エースコンバット7 FLIGHT REZON   作:ブレイブ(オルコッ党所属)

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STAGE35【Heterogeneity(空対空爆撃)

 

 

 

 アルティーリョ港が壊滅、フォコンも死亡したと通信機越しに入ってくる情報にF-15Eのパイロットは「ふーん」と何処か他人事のような腑抜けた声をあげる。

 

「全滅したの、ああそう」「ああ、やっぱりそうなる」みたいな達観した物だった。

 

「アルティーリョのオイルタンクが全焼、これは無人機供給も滞るなぁ。フォコンは………あの若僧は死んでもなんらおかしくねえわなぁ」

 

 仲間の死。それもネームドが落ちたというのにF-15Eのパイロット。TACネーム、ガゼルの口調はお気楽そのものだ。

 

 今回のガゼルの任務は先行したMQ-99と共にオーシアの編隊を撃滅。そして砂嵐という状況下において無人機がどういう挙動を行うかのデータ取りだった。

 

 ………エルジアは今、急進派と保守派に別れている。

 

 ノースオーシア・グランダーI.GによるUAVを使ってオーシアからの支配を脱却し、古き良きエルジアを取り戻さんとする血気盛んな急進派。

 

 UAVは反対。出来るだけ早く戦争を終わらせ、和平交渉に望もう。という保守派。

 簡単に言えばこの二つに別れる。

 

 ガゼルはUAVの使用についてはそこまでとやかく言うつもりはない。足りない戦力を補おうとするのは間違いではないし、実際ガゼルを含めたベテランを除き、いまのエルジアパイロットの練度は総合的に低い。

 

 その原因の一つに自国がUAV開発に御中心でパイロット育成が滞っているのがある。

 

 だが戦争を起こした若手将校に対し。保守派将校はこれはいけない。エルジアが戦争を起こせば、また【リボンの死神】が来る。なんて思ってるのがもっぱら。

 今も生きるベテランたちは、前大戦の生き残りが多く。メビウス1と呼ばれるパイロットに植え付けられた恐怖は骨身に刻まれている。

 

 それに帯してメビウス1を知らない血気盛んな若者たちは「過去の亡霊に怯えて震えるなど恥ずかしくないのか! 我々にはUAVが、アーセナルバードがある! 負けるわけがない!」と1ミリも敗北することを考えていない。

 お気楽ここに極まれり。

 

「帰りてぇなぁ」

 

 聞かれれば非国民と言われるようなぼやきを吐いたガゼル──サムエル・エベレストは派閥的には保守派という位置付けである。

 そんな保守派な彼がUAVと共に敵を討てと言われればやる気が起きないのも無理はない。

 

 UAVが撃墜されても、確かにエルジアに被害はない。量産できればそれだけ国の力になる。だが。

 

「なんかちげぇよなぁ」

 

 戦争とは、戦闘機とはそういうものではなかったはず。

 血を流さないのは良いことだが、血を流さない勝利に価値はあるのだろうか。責任と誇りのない戦争に価値などあるのだろうか。

 それは未来のエルジアに胸を張れるものなのだろうか。

 

 と、ぼやいても一軍人にはどうにも出来ないこと。

 戦闘空域に入ったガゼルはそれはそれと気持ちを切り替え、お国の為に武装のロックを外した。

 

 丁度下の方からオーシアのSu-33が迫ってきた。

 

 絶好のタイミングとポジション、ガゼルはニヤリと笑みを浮かべる。

 

「ガゼル、エンゲージ」

 

 ガゼルのF-15Eに備わった拡散爆弾、SFFSがSu-33、カウントの目の前でバラけた。

 

「どわぁぁぁぁ!!?」

「え、なに今度はなに!?」

 

 F-15Eが侵入してから数十秒後にカウントの絶叫がヘルメット越しに鼓膜をぶん殴った。

 

「どうした! どうしたカウント! 何があった!?」

「クソクソクソ! なんだよ、今の何なんだよ!?」

「スペア2、何が起こった! 状況を報告しろ!」

「爆撃だ爆撃! さっきのF-15Eから爆撃を受けた!」

「え?」

「は?」

 

 戦闘機なのに爆撃を受けた? 

