エースコンバット7 FLIGHT REZON   作:ブレイブ(オルコッ党所属)

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STAGE30【Orange Flanker(雷鳴の空)

 

 

「無人機が偵察部隊に食い付いた!」

「チッ!」

 

 バンドックからの報告に思わず舌が鳴った

 またこいつらは毎度毎度重役出勤してくる癖にタイミングが最悪なんだから! 

 

「偵察部隊は対空兵装を持っていない! ほっておけばやられるぞ! 444全機、絶対に彼らを帰還させろ! 1機たりとも墜とさせてはならん。UAVを撃墜しろ!」

「無理に決まってる!」

「誰だか知らんやつのためにあんな中を飛べっていうのか!」

「リスクに対してリターンが無さすぎる」

「俺はごめんだぜ! 誰がやるか!」

 

 口を開けば文句ばかりで頼りないことこの上ないなうちの男どもは! 

 

 また舌を打とうとしたら前方から正規軍のF-15Cがすれ違ってきた。

 それを猛追する2機のMQ-99が。

 

「いますれ違った! 介入する!」

 

 操縦桿とフットペダルをたぐりよせハイGターン。

 キャノピーについた雨が横に流れ、機体が180度反転した。

 

 近くの無人機をレーダーロック! 

 もう一方はギリギリ射程範囲外か! 

 直ぐに兵装を切り替えてSASMセット。ロック! 

 

「FOX3、FOX2!」

 

 ミサイルが近い無人機に命中。

 そして感覚を開けてSASMの2発目も着弾! 

 

 今回は空中炸裂式のSASMを持ってきた。

 本当は4AAMを持ってきたかったが。4AAMが丁度切らしてみたいで変わりに積んできた。

 

 が、今回みたいに急いで破壊する奴には向いてるかもしれん。

 無人機はすばしっこいから。

 

「スペア15、1機救出!」

『ストライダー2の離脱を確認。いいぞ、この調子で残りの6機も救出してくれ』

「バンドック、危ない奴がいたらエスコート頼む!」

「スペア15、近い奴からやれ。お前一人でカバーしきれるものではない。スペア隊各機、トリガーばかりに働かせるな!」

「やりたい奴だけやればいいだろ!」

「みんなトリガーみたく無謀じゃねえのさ」

「勇敢と言ってほしいな伯爵!」

「フン。勇気と愚行は違う。俺の家ではそう教えられるんだ」

 

 お前はベルカ貴族の爪の垢を煎じて飲め。

 少なくとも俺の知る貴族はお前みたいに臆病者ではなかったぞ! 

 

「タブロイド、お前が俺の希望だからな」

「絶賛風に煽られ中、ウォ、凄い近くで光った」

「気張れー!」

 

 俺も気張るからな! 

 

 前方に目標確認。

 端からみても飛び方にキレがない。

 対空兵装がないまま。こんな空で追われるなんて。考えただけでもゾッとする

 

 444が基地上空で欺瞞遊撃をやってるのとは訳が違う。1分1秒ごとに彼らの命が削られていく。

 

 目の前には厚い雲。紫電がひっきりなしに光っていて流石の俺も身体が固くなる。

 だがここで止まれば男じゃない! 

 

 南無三!! 

 

「誰か雷雲に突っ込んだぞ!」

「FOX3!」

 

 横合いからSASM発射。

 ミサイルを取り出していたのだろう。

 炸裂した破片が突き刺さりそのまま火だるまと化した。

 

「スペア15が雷雲を突破した。よくやった、この大馬鹿野郎」

「その大馬鹿野郎は本当に褒めてる方だよな、ぬふぅ!!」

 

 機体に振動。キャノピーが真っ白。HUDが乱れた! 

 くそっ、打たれたか! 神頼み意味ねー! 

