エースコンバット7 FLIGHT REZON   作:ブレイブ(オルコッ党所属)

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 トップガン・マーヴェリック。
 見てきました………。最高でした。

 興奮と不安と感動の連続。手に汗握るとはこのことですね。
 やった!と思ったとき思わずガッツポーズしてしまいました(笑)
 
 まだ見てない方、是非見に行くことをオススメします。
 俺はアレ以上の映画を知りません


STAGE16【UAV(無人機)

 

 

「FOX2!」

「FOX2」

 

 メイジ隊2機から放たれたミサイルが飛び立つ直前のC-17輸送機に突き刺さって折れ曲がった。

 

 滑走路をタキシングする輸送機は戦闘機にとってこれ以上のないぐらい良い的だった。

 それほどまでに守りたい物が入っていたのだろうか。

 

「次行くぞトリガー」

「了解」

 

 だが悲しいけどこれは戦争。

 容赦してたら死ぬ。

 

 もう迷ってる時間は一秒もない。

 

 基地の上を旋回。タキシング中の2機目のコクピットめがけて撃たれた機銃がコクピット内で踊り狂い、中のパイロットを粉微塵にした。

 

 滑走路を外れた輸送機はそのままレーダー塔に衝突して止まった。

 

 あと1機。

 後方から接近し、ミサイルを見舞った。

 ミサイルは輸送機のエンジンに吸い込まれるように命中し………

 

 青白く爆ぜ上がった。

 

「んんっ!?」

 

 直後目の前の景色が真っ白に染まり、強烈な振動が機体に叩きつけられた。

 動揺しつつも急いで操縦桿を引き上げて上昇し、その小さな太陽からなんとか逃れた。

 

「なんだ!? 特大のフラッシュバンでも破裂したのか!」

「こちらゴーレム2。こちらでも視認した」

「全輸送機を始末した。だが連中何を運びこんでたんだ!?」

「各機戦闘に集中しろ。残りの敵設備を叩くんだ」

「ウィ、ウィルコ」

 

 浮き足だった部隊をノッカーが静めてくれた。

 

 機体ダメージチェック。

 10%ぐらいか。余波で助かったが、もし近距離で爆発してたらと思うとゾッとする。

 

「敵基地損耗率30%。いいぞ! この基地は叩く価値がある! 引き続き攻撃を続行せよ」

 

 そのあともフォートグレイス飛行隊は基地の制圧を続けた。

 航空戦力は全て落とされ、残るは有り合わせの対空機銃のみ。

 

 俺とクラウンは残ったGPBを全て投下してそれを一掃。

 ブラウニーたちが敵のMiGを落として加勢に来てからはもうあっという間だった。

 

 残ったのは燃える火と煙にまみれたスクラップだけとなり、壊滅状態なのが目に見えた。

 

「敵、降伏しませんね」

「隠し球があるか、或いは強力な援軍か、だな」

「意地でも降伏しない可能性もある」

「どうします隊長」

「敵施設を潰した以上、長居する必要もない。周囲警戒したのち、撤退する」

 

 基地上空をフライパスし、残った抵抗戦力がないかを確認する

 ふー、今回も生き延びれたかな。

 

 しかしあの青白い光はいったいなんだったのだろうか。

 

「うん? こちらメイジ2」

「どうしたトリガー。敵か」

「敵、でカウントして良いのでしょうか。あんなとこにトラックが………」

 

 綺麗に五つ並んでて、あんなのあったっけ? 

 

 と思った次の瞬間だった。

 

『射出準備完了。ロックボルト解除、いつでもどうぞ!』

『よし! 15メートル離れろ………UAV射出用意、射出!』

 

 トラックのコンテナの蓋が開き、中から白い何かが………

 

「うっ!? 基地直下に敵機! 全機散開! ブレイクブレイク!!」

「なにっ!」

「何処だ!?」

『射出!!』

 

 ボシュン! とパチンコから発射されたようにコンテナから飛び出してきたのは。ペーパークラフトのような簡素な小型飛行機だった。

 

「何が起きた!? 状況報告!」

「不明機が複数出現! 近いぞ!」

「離陸いや何かから射出された模様!」

「交戦せよ! 敵機である可能性が高い!」

「タリホー! こちらゴーレム4。前方に機影が5、ってなんだぁ!?」

 

 フットパットが面食らったのも無理もない、実際俺も面食らった。

 

