エースコンバット7 FLIGHT REZON 作:ブレイブ(オルコッ党所属)
ZEROタグをつけるほどではないけどZERO要素しか書いてない私
バルトライヒ山脈のクレーターを見た後。真っ直ぐホフヌングに向かってホテルにチェックインした。
焦土作戦で更地同然となったと言われたホフヌングは7年の歳月を持って街の姿を取り戻していた。
ラリー曰く、数は半分ほどと言えど工業都市としての姿を取り戻しつつあるとのことだった。
「ラリーはさ」
「ん?」
「なんでその。そこまで核兵器を嫌うの?」
ホテルのベッドの上で俺はラリーに聞いた。
核兵器が恐ろしい兵器だというのはわかった。だけどラリーが言ったそれは悲痛に満ちていて。聞いた自分でさえ悲しくなるような気持ちになった。
「嫌うというか。嫌悪したというか」
「何か違うの」
「………ベルカ戦争が終わった少し後に、俺は撃墜されてベイルアウト、脱出したんだ。死ぬんだなと思った。だけど死ねなかった。痛みでまともに動かない身体を引きずって進んだ先は、あのクレーター、核の爆心地だったんだ」
「あそこに?」
「その光景を地面から見たとき、どうしようもなく悲しくなったんだ」
草木も、水も、生き物もなく。建物の残骸がほんの少し残っただけ。
なにもない真っ黒な大地。
この場所には沢山の人が居た。そう肌で感じて、身体の痛みとは別に胸が激しく痛んだのだと言う。
「俺は爆心地近くの村人に救われた。得体の知れない俺を助ける為に。少ない薬と食料を分けてくれてな………身体が動くようになったときに村を見て回ったんだ。皆必死に命を紡ぎながら生きていき、そして紡げない人も居た」
「死んだ人が?」
「ああ、それも苦しんで死んでいった。死んだ奴らは若いのもいれば老人や、お前より小さい子供もいた。その大半が、核兵器の放射能で被爆した人たちだった」
村は戦争難民で集められた場所だった。
その大半が核によって家をなくした人ばかり。一人、また一人と核がもたらした放射能で死んでいった。
ラリーが滞在してる間に、村の三分の一が死んでいった。
「怖くなった。核爆弾が爆発して甚大な被害が出て、それで終わりなんてなかった。核兵器というものが頭では分かっていたつもりだった。だが実際に目の当たりにした時の恐怖。そして俺は………怖くなった。これが人が爆弾を落とした結果だなんて、戦争による結果だとしても。こんなのは悲惨すぎる」
「戦争にもルールはある」
「ああ。その言葉が痛々しい程鮮明に甦った」
ラリーはやるせない顔を見せながら窓の外を眺めた。
夜になっても下にはまだ人がおり、笑っている顔もあれば急いで走る人もいた。
「それがラリーが核を嫌う理由」
「まあ、な。どの口が言ってんだって話だが」
「え?」
「なんでもない」
それで話は終わった。
空いた時間は文字の読み書きを教わった。
ベルカ語はある程度わかっていたので。全国で普及しているオーシア語を重点的に覚えた。
世界で生きていくのにオーシア語は覚えておいて損はないと言っていたので、そこに力を入れていた。
「人の言葉って色々あるんだね」
「まあな。そしてその数だけ国がある。煩わしいよな。言語が違うだけでコミュニケーションが取れなくなると言うのは」
言葉。
俺の場合、叔母さんに教わったベルカ語しか知らない。
はい、いいえ、ごめんなさいぐらいしか言わなかったけど。
ラリーから色々聞いて、自分はなんて狭い世界に居たんだろうと思った。
「そういえば。ラリーは目的があって旅をしてるんだよね。どうして傭兵をしながら旅をするの?」
「国境の意味を確かめる為だ」
「国境………ってなに?」
「文字のとおり国の境目だ、ちょっと待ってろ」
ラリーのカバンから世界地図を取り出した。
それをテーブルに広げ、明かりを近づけた。
「見てみろ。国があって、黒い線が引かれてるだろ? これが国境だ」
ベルカはオーシア大陸のうちの一つの国。
ベルカの左には凄く大きい土地にオーシア連邦と書かれている。
ベルカの下にはウスティオ、その下にはサピン。
