。命がなくなる。

 

 恐怖はあった。

 目的もなにもなかった人生。

 だけど一つだけ諦めれないこと。

 

 生きていたい。死にたくない。

 

 誰もが当たり前の思考である。

 

 だが少年にとっては唯一無二の願望なのだ。

 

 だから逃げ出した。

 

 だけど、それもここまで………

 

 

 

 

 

 

 

 ーーー◇ーーー

 

 

 

「………………」

 

 目を開けると天国………にしては茶色い木の天井。

 

 暖かい。

 

 ふと少年は疑問に思った。

 自分の身体に覆い被さってるのはなんだ? 

 

 フワフワで、モコモコで暖かい。

 

「おはよう」

 

 ビクッと身体が震えた。

 知らない声。わけもわからず首を右左に動かした。

 

「こっちだこっち」

 

 振り向くと椅子の背に手を置いた、人の良さそうな青年がこっちを見ていた。

 

「………おはようございます」

「おっ、若いのに礼儀正しいな」

 

 状況が飲み込めなかった。

 やはり落ち着かず周りをキョロキョロ見渡す。

 明らかに自分の家ではない。そして当たり前のことだが目の前の男が誰かも知らない。

 

「お前、道のど真ん中で倒れてたんだぞ。俺が気まぐれで散歩しなかったらそのまま死んでた」

「あ、あ、ありがとう?」

 

 とりあえずお礼を言うと青年はどういたしましてと笑った。

 

「………あの」

「おう」

「このフワフワで暖かいのってなんでしょう」

「何って布団だろ、羽毛布団」

「………?」

「おいおい、まさか布団を知らない訳じゃないよな?」

「布団は知っています。薄くて穴だらけの布のことでしょう?」

 

 答えると青年は目を見開いた。

 

 つられて少年も目を丸くした。

 何かおかしいことを言ったのだろうか? とでも言うように。

 

 少なくとも少年の知ってる布団と彼が言ったウモウ布団と呼ばれる代物が同じものとは思えない。

 

 グルルルルルルル。

 

「………これまたデケエ猛獣飼ってるな?」

「猛獣?」

「なんでもねえ、ちょっと待ってろよ」

「はい」

 

 待ってろと言われたから待つことにした。

 

 彼が言ったこのウモウ布団という代物は押すと戻ってくるぐらいフカフカ。暇潰しにしばらく押しては戻り、押しては戻りを繰り返した。

 

(………楽しい)

 

「ほれ、朝ごはんだ。厨房に言って都合付けてもらった」

 

 ベッドのサイドテーブルに置かれた暖かいスープと焼きたてのパンとミルク。

 だが少年はただ見てるだけで手を付けようとしない。

 

「食べていいんだぞ?」

「えっ? 食べていいんですか?」

「ん? 当たり前だろ」

「でもこれは叔父さんや叔母さんが食うものでは? 私は残飯でいいです」

「ざん………」

 

 あたかも当たり前のように言う少年に青年は絶句すると同時に嫌な予感が当たったと頭を抱えた。

 

(もしかしなくても、俺はとんでもない奴を拾ったのでは? ていうか叔父や叔母だと?)

 

 青年が少年を保護した時、少年はやせ細っていた。それこそ餓死寸前というレベルで。

 コートの下はボロボロの服、靴も履いていない。

 間に合わせの手当てをしたときに服の下の肌には、無数の青い痣が………

 

「おまえさ」

「困りますお客様!」

「うるさい! あの坊主がいないとこっちが困るんだよ!」

「ガキ! どこだ!!」

「おっとぉ?」

 

 廊下でわめき散らしてる男女の声に青年は眉を潜めた。

 ベルカ戦争後は北ベルカは結構治安が悪くなったりはしたが。今では落ち着いている、と思っていたが。まだあんな傍迷惑な御仁が居るんだなと。

 

 うるさい奴らだな? と青年が少年に声をかけようと少年の方に向いた青年はまたも言葉を失った。

 

 先ほどまで無表情だった少年の身体が異様なほど震えていたのだ。

 痙攣してるんじゃないかというほどガチガチと。ギュッと目をつぶって過呼吸を起こしていた。

 

 明らかに普通じゃないと少年の肩に手を置いた。

 

「おいお前大じょ」

「うわぁっ!!」

「おっと」

「あっ。ごめんなさいごめんなさいごめんなさい。ぶたないで、お願いいたします。ごめんなさいごめんなさい」

「こいつぁ」

 

 勢いよく跳ね除けられた手に鋭い熱が入る。と思ったら壊れたように謝罪の言葉を並べる少年。

 少年の目には恐怖。恐怖しかなかった。

 

