エースコンバット7 FLIGHT REZON   作:ブレイブ(オルコッ党所属)

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STAGE28【Jackpot Chance(博打の先へ)

 

 

「しかし司令官の野郎。ありがたく任務が来たようなことを毎度言ってるが。次から次へと立案が早くないか?まるで始めっから決まってたみたいだ」

 

 中央基地から西の基地に向かう最中ハイローラーが気になることを言ってきた。

 確かに前回の襲撃から僅か3日しかたっていない。

 

 フォートグレイスの時は情報を集めるために時間を有していたが。

 

「ドクトリンさ。何が起きたらどうするって戦闘教義だ。オーシアにはあるんだよ。俺たちみたいな捨石がどこで死ぬかも書かれてるんだろなぁ」

「武装ロックされて督戦隊に掃除されるってか」

 

 うわ最悪。そうなったらバンドックに向かってFOX4してやる。

 

 しかし現実味があるのがまた。

 オーシアって恩を仇で返すの得意中の得意だから。

 

 ガルムとかウォードックとか。

 自軍の英雄を使い潰すことなく排除って正直言ってアホだと思う。

 都合がいいのはプロパガンダに使える死んだ英雄だけってか。嫌だねーほんと。

 

「つーことはよ。この次の作戦も決まってるってことか?」

「待て待て待て!賭けをしよう。作戦内容を言い当てた奴が勝ちだ。トリガー、お前はなんだと思う」

「んー欺瞞邀撃以外でだろ?そだなぁ。今度こそ弾除けで正規軍の殿じゃねえか?」

「そこんとこどうなんだバンドック?知らないならあんたも賭けていいぜ」

「貴様ら………生きて帰ったら独房で頭を冷やすか?」

「はい皆!この話一旦終わろうぜ」

 

 独房は嫌じゃ、独房は嫌じゃ。

 

「そのドクトリンってやつ。情報屋の俺が探りをいれてみてやるよ」

 

 独房は嫌だって言ってんだろ。

 下がれ、エセ情報屋。

 

「お前に調べられんのかよ」

「どうせ空振りだろうが」

 

 お前らも煽るな。

 下がれ、アホども。

 

「フッ、端末なら賄賂次第でなんとでもなる。パスワードのメモを机に貼る馬鹿もいくらでもいる。何てのは情報収集のための入り口にすぎない」

「平然と通信でそんなこと言えるお前の根性だけは評価してやるからそういうのは帰ってからにしてくれフルバンド!」

「んだよノリ悪いな」

 

 巻き添え情報漏洩で死ぬなんて絶対に嫌だからな!

 

 あと、そもそもそんな隙作るなエセ軍人ども!

 

 ………なんかここに来てからやたら感情的になってる気がする。前はもっと落ち着いてて。

 いやそんなことなかったな。

 

 燻る憤りを近くのヘリポートを壊滅させることで憂さ晴らしを完了し。俺たちは西側に二つある基地のうち南西側に進行した。

 

「こちらスペア11。前方に敵基地を確認。地形が複雑すぎて空からじゃ無理だ。地上部隊でやってくれ」

「スペア11、お前たちでやるんだ」

「だからデカい爆弾で地形ごと吹き飛ばせってんだ!!」

「そう言うけどさ。持ってる奴も単発爆弾とかだろ。誰か気化爆弾(FAEB)積んでる奴いない?」

「そんな高級品はないな」

「じゃあチマチマやりますかぁ!新参の俺に遅れんなよサボり魔諸君!」

「言ってろクソルーキー!」

 

 

 

ーーー◇ーーー

 

 

 

「はぁ………」

「何回目の溜め息ですかバンドック」

「無駄口を叩くな」

「了解」

 

 隣席に座る下士官からの軽口をいなしつつ、間髪いれずに出そうになった溜め息を飲み込む。

 

 戦況は優勢、上手く行っている。今回もトリガーが率先して敵施設を破壊していってる。

 そのうえ口も上手く、他の奴らを焚き付けて攻撃に加えていく強かさもある。だが先程よりマシになったとはいえ、トリガーに比べると攻撃の圧が足りてないように見えた。

 