 5機編隊で出てきた小型機が一瞬その場で円を描いたかと思うと花状に分散、散開して俺たちの後ろを通りすぎたのだ。

 

「なんだったの今の。戦闘機の機動じゃない」

「あの戦闘機の機影………それにこの動き。こいつら無人機じゃないのか!?」

「目が良いなクラウン。間違いない、UAVだ。だがやることは変わらん。多少賢いデコイのようなものだと思え。全機撃ち落とすぞ!」

 

 多少賢いデコイと来たか。

 流石歴戦のエースは言うことが違う。

 

「うっ! なんだ今の旋回角度」

「早い!」

「うわっ、生意気にフレア出してきた!」

 

 これが本当に多少賢いデコイに見えるとは。

 

「あーくそ! 今のミサイル避けんのかよ!」

 

 もう普通に動きがヤバい。

 人が乗ってないからって好き勝手動きやがって。

 これが世界中に一斉に放たれたのか………

 

「HQ、こちらゴーレム1。敵の戦闘機にUAVを確認。繰り返す、敵は無人機だ。本部の応答を問う」

 

 そういや無人機が出たら知らせろって言ってたよな。

 こんな時でも冷静に連絡できる胆力は中々のものですよ編隊長。

 

 だが本部から返ってきたのはえらく質素な回答だった。

 

「ゴーレム1、その話はもういい。敵機を撃墜し帰還せよ」

「もういいだと! どういうことだ?」

「繰り返す。敵機を撃墜して帰還せよ、以上だ」

「フッ、戦局は刻一刻と変わってるということか」

「ああ俺たちの知らない所でな。全機、本部のお達しだ、さっさと帰って飯を食うぞ!」

「了解!」

 

 内心ご立腹そうなノッカーの怒声に全員の身体が引き締まる。

 

 ………よしよし。大分わかったぞ………ここっ! 

 

「FOX2!」

 

 敵の真後ろど真ん中。

 撃たれたミサイルは真っ直ぐ飛び続けるMQ-99のケツを捕らえて真っ黒焦げにした。

 

「次!」

 

 真横を横切ったMQ-99にハイGターン。そのまま次弾のミサイルを突き立てて2機目撃墜! 

 

「敵UAVを撃墜! やったなトリガー!」

「ゴーレム隊、勢いが足りないぞ! メイジ2に手柄を全部持ってかれるぞ!」

「メイジ2が敵機撃墜! ちょっと待って、いったい何機目なのトリガー!?」

「あと2機。このまま全部落としちまおう!」

 

 丁度目の前で減速して横切ったMQ-99の後ろからガンアタック。

 小さい機体には当たりづらいが、一度当たればもう穴あきチーズの完成だ! 

 

「敵の動きはトリッキーだが、ただそれだけだ。いつも通りしつこく追い、引き金を引け!」

「って隊長は言ってるけど実際どうなんだよトリガー!」

「しつこく追って真後ろから撃つ! そしたら当たる!」

「なんでトリガーは隊長の俺じゃなくて編隊長に似てきてるんだろうな」

「だがそういうことでしょう。実際にトリガーはそうやってます」

「なら地の果てまで追い回す!」

「よっしゃ!」

 

 俺が立て続けに3機落としたことでみんなの導火線に火が付いた。

 F-16Cよりも機動性があるF/A-18Fをぶんまわして残り2機を追い立てていく。

 

 しかし相手も流石は無人機、これだけ追い立ててるのに飛び方に乱れなし。

 1機は変態機動を連発し、もう1機は雲の中に逃げて撹乱してきた。

 

「しまった、機体に着氷が」

「シーカーが追えない」

「だーくそっ!」

「ゴーレム2、一旦雲から出ろ、氷が溶ける。ゴーレム3、4、雲で視界を奪われるのは無人機も同じだ、シーカーがはまった瞬間を見逃すな」

「「「了解!」」」

「これから敵を撃墜した奴は、全員飯を奢ってやる」

「行きたい店があります」

「その調子だ」

「ハッハッハ」

 

 三人の中でブラウニーのやる気が一番上がったように見えた。

 行きたい店ってノッカーと行きたい店じゃあないのかい委員長。

 

「トリガー、チェックシックス!」

「了解!」

 

 高速で接近する敵に対して上体起こし。

 機体全体で風を受けたコブラもどき。UAVはそのまま俺の前に踊り出てその無防備な背後を晒し、その背中にミサイルを撃ち込んだ。

 

 背後から来るミサイルにMQ-99は旋回回避しようとしたが旋回範囲が足りずあえなく炎に包まれて基地のハンガーの前に落ちた。

 

「トリガー4機目! マジでオールキルしちまうんじゃねえか?」

「UAV残り1機! 全機、生き残れよ」

 

 あと1機は、あそこか! 