ベルカの右にはレクタやゲベートと言った小国の集まり。更に右にいくとユージア大陸とエルジア共和国が。
南オーシア大陸には、オーレリアとレサスという国がある。
そして地図の左にベルーサ大陸。その大部分をしめるユークトバニア連邦共和国と、上に位置するエメリアとエストバキアとノルデンナヴィク。
「まあ大まかな国はそんなところかな」
「………」
「どうした?」
「ベルカって。小さいんだね」
隣のオーシアやユージア、ユークトバニアなどのでかいものと違ってベルカは結構こじんまりしている。
自分はあの家から出たことがないが。あの家があった今立っている国はこんなにちっぽけなものだったんだ。
「戦争前のベルカはこれぐらいあったんだけど。あの核のクレーターを中心にオーシア、隣のでかい国のものになったんだ」
「戦争で負けたから」
「そうなるな」
「でもなんでオーシア? 勝ったのは円卓の鬼神とラリーでしょ? ならウスティオの物になるんじゃないの?」
「そこはまあ………政治的ななんやかんやがあったんだ」
お前が理解できるのはまだ先だなと頭を撫でられた。
子供扱いというやつだろうが。だけどなんとも心地よくて目を細める。
「じゃあオーシア大陸の右側は国境だらけってことだね」
「そうなる。だからここら辺の空は狭かった」
「狭い?」
「国境を許可無しに飛び越えて飛んだら、それは侵略行為になる。だから本来ベルカはベルカの、ウスティオはウスティオの国境線を超えて飛んだら駄目なんだ」
もしそれを無許可で飛び越えるとしたら。それは戦争という状況になっているということだろう。
「リヒト。どうして戦争は起きると思う」
「………?」
「国なんてものがあるからさ」
国と国の利害が食い違えば戦争が。
一つの国が利益を伸ばし、それを良く思わないものがいれば別の国が戦争を。
民族、宗教、資源、政治、領土。
そんな国と国との小さないさかいが大きな戦争に発展する。
「過去に色んな戦争があった。国のなかで起こる内戦もあるが。大きな戦争はやはり国と国の争いだ。なら国が、それを隔てる国境線をなくし、全てを一つにすれば戦争は終わるのではないか。なんてことを考えたテロ組織がいたんだ」
国境無き世界。
各国の将校が集った巨大クーデター組織。
新型核兵器を使い国家や国境の概念を破壊し。世界を、国境のない新たな社会秩序をゼロから目指そうとした。
「そいつらは先ず大国オーシアの重要施設を破壊しようとした。その次はユークトバニア、その次、その次はと。世界のバランスをぶっ壊して。世界をまっ更な状態にし。最後には境目などない、全てが平等な、戦争のない世界を目指した」
「………よくわからない」
「ああ、そうだな。突拍子もないことだ。結果は、まあアヴァロンダムで話した通りだ」
円卓の鬼神に阻止され、世界への破壊は未然に止められた。
「そのテロ組織は。本気でそれを?」
「ああ。少なくとも主導者の一人は本気でやろうとした」
「なんで知ってるの?」
「そいつは俺の古い友人だった」
「いまその人は」
「なんとか生き延びたが。そのあと別のテロで三年前に捕まって今は牢屋だ」
その男は破れてなお、国境無き世界として活動し続けていたという。
「俺も最初はそうなのかもしれないって思った。だけど、撃墜してあのクレーターに落ちて。そこからまた考えてみた。国境をなくせば確かにそうなるかもしれない。だけど反対に、そうならないかもしれないって」
「だから旅を?」
「ああ。国境を見て、その意味を確かめるためにな。答えなんかないかもしれないけど。それでも探してみたい。そんな思いからな」
答えを見つけるまで。
いや、答えを見つけた後でも探すのだろうか。
ラリー・フォルクの旅の終わりは何処にあるのだろう。
それは彼自身にもわからないのかもしれない。
「リヒトはどう思う? もし国境をなくして、世界が一つになったら、戦争は起きないと思うか?」
当時8歳の俺には難しすぎる問題だった。