「トリガーが敵施設を潰したぞ。他の奴らは寝ているのか?」

「またトリガーがやったのか!これはオッズを変えなくちゃな!」

「いいね!ドンドン回せよ!サボタージュしてる奴らから金むしれることほど気持ちいいことはねえな!」

 

 ついこの間はお綺麗な正規軍に居たとは思えないほどトリガーは弾けている。

 だが444に染まったとは単純に言い難いほど摸本的だ。

 

「流石、人を殺すのは上手いもんだなトリガー。大統領を殺すより簡単なんだろうな」

「元、大統領だ」

「その違いはなんだよフルバンド。どっちにしろ、奴の罪線は3本さ」

 

 お陰でイビり筆頭のカウントも馬鹿の一つ覚え宜しくハーリング関連でしかイビれずにいる。

 そして例外なく返り討ちにあっている。

 

「詐欺なんてチンケなことやってたらどうあがいても1本しかもらえないよね。むしろよく貰えたと思うよ、詐欺なんかで。まあ俺は3本だけど」

「本数ありゃ偉いってもんじゃねえ」

「羨ましいくせに」

「お前………」

「ハッハッハ!今回の舌戦もトリガーの勝ちだな」

「チッ」

 

 普通なら生意気を言うルーキーなど周囲から袋叩きにあうのが常だが。基地の中、周りからの評価が芳しくないカウントの高い鼻が折れる様は他の懲罰兵から見たら格好の酒の肴だった。

 

 カウント本人も口だけ言ってはいるものの、トリガーの堂々たる戦績を前には浅く撫で切ることしか出来ないでいる。

 そして特にダメージを与えることなく自爆する。こっちで聞いても滑稽に見えるポーズをいつやめるのかと呆れながら聞いている。

 

 それにしても、戦闘以外でもトリガーは上手くやっている。この短期間で問題児だらけの444の懲罰兵と早くも打ち解けてる奴らも出てきた

 特に作戦当初で乱暴者で知られるチャンプと連携して敵の航空戦力を無力化したことにはバンドックも少し驚いた。

 基地に配属されて以来他人の言葉に耳を貸さなかった彼が数日前に来たトリガーと共同で攻撃を行った。

 

 賄賂でも使ったのか定かではないが。

 そんな人心を掌握する力をあの年代で会得してるということは。無視したくても出来るものではない。

 

 今までの囚人とは纏っているものが違う。

 それがまったくの無実故なのか。ハーリング殺しという大役を全うした者から来る物なのか、はたまた異質過ぎる素質から来るものなのかはわかっていない。

 

 そんなトリガーに動きがあった。

 低空のまま、山岳地帯に向かって飛ぶ。この高度だとぶつかる。なのにそのまま直進し、レーダーから消えた。

 

「トリガーが墜落!間抜けめ!」

「いやトンネルに飛び込んだんだ!信じられん!」

 

 トンネルに飛び込んだだと?

 一瞬何を言ってるのかとAWACS一同は耳を疑ったが、直後トンネルから出たトリガーがレーダーに映された。

 

『トンネルで待機中のオルロン隊がやられました!奴らトンネルの中に入ってきやがった!』

『なんだ!?何を言っている!?報告は正確に行え!』

「トリガー、流石に心臓に悪いぞ」

「すまんすまん。中にラファールが隠れてたからな。出る前に潰して起きたかった」

「流石の俺もそこまでしてスコアはいらねえよ」

 

 カウントすらドン引きするのも無理はなく。実際通れるスペースがあったとしてもトンネルに入ろうとする奴の気が知れない。

 トリガーの頭のネジは確実にぶっ飛んでいるということを。この戦場に居るものは確かに認知した。

 

 ──レーダーに感あり。

 

「高速で接近する機影を確認!方位280!」

 

 

 

ーーー◇ーーー

 

 

 

 280、西側!