 

「味方機に被雷! トリガーだ!」

「大丈夫かトリガー!」

「騒ぐな! 感電死するわけではない。HUDの異常を確認しろ。落ち着いて対処すれば生き残れる」

 

 バンドックの言う通り、戦闘機には放電索と呼ばれるアースのような物があるからパイロットに感電したりしないが。この衝撃は何度も受けたいものじゃないな。

 初の雷がこれでよかったと冗談を噛ましながら機体を安定させる。

 

 HUDが乱れたあと一時的にダウンし、また乱れながら復活する。

 勿論レーダー、レティクル。シーカーも役にたたなくなってミサイルを撃てなくなる。

 

 だが打たれる前にレーダーで大まかな位置は見た。そこに飛ぶんだ! 

 

『ストライダー4、背中に敵機!』

『くそっ! 敵は何処だ!』

『サイクロプス2! ケツを狙われてるぞ』

『まずいぞ、みんな疲れてきている』

「撃墜できないならUAVとの間に割って入れ! 助けるんだ!」

「外れたか。くそっレーダーを見てる余裕がねえ! トリガーはなんであんな飛べるんだ!」

「あいつが異常なんだよ! 辺り一面雷だらけだ! まともに飛べねえ!」

「貴様らは燃料を無駄に飛ばす為に飛んでいるのか? 雷雲を避けていては遠回りになる。臆病者ども、雷雲に飛び込むんだ! トリガーがそうしてるようにな」

「トリガーの野郎。躊躇なく雷雲に飛び込んでやがる。くそっ、俺だって!」

 

 やっと重い腰を上げたか定かではないが。タブロイド以外も動く兆しが見えた。

 頼むぞ、俺ばかりに良い格好させるなよ。

 

『ストライダー3! 後ろ取られてんじゃねえ!』

『こっちは9Gに耐えてるってのに、UAVは疲れ知らずだ』

「なんで他人の尻拭いに命かけなきゃならん!」

「自分の人生の尻拭いが出来るようになってから文句を言え」

「くそっ!」

 

 カウントは知らん。

 自分に火の粉かかったら流石に動くでしょう。そう思うことにしよう。

 

『フェンサー、チェックシックス!』

『しつこいんだよ! くっ、これが最後のフレアだ』

『全機、444飛行隊に向かって飛ぶんだ! 彼らに頼るしかない!』

『前方にイーグル! 俺らの部隊、じゃないってことは』

「当たれぇ!!」

 

 正規軍とすれ違うと同時にヘッドオンで機銃を撃ってやった。

 よしキルゲット! 

 

『わーお! なかなかやるじゃねえか!』

『ランツァ、早く逃げるんだ』

『了解! しかし444飛行隊ってのは何者なんだ? みんなバラバラに飛んでやがるし、機種だってバラバラだ』

『フォーメーションもなにもないな。みんなフラフラ飛んで、素人じゃないだろうな』

 

 次は何処だ。あーもうまた!! 

 

 再び被雷してしまった。

 真っ正面から行き過ぎなのか。こういう時こそ落ち着かなきゃいけないってのに! 

 

 目の前を正規軍が横切った。

 レーダーが回復するまで目視で追うしかない! 

 

『444飛行隊の機体を視認。すげぇ、雷に当たりながら強引に食い付いてきやがる。相当ぶっ飛んでるぞコイツ』

「あーくそ! 狙いが定まらん!」

 

 このまま撃つことも可能だが。

 乱れたHUDのまま撃てばフレンドリーファイアになりかねない。

 

 まだかまだかと焦るのをお構いなしに正規軍とUAVは岩山を縫うように飛んでいく。

 よくもまあ臆せず飛んでるよ俺! こんな豪雨をHUDなしにさ! 

 

 ノイズが収まった! 

 

「FOX3!」

 

 SASMが炸裂したが落としきれていない。

 よろけて動きが止まったところを………蜂の巣だ! 

 

『助かった、この借りは忘れない』

「ん?」

 

 いま混線したか? 