 ボグガードとフットパッドが追いかけ回し、ブラウニーが参戦していた。

 

「最後ぐらいゴーレムで落とさねえと示しがつかないな」

「くっ、敵はGを感じないってか!」

「FOX2! ………当たらない!」

 

 最後の無人機はこれまたちょこまかと動いている。

 敵も反撃の手を決めかねてるのか。だが6対1の状況でもしっかり逃げまくっている。

 

「囲え! 数の理を活かすんだ!」

「速いけどトップスピードなら!」

 

 スロットルMAX。加速には加速をと、どんどん離れるUAVの背中に接近する。

 レーダー確認。右斜め近くにブラウニー。

 

「このっ!」

「ブラウニー、そのまま直進!」

「え? わ、わかった」

 

 射程内で機銃発射、だが当てるのではなく僅か右に反らして撃った。

 回避するために逆方向に舵を切る無人機。俺の射程圏外に退避した。

 だがいいのか。そこはブラウニーの直進コースだぞ! 

 

「今だ!」

「FOX2!」 

 

 シーカーが捕らえた瞬間にブラウニーのホーネットからミサイル発射。

 蜂の前に踊り出た哀れな無人機はその一刺しに貫かれてその身を散らしたのであった。

 

「ナイスキルブラウニー! 敵機の撃墜確認!」

「ありがとうトリガー」

「ナイスナイス!」

「メイジの、いやトリガーのオールキルは避けられたな」

「フッ。ピクチャークリア! 各隊、よくやった。ミッションコンプリート、RTB」

 

 よし終わり! 

 

 敵レーダー車両を潰し、基地も壊滅。

 おまけに虎の子のUAVも全滅。

 今日は大戦果だ! 

 

「死んだ奴はいないな。作戦は大成功だ、基地に帰るぞ。ブラウニー、最後の最後で根性を見せたな。よくやった」

「はい………」

「どうしたブラウニー。編隊長が褒めてくれたんだからもっと喜べばいいのに」

「ごめんなさい。ちょっと地面を見ちゃって」

 

 地面? 

 機体を少し傾けて下を見ると。焼けた森、そして攻撃に巻き込まれた民家があった。

 そのうちの一つは、戦闘機が突っ込んでいた。

 

「弾を撃てば誰かが死ぬ。軍人、民間人区別なくな」

「俺たちが嘆いても、結果はもう変わらない。戦う以上犠牲が出る。自分じゃどうしようもならないことをつべこべ言っちまったら。この先戦えないぜ、ゴーレム2」

「そっから先のことは、政治屋に任せよう。俺たちには、戦うことしか出来ないからな」

「了解。ありがとうございます………」

 

 厳しくも気遣いを感じられた隊長二人の言葉を受け止めて礼を言うブラウニー。

 

 民間人を巻き込まないことを心がけて戦った。

 結果的に上手く行っただろうが、民間人の死者がいないことは………ほぼないだろう。

 

 願わくば、死者が少ないことを祈るばかり。

 それ以外に今の俺たちに出来ることは残されていなかった。

 

 

 

 ーーー◇ーーー

 

 

 

「馬鹿な、MQ-99が残らず全滅。しかも敵にまったく損害を与えなかっただと………」

 

 ユージア大陸、そしてオーシアの各地に置いたMQ-99によるピンポイント爆撃は予想を大幅に上回る戦果を上げた。

 

 人を有さない戦闘機。

 人には出来ないマニューバ。

 オーシアのパイロットを次々と落としていった革新的な兵器。

 

 それが僅か数分の後に全滅してしまった。

 

「し、司令官」

「本部に連絡。我々はこの基地を放棄する、と」

「了解しました!」

 

 基地は壊滅。失った人員も多い。

 完敗だ。IUNにこれほどのパイロットがまだいるとは。

 

「司令官、大丈夫ですか?」

「………ああ」

 

 正直言って今すぐにでも座り込みたいぐらいの倦怠感に襲われている。

 長年の年の功と司令官としての立場とプライドのみが、今の彼を支えている。

 

「大丈夫ですよ司令官。我々は生きています。それに、我々にはUAVの防衛網があります。アーセナルバードもあるんです。負けるわけがありません」

「軍曹、負けるわけがないか?」

「はい」

 

 負けるわけがない? 絶対に勝てる? 

