エースコンバット7 FLIGHT REZON   作:ブレイブ(オルコッ党所属)

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STAGE21【Lighthouse keeper(灯火が消える日)

 

 

「死にたくない奴は出てくるんじゃねえ!!」

「ファイア」

 

 ヘリポーンもかくやと言わんばかりの低速での機銃掃射を前方に噛ましていく。

 二人の要人の道を切り開かんとする暴力の嵐はたちまち人だったものを肉塊にかえ、そうでないものはたまらず逃げ出した。

 

 1人になっても勇敢に行く手を阻もうとしたエルジアの兵士はジョンソン大佐の正確な射撃によりこの世を去ることとなった。

 

「こちらゴーレム3。見たところ片付いたみたいだが。他の方でも確認を頼む」

「こちらガーゴイル4、敵は全て血塗れになってる、R-18Gは確実だ」

「ヘリへの道は開けた、行ってくれ。だがヘリの中に兵がいるかもしれない。くれぐれも慎重に頼む」

「こちらジョンソン、了解した。火力支援感謝」

「ガーゴイル1から大佐。遠方からそちらに向かう敵兵団が見えた、牽制するが急いでくれ」

 

 敵のヘリを奪ってそのまま逃走。

 ハリウッド映画顔負けの逃走劇をいまハーリング元大統領とジョンソン大佐が繰り広げている。

 

 決して冗談のつもりで言った訳ではないが、まさか本当に実行するとは。しかもそれにいの一番に反応したのがあのハーリング元大統領。

 やっぱあの人は器が違う。俺たちとは別次元の存在だと改めてわからされた。

 

「ヘリ内、クリア。キャノピーもがらんどうだ。しかも幸運だ、エンジンがかかっている」

「大佐の元空軍の腕前、宛にしてますよ。全体に告ぐ、ハーリング氏の護衛ヘリのコールサインは『マザーグース・ワン』。いまデータリンクで情報を送った」

「マザーグース・ワン? やけに可愛い名前をつけるじゃないか。よし、マザーグース・ワン、離陸する!」

 

 マザーグース・ワン。

 確か秘匿任務でハーリング氏を運んでいた機のコールサインだ(スカイキーパー談)。

 最後はオーシア軍に扮していたベルカ残党の手で幽閉されることとなっだが。

 

「マザーグース・ワンか。また懐かしいものが出てくれたものだ。なかなか博識ではないか、スカイキーパーくん」

「光栄です、ミスター・ハーリング。メイジ隊、マザーグース・ワンの直縁につけ。ゴーレム隊とガーゴイル隊は先行して警戒せよ」

「了解! メイジ2、マザーグース・ワンの護衛を開始する!」

 

 飛び立ったMV-22 オスプレイを守るように俺とクラウンのF-16Cが両翼に展開された。

 あの中にハーリング元大統領がいる。出来るなら自分の戦闘機に乗せてやりたいという気持ちを抑え、周辺警戒を厳とした。

 

「スカイキーパー! レーダーに不明機! 方位220、多いぞ!」

「こちらでも捉えた! MQ-101、アーセナルバードの先遣隊だ!」

「親鳥も近づいてるということか、当然か………」

「メイジ隊は引き続きマザーグース・ワンを護衛せよ! 近づくUAVは全て叩き落とせ! ゴーレム隊はUAVをインターセプトせよ!」

「ゴーレム1、ウィルコ。やつらことは前の戦い方で学んだ。ゴーレム2、4、エレメントを組め。ゴーレム3は俺とだ。ゴーレム2、新米をやらせるな、常にエレメントを維持しろ」

「ウィルコ。ゴーレム4、しっかりついてこい」

 

 もうひよっこを死なせはしない。今回の作戦でノッカーはそれを固く胸に置いていた。

 もう二度と、あの悲劇を起こさせない為に。

 

「俺たちも行くぞトリガー!」

「了解、FOX3!」

 

 4AAM発射! 他の機体も出せるだけのミサイルを一斉射。

 何本もの白い筋が小鳥の群れに突っ込み爆裂の花を咲かせる。

 数瞬の空白の後、雲から無数のMQ-101が飛び出してきた。

 

「この数をさばくのか!?」

「弱音を吐くな! 臆せず突っ込め!!」

「メイジ隊も先行する! 撃って撃って撃ちまくれ!」

 

 出し惜しみはしない! 