 なに言ってるんだコイツ。ホラ吹きも限界突破したら理解不能だ。

 皆が呆気に取られるなかバンドックだけは思考を止めなかった。だがやはりカウントの奇天烈な言動に思わず声を荒げる。

 

「貴様ふざけているのか! 情報は正確に伝えろ!」

「ふざけてねえよ! あのF-15E、ネームドが俺にSFFS、クラスター爆弾をぶち当てやがった! なんなんだよマジで! どんな変態だよ畜生!!」

「SFFSだったとして、爆弾直当てされてなんで生きてんのお前」

「運良く掠っただけで済んだんだよ! くそ、キャノピーにヒビ入ってやがる。マジで寿命縮んだぜこん畜生!!」

 

 とんでもない話だが。カウントの必死さから嘘に聞こえない。これで嘘なら奴は大した役者だ。

 少なくともトリガーやタブロイド、バンドックはそこに現実味を感じ始めていた。

 

「やっぱ駄目か………」

「カウント?」

「さっきのでFCSが完全にお釈迦になっちまった。不調機じゃ戦えねえ、俺は撤退する」

「ホラ吹き野郎! 無人機呼び寄せといて逃げるのか!」

「勝手に言ってろ。俺たち囚人の機体にはベイルアウトが外されてる、まだ飛べるうちに帰らせてもらう。俺はまだ死にたくないんでね」

 

 カウントのSu-33が反転。基地方向に向かって飛んでいく。

 

 カウントの言う通り、俺たちのスペア隊にはベイルアウトのハンドルはあってもイジェクトは出来ない。

 エイブリルに聞いた話だと、逃亡されてベイルアウトでばっくれられても困るのと。ベイルアウト先でエルジアに捕まって情報を吐かされたら溜まったものじゃないかららしい。

 

 懲罰部隊を使って危険な任務に送り込む。

 戦争の真っ只中でさえ懲罰部隊ってワードはかなり悪印象を与える。そんな部隊を運用してるという情報がエルジアに握られたらオーシアを攻撃する格好の餌になる。

 

 ま、それだけには見えないのもあるがな。というのはエイブリルの談。

 詳しくは話さなかったが、懲罰部隊が任務で遠出すること事態に意味があるっぽい。

 

 目の前にカウントのSu-33。

 すれ違う直前黒煙を吐いてるように見えた。カウントほどの奴が虚を突かれた。決して嘘ではないようだが。やはりにわかに信じられない。

 

「トリガー。奴と戦うなら決して上を取られるなよ。俺は運が良かったが、気を抜けば一瞬でバラバラになる」

「まだ嘘ついてるぜ」

「理由つけてサボりてえだけじゃねえのか? 戦闘機が爆撃なんか受ける訳ねえだろうが」

「ハッ、ならお前たちがネームド倒してみろよ。お前らみたいな三下に出来るわけねえがな」

 

 カウントの最後っぺの煽りに単細胞な囚人たちは揃ってカチンと来た。

 誰しもカウントの言葉を虚偽だと捕らえる(狼少年なカウントが疑われるのは仕方ないとして)

 更にネームドを落とせばクッソ生意気なカウントの鼻を明かせる。

 加えて先程のフォコンがクソザコナメクジだったのも相まって自分たちでもネームドはやれると増長していたのだった。

 

 結果、カウントに触発されたF-16C、F/A-18F数機がF-15Eに群がっていった。

 

『あらあら沢山向かってきた。こいつはマズいかな?』

「こいつか!」

「落としてやるぜ色物野郎!」

「スペア5、9、12、13! 貴様ら何をやっている! 目標はタンクローリーだ! 戦闘機は後で良い!」

「うるせえ! アイツらばっか目立たせてたまるかよ!」

 

 愚直なまでに向かっていくスペア隊にF-15Eのネームド、ガゼルは慌てることなく操縦桿を握る。

 ヘッドオンで近づくスペア9のF/A-18Fに対しそのまま上昇してやり過ごそうとする。

 

「ハッ! わざわざ腹見せやがった! 空対空爆撃なんてあるわけねえ! 土手っ腹から撃ち抜いて──」

 

 次の瞬間、F/A-18Fの機首が吹き飛び、複数の爆炎を抜けたスペア9はそのまま花火となって消えた。

 

「は、は?」

『おやおや。二回も撃たせてくれるなんてサービスがいいねぇ』

「おい、あいつ今ミサイル撃ったか!?」

「知らねえ! 行きなりスペア9が吹き飛んだ!」

「まさか、本当に?」

 

