エースコンバット7 FLIGHT REZON 作:ブレイブ(オルコッ党所属)
帰ってきた。オーレッドに。
俺の第2の故郷に。
オーレッドの航空ショー当日。
北部のウェザール基地からオーレッドの空軍基地まで遠路遙々飛んできた俺たち訓練生組はハンガーで待機と命じられてここにいる。
オーレッドの空での模擬戦。
クラウンと空の上で優劣を競うこととなり興奮と同時に柄にもなく緊張もしていた。
教官やドレイク1を筆頭としたドレイク隊との空戦を経験した。
しかし常にユージア大陸の動向を監視し、何かあれば即スクランブルという状況下にあり。クラウンやノッカーといった、オメガ11とは違う現役の古強者が相手となれば苦戦は必至。
対戦するとなってメイジ隊とゴーレム隊。そしてIUN国際停戦監視軍というものについて自分なりに(ブレッドが教えてくれたことも含めて)調べてみた。
ユージア大陸最東端に位置する孤島。フォートグレイス島に住処を構えるIUN国際停戦監視軍の一角。
オーシアからもっとも遠い場所に位置するその場所を任されるというのは字面以上の困難な側面を伴っている。
ユージアに転々と展開しているIUNは言うなれば自国から切り離された遠征部隊のようなもの。
自分たちを庇護してくれている場所からもっとも遠く。そして住み慣れた場所から離れ続けるという現状は目には見えない、知覚しずらい無意識なプレッシャーがつく。
というのは。元ベルカ空軍のフリューゲル隊のアインホルンさんから聞いた話だ。
昔のベルカの訓練生はその過程でベルカから離れた戦場に放り出される。
空を飛ぶのだから一緒だろうというのは間違いで。まったく未知の場所で空を飛ぶというのは戦争時とは比較にならないにしろ、緊迫感を持って飛ばなければならない。
ましてや自国外で飛ぶということは常にリスクと隣り合わせ。
IUNの領分を外れてしまえば即国際問題の口実にされてしまう。
その当事者がいつ自分になるのか。それを注意しながら飛ぶことを念頭に出される。
更に都合の悪いことに。
ユージア大陸、一際エルジア王国がユージア大陸各地に駐屯しているIUN国際停戦監視軍に不満を浮かべている。
いやIUNだけではなく。エルジア王国近くにたてられた軌道エレベーター。そしてその周りを周回する2機のアーセナルバードが更にエルジアからの不満を得ている。
自分達は監視され、常にオーシアの支配下にある。
そんな現状に不満を浮かべ、しかしそれを表に出そうにも戦争行為という過去のエルジアの失態が政治的足枷となっている。
そしてこの現状は、各地の中立国も少なからず非難されていること。
IUNの大本である大国オーシアはこれら全てをユージア大陸の恒久的平和の為。疲弊したエルジアを支援するため。ユージア大陸が再び戦争という悲惨な事態になることを回避するため。という本音か建前なのかの分水嶺を貫いている。
まあ何が言いたいのかというと。ユージア大国、エルジア王国は燻りに燻ってるということだ。
オーシアからしたら軌道エレベーターのユージア各地へのマイクロウェーブ送電状況が満たされるまでは見えない緊張状態にあるのだという。
今回オーシアから一番離れたフォートグレイス基地飛行隊が来たのも。最重要警戒対象のエルジアから一番離れた場所だから。
という噂をブレッドから聞いた。
………なんにせよ。
今回のオーレッドの航空ショーはそんなIUNとオーシアの有用性や優秀な様を世界に発信することに意義がある。
並々無様な姿は見せられない。そういうことである。
風が吹いてきた。
飛行には支障はないぐらいの心地よい風。
その先にはぶ厚い白い雲があった。
青い晴れの中で大小様々な雲が散りばめられた空。
空を眺めることが趣味な俺にとって、穏やかに移り行くこの光景は好きな空の形の一つだ。
空を眺めているとポケットに忍ばせたスマホがメールの着信を告げる。
「………………イエスッ!!」
メールの内容を反芻し、隠しきれない喜びを露にした俺を周りが何事かとこちらを見た。
メールの内容は、俺の予想以上のものがあった。
アンソニー。そして驚くことに、サピンに住んでいるマルセラさんまでもがこの航空ショーを見に来ているということだった。