 

 そんなのはまやかしだ。

 いくら全てを凌駕する超兵器があったとしても。負ける戦争は負けるのだ。

 

 それはエルジアの。無敵と言われたストーンヘンジ防衛網を破壊されたことが何よりの証拠だからだ。

 

(あの狼のエンブレムを持ったF-16Cは危険だ。そんな予感がする。一応本部に伝えておかなければ)

 

 またあの厄災に。第2のリボンの死神にならないように。

 

「司令官!」

「なんだ」

「ジェスターが。ジョー・バーカー中尉ですか」

「死んだのだろう。わかっている」

「いえ、その。生きているそうです。通信が来ています」

「はっ? なんだって?」

 

 あの馬鹿が生きている? 

 意気揚々と離陸しようとしてミサイルを叩き込まれたはずだが。

 

 部下に渡された電話を借りて受話器を耳に当てると。あの陽気なアホの声が聞こえてきた。

 

「あーもしもし司令官。ネームドパイロットのジェスター、ここに健在で御座います!」

「………貴様、なんで生きている?」

「酷い言い草ですね!? いやね、敵にミサイル撃ち込まれて後ろ見たらキャノピーの外が炎で一杯になって、『あ、これは死んだな』って思ったですよ。そしたら機首がポッキリ折れてそのままゴロゴロ転がってなんとか電話出来てるって始末です」

「………………」

 

 この男は何を言ってるんだ? 

 機首ごと吹き飛んで生きてた? 

 何処にそんなコメディリリーフのような助かり方があるのか。

 

「司令官? もしもし司令官?」

「ジェスター」

「はい?」

「お前はパイロット引退してコメディアンになれ」

「え、それってどういう………」

 

 カシャン。

 

 受話器を置いた乾いた音が管制室の視線を集めた。

 

「………軍曹」

「はい」

「馬鹿は死んでも直らんのだな」

「ですね」

 

 

 

 ーーー◇ーーー

 

 

 

 帰ってきたあとのデブリーフィングは思いの外簡素だった。

 

 スコフィールド方面のエルジア軍は撤退し、加速度的に広がった支配域を止められたこと。航空優勢が取れたこと。

 

 これから先は他部隊と協力して軌道エレベーターを奪還するための本格的な作戦が始まるらしい。

 

 で、ここから少しの間本格的な作戦飛行はないらしい。

 なんでも情報が不足しまくってるし。物資の目処もつけないと行けないとか。

 

 そして次は軌道エレベーターの喉元に迫る作戦になる可能性がある。

 充分休養を取って英気を養えだと。

 

 といっても哨戒任務やスクランブルはあるだろうから、休めるかと言われたらグレーゾーンだとか。

 

「ようブラウニー」

「あっ、トリガー………」

「どうした、浮かない顔してさ。初出撃の俺みたいだぜ」

「そこまで分かるんだったら。なんで落ち込んでるかわかるんじゃない?」

「さあてねぇ」

 

 自販機から缶コーヒーを投げ渡し、自分のカフェオレをぐいっと飲み込んだ。

 

「ネームドも落とした、ラッキーパンチではあったけど。あと、UAVだって落としたじゃねえか」

「5分の4落とした人に言われてもね?」

「え、もしかしてそれで落ち込んでるなんてことはないよな?」

「それもあるわね」

 

 うそん。

 いや確かにあの時は凄い上手く行ってバッシバシ無人機を落としたけれど。

 

「あなた。もう割り切ってるの?」

「人を殺すこと?」

「ええ、初出撃の時。結構参ってたじゃない?」

「正直振り替えると胸に来ることはあるけど。戦場では考えないようになったかな」

 

 相手を殺したらその家族が悲しむように。俺が死んだら悲しむ人がいる。

 ブラウニーやクラウンが死ぬのは嫌だ。俺がためらったせいで死んでしまうのは自分が死ぬより嫌だ。

 