あの牢獄のような家から一歩も出ず、外界から遮断され。暇潰しに叔父さんが捨てた新聞をよくわからないまま眺めていたくらいだ。
だけど、何故かわからないが。言葉は出たのだった。
「国境がなくなっても戦争は起きると思う」
「それは、どうして?」
「だって。国は戦争しないもん」
「………どういうことだ?」
「戦争をするのは、国に棲んでいる人なんでしょ? 国境無き世界って組織も、人が武器や戦闘機を飛ばした。だからこの世界に人がいるなら、たとえ線がなくなっても戦争は起きるんじゃないかな」
「………………」
「みんなが仲良くすれば、戦争は起きないと思う」
ラリーは言葉を失った。
考えもしなかった訳ではない。ラリーもその考えに至ったこともある。
彼が驚いたのは。まだ子供で、なにもしらない筈のリヒトがそんなことを言った事にあった。
「それはリヒトの考えか? それともお前の叔父さんや叔母さんが言ってたのか?」
「叔父さんと叔母さんは戦争のことは一度も話さなかったよ。ベルカ戦争だって、ラリーから初めて聞いたぐらいだもん」
ということは。本当に目の前の少年の考えなのか。ラリーはますます開いた口が塞がらなかった。
彼の返答に「世界はそんな簡単なものじゃないんだ」。そんなことを言えないぐらいの衝撃だった。
「ラリー?」
「あー、なんだ?」
「ごめん。意味がわからないことを言った」
「いや、そんなことはないさ。お前の言ってることは、正しいと思うよ」
「そう?」
「そうさ。みんな手を取り合ったら、戦争は起こらない。まったくその通りだ」
それが出来ないのが人だ
だが信じ合うのもまた人だ。
それを改めて気付かされたと、ラリーは思った。
だからこそラリーは彼に話せなかった。
自分がさっき話したテロリスト。
国境無き世界の一員だったことを。
ーーー◇ーーー
朝露が光る朝にホフヌングをたった。
途中のケラーニヒブルグとタウスブルグという城を横目にしながらベルカとウスティオの国境に入った。
国境越えの手続きは時間がかかった。
帰ってきたラリーによると。俺とラリーがベルカ人だからってことらしい。
7年という月日がたってもベルカは周辺諸国から疎まれる存在で。
だがこういうのは慣れっこだと笑うラリーは終始温和な雰囲気で警備の人と談笑ののち許可を取ってきた。
「ベルカからウスティオに行くにはここを通るしかないんだ。ここ以外を通ったら捕まってしまう」
「通れそうな場所はいっぱいあるのに」
「そうだな。そういう見えない壁が国境なんだ。煩わしい反面、それはお互いを守るための盾だ」
しばしの足止めをくらったピクシーカラーのサイドカーはやっとこさ国境を越え、俺はついにベルカを飛び出した。
振り替えると雪に覆われた大地が延々と続いていた。
あそこに自分が住んでいた。
そしてラリーと出会った。
ラリーと出会ったのは一週間前だというのにずっと昔のようにも感じた。
外の景色なんてろくに見てなかった。薄暗い部屋。格子から見える景色が全てだった。
だからベルカというものに故郷という感情はわかなかった。
それに。
「寂しいか?」
「ラリーがいるから寂しくない」
「言うじゃないか」
サイドカーに揺られながらラリーに作ってもらった単語帳を眺めていた。
まだまだ覚えられる言葉は少ないが。新しいことを覚えるのは楽しい。
叔父叔母のいたところではまったく勉強してないという訳ではなかった。むしろ手伝いをしない時間は全部勉強に当てられていた。
今となって考えれば。あれは元の家に戻った後に教養がついてないことを咎められると思っての事だったのだろうか………
「あっちの方は円卓か」
「円卓?」
「エリアB7R。ベルカ戦争で一番の激戦区だった場所だ」
エリアB7R。
別名『ベルカ絶対防衛戦略空域』
北緯24度、東経245度に位置する直径400kmの円形に窪んだ大地。
ベルカ戦争だけで100機以上が撃墜されるほどの激戦区と呼ばれた由縁はその地に眠る潤沢な地下資源が眠るその所有権争い。
そしてベルカの重要な防衛戦であり、誇り高きベルカ騎士の象徴だった。
