エースコンバット7 FLIGHT REZON 作:ブレイブ(オルコッ党所属)
親切な新聞紙さんに連れられ三番ハンガーへ。
「ここだよな? おおっ?」
ハンガーに入っていの一番に目に入ったのは。
1機の戦闘機だった。
特徴的なデルタ形状の主翼。尾翼も同じくデルタで垂直尾翼が二つ。
F-16Cと同じ大出力エンジンを二基搭載された。戦闘機と言えばまず頭に浮かぶほどのベストセラー。
「F-15C イーグル………」
オーシアの主力戦闘機の一つ。
そして、ラリーと円卓の鬼神の愛機がそこにあった。
………というか誰もいないのか?
「あのーすいませーん!」
「なんだ」
「うおわぁっ!?」
下から声が!?
と思ったらイーグルの下からオイルまみれの女性が出てきた。
健康的な小麦色の肌。ヘソだしのタンクトップにオレンジの作業用ズボン。右腕にはハチドリ………スズメ? 羽を広げて飛ぶ小鳥のタトゥーが刻まれていた。
足を悪くしてるのだろうか? 右足には歩行アシスト器具が取り付けられている。
そんな彼女は黒髪ショートヘア。顔立ちは凛々しく、一見美少年に見えた。
「えっと。あなたは?」
「ここの整備士だ。あんたがハーリング殺しかい?」
「違う」
「は?」
あ、しまった。つい反射で。
「いや違うけど違わないというか。なんでかわからんがハーリング殺しの汚名を着させられてる」
「とりあえずハーリング殺しとして来たんだろ。ここに」
「そう、ですけど」
「だったら支度しな。スーツはそこのロッカーに入ってる。その間に仕上げとくからさっさと着替えるんだね」
「はぁ………」
なんか押しきられた感が強いな。
てかここで着替えるの? 女性の前で?
彼女はそんなことを気にしないとばかりにイーグルの最終チェックをしていた。
フォートグレイスでは少なくとも5人は整備士がいて騒がしいのに。ここでは彼女1人しかいなかった。
「他の整備士は?」
「警報鳴った途端シェルターにトンズラした」
「あなたは行かないので?」
「機体調整もまだなのに放り出すのはアタシのプライドに関わる。オラ、ボーッとしてないでさっさと着替えな!」
再びイーグルの下に潜る彼女。
そんな彼女に言われるままロッカーからパイロットスーツを取り出した。
見るからにお古感が出ているが。これしかないなら仕方なし。
「着替えました」
「んっ。サイズは大丈夫そうだな」
「お陰さまで。ところで、あの白い線はなんです?」
指差した先にはイーグルの尾翼。
尾翼には15の番号、OADF(オーシア空軍)、オーシアの国旗。そして俺のパーソナルマークであるリボルバーを加えた狼。
そしてその上から雑に塗りたくられた3本の白い線が塗られていた。
「懲罰部隊の証見たいなもんさ。ほら早く行きな。飛ぶ前に死ぬぞ」
「了解です」
タラップを駆け上がって操縦席に座り込む。
F-16Cとは違うが、基本は同じだ。訓練校でシミュレーター操縦もしたことあるから問題ない。
計器チェック………よし。
「どうだ、動いたか」
「チェック完了。行けそうです」
「そうか。そいつは出来立てホヤホヤだからな。離陸する前に死ぬなよ」
「ありがとうございます! では行ってきます、あなたも早く避難を!」
整備士さんに敬礼をし、キャノピーを閉じた。
ようやく空が飛べる。
本当に飛べる。1ヶ月ぶりだ。
なまってないよな? トリガー。
自問自答して俺はオッケーサインを自分に出した。
しかもラリーと同じF-15Cに乗れるとは………人生何が起こるかわからないな本当に。
興奮ではやる気持ちを抑えて俺はゆっくりとスロットルを押した。
ハンガーの奥、戦場の空気が俺を待ち構えていた。
ーーー◇ーーー
(まさかハーリング殺しがあんな若い奴だとは思わなかった)
懲罰部隊の整備士、エイブリル・ミードはハンガーから出ていくF-15Cを見送る。
送られてきたモスボールから使えるパーツをかき集めてF-15Cを組み上げていた時、整備士長から「尾翼は3本塗れ」と言われて白いペンキで3本の罪線を書いた。