ーーー◇ーーー
「サピン1の美人と航空ショーを見に行くなんて、贅沢過ぎるな」
「あら、もしかして口説いてるつもり?」
「まさか」
冗談を交わしながら人でごったがえした航空基地の祭場を歩いていくアンソニーとマルセラ。
特にマルセラはサングラスをかけているにも関わらずすれ違う男どもの目線を釘付けにし。その度に小規模な接触事故を誘発させていた。
「しかしよく此処まで来れたもんだな。正直二度とお前と面と向かって会うことはないと思っていたよ」
「私はアンソニーより監視が緩いし、旅行だって時々行ってたのよ。それを言うならあなたもよく私に会えたわね」
「今さら世界に反旗を翻す気なんてないさ。ブリストーが獄中に囚われたことを知ってから。義理だてする気も失せた」
アンソニーにとってブリストーはもっとも信頼していた相棒でもあった。
そんな彼がオーシアの腐った思惑に絶望し、世界を変えると聞いたときは迷うことなく賛同した。
だが国境無き世界が打破され、それでもブリストーはテロ行為を繰り返していると知った時。
正直言って失望した。
あの頃の彼には間違いなく大義があった。
世界を敵にしても怖くないと言えるぐらいの。
だがその後に悪足掻きとも言えるテロでいたずらに命を浪費するその姿に彼は目が醒めるような感覚を覚えたのだ。
そしてブリストーを、彼の姿をOBCのテレビで見たとき。アンソニーはある予感を知覚した。
ブリストーはまだ諦めてないのではないかと。
下手に処刑されることのない彼は世界に思考の根を伸ばし、着々と、着々と何かを為そうとしているのではないか?
そう思えてならなかったのだ。
「アンソニー」
「なんだ?」
「祭りの中でそんな顔してたら怪しまれちゃうわよ?」
「おっと、それはいけない。君をちゃんとエスコートしなきゃアルベルトにどやされてしまうな」
アルベルト・ロペス。
マルセラの恋人であった彼は空に散った。
彼は誰よりも空に情熱を持った男だった。
空を捨てた自分とは対極にあるパイロットだった。
だがアンソニーは時々、エースパイロットだったあの時と同じように空に焦がれることが多くなった。
そんなアンソニーが密かに想いを託した子が。今日オーレッドの空を飛ぶのだ。
ベルカという出自、壮絶な過去。
そんな厳しい現実に屈することなくひたすら空を飛ぶことに意義を見いだし続けて。
しまいには『大馬鹿野郎』なんて名前がつけられるぐらい破天荒なパイロットになった。
あの少年が此処まで登り上がったことに、アンソニーとマルセラは自分のことのように嬉しかった。
「ラリーも来れば良かったのに」
「あいつは来ないさ。ベルカ戦争から23年たった今でも、あいつは答えを探している………もう見つけてるのかもしれないがな」
「ふぅ。男って本当に面倒くさい。待たされるリヒトの身にもなったらどうなの」
「そう言うな。リヒトはそれでも信じて飛び続ける。あいつが翼を広げて飛ぶ姿を、俺たちが見守ってやろうじゃないか」
ーーー◇ーーー
ブレッド達のエアショーは問題なく終わった。
ループ、エルロンロール、シャンデル、インメルマンターン、ハイ&ロー・ヨーヨー、バレルロール。
その他諸々の空戦テクニックを余すことなく綺麗に成功させ、観客を多いに沸かせた。
高難易度のハンマーヘッドや連続クルビットはなかなか見ごたえがあり、戦闘機のイロハを知らない幾らかの観客は。これで戦闘機に興味をもってくれたのは火を見るより明らかだった
そのあとはオーレッドアクロバット飛行隊の編隊飛行。
色とりどりの煙を出しながら飛ぶ姿は付け焼き刃のそれとは違う熟練の技の冴えを見せ、老若男女問わずその勇姿に釘付けにされた。
そして………最後の大目玉。
IUN国際停戦監視軍と訓練生アグレッサー部隊の模擬戦闘だ。
「フェアリー1、ブラウニーより各機。状況を」
「フェアリー2、トリガー。オールグリーン」
「フェアリー3、ボグガード、ノープロブレム」
「フェアリー4、フットパッド、オールオッケー」
「よし。各機編隊を維持したまま基地上空を旋回。全周囲警戒を維持しつつ敵部隊、ゴーレム隊とメイジ隊の襲撃に備えよ」
「ウィルコ」