 突然のスペア9の死に勇んで戦いを挑んだ奴らが揃いも揃って震えた。

 呆ける敵を待つネームドではなく。その牙を向ける。

 

「トリガー、今の見たか?」

「わからん! だけどさっきのはミサイルの爆炎じゃなかったぞ!」

 

 SFFS。本来は一つの爆弾に複数の子爆弾を抱え、広範囲を一気に爆撃するための特殊兵装。

 通常、ミサイルは排気煙を吐いて目標に食らいつく。だが今のは突然なにもない空中で断続的な爆発が起きた。

 

 本当に空対空爆撃をしたのかと。トリガーでさえ震え上がった。

 ミスターXと相手してても戦意喪失しなかったトリガーでさえそうなのだ。肝っ玉の小さい奴らが恐怖に染まるのは自明の理となる。

 

「待て、助け、ぐあっ──」

「スペア12!」

「やべぇ、本物だ。本物のネームドだっ。あ、ああぁぁぁぁぁ!!」

「スペア5! そっちにUAVが」

「こんな、ちくしょ──」

「スペア12、ロスト。続けてスペア5もロストだ」

 

 F-15Eに追いたてられたスペア12がUAVに隙を去らし。さらに落とされたスペア12に気を取られたスペア5がF-15Eのミサイルにより落ちた。

 

 あっという間で3機落とされた。

 

『なんだなんだ? 勇んだにしては雑兵ばかり。さっきのSu-33の方が良い感してたぜぇ』

「あ、あぁっ!」

『こいつらインシーにいた白線部隊みたいだが、ソルの奴らとやりあったF-15Cはいないのかねぇ』

「やめろ、やめろ来るなぁ!」

 

 拍子抜けとばかりに落胆するネームドは最後の1匹を始末せんと馬力を上げる。

 完全に戦意喪失した生き残りのスペア13は砂嵐に隠れるという思考すら出来ず、ただただ逃げることしか出来ないでいた。

 

『んじゃ、こいつも終わり………おっと?』

 

 F-15Eの中に鳴り響くロックオンアラート。

 ヘッドオンで近づく戦闘機がミサイルを撃ってきた。

 

「スペア15、エンゲージ」

 

 

 

 ーーー◇ーーー

 

 

 

 

 

「やっぱりガゼルか………」

 

 こちらのミサイルを難なく避けた砂漠迷彩のF-15E。翼の下に正面を向いたガゼルのエンブレムがあった。

 エルジアの公式ネットで見た。フォコンとは違うパイロやベイオネットと同じベテランタイプのネームド! 

 

「スペア15! 助けてくれるのか」

「いいから早くタンクローリーやってきてよ。こいつは俺がやるから」

「わ、わかった!」

 

 すれ違うスペア13に目もくれずミサイルを回避したガゼルに目を向ける。

 

 空対空爆撃。

 うん、字面に起こしてみるとマジで意味わからん。やっぱり信じられないけど。現実として目の前でスペア9がそれをやられた。そしてカウントも満身創痍になった。

 

「スペア15! お前まで何をやってる! 最優先目標はタンクローリーだ! 何度言えばわかる!」

「UAVはともかく。ここでネームド相手にしないとまともにタンクローリーなんて狙えない。残り5機で残りの奴探してくれ」

「他の奴らは役に立たない。お前がやるんだトリガー!」

「ネガティブ。これ以上頭数減らされたらそれこそ本末転倒だ! ミスターX程じゃないがこいつは出来る奴だ。それに、他の奴らじゃこいつに太刀打ち出来ないだろ! やれる奴がやらないと! お叱りは後で受ける!」

「待てトリガー!」

 

 静止するバンドックを振り切ってガゼルを追う。

 その行く手を阻むようにMQ-99が前に出てきた。

 

「邪魔!」

 

 冷静に軸足を合わせ機銃をぶち当てる。撃墜寸前で撃たれたミサイルは直ぐ様砂嵐に紛れてやり過ごす。

 

『MQ-99を歯牙にもかけないか。アルカンシュとやりあったF-15Cとは違うみたいだけど、さて………』

「ミスターXと比べればだが。油断は出来ないか」

 

 直ぐ様砂嵐でやり過ごしてくるあたり。砂漠での戦いをわかってる敵だ。

 慣れないラファールでやるしかないのが辛いところだ。

 

「トリガーがUAVを撃墜! ネームドに向かっていく!」

「あの大馬鹿野郎がまたおっ始めたぞ! 今のうちずらかろうぜ!」

「逃亡した者がどうなるのか、もう忘れたのか。地雷を素手で掘り起こすような任務に送り込んでやるぞ」

 

 伍長が言ってたあの噂マジだったのか!? 