3本線。ここでは滅多にお目にかかれない特一級の犯罪者に刻まれる最悪の証。
そいつの罪状と来たら、なんとあの英雄ハーリング様をぶち殺したと来た。
エイブリルはハーリングが嫌いだった。
彼の父親もパイロットだったが、環太平洋戦争で死んだ、その時の大統領がハーリングだった。
環太平洋戦争はハーリングが起こしたものではないと知っても。エイブリルやその周囲の退役軍人、特に彼女の祖父はハーリング、いやオーシア連邦そのものを嫌っていた。
みんなオーシアの汚いところを知り尽くしていたからだ。
エイブリルはもともと軍人ではないが、祖父から教えられた整備の腕と基本的な操縦能力を持っていた。
彼女はモスボールから飛べる戦闘機を生み出し、空を飛んだ。
何処かに攻めようとか、何が目的かなど考えず。
ただ青空の向こう側を見るために飛んだ。
そして、どんだけ運が悪いのか。ドンピシャのタイミングでエルジアが戦争をおっ始めた。
戦闘宙域となった空に入ってしまい、エンカウントしたオーシア機に不審機体として撃墜され。墜落先がIUN基地だった為に御用となった。
あの時IFFや外部通信機を積んでいれば変わっていただろうか。
いや、フライトプランを提出してないから。どちらにせよだろう。
(そういえばあたしを撃ち落としたのもF-15だったな)
自分を落としたのと同じ機種が、ハーリングを殺したあいつが乗るとは。なんの因果だろうか。
「しかし、ありがとう、か」
この懲罰部隊に来てから礼なんて言われたことがない。
そんな久方ぶりのお礼が極悪人からとは。
といっても。エイブリルから見た彼の第一印象は。
なんか子供っぽいだった。
(イーグルを見たとき目ん玉輝かして惚けてたし。罪人とは思えないぐらい腐ってるように見えなかった。いや、ああいうのに限ってサイコパスとかそんなんだったりするのかねぇ)
いずれにせよ、この先のことはエイブリルの管轄外だ。
『あなたも早く避難を!』
「………………」
去り際の言葉が耳に残るなか、エイブリルは珍しくハンガーを後にしたのだった。
ーーー◇ーーー
さてさてさーて。誘導路はあっちかな?
しかし所属先初任務がまた爆撃スタートとは。呪われてるのかな俺は。
幸い滑走路は破壊されてないようだ。先に出ていたSu-33とミラージュ 2000-5が滑走路を滑って行く。
「命令に従えトリガー、滑走路へタキシングしろ。高度計を確認し滑走路手前で待機せよ」
「こちらトリガー、了解した。高度計異常無し」
「コントロールタワー。できればこちらからにしてもらえないかな」
「スペア2、お前は後だ。おい、何している!?」
「ちょっ、危なっ!」
誘導路から滑走路に進もうとした時。目の前にMiG-29A ファルクラムが横から強引にねじ込んできた。
いやいや、ちょっとなにしてんの!?
びっくりしたなぁ、もう。
「スペア8、おいチャンプ! こちらコントロールタワー! 離陸許可は出してない、命令を守れ!」
「うっせぇや!」
ガラ悪いなぁオイ。
これが懲罰部隊か? もはや山賊だな。
「離陸準備中の機はスペア8に注意! 強引に離陸しようとしている!」
「さて、一番機は僕でいいかな?」
「空に上ってみれば自然と決まるんじゃないの?」
「よいことを言う」
先ほどのスペア8の問答を他所に各々が次々と滑走路に滑っていく。
ヤバいヤバい出遅れる出遅れる。
身振り手振りのハンドサインでなんとか空いた誘導路から滑走路に入り込むことに成功した。
滑走路一つでこんなに疲れるって、中々ないぞ。
「トリガー、お前のコールサインはスペア15だ。それがお前の空中での囚人番号だ。これから欺瞞邀撃を開始する」
「こちらトリガー、スペア15、了解した」
15番目。2と比べて、随分と数字が増したな。
しかもスペア。代替え品や補充品とは。
コールサインが囚人番号、いよいよ懲罰部隊らしくなってきた。
そういやなんか聞きなれない言葉が出たな。
欺瞞、邀撃? なにを欺瞞するんだ?