 持てるミサイル、機銃、操縦技術。今までの全てを出し尽くさんと各機奮戦する。

 やってみろエースパイロット! 言われてるなら、そうあれと飛んで見せろ! 

 

「メイジ2、UAV撃墜。流石だな!」

「またトリガーか、奴だけに仕事をさせるなよ!」

「1機撃墜! もう一回!」

「ノリノリだなトリガー! お前を見ていたら、UAVを落とすコツがわかってきたぜ。そらっ!」

 

 ノッカーがMQ-101とヘッドオンですれ違う瞬間に急速反転したのち4AAM発射。

 回避軌道を取らないMQ-101はそのまま爆炎と共に粉々となった。

 

『了解、離陸した輸送機にUAVを近づけます』

『司令、ファーバンティからホットラインです。UAVには飽くまで警告射撃をせよ、とのことです』

『ラバルトか?』

『はい、旧体制派の老人将校です。彼らは無人機の運用を理解してません』

『適当にあしらっておけ、どうせ何も出来ん。アーセナルバードを急がせろ!』

『了解。アーセナルバード1機が戦闘空域に移動中、戦略AIはジャスティスではなくリバティを選択、既に進路変更済み。ジャスティスからも30機、MQ-101を向かわせています。まもなく到達するかと』

 

 みんな順調に無人機を落としていっている。力負けもしていない。だが圧倒的物量の前に、護衛任務というものは順当とは行かなかった。

 

 そして戦闘機より遥かに性能が劣るオスプレイにとって。このMQ-101のモビングは地獄絵図といっても差し支えなかった。

 

「くそっ、2機抜けた! 大佐ぁ!」

「マザーグース・ワン、UAVが張り付いた! 注意しろ!」

「注意しろったって! これは戦闘機じゃないんだぞ! うおおっ!」

 

 ヘリとは思えないほどの急旋回しフレアをばらまく。

 元空軍パイロットの腕は伊達ではなかった。慣れないオスプレイをまるで戦闘機のようにヒラリと敵の攻撃をさばくが。限界は思いの外近かった。

 

「マザーグース・ワン! 後方からミサイル! かわせ!」

「くそっ! 直撃コース!」

「させるかぁ!」

 

 オスプレイとMQ-101の間に向けてパワーダイブ。

 間に差し掛かる瞬間、急制動で無人機に背中を見せ、そのままフレアをばらまいた。

 

 目眩ましを受けた小型ミサイルは俺の真横で爆散。光と振動を感じつつ、その場でループしてオーバーシュート。

 1機をミサイルで撃ち落とし、もう1機はしつこく追い回して機銃で穴だらけにした。

 

「助かったぞ、ありがとうメイジ隊!」

「ジョンソン大佐、進み続けて下さい! 血路は俺たちが開きます!」

「頼もしい若手がいるようだな。失礼だが、君の名前を教えてくれるか?」

「えっ!? は、はい! メイジ隊メイジ2、TACネーム、トリガー。リヒト・パーマー少尉であります!」

 

 行きなりハーリング元大統領に名前を訪ねられて思わず声が裏返ってしまった。

 スカイキーパー程ではないが、俺もハーリング大統領のファンなのだ。

 

「パーマーくんか。君の勇ましさを見ていると、あの時の彼ら。サンド島の若いパイロットたちを思い出す。くれぐれも無茶はしないでくれよ。君のようなパイロットが、これからのオーシアに必要だ」

「ありがとうございます! ですが、無茶はしなければなりません。あなたを救出することが自分の仕事。だからハーリングさん、オーシア空軍のパイロットの誇りにかけて。あなたを絶対に落とさせはしません!」

 

 前方、さらに3機接近。

 目の前にまだまだ敵がいる。これだけ落としても視界を多い尽くすほどのUAVの群れ。

 嫌になってる暇などない。武器弾薬が切れるまで撃ちまくる! 