編隊長であるブラウニーの指示に従い、90度ロールしつつ旋回する。
眼下には空軍基地の滑走路と。大勢の観客の姿。
ここから見る人は本当に点にしか見えない。
視力が人よりも良いことが自慢の俺でも流石にあの中からアンソニーとマルセラさんは見えない。
「しかしこう見るとアグレッサーはむしろあちらさんじゃね?」
「今回のシチュエーションは基地を強襲してきた私たちアグレッサーをIUN国際停戦監視軍が撃退するというシナリオよ」
「うわー、改めて確認すると俺たち思った以上に悪役だな」
「そう言うな。今回はIUNの有用性と、オーシアの新世代の卵の実力を見せるのが目的だ」
「でも俺たちが勝ったら勝ったで後味悪くなるよな」
「だからこそ俺たちがアグレッサーなんだろ?」
「そういうことかぁ? わかっててもお前達は雑魚だ! って言われるのは応えるなぁ」
ぼやくフットパッドを横目に俺は軽く笑う。
訓練生の中でベスト4と言われる俺たちだが。まだ戦場のなんたるかを経験していない井の中の蛙だ。
だからこそ今回の模擬戦は戦うだけの価値がある。
それに、戦場に出されたとして勝てるわけのない強敵が出てきたから見逃してくれなんて道理は通らない。
これから先円卓の鬼神やラーズグリーズのような腕前を持つ奴らと当たるかもしれない。
その為にもこの勝負。勝てないまでも生き残らなければならないのだ。
逆にベスト4と言うメンバーであっても絶対に勝てる、と誰もおごらないのは良い方向に育っている証拠でもあるのだろう。
ならば、少なくとも戦える土台にはある。
「こちらAWACSスカイキーパー。フェアリー小隊、まもなくゴーレム隊とメイジ隊が作戦空域に入る。模擬戦開始まで、あと1分だ」
「フェアリー1了解」
フェアリー小隊。
今回の俺たちの部隊名だ。
命名者はフットパッド。
俺以外のTACネームがみんな妖精モチーフだからそう名づけられた。
俺? 俺はラリー・フォルクが好きだからって理由らしい。いいのかそれで?
「フェアリー1から各機! レーダーに感あり! 方位340、機数4!」
「おいでなすったか!」
「………目視で確認。F-16C、2機。F/A-18F、2機」
「目が良いなトリガー。俺にはまだ豆粒にしか見えない」
目が良いのはラリーのお墨付きだ。
といっても、基地で見慣れてるファルコンとホーネットだから判別できたというのもある。
「ゴーレム1からフェアリー隊。始めるぞ、ひよっこ共。悪いが手加減は少ししか出来ん。精々秒で落とされないように動けよ」
「了解! ご指導を宜しくお願いします!」
ゴーレム1、ノッカーからの通信に律儀真面目に応えるブラウニー。
だが一緒に飛び続けた俺たちにはブラウニーの声が少し上ずってることを感じ取っていた。
「これより模擬戦を開始する。各機の奮闘に期待する」
「始まった。最初はセオリー通りだな? 隊長」
「ええ。フェアリー3、エレメントを。フェアリー2、4でエレメント。ツーマンセルで敵を叩く!」
「了解!」
作戦通りフットパッドと組んでメイジ隊に向かう。
本来なら組みなれた1、2。3、4で組むのが定石だが。これは俺はクラウンに、ブラウニーがノッカーを相手取りたいという思惑があってのことだった。
「来たな。メイジ2、最初は俺が遊ばせてもらう。参加したかったら早めに落とせよ」
「了解だ。あんたも手心加えて落とされるなよ」
「心配無用だ………手加減したら俺が落とされるさ」
普段聞きなれないクラウンの声色にカウントは怪訝な目を向けるも直ぐにターゲットのF/A-18Fに自機のF-16Cの機首を向けた。
「クラウンはこっちか。フェアリー4、俺はメイジ1をやる。その間に2を頼む」
「ウィルコ。気を付けろよ、っとぉ! 速いな!」
メイジ2の鋭い切り上げにフットパッドはたまらずロール。
そしてクラウンと俺のファルコンがすれ違ってキャノピーが空気で少し揺れた。
「さあトリガー。お前の飛びかたを俺に見せてみろ!」
先ずは小手調べとばかりに俺の背後を取りに来た。
早々にやられるわけには行かない。
下にはアンソニーとマルセラさんがいる。
無様な姿を見せるわけには行かない。まずはこの戦場を生き残る!