 女の人だったな、いまのパイロット。

 

『サイクロプス4が離脱した。良いぞ、希望が見えてきた。護衛機の中に腕のいいやつがいるようだ』

『1機まともなのがいる。みんな彼に助けられてるな』

『俺たちと同じF-15Cのか? だがあれほんとに同じ機体なのか』

『飛び方が俺たちとまるで違う』

 

 おおっ! また光った! 

 こんな間近で見るのなかなか無いぞ。

 一生分の雷を見た気がするぜ………

 

「トリガーの奴、自分から当たりにいくレベルで飛んでやがる。命知らずにも程があるぞ!」

「だがきちんと仕事している。トリガー以外は自分の命を守るだけで精一杯なのにな」

「俺は雷雲に突っ込むほど馬鹿じゃねえ!」

「騒ぐな。偵察部隊の生存が最優先だ。繰り返す、彼らを生還させるのが至上任務だ。犠牲は厭わん」

「相変わらず無茶苦茶なことを言う。それをやってるトリガーもトリガーだな」

 

 よしもう1機撃墜! 

 あと何機だ。4、いや3機か? 

 

 残りの機体は北側。だが目の前の光景は悲惨そのものだった。

 

 雷がカーテンのように鳴りまくっている。

 ここを通れば確実に被雷するということが肌で感じられ、加えて岩山の密集地帯だ。

 

 被雷は逆にロスになるし、目の前に岩だった場合はマジで命取りになる。

 他人を助けて自分が死ぬのは本末転倒だ。言い方は悪いが、他人より自分の命優先だ。

 

 だけど目の前は雷の壁。ひっきりなしに雷が下りてきて抜け道がわからない。

 残り3機は北側にいる。

 

 前は駄目。左右は大きく迂回しなければならず。下も論外。

 なら行くとこは………

 

「トリガーが急上昇!」

「なにしてんだあいつ?」

 

 ほぼ直角に急上昇。

 みるみる高度計の値が跳ね上がり。そのまま雲の上を飛び越し、まっさらな空の下に身を晒した。

 

 雷は上に飛び上がらない。なら雲の上にいれば雷に当たらずに直進出来る。

 レーダーとHUDを確認。雲の薄いとこ目掛けてパワーダイブ! 

 

「………よし!」

 

 雷を回避かつ正規軍と無人機の後ろにつけた。

 予定外の場所からの挿入に無人機も反応することすら出来ず無防備に背を晒した。

 

 いまアドバイスという形で他の奴らに言ったら半分以上は高みの見物と洒落混むだろう。

 冗談を噛ましつつ眼光は無人機のパルスエンジン。

 よーく狙いを定め、20ミリ機関砲を存分に叩き込んだ。

 

『ワイズマン、444飛行隊の護衛機が見えた! すまんがこのチャンスに離脱する』

『生き延びた奴らの面倒を頼むぞ、イェーガー』

『ラジャー』

『バンドック、残りは俺ともう1機だ。頼むぞ』

 

 救出目標の青い光点と、UAVの赤い光点が大分少なくなってきた。

 相変わらずの曇天だが。光明が見えてきたな。

 

「スペア15、貴様だけだ。罪を償うことが出来ているのは。その調子で残りの機も救出しろ」

「そうすれば放免してくれるのか? 罪線3本の悪党を」

「人を悪党呼ばわりできる立場かカウント。笑わせるな」

「フン。どんだけ人助けしたところで罪が消えるわけじゃねえんだよ」

 

 1機ぐらい落としてから言って欲しいものだよ。そういうのは

 

 ただの嘲りかひがみかわからないが。最近カウントの舌にキレがない。

 単純に疲弊してるだけだろうか。

 

「いた!」

 

 岩山から飛び出た正規軍。がっ………

 

「あっ!」

『うおおっ!』

 

 正規軍のイーグルに雷が命中。

 目映い閃光が広がる前に視線を反らしたお陰で俺は目眩ましを避けれたが。これは本当に不味い! 