 

「機数11。こいつは無人の迎撃機だ!」

「機種は!101か?」

「機種はMQ-99だ」

 

 コンテナタイプか。

 アーセナルバードの小鳥ではないとはいえ11機はなかなか笑えない数字だ。

 

 一矢乱れず横一列で飛ぶ様は航空ショーならウケ間違いなしだろうが。乗ってるのは命令通りに動く高性能AI。

 戦場に突入したとたん気持ち悪いぐらいキレッキレに散開した。

 

「こいつが噂の無人機か!」

「パイロットなしで空戦が出来るのか!?」

「機械が人間に勝てるわけねえ」

「騒ぐな!作戦を邪魔する敵機が来ただけだ。元の任務も継続だ」

「ウィルコ!迎撃する!」

 

 どうやら444組は初の無人機戦らしい。

 更に下からも止まることなく迎撃が来る。

 これはキツいな。

 

「どっちも相手にするなんて無茶だ!どっちかだけでもキツいぜ、クソッ!看守どもは、これを知ってて俺たちを行かせたのか!?」

「囚人部隊は捨て駒なのさ」

「騙しやがって、クソッタレ!」

「懲罰兵が一人前の口をきくな!作戦は継続だ、トリガーはもう撃墜させてるぞ!」

 

 MQ-99を1機蜂の巣に。ひっきりなしにミサイルアラートが鳴りまくるが。よけれない程ではない。

 

 UAVは複雑そうに見えて、動きに一定の規則性がある。

 どの動きが最適解かを瞬時に判断し。ロスタイムなしで行動できるのが無人機。

 つまりこっちがこう動けば相手がどう動くかは何通りかしかない。

 

 だが初見でそれを理解するのは容易いことではなく、わかったとしても対処することは難しい。

 

 ベルカ戦争と環太平洋戦争を生き残ったクラウンやノッカーでさえ初見は後詰めにまわった。

 なんで出来ないかじゃない。普通出来ない。そんな早く順応することなんて。

 

 なら出来る奴が前に行くしかない。

 俺が敵を撃墜しまくれば周りの奴も希望を見出だせる。少なくともこの場で一番無人機と戦ったのは俺なのだから!

 

 バレルロールで回避からのハイヨーヨーで側にいたMQ-99の背後に。

 FOX2!撃たれたミサイルを回避することなく無人機が真っ黒に燃えながら地に落ちた。

 

「すげぇ、もうUAVを2機も」

「こちらスペア15!無人機はトリッキーだがそれだけだ!ストーカーの如く追いまくって背後を取るんだ!高性能過ぎるデコイだと思えばなんとかなる!」

「それでなんとかなるのお前だけだろ!」

「偉そうに指図するなルーキー!」

 

 ダメですゴーレム1!ここで厄介な縦社会が出てきて伝わりませんでした!

 トップのバンドックはなんも言わないから誰かが言うしかないだろうがそういう問題ではなかった!

 

「とにかく動くんだ!動きまくれば死にはしない!」

「こちらスペア7!くそっ、ケツにくっついてる敵を追っ払ってくれ!」

「無理だ!こっちも手一杯だ!」

「ハイローラー、ミサイル!よけろ!」

「ぐっ。クソ、クソッタレ!食らった!まだやれる!まだやれる!」

 

 ハイローラーのF-16Cは!あそこ、くそっ近いけどUAVが入り乱れてて遠い!!

 

「ハイローラーまたミサイルだ!ミサイル!」

「7時方向!よけろ!ハイローラー!!」

「死ぬもんか!最大級の博打を見届けるまでは………」

 

 言い切ることは叶わず無人機のミサイルがハイローラーを貫き爆散した。

 パラシュートなし、あれは即死だった。

 

「ハイローラー!」

「なんだ、誰が落ちた!?」

「ハイローラーだ!ハイローラーが落とされたぞ!」

「1機落とされたぐらいで怖じ気づくな腰抜けども」

 

 クソッ!

 まだ俺との大博打の途中だったろ!お互い生き残らなきゃ意味ねえだろうが馬鹿野郎!

 そしてここの命の扱いが軽い!薄々わかってはいたが!

 

「弔い合戦をする!」

 

 悔しさと悲鳴を上げる身体をバネにしてF-15CがMQ-99を食い漁る。

 相変わらず横からは当てれる気がしないが、背後からならなんとか!

 

「1機キル!次ぃ!」

「凄いなトリガー。なんでそんな動ける?」

「喋ってないで1機ぐらい落とせよタブロイド!」

「おっと、そう言われちゃ頑張らないとな!」

 

 タブロイドのミラージュ 2000-5も急旋回して無人機の背後に回ろうとするが、中々上手く行かないのか防戦一方に。

 他の奴らも同じか。自称凄腕の伯爵はどうなってる!?