 オーレッドを出る時お世話してくれた伍長の去り際の言葉を思い出した俺は少しブルっとした。

 

 そうしてるうちにガゼルのF-15Eが砂嵐から出てきた。

 

 スロットルを吹かせてブースト。

 恐れてる暇はない、こいつの相手をしてる間にタンクローリーは領域外に向けて突き進んでいく。

 

 とにかく奴の下に入らないこと。爆弾の都合上絶対に横には飛ばない。

 F-15EはF-15Cと比べて重量が多い分ドッグファイトには不向き。ならば

 

「懐に!」

『食いついてくるか。種が割れたらビックリショーも出来ないか』

 

 F-15E急上昇。それに遅れることなく上昇する。

 高度計が3000、4000、5000。ドンドン上がっていく。

 

 ちょくちょく射線に入る一瞬に機銃を撃つが当たらない! 

 その後もドンドン高度を上げ、と思ったら下降してこちらの射線を切っていく。

 

 ガゼルを追い回し続けている間。残ったスペア隊の面々はタンクローリーを探す、どころではなく。

 背後に迫るUAVに四苦八苦し、それを理由に文句を垂れ流しまくりだ

 

「UAVはハッキング出来ると聞いたぞ。なんでそれをやらねえんだ!!」

「騒ぐなフルバンド! 任務に集中しろ!」

「UAVがしつこい! このままミッション続行は危険だ」

「くそ! カウントが余計なことをしてくれて!」

「無線がうるさいが目標破壊の報告だけは入ってこないようだ。他人をとやかく言える立場か、さっさと任務を続行しろ」

 

 未だにタンクローリーの破壊報告を聞いてないってことは、みんな見つけれてねえってことか。

 他の奴らはともかくタブロイドお前はなんとか働いてくれよ、頼むよお前が頼りなんだから。

 

 しっかしこいつ避けるの上手い。ミサイルも残り少ないし。バカスカ撃てないのも痛い。

 しかも迂闊に勝負に出てこない。ミスターXと違って特有の圧と寒気がないからまだ心に余裕があるが。

 

「フルバンドの機体付近に目標を確認! よく探せ」

「くそ。空の敵と戦いながら地べたの敵まで相手できるわけがねえ。トリガー! さっさと敵を撃墜してくれ!」

「トリガー! 援護だ! 援護してくれ!」

「トリガー云々はもういい! 各機タンクローリーを破壊するんだ!」

「あいつにやらせときゃいいんだよ!」

「オイコラ! いま一番ヤバい奴抑えてる奴になんてこと言うんだお前ら! ぜってー援護してやんねぇ」

「おい待て今言ったのはスペア14だぞ! 俺たちは関係ねえ!」

「連帯責任だバーカ! さっさとタンクローリーやれ! ネームドは抑える、いや落とすから! どうしてもUAVがうざかったら思いっきり砂嵐に飛び込め。雲と同じでミサイル散らせるから!!」

 

 口だけのアホどもを一喝、サービスでアドバイスを1杯引っ掻けて再び意識をガゼルに戻す。

 

 慣れない機体で凄腕とのドッグファイト。正直言って文句の一つも言いたくなるがやめる。

 この機体はエイブリルがこしらえてくれた特注品。彼女が居なければ俺は飛べなかったんだ。

 

 やってやるさ! マルセラさんのように! 

 

 更にしつこく追い回す。だがガゼルは痺れを切らすことなく逃げ回る。

 こちらが逆に痺れを切るのを待ってるのかコイツは。

 

 このままだと埒が空かないの事実。ならお望み通りにしてやる! 