「だからさ。撃墜した敵機が民家に落ちたって。それは………うん、仕方のないことだって思うようにする、って無理矢理納得させてる」

「なによ、分かってるんじゃない」

「ごめん。切り出しが見えなくてさ」

「………私、見ちゃったのよ。私が撃墜したMiGが家屋を潰す瞬間を。もしあの中に人が居たら? そう考えてたら、モヤモヤしちゃって」

 

 帰る途中に見たMiGが刺さった家。

 通信でも聞いてたが、撃墜した敵機が住宅地に落ちる瞬間を見てしまったら。俺でも少しは参ってしまうかもしれない

 

「ブラウニーは。民間人を傷つけようとして撃墜した訳じゃないんだろ?」

「でも、もっと上手くやれたんじゃないかって思った」

「俺たちは新米の新米だぞ? そんな余裕なんてなかった筈だ」

「余裕はなくても、戦い方を変えることは出来る。現にトリガーは敵の注意を基地に向けさせて、民間人の被害を最小限にしようとした。私には、欠片も思い付かなかったことを、トリガーはやってのけた」

 

 それは。俺だって民間施設の上で戦いたくなかったから考えた。

 ブラウニーが敵機が民家に落ちたって言って、そして基地が目に入って。

 

「訓練学校の時。私はトリガーの次だった。他の技能や筆記で勝っても。トリガーに追い付けない自分が嫌だった」

「ブラウニー」

「戦場に出て、エースの片鱗を見せつけられて。自分が届かない場所に飛んでいるあなたが羨ましかった。今日の戦闘だって。私なんて居なくても別に………」

「ジェシカ」

 

 TACネームではなく彼女本来の名前を言って彼女の言葉を遮った。

 何時でも凛としている彼女が堰を切ったように吐き出される言葉。

 平静を装っていたのだろう。憧れの叔父に、尊敬すべき隊長の前で。

 

 恥じることなんてない。これが普通だ。

 

 敵の攻撃で失う命よりも、自分が奪った無垢の命に傷つく。

 優しすぎる彼女にとって、戦争の現実はあまりにも残酷だ。

 

 それでも俺のことを励ましてくれた。

 自分も押し潰されそうな重圧に晒されながら、だ。

 

「ジェシカ……ブラウニーは俺のライバルだ。今までもこれからも」

「でも、もう私じゃあなたに到底かないっこないわ」

「だからと言ってブラウニーが足でまといなんてことは決してない」

 

 たとえ俺がエースだとしても、一緒に戦う仲間がいるからこそ安心して戦える。

 円卓の鬼神、メビウス、ラーズグリーズだって仲間と一緒に勝利を掴み、英雄として名を馳せた。

 

 一人で孤独に戦ってたわけではない。

 そこには必ず、一緒に飛ぶ奴らがいた。

 

「俺はフォートグレイス飛行隊のメンバーで飛び続けていたい。勿論そこにブラウニーがいないと嫌だよ。ブラウニーだって、ノッカーに良いところ見せたいんだろ?」

「それはそうだけど」

「ノッカーに言えないことは俺かボグガードやフットパッドに愚痴れば良いじゃん。一人で抱え込んだら潰れるよ、戦争は。じやないと塞ぎ混みすぎて仕舞いには核弾頭撃って国境線消すような奴になっちまうぞブラウニー」

「それ何処の片羽の妖精?」

 

 いったい何フォルクなんでしょうね? 

 

「ありがとう。話したら楽になったわ」

「良かったな、テロリストルート回避出来たぞ」

「仮にもあなたの憧れの人よね?」

「憧れだけど。大馬鹿野郎でもある」

「あなたに言われたらお仕舞いね」

 

 なんて失礼なこと言うんでしょうこの子は。

 

 いくら自棄起こしてもテロリストルートなんて行かないからな。

 反面教師三人は伊達ではないぞ。

 

「二人ともここに居たのか」

「え、なに。逢い引きか二人とも」

「おう。傷心の彼女を慰めていたところ」

「編隊長に振られたかブラウニー?」

「FOX2!」

「ぐほぉ!」

 

 ブラウニーのミサイルパンチがフットパッドの脇腹に直撃。これは撃墜判定。

 

 うずくまる相棒を無視してボグガードが話しかけてきた。

 

「トリガー。無人機相手の立ち回りを教えて欲しいんだが」

「立ち回りかぁ。んー、少しでも相手が傾いている状態で撃ったら避けられる気がする、かな? 逆に真後ろだと回避する素振りもなく落ちる。あと普通の戦闘機と比べて耐久力がないと思うから、そこまで火力はいらないかも」