と考えてたら通信越しに雄叫びが。
「うおおおおおおおお! 血が騒ぐぜぇっ!」
「くそ、マヌケめ! 戻ったら独房に叩き込め! スペア8、着陸したら覚悟しておけ」
「戻ってこられるならね。スペア11、離陸する」
スペア8の代わりに答えたのはさっきの新聞紙さんだ。
どうやら今飛んだミラージュ 2000-5に乗ってるみたいだ。
「チャンプが戻る方に賭けるのはいるか? 俺が引き受けるぜ」
「誰も乗らないよ、そんなつまんないの」
「おいどういう意味だフルバンド!」
「まあいいさ、彼がかき回したあとでも僕は大丈夫だ。スペア2、テイクオフ」
俺の前にいたSu-33が飛び立った。
灰色迷彩の中に一人だけ海洋迷彩だから眼を引いた。
囚人の中で余裕をもった喋り方だ。15の中の2番機だから腕も良いのか?
「新人、いま飛んだカウントって奴。気取ったしゃべり方してやがるが見てろ。あいつは切羽詰まると地が出る。カードで負け始めるといつもそうなんだ」
「カッコつけってこと?」
「そういうこった」
「余計なこと言うのはやめてくれハイローラー。僕はいつもこんなんだ」
そう意識して聞いてみるとなんか声色が薄いような。演技下手かこいつ。
「スペア15、たったいま滑走路が空いた! 離陸を許可する、急げ! 後がつっかえてるんだから早くしろ!!」
「おっと。失礼コントロール。スペア15、離陸する!!」
スロットルを押し込んで操縦桿を引いた。
F-15C初めてのフライト。さあどう出る?
「うおっ」
久方ぶりの圧に、思わず声が漏れた。
そのままグングン加速し、上昇する。
高度安定。スティックやペダルの感触を確かめながら俺はおもむろにスロットを倒した。
「おおー」
加速が速い! もう時速1500に。
それでいて曲がりやすい! ファルコンも曲がりやすかったが、アレが重いと錯覚するぐらいだ。
これがラリーが乗ってたF-15、良い機体じゃないか。
あっ武装のチェックしてない………ってあれ?
なんかウェポンウィンドウにLOCKって書かれてるんですけど?
「今回もミサイルは撃てないのか。FCSをロックしている」
「くそっ」
「こいつは凄いね」
「ちょうどいいハンデだ!」
FCSロックだって?
………ほんとだ! トリガー押してるのに機銃撃てねえ!
出せるのはフレアだけ? なんてこったぁ………
「欺瞞ってそういうこと?」
「そういうことだ。囚人が自由に使える物などない ボールペン1本だってな」
ひえー! これは辛い!
一先ず旋回旋回! 目の前に展開する敵軍に背を向けて離脱する。
てかこれでどうやって戦うのでしょうか。
FOX4すれば良いの? やめろよ?
「来たぞ、ハーリング殺しの新入りが上がってきた」
「やってねえよ」
「やつはハーリングにきっちり2発ミサイル撃ち込んでる」
「撃ってねえぞ」
「さすがだな情報屋」
「ヘヘっ。情報握ってないと死ぬからな、いまの戦争は」
「だからやってないってば、もしもし通信開いてますか?」
俺のだけ発信装置壊れてないよな?
てかもうこんな辺境のとこまで噂が飛んでんの? もしかして俺がハーリング殺したのってオーシア周知の事実だったり?
うえっ、予期してたけど辛い。
ラリーやアンソニーやマルセラさんに知られてるってことじゃないか?
ラリー暴走しないといいけど………大丈夫よね。
「はしゃぐな囚人ども、新しい人殺しが来て嬉しいか」
「ヒィィハーー!!」
ヒーハー?