 間違いない、この子は。

 

「おい、今こっから声が」

「間違いないの?」

「ヤッベ」

 

 先ほどから嫌な予感が立て続けに的中している。

 厄日にも程がある。

 

 外で騒いでる奴らが探してるのは恐らく目の前の少年。

 

 時期にあの男女はこっちに来る。

 面倒事はごめんだ。この少年を引き渡せば直ぐに終わるだろう。

 

「た」

「ん?」

「助けて………ください」

 

 少年はベットから乗り出して青年の袖を掴んだ。

 

 それを見た青年はこんな小さな子供を見捨てることは出来ないと、非情にはなりきれない自分に笑った。

 つくづく自分は鬼にはなれない。

 

「オーケー。任せろ」

 

 

 

 ーーー◇ーーー

 

 

 

 ドンドンドンドンドン!! 

 

「ガキ! ここに居るのはわかってんだ! 早く出てこい!」

「出てきな! あんたを赤ん坊から育てた恩を仇で返すつもりかい!」

「お客様! 他のお客様の迷惑になります! これ以上は」

 

 ガチャリ。

 あと少ししたら壊れるんじゃないかと思われた木製のドアが開いた。

 

「あー、その。何かご用ですかい?」

「っ!」

 

 出てきた青年に歳のいった男女はビクッとした。

 温和な青年が肩に担いでいたのは、ライフルだった。それも狩猟用ではなく、軍用のアサルトライフル。

 

「あーこれかい。これは俺の商売道具だ。傭兵をやってる」

「あ、あんた」

「おい、こんなかに子供が居るだろう、8歳の男の子だ。それはうちの子だ、返してもらおう」

「待て待て。子連れの傭兵なんて聞いたことあるか? そんなガキはどこにも」

「失礼する!」

「お客様!」

「あー、大丈夫だ支配人。なにも心配することは」

 

 言い終わる前に男と女は勝手に青年の部屋に入り、女が後ろ手にドアを閉めた仁王立ちした。

 男の方は他人の部屋なのにも関わらず物色を始めた。

 

「おいおい。流石に失礼の度を越えてるんじゃないのか?」

「貴様のような薄汚い傭兵にはわからんだろうがな。あのガキには価値があるんだ!」

「あっそ。なら好きなだけ調べてくれ。ただしそのバックは開けるなよ。クライアントに届ける大事な品が入ってる」

「………フン」

 

 男は探しに探した。

 ベットの下にクローゼットの中。天井裏から窓の外まで。

 

「どうだい?」

「いねぇな」

「だから言ったろうがよ。終わったなら早く出てってくれ、朝飯が冷めちまう」

「いや、まだ調べてないところがある」

 

 男はバックを見た。

 大きめの黒のバック。入れようと思えば子供も入りそうだ。

 

「なああんた。依頼を受ける気はないか? 俺たちが探してるガキを見つける。10万は出す。足りないならもう少し色をつけても良い」

 

 子供を探すだけしては法外な値段だ。

 青年はなぜそこまで金が出せるのか聞いた。

 

「実はな。あいつは古きベルカ貴族の子供なんだ。家の復興が終わるまでの間に預かれば大金が貰える。それに比べればあんたに出した金額などはした金だ」

「親戚ってだけの理由で受けたんだ。どうだいあんた? 奴は遠くになんて行けない。ほんの少し探せば大金が手に入るなんて夢のようだろう? 頼むよ」

 

 女、男の妻まで言い寄ってきた。

 ニコニコしているが、その面で隠しきれない腐臭が嫌でも鼻につく。

 

「悪いがお断りだ。依頼は一つ一つ完遂する。それが俺のポリシーだ」

「なあ傭兵さん、じゃあ開けずに触るだけでも」

「駄目だ。妥協はしない。ガキなんか知らないから早く帰ってくれ」

「いい加減にしろ傭兵風情がっ!!」

 

 男の低すぎる沸点が突破された。

 男は唾を撒き散らしながら青年に怒鳴り散らかす。

 

「あのガキを手に入れれば大金が転がりこむ! 庶民が一生遊んで暮らせる額をだ! 玉の輿を手に入れた妹を尻目に細々と暮らしていた。そんな金持ちがようやくがま口を開けたんだ!」

「その期限ももうすぐなのよ! だから今いなくなると困るんだよ!」

「わかったらそのバッグを開けろ! 俺は耳が良い! 確かにここにガキはいた! これ以上抵抗するなら警察を呼ぶぞ!! 俺は警察に顔がき………」

 