 

 ………あれ? 

 

 背後にいたUAVがガクッと速度を落としていた。

 挙動もふらついてて今にも墜落しそう。

 もしかして一緒に当たったのか? こいつはラッキーだ! 

 

 フラついてまともに動けないUAVはもはや小さいだけの的。

 しっかりと機銃でその焼け焦げた躯体を更に焦がしてやった。

 

『サイクロプス2の離脱を確認。よしこれで部下は全て逃げられた、礼を言う』

「スペア15、残りはサイクロプス1だ。UAV2機に追われている、急げ!」

「ウィルコ。だけど他の奴にも声かけてほしいんだが!」

「お前しかまともな奴はいない。さっさと行け」

「情けないなぁ!!」

 

 幸いそこまで距離は開いていない。

 おそらく編隊長なんだろうが。こんななか兵装なしで一番追われてるのはあの人だ。あとどれだけ長く持つかわからない。

 

 だけどこっちもキツイ! 

 彼らとは比べるまでもないとはいえ、何度も雷に当たりながら飛ぶのは思ったより疲労と心労が溜まっていた。

 F-15C、モスボール機だと忘れるぐらいよく動いてくれる。

 帰ったらミードさんにお礼を言わないとな。

 

「サイクロプス1確認! 最後まで逃げてくれよ隊長さん!」

『護衛機の姿が見えたぞ。本当に1機で来たんだな』

 

 流石は隊長機というべきか。

 飛び方が他の正規軍とは違いベテランのそれが垣間見得た。

 

 ロックオン。FOX2! 

 

 MQ-99を順番にロックして発射。1機にフレアで躱され、もつ1機にはヒットしたが当たる寸前に最後のあがきとミサイルを発射した。

 

『サイクロプス1、ミサイル!』

『くっ、ぬぅっ』

『サイクロプス1が被弾した!』

『ワイズマン!』

『大丈夫だ。被弾したが飛べる!』

「トリガー!」

「わかってる! いただきだっ!!」

 

 SASM発射、もう1発! 

 

 2機のSASM、破裂した破片が左右から同時に飛散し。UAVを噛み殺した。

 

「よっしゃ!」

「スペア15、周辺のUAVの全機撃墜を確認した」

 

 一気に脱力し背もたれに寄りかかった。

 犠牲者ゼロ。よくやったよリヒト………

 

「サイクロプス1が離脱する。おそらく自分だけなら何時でも離脱できたんだろう」

「ああ、飛び方に余裕があったよ。俺が撃墜させやすいように敢えて真っ直ぐ飛ばしてる風に見えた。凄いパイロットだ」

「そこまで見る余裕があったのか? ほんととんでもない奴だよお前は」

 

 そうでもないぞタブロイド。

 疲れた………、精神的にもきつかったな、今回の任務。

 

 しかし、あんな凄腕が率いる部隊がどうしてこんな目にあっているんだ。

 いったい何を命じられてこんな僻地まで………

 

『良いフォローだ、助かった。バンドック。俺たちを助けてくれたF-15Cは誰なんだ。彼に感謝を伝えてくれ』

「サイクロプス1、了解した。スペア隊、任務は完了した、RTB………いや待て」

「おい、いい加減にしろ! まだ何かやらせるのか!」

 

 なんだ? 

 レーダーに、反応? 

 

「スペア8! チャンプ! ボギーが後方より急速接近! 近くの機体はスペア8を援護せよ!」

「助けなどいるか! 返り討ちにしてやる!!」

 

 チャンプ、あそこか! 

 

 そこには岩山地帯で追われているチャンプを見つけた。

 追ってる奴は………スホーイ系? 