 

「各機、敵の増援、方位060からMQ-101が多数! まさか別のアーセナルバードからの増援だとでもいうのか!?」

「まだ来るのか!?」

「チィっ! エルジアはどんだけハーリング大統領を出したくねえんだよ!」

「ガーゴイル隊、増援のUAVをインターセプトせよ!」

「了解、フォートグレイス飛行隊、ここは任せるぞ」

 

 ガーゴイルのF-14Dが反転。

 長距離からLAAMを発射し、敵の出鼻を挫いていく

 

「ガーゴイル1、アーセナルバードも近づいている。合図はまだなのか」

「ガーゴイル隊、俺からの指示を待て』

「しかし灯台が。いや港が破壊されれば、彼らは帰還出来なくなります。本当にやるのですか?」

「ガーゴイル。あれは我が国の船ではない」

 

 なんだ? 今のはガーゴイルと、司令部か? 

 灯台? 港? ガーゴイルはいったい何を話してるんだ? 

 

「トリガー! チェックシックス!」

「くっ!」

 

 思考に入った俺を逃さず小鳥どもがその嘴を向けてくる。

 ガーゴイル隊のことは気になるが。今は大統領が脱出することが先決だ! 

 エアブレーキオン、急旋回! 

 そのまま一周し、俺からオスプレイに狙いを変えたUAVを機銃で穴だらけにした。

 

「うぅぅ! ゴーレム4からスカイキーパー! こっちの援軍とか無理なのかよ! このままじゃ数に圧倒される!」

「駄目だ、この部隊で何とかするしかない。踏ん張るんだ!」

「弱音を吐くな相棒! ここできっちり仕事を終わらせて、トリガーの誕生日パーティーするんだろ!」

「ああ、そうだなボグガード! うおおおお! ネバギバァっ!!」

 

 フットパッドのホーネットがコブラ機動で無人機オーバーシュート。その背中に残ったQAAM二発をそれぞれぶちこんだ。

 

「こちらマザーグース・ワン。見晴らしが良いとは言えんが、大分すっきりしたな。これより空域を離脱する! 祈っていてくれ………」

「了解!」

 

 もうさっきから祈りっぱなしだ。

 ここまで被弾ゼロは正に奇跡。

 このまま行ってくれ!! 

 

「ガーゴイル隊、無線の周波数を切り替えろ」

『了解、切り替え完了』

 

 ガーゴイル隊のF-14D 4機がトライアングルで軌道エレベーターに向けて進路を取った。

 

『よし、ガーゴイルリーダー今だ、バベル作戦開始』

『ガーゴイル隊全機へ、バベル・バベル・バベル』

『ガーゴイル2、バベル了解』

『バベル了解』

『ガーゴイル4、FOX2』

「ガーゴイル隊はなにを、えっ!?」

 

 なんとガーゴイル隊のF-14Dが一斉にミサイルを打ち出した。軌道エレベーターに向かって。

 

 ガーゴイル1がミサイル撃ち出したのを皮切りに残り3機もミサイル発射。

 合計8発のミサイルが軌道エレベーターに向けて飛翔する。

 

 そこで信じられない光景が現れた。

 MQ-101が我が身を盾に軌道エレベーターを守り始めたのだ。

 1機、また1機と軌道エレベーターの盾となって落ちる無人機。

 だが一発のミサイルがその肉壁を突破、軌道エレベーターの壁に突き刺さって、爆ぜた! 

 

「スカイキーパー! 今のはなんだ!?」

「ガーゴイル隊が自分の仕事をしたんだ」

「だと思ったがクソ! なぜ全部隊に通達しない!」

「相変わらずIUN各方面軍は横の連携がとれていない。部隊員総入れ換えって聞いてから嫌な予感はしたがな」

「隊長、何故ガーゴイル隊が軌道エレベーターを!? 我々の任務は救出作戦ではなかったのですか!」

「………ガーゴイル隊には別任務があったのさ。軌道エレベーターを破壊するというミッションをな」

 

 なんだって!? 彼らはハーリング元大統領救出の為にこの作戦に参加したわけではないのか? 

 そもそも、なんで軌道エレベーターを破壊する必要があるんだ!? 