 

「おい、胴元が死んだら賭けはどうなるんだ!」

「無効に決まってるだろ間抜け。よかったじゃねえか、どうせ負けてたのが無効になっ──ザーー」

「また1機やられたぞ!」

 

 いまのスペア3か?喋ってるのに夢中になってるから!

 それに触発されて通信が情けない声で溢れかえった。

 

「もう無理だ!撤退だ!」

「こんなとこで死にたくねえよ!」

「指示に従え!戦闘は継続だ!従わない者は処罰する!」

「被弾!被弾!だめだ!母さぁぁん!」

 

 また落ちた!今度はスペア13か!

 道半ばで3機落ちるなんて。士気はてんで落ちて、戦いになるのかこれは。

 

「喧嘩にならねえ。パイロットがいなくなるぜ」

「黙れ!」

「やってられるか!」

 

 チャンプの通信を皮切りに生き残った奴らが次々と東に飛んでいく。

 補給を受けに行くようには見えない、まさか!

 

「おいお前ら何逃げてんだ!まだ戦えるだろ、戻れ!バンドックの話聞いてなかったのか!」

「うるせえよトリガー!こんなとこに居られるか!」

「俺たちは帰らせてもらう!」

「クソッ!おいチャンプ!お前チャンピオンだろ!こんなとこで逃げて良いのかよ!」

「馬鹿言うんじゃねえ!俺たちは看守に騙されたんだよ!お前も馬鹿正直に意地張ってんじゃねえぞ!」

 

 計7機いたうちの4機が戦線を離脱。

 残ったのは俺とタブロイド、あと意外にもカウントだ。

 

「やる気があるのは俺たちだけみたいだな。トリガー、ここは撃破数勝負といこう。どっちが一番か、はっきりさせよう」

 

 戦績をワイロで勝ってる奴が何を言ってるんだ?と口走りそうになったが。

 ここで変に言うと拗ねて帰ってしまうかもしれないし………

 

「いいぜ。白黒つけてやる。撃破数はいまから撃墜した数でいいな」

「おいおい、弾薬の差が激しいんじゃないか?勝負にならねえぞ」

「じゃあ俺がトリガーと組むよ」

 

 翼端に付いたのはタブロイドのミラージュ。

 なんのつもりだ?

 

「おいタブロイド!お前も逃げたらどうだ。お前の腕じゃ犬死にが関の山だろ」

「いや、俺はトリガーに着いていくよ。腕のいい奴といる方が生き残れる。それにこいつを死なせるのは惜しいだろ?」

「死にたい奴は死なせてやれ!」

「組む奴を間違えたなタブロイド。撃墜数なら俺が上だ」

「カウント?ハンッ、頼りにならないね。水増ししてトリガーに勝った気でいる奴の腕前なんて」

 

 おー、嬉しいこと言ってくれるじゃないか。

 もっと言ってやれと言いたいがヘソ曲げないかな伯爵。

 

「いいさ。腹減りと臆病者が組んだところで俺の優位は変わらねえ。好きにしな」

「よし、トリガー。エレメントを組むぞ。勝ち馬に乗せてもらう」

「了解。また一泡吹かせてやる!」

 

 ここを生き抜いてハイローラーへの手向けにしてやる!

 

 時間がたつに連れてMQ-99に混じってファントムやファルコンとかが混じってきた。

 練度はそこまで高くはないが、MQ-99と戯れてる時の隙を突かれるのはキツい。

 

「タブロイド、なんとか有人機を抑えてくれ」

「了解した。FOX2!」

 

 ミラージュ、ミサイル発射。

 当たりはしなかったが。無理やり動かしたせいで隙を晒したところをタブロイドが機銃で仕留めた。

 

 それを狙おうとする無人機を背後から食い破る。これで撃墜数2。

 

「すまないトリガー」

「いやナイスキル。3時方向敵編隊。UAVは言わずもがなだ、動くよ!」

 

 少しでもボサッとするとUAVの餌食だ。

 数的有利をこうもヒシヒシと感じるのはハーリング元大統領救出以来だ。

 

「スペア4、6、8、12!さっさと戻れ!敵前逃亡は厳罰に処する!」

「番犬が吠えてやがるぜ。ウォンウォーン!」

「貴様ら………帰ったら覚悟しておけ」

 

 凄いなチャンプ、色んな意味で。

 あの強面相手にそう言えるのは恐らくお前だけだろうよ。

 

「逃亡中のスペア隊!新たな敵機が高速で接近中!機数2、貴様らの進行方向だ!」

「2機だって?そんなんて止められると思って。なんだ、アラートが、ミサイル!?」

「おい待てこの距離だぞ──」

「スペア4、ロスト!敵の機種はF-14D、F-15C!」

 

 言葉が途切れると同時にレーダーの光点が一つ消えた。

 4がやられた!?長距離ミサイル!?