 

「がっちり後ろにつかれた! まだ撃ってこねえ! くそっ、ビビってなんかないぞ!」

「スペア8! ドッグファイトは禁止だ!」

「ネガティブ! カモられて黙ってられるか! ウオォォォ!!」

 

 チャンプのMiG-29Aがエアブレーキを立てて機体を傾け、空中で静止した。

 見事なコブラ機動で敵機をオーバーシュートさせる。

 

「しゃあ! 貰ったぜ!」

 

 意気揚々と敵機を追うチャンプ。

 遠目からでも上手いと思った。

 

 だが俺は違和感を覚えた。

 一瞬、敵機の速度が落ちた、追われてるのにも関わらず。

 その背中にはエアブレーキが開いていて………

 

「チャンプ! 逃げろ、罠だ!!」

「あ?」

 

 その刹那、敵機の躯体が風に舞う木の葉のようにひるがえった。

 一切の無駄もなくその場で宙返り(クルビット)をしてみせた敵機はまるで断頭台の刃を振り下ろすかの如く静かに機首を向け………

 

「っ!」

 

 一瞬だった。まるでそこ以外が時が止まったかのように。

 次の瞬間、チャンプとMiG-29Aは断末魔すら上げることなくインシー溪谷から姿を消した。

 

「チャンプゥゥゥーー!!」

 

 俺の叫びもむなしく。確実に即死なのが見てとれた。その爆煙から敵機が突き抜けてきた。

 

『お見事。しかしもっとはやく落とせたのでは?』

『………理解したいのだよ。敵を』 

 

 残心に浸ることなく、チャンプを屠った奴はそのまま次の獲物に向かっていた。

 

「チャンプが堕とされた! しかも、遊ばれてたぞ!」

「やめろ、来るな! 来るっ………」

「スペア10! なんだよこっ」

『こっちに来る!? やべぇっ』

『サイクロプス2がやられた! 嘘だろ!?』

『シーフ! 応答しろシーフ!!』

「スペア10ロスト! 更にもう1機! 偵察部隊機も1機やられた! 何者なんだこいつは! 機体はSu-30!」

 

 ドクン………

 

 心臓が鳴った。

 

「全スペア機! サイクロプスとストライダーを護衛しろ! 敵機から守るんだ!」

「ネガティブ! それは無理な注文だ!」

「寝ぼけたこと言うな! 今の見ただろ! かないっこねえ!」

 

 通信が煩かったが、それは俺の耳に入らなかった。

 

 周りの音が消え、思考が加速し、視力が際立った。

 

 Su-30………Su-30………

 

 チャンプを堕とし、続けざまスペア隊2機を屠り。正規軍すら噛み砕いたそいつの全容が見えた。

 

 黒い機体にオレンジ色。夕焼けより赤い燃え盛る業火のような色を宿した翼端と尾翼。

 カナード翼がついたSM仕様のSu-30。

 

 そして相手を弄ぶようなふざけた飛び方。

 

 ドクン。

 

『メイジ2! 援護を!  』

『がっちり後ろにつかれた! まだ撃ってこねえ! くそっ ビビってなんかないぞ!』

『誰か………援護を!』

 

 チャンプとブラウニーの声が重なった。

 

 ドクン! 

 

「見つけた」

 

 思わず漏れた声は乾きに乾いていた。

 

 溢れでる怒り、憎悪。

 胸が焼けるように熱くなる反面、頭の中で冷たい炎が燃え上がった。

 

「行けっ!!」

 

 スロットルMAX! ぐんぐんと近づくオレンジ尾翼のSu-30SM。

 

「怪物の相手をしろスペア15! お前がやらなければ味方の被害が止まらん!」

「言われなくてもっ!!」

「トリガー?」

 

 いつもと違う何かを感じたのか、タブロイドが俺の方を向いた。

 

 すれ違う寸前、俺は臆することなく真っ直ぐに機銃をぶっぱなそうとした。

 

 その瞬間、奴は爆発的に加速。カクンと音がする程鋭角的な機動でこちらの射線から逃れた。

 

「んだよそれ!」

 

 直ぐ様ハイGターン。既に5000mほど離れたオレンジを追跡する。

 あの一瞬であんな。ニトロでも積んでるのかあいつは! 