 

「軌道エレベーターを破壊すれば、アーセナルバードが弱体化するからだ」

「どういうことです?」

「アーセナルバードは軌道エレベーターからのマイクロ派で充電し、直接的な補給をしないで半永久的に飛行できる。だが軌道エレベーターを破損させてマイクロ波を止めれば。アーセナルバードを無力化出来る。それがIUN司令部。いやオーシア政府の考えた作戦なんだろうさ」

「そんな」

 

 確かに今回を逃せばオーシア軍が軌道エレベーターに近づくことは難しい。

 アーセナルバードを無力化出来れば戦争を有利に進められる。

 

 理屈はあってる。けど………

 

『ガーゴイル隊 報告せよ』

『HQ、命中したのは1発。他はUAVが撃ち落としました。軌道エレベーターの風防がわずかに破損したのみ』

『了解、引き続き制空戦闘を継続せよ』

『HQ、ハーリング元大統領の護衛は』

『フォートグレイス隊に任せろ。ガーゴイル隊は引き続きバベル作戦を継続せよ』

『了解』

 

 いや今は考えるな。結果的にガーゴイル隊が増援のUAVを抑えてるのは事実。

 残った俺たちでやるしかない。

 

 だがただでさえ綱渡りだった均衡は崩れかけていた

 ガーゴイル隊にタゲ取りしていたUAVがマザーグース・ワンと俺たちに絞られたことで、マザーグース・ワンを狙うUAVが増えてしまっている。

 そして遂にオスプレイのフレアの残数がなくなった。

 

「くそっ! 捌ききれない!」

「スカイキーパー! ガーゴイル隊を呼び戻してくれ! 戦力が足りない!」

「マザーグース・ワンにミサイル! かわせ大佐!」

「駄目だ、よけられない!」

「まずいっ! マザーグース・ワン、被弾!!」

 

 恐れていたことが起きた。

 マザーグース・ワンの機首に被弾、なんとか機体を反らして直撃をさけたが。当たりどころが悪かった。

 

「マザーグース・ワンが被弾した! ジョンソン大佐、応答せよ!」

「ざざ、ザーー」

「メイジ隊、様子を確認しろ」

「………こちらメイジ1、 マザーグース・ワンを視認した。キャビン無事だ、でもコクピットがまずい状態だ………」

「っ! 酷い………」

 

 マザーグース・ワンに並走し、被弾箇所を見て俺は息を飲んだ。

 オスプレイのキャノピー、ガラスが粉々に千切れ飛び、僅かに残ったキャノピーが刺々しく逆立っている。

 コクピットの中を覗こうと試みるが。黒煙が上がっていて、そこにいる筈のジョンソン大佐の姿を確認できなかった

 あれでは、たとえ生きていたとしてももう操縦は………

 

「ジョンソン大佐、応答せよ! マザーグース・ワン!」

「………こち…マザーグー…・ワン………」

「ジョンソン大佐、無事か!?」

「………それよりも………救助隊を頼む……いまこの場所でいい………すまない、ハーリング氏は………残念だ………………………」

「ジョンソン大佐! 応答してください! ハーリング氏は無事ですか! ジョンソン大佐!!」

 

 残念? 残念ってどういうことだ? まさかハーリング大統領はもう………! 

 

 スカイキーパーが必死に呼び掛けるも、それ以降ジョンソン大佐からの応答はなかった。

 オスプレイは飛べてはいる。だが高度は段々と下がっている。このままでは………

 

「スカイキーパー、マザーグース・ワンの護衛を続けるべきか」

「当たり前だ! マザーグース・ワン応答せよ! ジョンソン大佐! ミスター・ハーリング! 誰でも良い! 誰か応答してくれ!!」

 

 スカイキーパーの悲痛な叫び、それを無視するようにMQ-101はマザーグース・ワンを確実に仕留めようと迫ってくる。

 もう何機落としたのかわからないのに、なんでこんなにいるんだ! 

 

 誰もが諦めかけたその時、マザーグース・ワンの高度が回復した。

 だがマザーグース・ワンは脱出方向とは反対、軌道エレベーターに機首を向けた。

 

「マザーグース・ワンが旋回している。どういうことだ、軌道エレベーターに向かっていく」

「高度が安定している、誰が操縦しているんだ?」

「大佐ではないだろう、乗ってるのはハーリング氏だけだ」

「………………」

「ミスター・ハーリング! 応答してください! ミスター・ハーリング!」

「護衛対象に逃げる気がないんじゃ守りきれないぞ!」

「落ち着け、仕事は何も変わってないぞ。戦闘に集中しろ! 今出来ることはそれしかない!」

「UAVを撃墜するしかないということですか!?」

「やってやるやってやる! 全部落としてやる!」

 