 

『こちらキートン。カトンボが1機落ちたわ』

『おいおいこんなひらけてるってのに落ちるのかよ。敵は雑魚っぱかぁ?』

『フラフラした飛び方に機種もバラバラね、絶対センスのないブサイク集団だわ』

『じゃあ俺たちの勝ちだな。さっさとぶちのめしてディナーと行こうぜ!ファング、エンゲージ!』

『あたし一人でもやれるっての!キートン、エンゲージ!』

 

 2機が更に速度を上げた。

 援軍か哨戒機か、もしや………!

 

「速いぞこいつら、何者だ!?」

「ただもんじゃねえぞ」

「敵のカラーは!」

「なんだって!?」

「敵のカラーリングはなんだ!もしかしたらネームドかもしれない!」

 

 だとしたら違う機種で1機ずつというのも説明がつく。

 レーダーの動きだけでも普通とは違う。

 

「クソッ、カラーリングなんか見てる余裕ねえよ!」

「スペア12!後ろにトムキャットついてんぞ!」

「うるせえ喚くな!こんな見え見えのポジションで」

『残念、上ががらあきなんだよ!』

「あーくそっ落ちやがった!スペア12がやられやがった!」

 

 このままじゃ全滅もあり得る。

 あいつらが落ちたら3機でネームド、UAV、航空戦力と地上戦力を相手にしなきゃ行けねえ。

 

「スペア15、FOX2!よしラスト!」

「7機めか!?エース以上だぞトリガー!」

「フン、勝負は俺の勝ちだな、俺は8機やってる」

「サバを読むな、お前は4機だ」

「おいおいレーダーは正常か?」

 

 AWACSのレーダー疑ったらお仕舞いだぞ詐欺師。足し算も出来ないのか。

 さて………

 

「ここはもういいな。スペア11、俺はチャンプたちのとこに行く」

「助けに行くつもりかトリガー?ヒーロー気取りめ」

「二人がやられたらこの状況であいつらとも相手にしなきゃ行けないだろうが!少しでも頭数増やして生き残るしかない。どうするタブロイド、俺は行くぞ」

「着いてくよ。そう決めたからな」

「よし旋回!」

 

 疎らになった敵を突っ切るようにイーグルとミラージュが東に向かう。

 

 カウントはほっといても逃げるか撃ち落とすかして生き残るだろう。と思ったが少し遅れてカウントのSu-33がついてきた。

 

「チャンプ、フルバンド!出来るだけそいつらをこっちに引き付けろ!」

「助けなんかいるか!俺だけでも充分だ!」

「そう言ってるけどフルバンドはもうこっち来てるぜ」

「この意気地無しが!」

「脳筋に付き合って死ぬほど俺は馬鹿じゃねえよ」

「誰が馬鹿だガリガリ野郎!」

「どっちでもいいから合流してくれ!」

 

 一筋縄じゃいかない相手との鬼ごっこを繰り広げる2機が俺とすれ違う。

 目の前には猛追する2機の姿が。

 

『入れ替わりでなんか来たわよ』

『1機はF-15Cじゃねえか。キートン!こいつは俺が貰うぜ!』

 

 敵のイーグルがこっちを向いた。

 ヘッドオンされないように大回り気味に旋回、アップポジションから敵を見下ろした。

 

「やっぱな。砂漠迷彩のF-14Dと青のスプリッター迷彩のF-15Cを確認。F-14Dの方は主翼に猫の目のエンブレムあり!F-14D(キートン)F-15C(ファング)だ!」

「ネームド2機かよ!てかなんでエンブレムまで見えんだお前!」

「キートンはここの近くに居たみたいだが。ファングがここに居るなんて情報は聞いてねえぞ!」

「どうするバンドック。さっき以上に戦力差がある!」

 