度々聞こえる場違いパーリーピーポーな通信に思わず耳を疑った。
暴走族でもいるのかここ。
あ、囚人だったわ。
「こちらAWACSバンドッグ。スペア15、俺が監視役だ。勝手なことをすれば命はないと思え」
「了解AWACS。頼りにさせてもらう」
「ほう………」
「何か?」
「なんでもない。先程滑走路を攻撃した爆撃機が再度攻撃するため戻ってくる。どうせダミーの滑走路だ、いくらでも撃たせておけ。お前らはせいぜい空中をにぎやかせ、この基地に戦闘機がいると見せびらかすんだ」
「誰かタバコ余ってないか、あとでくれ」
「撃墜されても構わん、罪を償うチャンスだ」
「ありがたい」
「ハッハッハー!」
AWACSが指示を出す傍ら呑気にタバコの催促してる奴らもいれば皮肉言ったり笑い飛ばしたり。
伍長の言う通り、ならず者部隊ってのはマジだった。いやー乱世乱世。
してAWACS、バンドックが言ったことを纏めるとこうか?
1、敵の爆撃機は無視しろ。基地が攻撃を受けても。
2、攻撃は禁止、死にたくなければ逃げ回れ。
3、死んでも問題なし。
………地雷手掘りよりは良いけどさ。
ここまで理不尽でアホな作戦あるかな。
フォートグレイス基地が恋しくなってきた。
「もう1つだ、作戦空域から離脱する者は無条件に撃ち落とす、いいな」
俺、此処でやってけるのかな。バンドックの警告を右から左に流しつつ、不安になりながら飛んでいく。
とにもかくにも飛ぶしかない。先ずは機体を身体に慣れさせねえと。
こいつファルコンより性能良すぎて動き過ぎる。
基地上空をフライパスしてると先ほどのSu-33、例の気取り屋カウントが寄ってきた。
「乗り心地はいかがかな、ハーリング殺しくん?」
「問題ないよ。あとハーリング殺しって言うのやめてくれるか。俺は殺してない」
「口では何とでも言える。司令官は罪に上も下もないっていうが、君のは間違いなく大罪だ。せいぜいここで泥水すすりながら飛び回るんだな」
なんだこいつ、態々近づいて嫌み言いに来たのか?
ご苦労様でーすと、マスクの下から舌を出してやった。
「そうやってスカした喋り方してもびびってるのはバレてんぞカウント。ネームバリュー完全に負けて焦ってんだろ」
「そんなんじゃねえよ。それよりもどうだトリガー、僕の飛び方を真似したいなら。戻ってから教えてやってもいい。なんたって僕はエースだからな」
「わざわざご親切にどうも。ですがご心配なく。これでも訓練校では最優秀成績で卒業しましたし、首都の演習で正規パイロットを撃墜したこともありますので」
「………チッ。無様に落ちても知らねえからな」
そう吐き捨ててスペア2は離れていった。
なんだろうな。皮肉が通じなくて白けたか?
でもまあこれぐらい言っても良いだろう。部隊の受けも良いみたいだし。
「おっ、舌戦はトリガーの勝ちか? 賭けときゃ良かったな」
「まさかカウントが口で負けるとはな」
「舌が錆び付いてんじゃねえか? チャンプ様が油差してやろうかカウント」
「余計なこと言う奴しかいねえな………」
新人イビりに失敗したカウントはこれまた大きく迂回して集団から離れた。
しかしここの部隊、機体がてんでバラバラだ。
カウントのSu-33にタブロイドのミラージュ 2000-5、あとチャンプだったかのMiG-29A、そして俺のF-15C。
そして残りはオーシアでもオーソドックスと言えるF-16CとF/A-18F。
大所帯とは言え纏まりがないというか。基地環境とかそんなもんなのかな。
アラート。敵からのロックオン警報。
先発が来たか。敵はMiG-21bisやMiG-29A、Su-33もある。
ミサイルアラート。撃ってきた!
正面から来るミサイルをバレルロールからの右旋回、後方を確認しつつ宙返りでミサイル回避。
降り注いでくる機銃はスロットルを押し込んで射程外に逃げた。
久々に感じた死のリアリティーに汗腺が開き始めた。
反撃しようと直ぐ様背後を取ったが、引き金を引いてもエラー音がなるばかりで弾丸は出なかった。
「あーくそ! まだ慣らし終わってないし、敵を撃てないでされるがままって、ストレス溜まる!」
「今からそんなこと言ってたら生き残れないぞハーリング殺し」
「ご親切にどうも! あと何度も言うがやってねえっての!」
「頑なだなぁ」
当たり前だ! 1ヶ月貫いたんだからこれからも貫き通すからなこの野郎!!