 みな迷いながらも任務に準じた。

 スカイキーパーの呼び声には相も変わらず反応がなく。オスプレイはただただゆっくりと軌道エレベーターに向かっていた。

 だがはっきり行ってこれは自殺行為だ! 回避軌道を取らずに真っ直ぐ進むオスプレイは、まるで死刑台に上がる囚人のように見えた。

 

「ミスター・ハーリング! 私たちはまだ諦めてません! 戻ってください!」

「ハーリングさん! こちらメイジ2、トリガーです! 生きているんですか! なんで引き返してるんですか! 一緒に脱出すると行ったじゃないですか!!」

「本当にハーリング氏が操縦してるのか!?」

「中には2人以外いなかった。操縦してるとするならハーリング元大統領のみだ」

「じゃあなんで反転してんだよゴーレム2! やることがさっきと真逆じゃねえか!」

「もしかして、ガーゴイルが軌道エレベーターを撃ったから?」

「全機! 今は集中しろ! マザーグース・ワンを守るんだ!」

「ですが隊長! もう弾薬がわずかです! このままじゃ!」

 

 士気は最悪だった。

 彼が生きてるかも、死んでるかもわからず。

 しかも護衛対象は自ら死にに行ってる。

 

 そうこうしてるうちにヘリは進み、元いた軌道エレベーターのふもとに近づこうとしていた。

 

「おいガーゴイル! ハーリング氏を守れよ!」

「駄目だゴーレム4、通信を変えてる!」

「マザーグース・ワンにUAVが張り付いたぞ! メイジ隊!」

「くぅ! トリガー、行けるか! 俺は無理だ!」

「行きます!!」

 

 スロットルMAX! ハーリング大統領が乗っている機体に一目散に飛び出した。

 4AAM残弾ゼロ、ミサイルはあと一発しかない。

 機銃はまだあるが、UAVがアタックポジションについた! 

 

「やらせるかぁぁぁ!!」

 

 雄叫びのまま、これ以上倒せないスロットルレバーを押し込む。

 

 彼を死なせない! 生きてるか生きてないかなど関係ない! 俺はアレを守る! 

 それが俺の任務なら! 

 希望の火は消させない! 世界から光を消させはしない!! 

 

 ロックオン! 

 

「FOX2!!」

 

 

 

 ーーー◇ーーー

 

 

 

「う、あー………」

 

 けたたましいアラート。

 肺に入り込む焦げ臭い空気。

 

 ハーリングは痛みに引きちぎられそうな身体を起こそうとした。

 

 ミサイルが来る、そう気づいたときには身体を投げ出されていた。

 

 額を切ってしまったのか、血が滴り落ちて左目が開けない状態だった。

 コクピットは半壊しており。そこにいる筈だったSPのジョンソン大佐の姿はなく。キャノピーだった空間から気圧差による強い風が吹き、今にも吸い込まれそうだった。

 

「ゲホッ、ゲホッ」

 

 なんとか操縦しようと思ったが、操縦桿も根こそぎ吹っ飛んでいる。

 副操縦席はどうだろうか? 痛む身体を引きずるが、力が入らず崩れ去った。

 それでも焼け焦げたシートを支えにキャノピーの外を見ようとした。

 帰らなければ、自分にはまだやるべきことがあると。

 

 だがそんな彼を挫かせるように、猛烈な眠気が襲ってきた。

 経験はなかった。だがハーリングには見えない筈の死神の手が見えたような気がした。

 

「………あっ」

 

 吹きすさぶ風に抗い、目を開けたさきには、天までそびえ立つ軌道エレベーターの姿があった。

 

 ハーリングの夢であり。ユージア大陸を救うために立てた。天を貫く柱。

 そしてその先。大海の宇宙で、人知れず人々を救うための任務を行っている若き友人がいた。

 

「………………すまない………ナガセくん………」

 

 

 

 ーーー◇ーーー

 

 

 

「メイジ2!」

「え?」

 

 ハーリング氏を破壊しようとしたUAVは俺の撃ったミサイルで破壊された。

 ヘリとの距離が近く、俺は旋回して体勢を整えようとした。

 

 その時だった。

 自分が撃ったものとは違うミサイルが、ハーリング元大統領を撃ち抜いたのだった。

 

 息が詰まった、心臓が止まった。身体が冷えきった。

 

 ミサイルの直撃を食らったマザーグース・ワン。

 

 そのまま黒煙を吹き出しながら軌道エレベーターの外周をまわり。そして、爆散した。

 

 死んだ。疑いようもなく。

 また、俺の目の前で死んだ。

 

 あの時と同じ。俺は、また守れなかったのか? 