「あそこは天然資源が起こす磁場の影響で電波が最悪でな。通信障害が多発して、あそこで撃墜されてたとえ生き伸びたとしても、救難信号の望みは薄い。上も下も戦闘機だらけで頼れるのは自分の腕前だけ。交戦規定も『生き残れ』になっちまう程の戦場。それが円卓、エリアB7Rさ」
「そういえば、円卓の鬼神にも円卓の文字が」
「ああ。俺と相棒、サイファーはベルカ戦争で二度円卓の中に飛び込んだんだ」
サイファー。それがラリーの相棒であり。円卓の鬼神の名前。
「そのサイファーの円卓の鬼神と円卓って関係が?」
「ああ、二度目のB7R突入の時だ。エクスキャリバーを折った後に本格的にベルカを倒しに行くって時に連合軍と一緒にB7Rを制圧する任務だった。その時のサイファーの活躍が凄まじくてな。連合軍を劣勢に追い込んだベルカ空軍の殆どを食い破り、しまいには援軍として来たベルカのエースも軒並み破壊し尽くした」
シュネー、ズィルバー、シュヴァルツェ。
並み居る強豪も彼とラリーたち連合軍と傭兵には勝てなかった。
その結果を作り出したのは他のだれでもない彼、サイファー。
そして円卓はベルカから連合軍の物となった。
「戦ってる最中に敵の無線が混線してな、敵がサイファーの事をこう言ったんだ。『あれは悪魔、いやそんな生易しいものじゃない………ああいうのはな、鬼神って言うんだ』ってな。そっから奴の通り名としてすっかり定着しちまったってわけだ」
並み居るベルカの騎士を屠った者、円卓の鬼神、ガルム1。
その名前はベルカの根底に深く爪痕を残し、未だ人々に畏怖を刻んでいる。
俺の叔父と叔母が円卓の鬼神のフリをしたラリーに腰を抜かしたのが良い証拠だ。
「あいつは正しくエースパイロットだった。誰もそれを疑うものはいなかった。勿論俺もその一人だ」
そう話すラリーの顔は何処か嬉しそうだった。
その顔を見て分かった。ラリーにとってサイファーはとても重要な存在であり。
唯一無二の相棒だったのだと。
「戦闘機を降りてからサイファーと会ったの?」
「いや。会ってない」
「会いたい?」
「………………」
俺の問いにラリーの瞳が揺れた。
また駄目な質問をしたと思ったが。ラリーは会いたくないとも答えなかったから、本心ではそういうことなのかもしれない。
「お前は会ってみたいかリヒト」
「うーん。怖い人じゃなければ」
「それなら大丈夫だ。愛想は少ないが悪い奴ではないからな」
この後はテュラン山脈は不運にも天気に恵まれず、山脈ふもとの街に泊まった。
朝になっても天候は回復せず、街を出たのは昼過ぎだった。
「もうすぐディレクタスだな。今は17時前か。丁度良いかもな」
何が丁度良かったのか。
それは首都ディレクタスに到着して理解した。
泊まった宿に荷物をラリーに見せてもらった時計が17時になった瞬間。
鐘の音が大きく鳴り渡る。
鐘の音と共にラリーの語りだしが始まった
「俺とサイファーはベルカに占領された首都ディレクタスを取り戻すべく行動した。首都の奪還は並大抵のことではない。ベルカにとってウスティオ進攻の要だったからな」
作戦が終了したと思った時に援軍として来たベルカの2機のSU-37。
SU-37を使わせたら右に出るものがいないと言われた、2羽の黄色のカワウ。
2機とも凄腕だった。
基本的な飛び方に加え、彼らの迎撃用後方ミサイルには肝を冷やした。
初見で当たらなかったのは運が良かったこともあった。
「解放される直前。地元の人たちが鐘楼のある教会にたどり着いて鐘をならしまくった。それが今の時間でな。ディレクタスでは首都解放を祝って毎日17時に鐘を鳴らすんだ」
あの日もこんな夕焼けが綺麗な空だった。
「無線越しに街を取り戻した民衆の声が聞こえた。自由を取り戻した民衆の歓喜の声。これが俺達の戦いだとサイファーに言ったのは今でも覚えてる」
「ラリーの飛ぶ理由が叶った戦いだった」
「ああ。ベルカ戦争の中で一番嬉しかったな」
次第に鐘の音が鳴り終わった。