「ふむ」

「言うは易しって感じがする」

「流石4機も落とした奴は簡単に言ってくれるぜ………」

「いや、別に簡単に言ってないよ。実際無人機の動き異次元だったし」

「「「説得力ない」」」

「んな理不尽な………」

 

 

 

 ーーー◇ーーー

 

 

 

 それから約二週間後。

 大きな作戦もなく。哨戒任務やスクランブルの対処に明け暮れた俺たちに久方ぶりの作戦指令が下され。ブリーフィングルームに集められた。

 

 やっとこさ情報が集まり、作戦方針がたったらしい。

 

「宣戦布告直後の奇襲攻撃により、オーシアならびに停戦監視各国軍の艦船。特に空母の大半が損害をこうむった」

 

 今まともに出せる空母はほとんどはなく。

 ぶっ壊された奴も急ピッチで直してる最中。いつになることやら。

 

「幸い、洋上を航行中で難を逃れたケストレルⅡはエルジア王国首都ファーバンティへの再攻撃に向け準備に入った」

「また誤爆しねえといいがな」

「トリガーっ………」

「さらにもう一隻、空母ヴァルチャーがガンター湾からの避退に成功した。ただし飛行隊を損失し、搭載機欠となっている。本日、国際停戦監視軍は軌道エレベーター奪還任務を再興するフォートグレイス島基地飛行隊は、空母ヴァルチャーと合流、共同してこの任務に当たる」

「F-16Cで空母発艦させるつもりですか司令官」

「無論、そんな馬鹿げたことはさせん。前回、君たちの活躍により。スコフィールド高原一帯の進行を阻止したことで、我々はシールズブリッジの湾岸基地を奪還出来た」

 

 またあそこによるのか。

 

「ゴーレム、メイジ両部隊はここを中継地点とし、チョピンブルグ地点の航空優勢を確保してもらう。メイジ隊には空中給油機を経由しての長距離飛行となる」

 

 示された地点は。

 なんと、軌道エレベーターとそこまで離れていない。

 電撃作戦。ほぼ敵のボディラインを狙い打ちと来た。

 無論そこは間違いなく激戦区だった。

 

「チョピンブルグ付近は現在敵の航空優勢にあり、多数の敵航空機による抵抗が予想される。また、当作戦ではアレンフォート基地のガーゴイル隊、リグリー基地のスケルトン隊との共同作戦となる」

「本部も本気だな」

「というと」

「ガーゴイル隊はIUN直属の古強者の部隊。スケルトン隊は若手ばかりだが、本部の期待の星と呼ばれてる部隊さ」

 

 つまり、ベテラン部隊と若手のホープと一緒に飛ぶということか。

 これは心強い反面、上手く連携出来るだろうか。

 

「さらに……よく聞け。開戦当初より敵は多数の無人機を戦闘に繰り出して来ている。ここでまた新しい種類の無人機が見つかった。無人航空母機、通称『アーセナルバード』に搭載されている無人機。MQ-101だ」

 

 画像に写されたMQ-101。

 先日戦ったMQ-99に比べてスマートかつ、より戦闘機っぽいフォルム、いやステルス戦闘機に近かった。

 

「アーセナルバードはオーシア軍が中心となり開発し、軌道エレベーター支援のために配備した巨大航空機だが。今回の報告は、それまでもがエルジア軍によって運用されている可能性を示唆している」

「確定ではないのですか?」

「現状、アーセナルバードと交戦した記録はない。この画像も、先遣隊が必死の偵察の末に手に入れたものだ」

「成る程。本部がやけに無人機の詳細を知りたがった癖に、あっさり手を引いた訳がわかったぜ」

 

 つまり。アーセナルバードがエルジアの手に落ちたことは。99.9%確実ということ。

 

 そして、チョピンブルグはアーセナルバードの防空範囲内。

 

 最悪、あの巨鳥を相手にしなければならない。

 戦闘機のみで、それは可能なのだろうか? 