後ろに来るクラウンを確認して半ループからの右斜め下にスライスバック。
振りきれはしなかったが、開幕ロックオンは避けることが出来た。
レーダーに移る白マーカーの敵と青マーカーの味方の位置を逐一確認しながらスロットルと操縦桿をこまめに動かして姿勢を整え。
急上昇からのエアブレーキでクラウンと急接近しロックオン範囲から逃げ出した。
「少しは出来るじゃないか。一番の腕は伊達じゃないか?」
「どうもっ」
「フフッ。そのカラーリングはお前が考えたのか? 似合ってるじゃないか」
俺にとってのギリギリのラインを攻めたであろうフェアリー小隊の機体カラーはアグレッサー隊として派手に着色された。
派手と言っても、機体の主翼を両方とも赤く塗ったものだ。
このカラーリング案はクラウンの言う通り俺が案を出した物だ。
「片羽にしなかったのはお前なりの矜持か?」
「ソロウィング・レッドはあの人のカラーだから。それでもフェアリー隊ならこれが良い。俺なりに屁理屈をこねた」
「そうか」
「それに、両方に塗ったら翼は折れてないってことにもなるかなってさ」
そう、このカラーリングは願掛け。
これから空を飛び続けて、撃墜されないようにという神頼み。
情けないと思うか。知ったことか、祈るのは個人の自由だ。
自分から死ににいく覚悟を持てるほど俺は正直者ではない。
「そうだな、お前たちはまだ落ちる訳にはいかんな。これからのオーシアを支えなきゃならない──なら手始めに俺を落としてみろ!」
鋭さを増したクラウンの動き。
機敏だ。同じF-16Cでも乗り手でやはり違ってくる。
だけも鋭さなら自信はある。
それはクラウンも同じ。なかなか背中を見せることなく時間が過ぎた。
「よぉし、撃墜だ!」
「うわっ、トリガーすまねえ! 気を付けろ、俺をやったファルコンがそっちに行った!」
その間にフットパッドがやられた。
相手をしていたメイジ2がクラウンと合流する。
ブラウニーたちはまだ大丈夫そうだが、2体1か………
「なんだよもう来たのか。これからだって言うのに」
「悪いな、あんたのお気に入りは俺が頂く」
クラウンより若い男の声。彼がクラウンの僚機か。
「というわけだ。今度は俺が相手だフェアリー2。お前に現実というものを見せてやる」
「現実?」
「そうさ。新入りの中でエースと呼ばれても所詮新入りの枠組みの話だ。本物のエースには勝てないということさ。あっけなく落ちるんだな! ルーキー!」
迫り来るメイジ2の飛びかたはとことん基本に忠実だった。ブラウニーに似てるが、その技の冴えは更に洗練されたもの。
あっという間に背後に来たのを必死に振りきろうとするがなかなか離れない。
クラウンの方にも目を向けたが、クラウンはメイジ2が来たとたん後方上空で援護をする素振りを見せつつもそこに覇気はない。高みの見物のつもりか。
あるいはメイジ2が俺とサシでやることを望んでいるか。後者が有力か。
ならば俺の取る行動は、クラウンの動きを視野に入れながら背後のエース様を落とす!