 操縦桿を倒しスロットルオン。パワーダイブでガゼルの下方につく。

 

『んー? 下に来てくれたか。若いな、我慢は嫌いと見える。それともハッタリ?』

 

 ニヤリと笑う。

 ガゼルを兵装スイッチ変える。

 他と同じ羽虫か、それとも雄々しく羽ばたく鳥なのか。

 

(ヘタな誘いだろうが関係ない。乗ってやろうじゃないの)

 

 ガゼルのF-15Eに装着された照準カメラが後方のラファールを捕らえる。

 

 速度が僅かに落ちる。

 口角が上がるのを自覚しつつSFFSを投下。

 カメラを凝視しラファールが爆炎に包まれる姿を眺めようとした。

 

「ここ!」

『なんと!?』

 

 SFFSが落とされた瞬間エアブレーキ全開、そのままインメルマンターン。

 からぶった子爆弾の雨は砂煙の中に消え小さな火となって消えた。

 

 なんてことない。突然爆発する魔法じゃないんだ。

 落ちる瞬間を見てそこを退けば簡単に避けれる。

 

 たとえ照準カメラがあろうが。SFFSにロックオン機能が追加されていたとしても。

 

 爆弾は決して上には上がらない。

 

 そもそも空対空爆撃なんて当てれる方がおかしい。

 ほんの少しズレれば当てることなど不可能。

 

 正直に臆面なしに言おう、こいつはミスターXとは違うタイプの化け物、イカれ野郎だ。

 空対空爆撃を戦術に織り込める。エルジアの戦闘機パイロットも捨てたものじゃない。

 

 だとしても。

 

「種が割れた手品なんて驚異じゃねえ! 落としてやるぞガゼル!」

『ハッハッハ! こいつは本物だ! いいねぇ!!』

 

 ガゼル急降下。旋回をしながら砂煙に入った。

 逃す気はないと砂煙の中を追うとレーダーに反応が。近くにタンクローリー! 

 

 ネームドを追ってタンクローリーを他の奴らに任せるか。と一瞬浮かぶが即座にタンクローリーを選択。

 逃したらほんと何処に行くかわからない。ラッキーポイントを逃しては日が暮れる。

 

 機銃掃射。風に煽られることなくタンクローリーに穴があき、火を吹き出した。

 

「スペア15、タンクローリー破壊。立ち上る煙が奴らの墓標だ」

「前から思ってたけど、バンドックって詩人だよね」

「トリガー、貴様まで無駄口を叩くのか? 落とすならさっさと落とせ! 時間は有限だ」

「オーライ!」

 

 F-15Eは、西か。UAVもうろちょろしてる。

 スペア5にしたように俺にUAVをぶつける腹積もりか。

 

「意地が悪い。ならこっちだってなぁ!」

 

 上昇せず砂煙の中、地面スレスレを高速で移動する。

 一寸先が見えるか怪しい中、自殺行為もいいとこだ。だけど幾分かレーダーを誤魔化してUAVを無視できれば御の字だ! 

 

 頃合いを見て浮上、ガゼルに向かって狼が牙を向く! 

 突如浮上して即攻撃! フォートグレイス仕込みの奇襲戦術だ! 

 

『うおっ、いつの間に!』

「FOX2!」

 

 ヘッドオン! 敵に上昇させる暇を与えずミサイル発射。

 ドンピシャの奇襲、だがガゼルは即座にフレアを炊いてなんとか直撃を防いで見せた。

 

「『やるっ!』」

 

 互いに相手を褒めながら仕切り直し。

 ガゼルは北に移動して旋回機動に入った。

 

「こちらスペア11、タンクローリー破壊! ようやく1台しとめた」

「スペア13、タンクローリー発見! FOX2! トリガー! さっさとそいつ落として戻ってきな!」

「わかってる!」

 

 ここまで来て逃がす気はない。

 未だ同じ場所を旋回するガゼルに向かってスロットルを………

 

 いや待て、なんで奴はあんな旋回してる? こちらのミサイルを逸らすため? 

 ふと思い出す。奴のSFFSはまだ1発残っていて………え、嘘だろ!!? 

 

 背後からUAVが砂嵐から上がってきた、機体内にロックオン警報が鳴る。

 だが俺はそんな些事を気にする余裕もなく思いっきり操縦桿とフットペダルを蹴り上げた。

 

「いだぁ!!」

「トリガー!?」

 

 機体に振動、そして背後のUAVが爆散した。

 

 機体ダメージ、軽微。だがバランス崩して目の前には岩山が! 

 

「こなくそぉぉぉぉ!!」

 

 倒した操縦桿を渾身の力で引く。それはもうアドベンチャー映画に出てくるトロッコのブレーキレバーのように。

 幸いにもお約束のように操縦桿が折れることはなく上昇。岩山の表面がラファールの腹と擦れて体験したことのない振動を感じながらなんとか上昇出来た。

 

「アババババババ!!」

『え、今の躱したとかマジ? 引くわぁ』

 

 あぁぁーくそ死ぬかと思った!! 