 

「任務終了って言ったじゃねえか、俺は帰るぜ!」

 

 一瞬耳を疑い、レーダーを見ると444の機体が次々と戦域外に向けて逃げようとしていた。

 

「おい何してんだお前ら! 逃げるな! 戦え! 戦え!!」

「うるせえ! こんなのに付き合えるか!」

「俺はまだ死にたくねえ」

「情けないこと言うな! 戻れっ!!」

 

 感情のコントロールが出来なくなった俺は怒号を放つ。だがそんなことお構い無しに逃げていくスペア隊。

 そのなかにはよく知るSu-33の姿もあった

 

「くそっカウント! 貴族がこんなとこで逃げるな! 誇りとかねえのか! 聞いてるのかカウント!!」

「トリガー、お人好しは早死にするぜ。俺はこんなとこで無駄死にするつもりはない。勝てない戦いはしない主義なのさ、俺は」

「ふざけるな! 腕の良い奴が我先に逃げてどうする! 戻れ! 戻れ詐欺師野郎!!」

「言ってろ。お前も死にたくなかったらとっとと帰るんだな」

 

 俺の言葉を歯牙にもかけず、カウントは優々と機体を反転させる。

 呆れと怒りがぐちゃぐちゃに入り交じった俺は。失望を込めた声色で呟いた。

 

「そうやってまた逃げるのか。メイジ2(・・・・)

「っ!」

「いいさ。口だけ貴族の恥さらしにはそれがお似合いだ。何処へでも行っちまえ!」

 

 ペダルと操縦桿を傾けオレンジの元に向かう。

 

 カウントは何かを言い返すことなくそのまま戦域外へ。

 通信越しにも息を飲むのがわかった。言うつもりなんかなかったさ。でも………

 いや、今は何も考えまい。

 

 今はお前だ、オレンジ野郎!! 

 

『一部444の機がアウトバウンドしている。どういうことか?』

『見捨てる気だ、くそったれ!』

「損傷した機体を離脱させただけだ。使えるやつだけ残す。スペア15、スペア11、エレメントを組んでしんがりに入れ」

「俺が? 無理だ………」

 

 それは他の奴らのように放棄ではなく。現実的に受け入れた否定から出た答えだった。

 何故なら直掩についていたカナード翼がついていないM2仕様のSu-30の飛び方も見て。そいつらも凄腕だとタブロイドは気づいてしまったからだ。

 

「タブロイド、すまない」

「トリガー?」

「このオレンジは今までと訳が違う。こいつを相手にしながらそいつらは相手に出来ない。なにより、このオレンジは俺が落とさなきゃならないんだ!」

 

 俺のF-15CとSu-30SMは岩山の間を縫うように飛び回る。

 タブロイドもわかっている。直掩の奴とは別格なんてものじゃない。正真正銘の化け物。トリガーでさえ倒せるかわからない相手だということ。

 

 そしてこの2機を引き付けれるのが自分だけだということを。

 

「わかった。それでいく」

「頼む。死ぬな!」

「お前もな、トリガー」

 

 タブロイドのミラージュ 2000-5がSu-30M2に向かって進路を取った。

 いまここに残ったのは俺とタブロイド。そして避難中の正規軍が数機程だった。

 

『ソル2、ソル3。しんがりは2機だ。腕のいい方を私がやる』

『了解です。キング』

『やめてくれ、その呼び方は』

 

 くそっ! 狙わせてくれない! 

 しかもこの岩の迷路をなんの無理もなく! 本当に凄腕だ。クラウンやノッカーよりも強い。もしかしたら円卓の鬼神レベルなのではと思うほど。

 

 Su-30SMが一際大きな岩山を迂回した。

 見失う訳には行かないと速度を上げてハイGターンで迂回したが。

 

「いない、何処! 後ろ!」

 

 いつの間にか後ろへ。コブラ機動でオーバーシュートさせられた! 