とっ、騒いでる間に敵のTu-95が基地に来そうだ。
「こちらスペア15。バンドック、新人だから勝手がわからなくて申し訳ないが、敵の爆撃機がもうすぐ直上に来る。ほんとに放置で良いのか?」
「何度も言わせるな、お前たちはただ飛んでれば良い」
「本物の基地に行ったら?」
「その時はその時だ。お前たちは虫のように飛び回れ、当たっても良いが基地には落とすなよ」
ウィルコと言って良いのかネガティブと言って良いのかわからないこと言うのやめてくれAWACS。
しかしこれから爆撃されるというのに迎撃ではなく傍観を命じるとは。
ここの司令官、肝が座ってるなぁ。
『ポイント到着、爆撃開始!』
爆撃機のペイロードが開き、中から夥しい数の無誘導爆弾が投下される。
弾けるダミー滑走路、ズラリと並べられた戦闘機が砕け散る。
地上に落とされた爆弾の列は全てを薙ぎ倒さんと破壊を撒き散らした。
『こいつは大戦果だ!』
『なんでかわかんねえがここの奴ら滅多に反撃しねえ、楽な仕事だぜ』
「馬鹿め。ハリボテの飛行機を爆撃してやがる」
敵がハリボテを粉砕してることに悦に浸ってるだろう。対してこちらはあちこちから小馬鹿にしたような嘲笑が聞こえてくる。
「敵はこの基地に航空戦力が結集してると思い込んでる」
「毎度のことだけどよ、下にあるのは全部ハリボテだぞ。敵は見てわかんねぇのか?」
「ハリボテの出来が良いのさ、普通に処分するより粉々にしてくれたほうが有益さ」
「あっ、やっぱ全部モスボールなのか?」
「ああ。お前も見ただろ、一緒に輸送される時。この基地にはあちこちからモスボール戦闘機が毎日来る。それをうちの整備士がお色直しして並べてるのさ」
「空から見るとわからんな。まさにハリボテか」
敵から見たらあれ一つ一つが驚異となる。
巨大な滑走路もあるのだから、本物のこじんまりとした基地に投下するよりもダミーを叩いた方が良い。
ここはユージアの果てに位置するから、敵も易々と大挙で来れないという訳か。
「なあタブロイド」
「なんだ?」
「これまで本物に爆弾落ちたのどんぐらい?」
「んー、両手で数えられるぐらい? それがどうかしたか」
「いやさ………なんか1機が直撃コースなんだけど」
俺の通信に皆が基地の上を見る。
そこには大口を開けて爆弾を落とすベアの姿が。
あっ、当たった。
って当たり処が悪くないかあそこ!?
「まずい、敵の攻撃が管制塔を直撃!」
「お、おい! なんだこの揺れは!?」
「おい煙が上がってるぞ!」
「消火班! 急げー!」
「ヤーハァー!!」
「良いぞやっちまえぇ!」
「気分爽快だな!」
「貴様ら、口を閉じろ!」
管制塔の屋根が爆弾で吹き飛んだ。
基地司令の狼狽えた声、慌てふためく職員。
そしてお祭り騒ぎなパイロットたちと、それをいさめるAWACS。
いやー、なんかわかってたけど世も末だな。
ここの民度というものが良くわかる。
自分の基地が爆撃されて歓声上げる部隊なんて聞いたことないぞ。
「おいバンドック! 何をしている! これ以上近づけるな! 私を殺す気か! ──ブツッ」
「全て落とすよう命令しますか? 司令、マッキンゼイ司令? ………クソッ!」
是非を問おうとするAWACSだがその後司令官が答えることはなかった。
俺たちにも聞こえたよ、通信切る音が。
もしやこの場において自分だけトンズラ?
肝どころか付くもんも付いてないと来たか!
「スペア隊、よく聞け! 爆弾を抱えた連中をすべて撃墜しろ! ウェポンズフリー、交戦を許可する………殺してこい」
対してAWACS、バンドックの対応は早かった。
ピピッ、電子音と共にFCSのロックが外れ、表記がレッドからグリーンに変わった。
「はいよ!」「ミサイルさえあればこんなやつら」「こいつはオッズを変えなくちゃな、トリガー………」「イヤッハー!」「ぶっ潰してやるぜぇ!」
そしてお前らは一斉に喋り過ぎだ。
なに行ってるかマジでわからんぞ。通信で渋滞起こすなお前ら。
あとすまんハイローラー、なんか俺のこと呼んだか?