 

「トリガー大じょ──」

「あの野郎マジ、マジでっ、マジふざけやがって! 殺す! 殺す殺すぶっ殺ぉす!!」

『あ、ヤバ』

「死ねよやぁ!!」

 

 未だ旋回から立て直しきれないF-15Eのボディを横合いから機銃で穴だらけにする。

 

『うひー! こいつはたまげた!』

 

 ガゼル、ベイルアウト。

 だが砂嵐に突入した途端横に流されて見えなくなった。

 

「ガゼル撃墜! ガゼル撃墜! タンクローリーは何処だぁ!!」

「こちらスペア6、タンクローリー破壊。あとどんだけ居るんだよバンドック」

「かなりの燃料が煙になったが、まだ隠れてるかもしれん。タンクローリーを破壊し終わるまで帰れないと思え」

「DH115に沿って探してみる」

「なら俺は南側を探す。トリガーが化け物落としてくれた! 仮は返さねえとな!」

「同感だ。そんなに数は多くないはずだが時間もかけた。さっさと探そう」

 

 俺を含めた生き残り6機が血眼になってタンクローリーを探す。

 UAVが頭上を飛んでるが、ミッション失敗になる方が後が怖いから。

 

 余計なお喋りもせず無言で探すスペア隊。

 喋る気力がないのか、それどころではないのか分からないが真面目に探していた。

 

 そして俺たちが砂煙の中を掻き分けてる間。バンドック他AWACS要員はレーダーをひたすら見る。

 瞬きすら忘れ、その一瞬を見逃さない為に。

 

 ………………………っ! 

 

「居たぁ!」

「レーダー感! 方位270! 真西の端だ!」

「離脱される前に叩く!!」

 

 砂嵐から浮上。マックスパワー! 

 あっという間に端に到着し再度砂嵐にダイブ。

 

「見つけたぁ! 年貢の納め時だ、FOX2!」

 

 こちらを狙うSAMと真ん中にタンクローリーに向けてミサイル発射。

 あとは奥のタンクローリーも破壊して………

 

「トリガー! 近づき過ぎたら危ないんじゃないか?」

「え? ………あっ、やべ!」

 

 操縦桿を引いて急上昇。遅れてミサイルがタンクローリーに着弾し。

 

「うおっ!」

「また光った!」

 

 ラファールの下に青白い光球と振動が。

 この光と振動は………

 

「大丈夫か? トリガー」

「すまんタブロイド、助かった」

「気にすんな」

「あー、イライラし過ぎて忘れるとは。ガゼルに意識割きすぎたかなぁ」

(或いは、案外前回のをまだ引きずってたりしてんのかねぇ)

「………了解した。そいつが最後の1台だ、司令部が連絡をよこした。全機帰還しろ。これだけローリーを燃やせば、無人機も腹を空かすだろう」

「残ってるUAVは良いのか?」

「UAVも撤退を始めた。深追いする必要もない。ミッション終了、RTB」

 

 あー終わったー。

 レーダーにも敵性反応無し。やっと肩の荷が降りた

 

 前編後編で難易度差ヤバかったな今回のミッション。

 

「そういやトリガー。あのネームドに最後なんかやられてたよな? あんな激るなんて、前回のミスターXでもないのに、何があった」

「あー。いやさ、ほんと現実味ないけど聞いてくれるか」

「いいよ」

「あいつさ………SFFS横に投げやがった」

「「「………………はぁ?」」」

 

 スペア隊全員からすっとんきょうな声が漏れた。

 

 そうなるのもやむ無しと理解しつつ続ける。

 

「急旋回の勢いに任せて爆弾を横にぶん投げたのよ。それはもう野球で言うサイドスローのようにさ。ギリギリで気付けたから良かったものの。キャノピーや翼に直撃したら危なかった。現に後ろに居たUAV粉微塵になったし」

「どうやって避けたんだよ」

「ほぼ勘」

「パネエ、ネームドもトリガーも」

「目だけじゃなく勘も良いんだなトリガー」

「あまり褒めないでくれ、感情の制御も出来ない未熟者なので」

「笑えねえジョークだ」

 

 

 

 ーーー◇ーーー

 