 キートンとファング。

 どちらもネット、SNS界隈でも有名なインフルエンサーパイロット。

 華やかな功績とその容姿はジェスターと同じ部類の広告塔タイプのネームドだろう。

 だがジェスターより、手強いのは確かだ。あれは例外といえばそれまでだが。

 

「敵基地への攻撃は一定の戦果を上げた。だがまだ弾薬が残っているようだ。攻撃は続行だ、俺が良いと言うまで戦闘を続けろ」

 

 だよな!そうだと思った。

 というよりあいつらが無断補給しなきゃ帰れたか?もしかして。

 

 いや、泣き言文句は生きて帰ったら。どっちにしろネームド相手に振り切れる自信ないし。

 弾薬は残り少ないが………

 

「よし行くぞっ!」

 

 操縦桿とスロットルを倒して右斜め上にシャンデル。目線の先にはファング。

 

「こちらスペア15、F-15Cは俺に目を付けてる!子猫の方は頼むぞ!」

「俺がやる。ネームドを落とせば俺の家柄に箔が付くってもんだ!」

「じゃあ俺は追ってきてる航空戦力をやるかな。ネームドは任せるぞ二人とも」

「仕方ねえ!やってやる!」

「てきとーやってに逃げ………れはしねえか」

 

 タブロイド、チャンプ、フルバンドの3機は反転。

 俺とカウントがそれぞれのネームドと相対する。

 

『なに?タイマンでもやれるってわけ?』

『俺たちがネームドだってわかってないようだな!』

 

 想定どおり別れてくれた。あとは俺の腕次第。

 軌道エレベーターの時のローニンは手強かったが。今の俺はF-15C。機体性能はほぼイーブン。

 

『おらおらおらぁ!!』

「え、うそ、え!?」

 

 思わず目を疑った。

 なんと正面のファングが連続でミサイル4発、4AAMを単発ロックで連射してきやがった!

 なんて贅沢な使い方!

 

 思わずパワーダイブからのフレアで辛うじてやり過ごす。

 驚く暇もなく、急降下によるマイナスGに去らされながら敵の姿を探す。

 上を見上げると、そこには機首をこちらに向けたファングが。

 

 フットペダルを蹴り飛ばし操縦桿を思いっきり横に倒す。

 敵の機銃が掠めるなか躊躇わずすれ違うファング。イカれてんじゃねえかこいつ!

 

 体勢を立て直そうとした最中今度は4AAMとAAM合わせて6発同時発射してきやがった!クレイジー!クレイジー!

 敵の後先考えない先方に舌を巻きながら必死に回避機動。

 

「スペア15、長距離ミサイル!回避しろ!」

「こなくそぉあ!」

 

 バンドックの警告。

 すると別方向からアラート!キートンからのLAAMか!

 急旋回からのループダイブでキートンのミサイルをやり過ごす!

 

「くぅっ!カウント!あんまそいつに余裕与えんな!こっちに飛び火する!」

「知るか!そっちでなんとかしろ!」

「あいよぉ!ってまたぁ!」

 

 また長距離から撃ってきた。カウントとのドッグファイトで死に武装になってるLAAMでこっちの戦場を乱してきてやがる!

 

『おいキートン!こっちの邪魔してねえでスホーイ落とせよ!』

『なに言ってんの。どっちも落とすに決まってんでしょ!そっちこそバカスカ撃ってる癖に1発も当てれてないから手伝ってやってるのよ。感謝の一つないのかしら?』

『うるせえ!今までのはただの威嚇だ!黙ってそっちと乳繰り合ってろ!』

 

 ファング再接近。こっちはそっちほどバカスカ撃てるものでもない。

 こっちはもうほぼ弾は撃ち尽くしているというのに。

 

「またロングレンジ!」

 

 キートンは懲りずにこっちに撃ってくる。

 落とす気で撃ってるようには見えない。こっちに機首が向いたついでに撃ってるのだろう。

 かといって近づいたらカウントもファングの4AAMに巻き込まれる。あんなのでも落ちたら困る。

 だがキートンのLAAMがもしタブロイドやチャンプに向いたら………

 

「決めた。腹くくれカウント!」

「なにを?っておいお前!」

 

 LAAMを正面に見据えてから回避。そのままスロットルMAXでカウントとキートンに向かっていく。

 

『ちょっとこっち来てるんだけど!』

『ハハーっ!纏めて落としてやるよ!』

 

 ファングが4AAMをスタンバイ。こっちは俺をロックしているが、カウントもロックするまで撃たないつもりなのかまだ撃ってこない。

 

 限界数までロックしたいという気持ちはわからなくもないが。

 それが隙になる!