 

「なんてこった! マザーグース・ワンが撃墜されたぞ!」

「ミサイルは何処から来た!?」

「UAVが落としたのか!?」

 

 UAVが落とした。それ以外に彼を撃つものはいない。

 現場が混乱するなか。1人のパイロットの言葉が空間を凍りつかせた。

 

「メイジ2のミサイルだ。メイジ2が落とした」

 

 ………俺? メイジ2は俺だ。

 

 俺が落とした? そんな馬鹿な。俺のミサイルは確かにUAVに当たった。マザーグース・ワンには掠りもしなかった筈だ。

 

「オーシアが撃ったのか? そんな」

「待て、本当にトリガーが撃ったのか? 誰か見たのか」

「俺は見てない。誰か、誰か見なかったのかよ! 本当にトリガーが!? そんな訳ねえだろ!?」

「いま情報を収集中だ、憶測は慎め」

「味方の誤射だ、俺は見た!」

「いい加減にしろ! 出鱈目を言うんじゃねえ!」

「マザーグース・ワンは空中で爆散した、生存者はいないだろう」

「ミサイルから軌道エレベーターを守ろうとしたように見えた」

「エルジアめ、英雄を殺しやがって!」

 

 はぁ、はぁ、はぁ、はぁ。

 息が辛い。息をしたくないと思うほどに。

 

 俺が撃った? いや違う、俺じゃない。

 じゃあ誰が? UAVはレーダーにいたのか? わからない。わからない。何がなんなのか。

 

 本当に俺ではないのか。違う、俺じゃない! 

 

「メイジ1、トリガーなのか?」

「………一番近くにいたのはトリガーだ。UAVは護衛対象にしつこく絡んでいた………だが………」

「はっきりしろクラウン! トリガーが撃ったのか!?」

「俺だってわかんねえよ! 俺は見てない! 見る暇なんかなかったんだ! 俺にはわからない!!」

 

 普段とは違う荒んだ口調で吠えるクラウンの言葉にノッカーも口を閉じた。

 

 だがトリガーが撃ったことを否定出来なかった。

 その事実が部隊全体に広がった。

 

「アーセナルバードが作戦空域に到達! 全機撤退しろ! 急げ!!」

 

 UAVは軌道エレベーター周辺に固まった。

 

 IUNは巨鳥から逃げるために一目散に空域から動いた。

 

 呆然としつつも身体が勝手に動いた。

 みんなから一歩送れて操縦桿とラダーを倒し。スロットルを押し込んで全体の最後尾についた。

 

「トリガー、君はしばらく出撃出来ない、理由はわかるな」

 

 怒気を抑えようとしてるが漏れ出る怒りを含んだスカイキーパーの声に俺はビクッと震えた。

 

 理由? わからない、わかるわけがない。

 俺は、俺は。

 

「俺は、俺は撃ってない。俺は撃ってないスカイキーパー」

「メイジ2、基地到着まで発言は禁止する。今は現空域を離脱せよ」

 

 ピシャリと、絶対零度の指示に俺はこれ以上声を発することが出来なかった。

 

 俺じゃない。俺のミサイルじゃない。

 じゃあ誰が? UAVじゃないのか? 

 UAVは俺の後ろにいなかった、だからループによるオーバーシュートではなく旋回をした。

 わからない。何が起こっている? 

 俺はやってない。それだけしかわからない………でもなんで俺が攻撃したことに? 

 

 ぐちゃぐちゃに絡まった頭、完結しない思考。

 それでも操縦桿だけは忠実に命令をこなしていた。

 

 

 

 俺にとって永遠に忘れられない日。

 

 この日。世界の英雄。ビンセント・ハーリングはこの世を去った。

 

 誰かが言った、メイジ2、俺自身の手によって…… 

 

 

 

 

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