 

「現実ならば非常に大きな障壁となりかねない。だが我々は一刻も早い軌道エレベーター奪還を目指さなければならない。危険は承知している、だからこそ私は敢えて言わせてもらう………幸運が君たちの上にあることを」

 

 

 

 ーーー◇ーーー

 

 

 

 フォートグレイス基地を飛び立ち、一同シールズブリッジに降り立った。

 ここからは空母組と給油組に別れることとなる。

 

「よお、あんたがフォートグレイスのメイジ2か?」

「そうだが、あんたは?」

「スケルトン隊隊長のマングースだ」

「メイジ隊2番機トリガーです、宜しく」

 

 握手を交わした相手は俺と歳が変わらないように見える。

 後ろにいる隊員も全員若い。

 

「聞いてます。スケルトン隊は若手のホープだと。宛にしてますよ」

「それはこっちの台詞だな、敵爆撃機部隊を一掃し、無人機を一気に4機落としたエース様。だが今回のエースは俺たちスケルトンが頂く」

「こっちも負けませんよ。お互いベストを尽くしましょう」

 

 もう一度固く握手を交わし、スケルトン隊と別れた。彼らの部隊も俺と同じファルコンだという。

 

「もうスケルトン隊にちょっかいかけられたの?」

「そんなんじゃないよブラウニー。表面上は好意的だったよ」

「裏があるように見えた?」

「んー。なんかライバル心出された感じ。どうも俺の戦果は他部隊に伝わってるらしい」

「私もさっきガーゴイル隊の人に声をかけられたわ。みんな希望が欲しいのね、エルジアに勝てるかもしれないという希望が」

「ヒヨコ部隊にそれを持って欲しくないな」

「仕方ないわ、私たちは戦果を出してしまったもの」

 

 ままならない。

 だが、俺たちはいつも通り飛ぶだけ。

 エースと呼ばれようが呼ばれまいが関係ない。

 

 気持ちを切り替えるために俺は頬を二回叩いた。

 

「そういえばトリガー。あなた来週誕生日だったわね」

「あぁ、25歳になるよ」

「なんか作ってあげるわ」

「なに作ってくれるの? ブラウニーとか?」

「正解よ」

「おっと、冗談のつもりだったのに」

 

 ジェシカのブラウニーというTACネームは本来お菓子じゃなくて妖精のほうだ。

 訓練校時代にそれでからからかわれたことがあって愚痴ったことがあって。ヤケになって一度だけ大量に作って振る舞われたことがある。

 

「なんか作ってるうちに楽しくなって。結構頻繁に作ってるのよ」

「初耳だな」

「だって言ったらまたからかわれるし」

「確かに。じゃあそれにしようかな」

「オッケー。楽しみにしててね」

「おう、じゃあまた空で」

「空中給油失敗するんじゃないわよ?」

「そこまで馬鹿じゃない」

「フフッ。じゃあね」

 

 空母に向かったブラウニーにしばらく手を振った。

 ジョークを言えるなんて。あいつもちゃんも持ち直したみたいで良かった。

 

 ブラウニーが作るブラウニーか。んん、なんかややこしい。

 

 でも前に食ったあれは美味しかった。

 あれから研鑽を重ねてるとすれば。

 

「うん、楽しみだ」

 

 俺の誕生日は母と家族の命日。

 だが今回の誕生日に向けて一つの楽しみが出来たことに。俺は胸を高鳴らせるのであった。

 

 

 

 

 

 

 未来は誰にもわからない。

 だからこそ、俺は考えもしなかったんだ。

 

 別れ際の彼女の笑顔が、もう二度と見れなくなることを。

 

 そして、俺の誕生日である6月6日に。

 俺にとっての、人生最大の転機が、訪れることを………

 

 

 

 

 

 

 

 






【FLIGHT REZON アサルトレコードNo.2】

ネームド:ジェスター
機種:MiG-29A ファルクラム
カラー:上面がイエロー、下面がブルー
派閥:急進派
パイロット:ジョー・バーカー

スコフィールド高原基地所属のネームドパイロット。
お調子者でいい加減なルーキーパイロットだが。人柄と顔は良く。飛行成績も良いため女性人気はある。
作中では意気揚々に出張ろうとしたが状況判断不足とド派手なカラーリングでブラウニーの手によりあっさり御陀仏!

になったかと思えば機首のみゴロゴロと転がって全身ムチ打ちだけで住んだスーパーラッキーボーイ
当初は戦争の悲惨さとしてポックリそのまま死ぬ筈だったが
「こいつ某不死身の炭酸みたいにちゃっかり生きてそう」という友人との会話でなんと生存をもぎ取ったという制作秘話がある。

不死身の炭酸男、作品外でも不死身性を付与するのか………
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