そんな中、一拍置いたタブロイドの通信だけがハッキリ聞こえた。
「何故初めからそう言わない。今回の敵さん相当気合い入れてたろうに」
「ここは懲罰部隊だ、お前らがいつ死ぬかは俺が決める。さっさと動けマヌケども」
「さて、じゃあ僕が指揮をとる。各機援護しろ」
「誰が嘘つきの指揮棒で踊るかよ!」
「フン、俺の腕を見せてやろう」
「って言ってる間に1機落としたみたいだぞ、トリガーの奴」
「なにっ!?」
慌てて首を動かしたカウントの視線の先には自機と同じエルジア側のSu-33が穴だらけになって爆散。
爆煙から飛び出したのは、白い3本線が刻まれたF-15Cの姿だった。
直ぐ様近くを飛ぶMiG-29Aにロー・ヨーヨーでオーバーシュートさせ。そのケツから先まで機銃を浴びせて瞬く間にスクラップに変えた。
「ツーダウン。爆撃機は………もう少しか!」
敵の爆撃機が旋回してこちらに矢じりを向けていた。
向かってくるTu-95の3機編隊にヘッドオン。
積まれている4AAMに切り替えた。
「ロックオン! FOX3、FOX3!」
機体から離れた3機の4AAMが離れる。
鈍重なTu-95が僅かに機体を反らしたところで避けられる道理などなく、1機、また1機と食い破られ。
最後の1機も………
「んん?」
3発目の4AAMが当たる寸前にTu-95が爆散し、標的を失った4AAMはそのまま空を切った。
いったい何が? と思ったら、すぐ側を海洋迷彩のSu-33、カウントの機体が通っていった。
寸前で横入りした?
「惜しかったな、このスコアは俺が頂いた。今回もトップは俺のものだ」
「撃墜数勝負のつもりか?」
「そうだ。トリガー、撃墜数をちゃんと数えておけよ あとで比べよう」
「いやいや。どうせ水増しして報告するんだろ?」
「お前の戦果確認は事後報告だからなぁ、カウント」
口々に言われて咳払いで誤魔化すカウント。
正直スコアはどうでもいいから勝手にやってくれって感じなんだが。
コイツに良い顔させるのもそれはそれで癪だと考えた。
「いいよ、勝負しよう。いまんとこ俺の撃墜スコアは4だ。そっちは?」
「俺? ………俺は6機だ」
「スペア2、お前の撃墜数は2だ」
「んんっ……おいおい、ちゃんとスコア数えといてくれよバンドック」
ピシャリと一刀両断したバンドックに息を詰まらせたカウントに周りから嘲笑が沸いた
水増し報告って恥ずかしくねえの?
「ほらな、こいつはいつもそうなのさ。気を付けろよトリガー」
「4機もサバを読むって逆に尊敬するわ」
「ちなみにこいつは元詐欺師だ」
「納得した」
するな! というカウントをよそに第一団は全て地に落ちた。
血に飢えた囚人パイロットは久々に武装ロックを外され。血を求めんとエルジアの爆撃機部隊を噛み砕いた。
そんな中一番落としたのが無実の大罪人というのは、なんたる皮肉だろうか。
「レーダーに感あり、接近中の敵グループを確認! ただちに対応しろ」
「はいよ!」
「高高度を飛ぶ爆撃機がいる。自分のケツばかり気にせず上も見ろ」
「ウィルコ、ピッチアップ!」
F-16Cより大出力のツインエンジンは驚異的な加速と共に俺を上方に押し上げた。
前よりもベルトが身体に食い込む感覚に耐えながら目標高度に向けてひたすら上昇する。
フォートグレイスの初陣を思い出しながら。俺とF-15Cが444基地の青空を突き抜けた。
「チャンプ様の餌食になりてぇ奴はかかってこい!」
「おい馬鹿が行ったぞ」
「イヤッハー!!」
「あいつ囮にして勝ちに行くぞ」
「ていうか賭けって今どんな感じなんだ?」
「口じゃなくて手を動かせボンクラ共!!」
拝啓天国のお父様。
やってけるか不安です。