スロットルオン。ロックオンにかからないように蛇行やロールを繰り返す。
「どうした噂の大馬鹿野郎! 逃げるだけなら誰だって出来るぜ!」
「誰でも出来ることを当たり前のように出来るようになるのが訓練だと思いますが」
「確かにそうだ。だがそれだけじゃ生き残れねえ。戦闘は教本通りではないんだよ!」
綺麗で真っ直ぐな飛びかたをしてる癖によく言う!
挑発的な物言いに少しカチンと来たのか、一息置いて反撃を試みた。
「だったらさっさと落としてみなよ、エース殿。口だけなら誰でも出来る」
「なんだとっ」
「自分で言うんだ。あんたこそ早々に落とされるなよ!」
双方の位置と速度を確認。
振りきって背後にまわることは出来そうだが、タイミングだよな。クラウンが何時来るかもわからないし。
前方に濃くて厚い雲が大きく展開されている。
………試してみるか。
スロットルレバーを極限まで押し込み、機首を上げて高度を取ったあとにダイブ。
速度域2500。ファルコンの最大出力を惜しみ無く吐き出した。
「やろう、逃がすかぁ!」
メイジ2も最大推力。
そのまま俺は雲に突入………と同時に全力で制動をかけた。
身体全体にのしかかる強烈なGの感触。
視界が一瞬クラっとなることを厭わずに操縦桿を力の限り手前に引っ張った。
あがれ!
言葉に出せない叫びを上げながらファイティング・ファルコンは上体を上げてそのまま頭が下になる。
逆さになった視点のなか目に写ったのは速度を維持したまま雲に突っ込んだメイジ2のファルコン。
「なに、あいつ何処にいった?」
メイジ2は急いでレーダーを確認した。
手元のレーダー画面を見た瞬間には丁度俺と彼のマーカーが重なり、彼から見てコンマ秒後に俺の白マーカーが背後に飛び出たことだろう。
ループ完了と同時に増速。
分厚い雲で一瞬俺を見失ったメイジ2は俺の姿を探しながら雲の外に出ようとした。
そして鳴るレーダー照射警報。
後ろ!? と俺を目視で確認したメイジ2。
コクピット越しに彼と目があった。
彼の目は驚愕に開かれていた。だが直ぐ冷静さを取り戻し、ハイGターンに移ろうとした行動は流石はプロというところだ。
遅い、貰う!
ハイGターンに移るまでの数秒の間。厚い雲でとらえづらくなっていたシーカーが正常に戻り。そのままメイジ2の単発エンジンの中心を捕らえた。
「なん、だと?」
「悪いけど。あんたがエースだとか正直どうでもいい。それに、俺は自分がエースだと自惚れているつもりもない」
「っ! くそっ!」
苛立ちを叫ぶメイジ2を尻目に機体をロールさせた。
少し棘のある言い方をしてしまった。クラウンとのサシに水を差されて苛立ったか?