 

 気づかれないよう徐々に減速。カウントとファングの相対距離を予測して………

 

『ロック!おらいけぇ!』

 

 ここ!ファングが撃ち込むと同時に機首を上に上げてコブラ擬き。同時にフレア放出で撃ってきたミサイルは明後日の方向に。

 

『なんだって!?イーグルでコブラを』

 

 失速寸前で機体を立て直し、追い越したファングの背後を………取った!

 

「FOX2!」

 

 ミサイルを2発発射。

 排気煙を吐きながら撃たれたミサイルはファングのF-15Cの頭上で破裂した。

 だが致命弾にはなっていない。

 

『ぐふっ!馬鹿な!F-15Cだぞ、奴と同じ機体だぞ!技量で負けたというのか!ネームドの俺が!』

「ミサイルは闇雲にばらまくもんじゃねえんだよ、落ちな、お飾りさん!」

『嘘だ!俺はネームぐふぉふっ』

 

 上からなぞられた機銃の群れがファングのコクピットをズタボロにし、ファングのF-15Cが後方で爆発した。

 

「スペア15、ネームド撃墜!」

「すげぇ」

「流石だな、トリガー!」

『ちょっと何落ちてんのよ、あの顔だけ野郎!ぐうっ!』

「いただきだ!」

 

 キートンのF-14Dのエンジンにカウントが放ったHVAA、高速ミサイルが直撃した。

 尾翼とエンジン片方吹っ飛んだF-14Dにもはや飛ぶ能力はなかった。

 

『嘘!嘘嘘嘘!冗談じゃないし!!』

 

 現実を受け入れないままF-14Dのキャノピーを吹き飛ばしキートンがベイルアウトする。

 パラシュートの白い花が夕焼けの戦場に開いた。

 

「ここで後顧の憂いを断っとくか」

「カウント!」

「冗談だよ。そこまで落ちちゃいねえ」

「そう思いたいよ」

 

 ベイルアウトしたパイロットへの攻撃はパイロットとして一番恥ずべき行為だ。

 そうなれば、もう罪人ですらないただの畜生となる。

 

「スペア2、スペア15、新たな敵機接近。MQ-99、数は10」

「UAV第二波かよ………」

「おいおい!こっちはネームド落としたってのに休みなしか!?」

「ああ、生きてるうちはな」

「くそっ。おいトリガー、勝負の続きだ!」

「あーすまん。無理だわ」

「は?ここまでやって逃げるのかよ!」

「いや、俺もやれたらやりたいんだけど」

 

 コクピットのウェポンカウンターに表示されたGUN、MSL、4AAMが全て赤文字で0と表示されていた。

 つまり。

 

「もう全部出し尽くした。なんならフレアもない。あとは囮として飛び回るぐらいしか出来ねえけど燃料もそこまで余裕ない。ということでタブロイド、俺の勝利はお前に預けた!」

「いやいや、もう俺が頑張らなくても勝ってるんじゃないか?」

「ここでカウント追い上げたらヤバいぞ。まあ無理しない程度でな」

 

 適度に緊張感を残しつつ、俺は作戦終了まで敵の射程圏外の空をゆるりと飛んだのであった。

 

 

 

 

 

 作戦時間終了。

 

 UAVはタブロイドが3、カウントはやる気を出したのか7。

 チャンプとフルバンドは地上戦力を根こそぎぶっ壊してロカロハ基地は事実上の更地となった。

 

 一時間飛んだのではと思ったが15分しかたってないらしい。空にいると時間の感覚がバグって仕方ない。

 

「よし、敵の基地に充分な打撃を与えた。スペア隊、作戦終了だ、帰投しろ。貴様らがここまでやれたことはまったくの予想外だが。これで正規軍に被害は出ないだろう。よくやってくれた」