 ビジュッ。

 

「「ヒッ!」」

 

 鋭い音と共に男と女は息を飲んだ。

 

「うるさいぞ」

 

 青年の手にはサイレンサー付きの拳銃が握られていた。床には弾痕があり、一筋の白煙を上げている。

 

「俺は何よりも朝食を大事にするんだ。散々待たされてもうすっかり冷めちまった。こう見えてぶちギレてるんだ。押し込み強盗みたいなことされたんだからな」

 

 青年は男の厚ぼったい鼻に拳銃を密着させた。

 青年が引き金を引けば男の鼻の穴が一つになるだろう。

 

「こ、こんなことしてタダじゃすまんぞ」

「顔が利く警察でも呼ぶか? なら鏖殺するだけだ」

「狂ってるわ………」

 

 青年はヘラッと笑った。人も殺さないような柔らかな笑顔だが、目だけはガラス玉のように笑っていなかった。

 

「一つ良いことを教えてやる。俺は7年前ウスティオの傭兵として飛んでいた」

「ウスティオ!? ま、まさかお前、円卓の」

「鬼神?」

「察しがよくて助かる。わかったなら早く出てってくれ。あと金輪際俺に関わるな。俺に危害を加えた時または口外した時は何処に逃げても殺しにいく」

「ヒ、ヒィィィィ!!」

 

 顔面蒼白になりながら男は勢いよく後ずさって壁に頭を打った。

 うずくまる男を心配した女は男にかけよった。

 

 青年はサイレンサー拳銃を手に持ちながらおもむろに窓の外を眺めた。

 

 男は腰を抜かしたのか逃げることが出来ず、女は慌てるばかり。

 

「なあ?」

「ななななんだ」

「窓の外にガキが走ってるんだが。もしかしてあいつか? 黒髪ででかいコートを引きずりながら走ってる」

「なにぃ!?」

「ど、どっち?」

「あっち」

「は、早く言え! 行くぞ!!」

「行くぞじゃないあんたが早く立ちなよ!!」

 

 慌てふためく二人は転がるように部屋を出た。

 

「なぁにが俺は耳がいいよ! 全然的外れじゃないさ!!」

「うるさい! つべこべ言わず追うんだ!」

 

 離れていく喧騒をシャットアウトするように青年は鍵を閉めた。

 拳銃からサイレンサーを外し、肩に引っ掻けていたアサルトライフルをベッドに置いた。

 

 黒いバッグのチャックを開け、中から少年を引っ張り出した。

 

「大丈夫か?」

「うん」

「よく動かなかったな、偉いぞ。怖いおじさんとおばさんはどっか行ったからな。もうこっちには戻らないだろう」

 

 少年を抱えてベッドに戻す。

 

「ごめんなさい」

「さっきのか?」

 

 少年は頷く。

 

「気にするな。俺が好きでやったことなんだからな」

「でも」

「俺としてはありがとうって言ってほしいかな」

「………ありがとうございます」

「どういたしまして」

 

 グリグリと少年の頭をなで回して青年は笑った。

 そんな青年につられて少年もほんの少しだけ笑みを浮かべた。

 

「朝ごはん」

「ん?」

「俺のせいで食べれなくて。一番大事なのに」

「ああ、あれ嘘だ」

「え?」

「こんなとこで傭兵なんかしてたら3日間なにも食えないなんてこともザラだからな。とっさの嘘だったけど上手く行った」

「えっ、え?」

「怖がらせたか? ごめんな」

 

 にこやかな笑顔のまま青年はまた少年の頭を撫でまくった。

 何処から何処まで嘘だったのかと少年は疑問符を浮かべまくった。

 

「すっかり冷めちまったな。別の頼んでくる」

「い、いえ! これ食べます」

「遠慮すんな。俺は冷めた方が好きだから。待ってろ」

「あっ」

 

 しばらくすると青年は出来立てのスープとパン。あとハムエッグを持って来た。

 

 自分の分のハムエッグを持ってきたのは、少年が遠慮すると思った青年の配慮だった。

 

「んじゃ頂きます」

「………頂きます」

 

 青年が食べはじめてようやくスプーンを持った少年はスープをすくって口に運び。

 

「あつっ!!」

「ハハ、ちゃんと冷まさないと」

「こんな暖かいの、食べたことないから」

「そっか」

 

 今度はちゃんと冷ましてから口に入れた。

 

「っ!?」

「美味いか?」

「………」

 

 青年に返答することなく今度はパンをかじった。

 ハフハフと口のなかで冷ましながらハムエッグをかっこんだ。

 一心不乱に食べ進めるうちに、少年の瞳から大粒の涙が次々とこぼれ落ちた。

 