「フェアリー2! メイジ2を撃墜」
「ヒュー! やりやがったぜ! トリガーが正規軍の機体を撃墜した!」
「流石ね、トリガー」
テクニックが通用したことを喜ぶと同時にまだ戦闘は終わってないと気を引き締め。戦況確認。近く、右下のほうでドッグファイトをしている一組を視認。
ボグガードを追いかけていたゴーレム2に向けてパワーダイブ。
クラウンが背後にいることに構うことなくボグガードに集中しているホーネットに奇襲をかけた。
FOX2。心のなかで唱えながら引き金を引き。ゴーレム2が回避する前にロックオンが完了し。すかさずブレイクしてクラウンのロックから外れた。
「こちらゴーレム2。撃墜された、いつの間に!」
「一瞬で2機も。ここまでいくと化け物だな、トリガー」
侮蔑の通称である化け物とクラウンに呼ばれたのにも関わらず胸がボワッと熱くなった。
戦場において、これ以上の褒め言葉はないのだから。
「メイジ1、エレメントを組め。狼狽えるなよ。まだ戦闘は終わっていない、巻き返すぞ」
「ウィルコ」
「戦場では最後まで生き残れば大勝利だ、それ以外に価値はない。2階級特進の勲章はあの世に持っていけないからな。ひよっこもそれを覚えておけ」
「了解しました、ゴーレム1。全機、密集陣形。スリーマンセルで行く。2は隙があれば切り込んで。3は私のフォローを」
「フェアリー2、ウィルコ」
「フェアリー3、ウィルコ」
翼端が赤く塗られたの戦闘機の編隊がトライアングルで空を駆ける。
訓練生側が優勢という大判狂わせに会場は沸きに沸きまくり。基地職員やパイロットもこの状況に思わず舌を巻いた。
ただ1人を除いて。
「くそっ、俺がこんな無様な姿を、俺がこんな………」
「メイジ2、少し離れましょう。他の機体の邪魔になります」
「うるせえ、ほっとけ!」
「そうは行きません。今回は運が悪かった、そう思いましょう。フェアリー4、一緒についてきてください」
「了解っす」
「………くそっ」
撃墜判定を受けたメンバーが戦闘空域からほんの少し離れて周回軌道を取った。
カウントはそれきり口を開くことなく。未だに飛び続ける隊長機2機と訓練生機の戦い。
両翼を赤く塗った、トリガーのF-16Cを視界に捕らえ続けていた。
「フェアリー2………トリガー………」
ーーー◇ーーー
模擬戦のデモンストレーションは問題なく終了した。
ゴーレム1とメイジ1の連携攻撃でブラウニーとボグガードが立て続けに落とされ。俺は戦略的撤退という名目の時間切れという形で勝者はIUN国際停戦監視軍側の勝利となった。
だが観客はそれを一方的な勝利とはみず、善戦した両者に対して惜しみ無い拍手を上げたのだった。
「クラウン!!」
格納庫で整備員と話してる彼を見つけて一目散に駆け寄った。
向こうもこちらに気づいたようで、整備員に一言声をかけてこっちに来てくれた。
「よぉ今回のエース様! うちの若手エースをやり返すとは思わなかったぞ!」
「痛い! 痛い痛い痛い! あ、ありがとうクラウン」
「しかも俺とノッカーからちゃんと逃げ回って、あげく反撃までしようとするなんてな! いやー、俺は嬉しいぞリヒト!」
て、テンションが高い。
だけど嬉しいからなにも言えないのが困ったものだ。
………というかそろそろ首を離してクラウン。
だんだん視界がグレーに。
「クラウン、そこまでにしましょう。このままじゃフェアリー2が落ちちゃいますよ」
「すまんすまん。リヒト、こいつはファウン。お前が二番目に落とした奴だ」
「二番目に落とされた男だ。さっきの奇襲は見事だった。本当に気がつかなかったよ」
「んであっちでお嬢ちゃんと話してるのがゴーレム1のノッカー。俺たちの編隊長だ」
指を指されたゴーレム1のノッカーという壮年の男性はブラウニーと話をしていた。
心なしか頬が赤いぞ委員長?