 

 ゆっくりとこちらを向くオレンジの機首に背筋がゾワッと来た。

 

 速度を上げ、右へ左へ。シャンデル、ハイGターンなどで振りきろうとするが降りきれない。

 そして鳴り止まないロックオン表示。そして機銃すら撃たない敵の姿、言い表せない不気味さを感じた。

 

 これか、これか! ブラウニーが味わったものは! 

 

 後頭部に銃を突き続けられているというのは。中々的を得た表現だ。

 

 しばらく追い回され続ける。

 奴はこうやって相手を弄んでから殺す。もしかしたら違うのかもしれん。他に意図があるのか。 

 だが俺はそんな飛び方断じて認めない! 認めてやるものか!! 

 

 ミサイルアラート! 

 必中を狙ったのか。間違いなく直撃コースのそれはためらいなく俺の命を………

 

「なめんなぁっ!!」

『っ!』

 

 ハイGターンで速度を落とし更に急減速、上昇。フレア放出。

 撃たれたミサイルは明後日の方向に進み。そのまま俺を追い越した。

 

『これは』

『どうしました?』

『ミサイルが外れた。当てるつもりだったんだがな』

 

 ストール、ストール! 

 

 速度を失いすぎて機体のコントロールが狂った。

 

 警告を無視してそのまま極小ループ。

 グルンと視界が裏返り。水平よりやや下向きになった瞬間にスロットルを目一杯押し込んだ。

 

『すげー。今の見たか!?』

『ああ、イーグルでクルビットをやってのけた。だがかなり無理やりだ。そのまま垂直落下してもおかしくなかった筈だ』

 

 F-15Cは本来クルビットは愚かコブラすら出来ない。

 そう設計されてないのだから。

 

 今までコブラですらないコブラ擬きを得意としていたが。クルビット、いやただの過減速空中捻りは初めてだ。

 

 もしここに他の僚機がいたら。俺は無様を晒して死ぬのみだった。

 

 加速して追い抜く勢いで再び背後を取った。

 またも蛇行して行くなかオレンジは速度を落としエアブレーキを立てた。

 

 そして次の瞬間クルビット。そのまま宙返りし、機首をこちらに向けようとしていた。

 正しくチャンプと同じやり方で。

 

 ぶちギレかける頭に冷や水をぶちこみ。もう一度ハイGターンからのハイヨーヨーで敵の横っ面に切っ先を向けた。

 

 Gで身体を締め付けられ。視界が薄くなりながらも俺の目は回避行動をするSu-30SMを逃さなかった。

 

 喰らえ!! 

 

「FOX3!!」

 

 横向きの無茶苦茶な体勢のままSASMを最後の2発発射! 

 

 フレアを撒き散らしながら回避機動をするオレンジ。

 1発をフレアにぶつけ。もう1発は曲がりくねる敵機に当たったが。くそっ! カス当たりだ! 

 

『フフッ』

『ソル1、どうしました。状況を教えてください』

『状況か。少し心が踊るよ』

 

 二度も攻撃を防いで見せたF-15CにSu-30SMのパイロットは興奮を隠しきれずにいた。

 

 まだ落ちてない。機動、攻撃、防御力揃って高水準。確実に攻撃を当てない限り落とせない。

 

 恐怖はない。あるのは怒り。こいつを落とさなければならないという怒りが恐怖を燃やし尽くした。

 

「俺が怖がると思ったか! 恐怖すると思ったか! ふざけるなよ、お前の思いどおりになどなってやるものか! お前は俺が落とす! ブラウニーとチャンプの仇だ! 今度は俺が追い回す! 覚悟しろオレンジ野郎!!」

 

 荒ぶる感情を機体に流し。イーグルのエンジンが唸りを上げる。

 なおも落ちる落雷よりも強く。激しく。

 

 3本線の狼がSu-30SMに襲いかかった。

 

 

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