「美味しいです」

「うん」

「こんな美味しいもの、グスッ。食べたことない」

「そうか」

 

 少年が初めて食べた暖かい食事は、

 少しだけ塩辛かった。

 

 

 

 ーーー◇ーーー

 

 

 

 少年と青年はしばらくホテルで過ごした。

 暖かいシャワーを浴び、暖かい食事を食べ続け、ようやく少年は自力で歩けるぐらい回復した。

 

 少年とのコミュニケーションを取ろうとしたが。少年の素性を話すには、まだ時間が必要だった。

 

 わかったことと言えば。彼の名前ぐらいだった。

 

「そういやお前の名前聞いてなかったな」

「………リヒト」

「リヒトか。良い名前だ」

 

 リヒト。ベルカ語で光という意味の言葉だ。

 

「名字は?」

「分からない。お前に名字なんかないってずっと言われてたから」

「そうかい」

 

 少年の心も氷解していったのだが。如何せん扱いと環境が劣悪だったのか一般常識にかけ、間違った認識を当たり前のように感じていることに青年は頭を悩ませた。

 

 なのでホテルで過ごしている間、青年は少年に一般教養を教え続けた。

 

 あれから4日。青年は少年に問うた。

 

「お前、これからどうする?」

「………」

「叔父さんと叔母さんのとこに戻る気は、ないよな。俺としても君をあそこに戻すのは気が引ける」

「………」

 

 喋らなくても少年、リヒトは彼と一緒に居たいと目で訴えかけた。

 

「出来ればお前と一緒に居てやりたいが。俺は傭兵だからな、ずっとはいれない」

「………」

「そこでだ。しばらく俺と一緒に旅をしないか?」

「旅?」

「ああ。俺はある目的の為に各地を歩いている。傭兵は資金集めのためだが。しばらく仕事しなくても生きてけるぐらいの金はあるんだ。そこで旅をしながらお前の引き取り先を探す。実は一つあてがある」

「うん」

「どうだ? お前はどうしたい?」

「行く。お兄さんと一緒に行きたい!」

 

 今まで見せたことないリヒトの明確な意思に青年は自分のことのように喜んだ。

 

 リヒトは青年が買ってくれた新しい服と靴を履き、ホテルを出た。

 幸いあの男と女はいなかった。

 2日ほどはホテルの前で見張っていたみたいだったが、おざなりにもバレバレで見てるこっちが笑いを堪えるのに苦労した。

 ホテルマンには既にホテルを出ていったことにしてくれたので、しばらくしてあの二人を見ることはなくなった。

 

 直ぐに町を出ていった。

 少年は振り替えることなく歩を進め。町が見えなくなるとホッと息を漏らした。

 

「ねえ。お兄さんがあの円卓の鬼神ってほんと?」

「知ってるのか?」

「ホテルの人に聞いた。七年前の戦争でベルカのエースを全部落としたウスティオのエースだって。本当にお兄さんが?」

「あー、それも嘘なんだ。円卓の鬼神の名前を出せばビビるかなって」

「やっぱり」

「やっぱりって?」

「ホテルの人は血も涙もない悪魔だって言ってた。お兄さんは優しいから、そんな怖い奴とはどうしても思えなくて」

「………そうかい」

 

 リヒトの気づかないところで青年は天をあおいだ。

 その顔は悲しそうで、それでいて寂しそうだった。

 

「でもな。俺がウスティオの傭兵として戦ったのは本当だ。そして、その円卓の鬼神と一緒に戦ったんだ」

「悪魔だった?」

「いや、良い奴だったよ。まあ悪魔を超えて鬼呼ばわりされて。それでついたあだ名が円卓の鬼神ってなったけど」

「そうなんだ」

 

 リヒトは少し押し黙った後。何かに気づいたように顔を上げた。

 

「そういえば。お兄さんの名前聞いてない」

「そっか、まだ言ってなかったっけ」

 

 青年は足を止め。リヒトの目線に合わせるようにしゃがみこんだ。

 

 雪が降る。気温も寒い。

 

 ああ、あの日もこんな。

 雪の降る寒い日だったな。

 

「俺の名前はラリー・フォルク。これから宜しくな。リヒト」




 ついに始まりました。始めてしまいました。
 
 一通りストレンジリアルについては学んだつもりなのですが。どこかおかしい点があった場合は遠慮なくご指摘宜しくです。

 ブレイブが挑むエースコンバット7。応援宜しくおねがいします!
 
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。