夕焼けに照らされるディレクタスは風勢があってとても綺麗だった。
「スーデントールから数日。走りっぱなしだから思ったより早いペースでグラン・メギド、サピンの首都につきそうだ」
地図を引っ張り出したラリーが指をなぞりながら言った。
サピン王国首都グラン・メギド。
そこが旅の終着点。
「………」
「どうした?」
「サピンについたらラリーと離れるんだよね」
「まあ。サピンで引き取れればな」
「………」
ぐっと唇を噛み締めた。
じゃないと「淋しい」とか「離れたくない」と声を大にして言いそうだったから。
「明日はウスティオを出て、サピンのアルロンに泊まる。そこからは目的の首都グラン・メギドだ」
「そこには何が?」
「そこには俺の友人がいる」
「その人が俺を引き取ってくれる?」
「あーーそれは………わからない」
一気にラリーの目線が泳いだ。
「わからない?」
「彼女が首都でダンサーをしてるのは知ってるんだ。だけど、連絡先を知らないから。聞いてくれるか実を言うと………わからないんだ。すまん」
唐突に歯切れが悪くなったラリー。
つまりこういうことだ。
身も蓋もないことを言えば、ラリーはアポイントメントなしで首都に居るであろう彼女に見ず知らずの子供を引き取ってくれるか相談しに行く為にベルカからサピンまで縦断しに行くために行動したということだ。
「悪い。孤児院に預けるということも考えては居たんだが。個人的に孤児院に良い思い出があまりなくてな。彼女なら信用できるし頼りになると思って行くことにしたんだ」
「うん」
「まあ、今言ってもあれだろうが、安心しろリヒト。お前の引き取り先が見つかるまで俺はお前に付き合う。絶対に放り投げたりしないから」
ラリーはそんな無責任なことはしない。会って数日だが、俺はラリーに全幅の信頼を感じていた。
だが俺は別の思考に移っていた。
「リヒト」
「?」
「なんでお前はそんな眼を輝かせてるんだ?」
普通なら無計画、行き当たりばったりと言って呆れるだろうが。
リヒトはもうそんなことどうでも良くなっていた。
「リヒト。もしかしてお前」
「………」
「引き取り先見つからなければ良いのにって思ってないか?」
「ビクッ」
図星である。
当然だ。俺は可能ならばラリーと離れたくはないのだから。
「すまないがリヒト。前にも言ったが俺はお前とずっと一緒に居られない」
それは分かっている。
ラリーは傭兵、戦場に俺を連れていくことなど出来はしない。
だがそれでも彼に問うた。
「どうしてずっと一緒に居られないの?」
ラリーと一緒にいたい。もっとベルカ戦争の話を聞きたい。
このままラリーと過ごして生きたかった。
「やっぱり俺は迷惑だった?」
「そうじゃない。だけど俺はお前とずっと一緒には居られない。お前には普通の生活をしてほしい。何にも縛られない、自由な生き方を」
「でも俺は」
「リヒト」
「どうしてさ」
「俺とお前が住む世界が違うからだ」
真っ直ぐに目を合わせるラリー。
揺れることなく真っ直ぐ見つめるラリーの瞳の奥が少しだけ見て取れた。
「なら俺も傭兵に」
「リヒト、それは駄目だ」
グッと俺の肩を掴むラリー。
傭兵のなんたるかなどわからないが。
ラリーは俺が傭兵になることを望んでいない。それだけはわかった。
「俺を嫌いではない?」
「ああ、それはない。俺はお前に出会えて良かったと思えてる」
「………わかった。我が儘言ってごめんなさい」
「いいさ。むしろお前の歳ならもっと我が儘を言っても良いんだからな」
今まで我が儘どころか自分の意思なかった。
そんな子がここまで自分の意思を持っているということをラリーはとても嬉しく思いながらラリーは目の前の少年の頭を優しく撫でた。
「まあ。もしサピンでお前を引き取ってもらっても。俺はしばらくいるよ」
「ホントに!?」
「たまには長期休暇も悪くない」
「やったぁ!!」
思わずベッドの上で跳び跳ねた。
歳不相応に礼儀があったが、その姿は正に年相応の少年の顔だった。
予想以上に喜ぶ彼の姿にラリーも自然と顔を綻ばせた。