因みにこっからデートまで持ち込めるか俺たちの間で賭けが発生しているのは秘密だ。
「もう1人は何処に? 若手のエースって言ってた人」
「ああ、あいつか。あいつは一足先にどっか行ったよ。屋台にでも行ったのか?」
「さあ、もしかしたら何処かのバーで女を誑し込んでるんでしょうよ」
「そっか。てっきりお前に落とされて凹んでると思ったが、まあ大丈夫だろう。ところでこの後予定はあるのか?」
「この後はアンソニーに会う予定。クラウンも一緒にどう?」
「あー、悪いな。今日は先約があるんだ。久しぶりにオーシアに帰れたからな。たっぷりと家族サービスをしないとってやつさ。お前に予定なかったら招待しようと思ったんだが」
そうか。クラウンも一緒に行けたらもっと楽しめると思ったが。久しぶりの里帰りということなら仕方がない。
せっかくの家族水入らずにお邪魔するのも気が引けるしね。
「しかし今回でますます、お前が欲しくなったぞリヒト。お前が望むなら上司にかけよってやるが。流石にフォートグレイスだとオーシアから遠いよな。オーシアの勤務になりたいんだろ?」
「んー。最初はそう思ってたんだけど。今日飛んでみて俺もクラウンと飛びたくなった感があってさ。どっか変なところに飛ばされるぐらいならお世話になりたいかな。ユージア大陸の平穏を守ることも、オーシア大陸を守ることに繋がると思うし」
「本当か!? なら早速ノッカーと司令官に話しつけねえとな! よーーし!」
あ、今ノッカーのところに行ったら………行っちまった。
流れでブラウニーも行けるようになればいいが。
「クラウン、嬉しそうでしょ。基地にいる時は頻繁に君のことを話すんだ」
「そうなんですか?」
「何処で会ったかというのは詳しくは話してくれないんだけど。いつかうちに来てほしいなって言ってるんだ。勿論私も歓迎するよ」
「ありがとうございます」
ユージア大陸のフォートグレイス基地のトリガーか。
クラウンやブラウニーと飛べれたら、これほど嬉しいことはないだろうな。
もしかしたらメイジ隊になれたりしてな。
ーーー◇ーーー
と思っていたのも束の間、という奴か。
俺というより俺たちが正式なオーシア空軍としての飛ぶ配属先が決まった。
行き先はフォートグレイス基地。
俺たちは晴れてIUN国際停戦監視軍として飛ぶことが決まったのだ。
クラウンの口添えが決まったかどうかはわからないが。あの時の、フェアリー小隊が丸ごと配属になったからあながち間違いではないのかもしれない。
ブレッドとコーギーとグリッターはこのウェザール基地にそのまま配属となった。
勿論、卒業した後のオーシア軍人としてだ。
そしてあれよという間に卒業式。いつもよりご立派な儀礼用の軍服に身を包んで卒業パーティー。
酒を飲み交わしながら教官が今年の最優秀者、すなわちトップパイロットの表彰を行った。
最優秀者の名前はリヒト・パーマーと書かれていて。
戸惑う俺をよそに総出で胴上げをされて俺の身体は宙を舞った。
こいつら事前に示し会わせていたんじゃないか!? ってぐらい綺麗な動きで胴上げされ、そのまま表彰台まで担ぎ上げられてしまった。
みんなに祝福されながら表彰された時。俺は心のそこから嬉しく感じた。
ベルカ人でも、努力すれば正当に評価されることがあるということを。改めて確認出来たのだから。
そしてとうとう異動の日となった。
ブレッドはもう涙でぐしゃぐしゃになってたなぁ。
グリッターはもう今まで以上に目立ってて、コーギーは何やらブラウニーに耳打ちしていた。
その後直ぐにブラウニーの顔が真っ赤になったことから、何を話していたのかの想像は容易かった。
………最後にこの基地の空を眺めた。
一度だって同じ空はなかったが。ここから眺める空はもうないのだと思うと少し寂しさを覚える。
「トリガー早く来なさいよ! 置いてかれるわよ!」
「はいはい、今行きますよ」
「また空見て。変わらないんだから………」
「あっちの空が楽しみだな」
「まったく」
フォートグレイス行きの輸送機に乗り込み、タラップが閉められた。
戦闘機とは違う重厚なプロペラ音と緩やかなGがシートベルト越しにかかった。
窓の外からは広大なオーシア大陸が見えた。
途中、一際目立つベルカの爆心地も目に映った。
俺のこれまでの人生の全て。
俺は初めて、オーシア大陸の空から離れた。
じゃあな、オーシア大陸。
縁があればまた会おう。
どうもブレイブのトリガーこと。ブレガーです。
やっと、やっとプロローグというか過去編が終わりました。
長い!長すぎるよ!
とまあ、お待たせしました皆さん。
次からはついにエースコンバット7の本編に突入します。
これからのリヒト、トリガーの活躍を楽しみにまっていてください。