「褒められてる気がしねえや」

「あー帰ろ帰ろ!補給なしで良くやったよ俺!疲れたけど、これで独房はなしだよな?」

「どうかな。案外一緒くたに独房入りかもしれん」

 

 そうなったら俺は司令官のメタボ腹にダイナミックエントリーしてやる。

 

 ………しかし。こっちの損害も無視出来んな。

 10機編成が半分になった。

 

 馬鹿野郎が、先に逝きやがって………

 

「おい!誰が独房入りか賭けようぜ!あの博打頭がいたら言っただろうなぁ。フハハハハハハハ!!ハハッ………」

「「…………」」

 

 通信越しにでもどんよりした空気が漂った。

 丁度あいつのことを考えてたらだこれだ。

 一瞬フルバンドに殺意が芽生えたが直ぐに呆れが勝ってしまった。

 

「どうしたお前ら。仲間が冗談を言ったんだ。笑ってやれ」

 

 笑えねえよ。ダダ滑りもいいところだ。

 バンドックも分かって言ってるんだろうからタチが悪い。

 仲間の死をネタにするのは此処では日常茶飯事なんだろうけど割りきれん。

 

 流石のあいつもこんなクソジョークに笑うなんざ………………フフッ。

 

「ハハハハハハ!!」

「あん?」

「トリガー」

 

 思わず笑ってしまった。無論フルバンドではなく、あの世に逝っちまったハイローラーに対してだ。

 

 奴のことだ、自分の生き死にすら賭けに乗せて、今頃空で盛大に負けちまった!と大笑いしてるに違いない。

 ハイローラーと過ごした時間は少ない。奴の何をしってると言われたら見たまんましか答えれない。

 だけどなんでかわからんが、分かってしまったのだ。

 なんせあいつは賭け狂い(ハイローラー)なのだから。

 

「よしっ!じゃあハイローラーに変わって俺が胴元を引き継ぐよ。賭けの内容は誰が独房に行くかだ。俺は無論フルバンドに賭けるぜ」

「はっ?なんでだよ」

「無断補給に敵前逃亡、おまけに一番戦果が少ない。これほど分かりやすいのはない。あいにく俺は博打打ちじゃないからな。安全牌を取らせてもらう」

 

 通信越しにテーブルを広げると、無音だった通信が少し賑わい始めた。

 

「俺もフルバンドに賭けるぜ!」

「じゃあ俺もそれで」

「トリガーと同じは癪だが俺もフルバンドだ」

「バンドックはどうする、乗るか?」

「カウント、フルバンド、チャンプだ」

「「「それもう確定じゃねえか!!」」」

「ハッハッハッハ!!」

 

 これじゃあ賭けにならない。

 

 悪いなハイローラー。俺はやっぱ賭け事に向いてないかも知れない。

 

 だけど見てろよ。絶対にあんたを勝たせてやる。

 死んだぐらいで賭け事を下りるなんて。

 

 博打打ちの名折れだからな。

 

 

 

 

 






【FLIGHT REZON アサルトレコードNo.5】

ネームド:ファング
機種:F-15C イーグル
カラー:青のスプリッター迷彩
派閥:急進派
パイロット:セバスチャン・コッホ

キートンと共に444飛行隊を奇襲したパイロットの1人。
広報系パイロットで勢いはあるがそれだけで腕前は並。
同じF-15C相手のトリガーに向けて手持ちの4AAMを単1目標に一気に発射するという豪胆な戦い方をしてトリガーの目をひんむいたが。パイロットの技術さで敗北。
自身の敗北を認められないまま機銃によりミンチとなる。


【FLIGHT REZON アサルトレコードNo.6】

ネームド:キートン
機種:F-14D スーパートムキャット
カラー:砂漠迷彩
派閥:急進派
パイロット:ソフィー・アンドレ

ファングと共に奇襲したネームドパイロット。
エルジア内でアイドル的な人気を誇る女性パイロット。
LAAMによる撹乱戦法を得意とし、カウントを相手に取りながらロックオン出来次第トリガーにLAAMを放って人知れずファングのサポートをする(これがない場合もっと早くファング)は落ちていた。
ファングが落とされたことによる動揺を突かれカウントのHVAAにより撃墜。こちらはファングと違いベイルアウトした。

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