 

 

「ただいまー」

「おーおー、焦げてるなオイ。今回はどんな敵が居たんだ?」

「空対空爆撃された」

「………お前でもジョーク言えるんだな」

「ジョークだったら良かったね、いやほんと」

「え、マジで?」

「マジ」

 

 流石のエイブリルも空対空爆撃なんてのは聞いたことなかったらしい(当然だ)

 

「とりあえず整備宜しくお願いいたします。あ、今回砂嵐の中飛び回ったから」

「ハァ!? 私としてはそっちが驚きなんだが」

「俺だって飛びたくなかったよ」

「ハーー。わーった、早くデブリーフィング行ってこい」

 

 めんどくせぇと呟きながらラファールを見るエイブリルに最大限の感謝を向けながら格納庫を出た。

 

「お疲れトリガー」

「お疲れタブロイド。マジで疲れたなぁ」

「この後司令官が待ってるぞ」

「帰りてぇ………」

「おーいトリガー!」

 

 先に行ったタブロイドと入れ替わりで後ろから誰かが。

 黒人にドレッドヘアーの男、えーと誰だ? 

 

「トリガーさっきは助かったぜ、ありがとな。最初はいけ好かねえ奴だと思ってたけど。大した奴だぜ」

「えーっと」

「ああ、スペア13だよ。TACネームはジャイロ。ネームドに挑みかかって無様に尻尾巻いた奴だよ」

「あー、あの時の。別に助けた訳でもないんだが」

「こまけーことは気にするな。今度飯奢らせてくれ、じゃな!」

 

 スペア13、ジャイロが言うだけ言って行ってしまった。

 本当に助けた訳ではなかったんだが。まさか同じ囚人から感謝の言葉を投げられるとは思わなかった。

 まあ悪い気は………

 

「味方に感謝されて上機嫌か、トリガー?」

「開幕嫌味言うとかあんたほんと性格悪いな、バンドック」

 

 振り替えると今度は強面長身のバンドック。

 やっとこの番犬フェイスに馴れたところ、嘘です馴れてないです威圧感半端ないです。

 

「何故お前は他の奴らを助けようとする。感謝でもされたいのか? タブロイドとジャイロは稀だ。いやスペア13だってお前を嘲る側だった。お前だって分かってる筈だ」

「何が言いたいのさ」

「お前の周りに居るのは仲間じゃない、囚人だ。自分が生き残ることしか考えてない。無駄な労力を割く暇があったら任務を優先しろ。以上だ、デブリーフィングに行くぞ」

 

 一方的に言うだけ言ってバンドックは前を歩く。

 

 ………別にバンドックの物言いにムカッと来たわけでもイラッと来たわけでもなかったが。

 それはそれとして言わなければと思った。

 

「周りは仲間じゃなくて囚人だって? そんなの百も承知だよ、バンドック」

「なに?」

 

 背中から投げ掛けられた言葉にバンドックは歩を止めて振り返る。

 

「ここに仲間なんていない。タブロイドはまあ、他と比べたらマシだし、話も合うがそれだけだ。大半は文句ばかり並べて手を動かそうとしない。そんな奴らを守ってやれる程俺はお人好しでいる気もないし、必要性もない。くたばるなら勝手にくたばりやがれって思うこともある。何も知らない癖に開幕チャンプのことを馬鹿にしたフルバンドなんか1発ぶちこんでやろうとさえ思えた」

「見当違いなことを言ったと」

「いや、全部違うって訳じゃない。ガゼルを相手したのはコイツはヤバい、カウントが居ない今相手できるのは俺しかいない。このままでは全滅総崩れになってミッションをクリア出来ない………これはミッション中でも言ったよな。俺は必要だからUAVやガゼルを撃墜した」

 

 事実である。

 

 僚機が落ち、友軍が死んでいく様を見せられるのには思うところはある。

 タブロイドや今日ちゃんと仕事をしたカウント。あとは………俺を認めてかれたジャイロ? あたりは助けようとも思う。

 出来る奴、意欲のある奴、俺に悪感情を持たない奴らを生かすことは俺にとってメリットになる。

 

 だが役立たずでノイズばかり吐く奴は別だ。

 あんな奴らの命なんかどうでも良い。いっそ死んで代わりの出来る奴が入ってくれれば御の字だ。

 

「それに補充要員にだって限りがある。人じゃないぞ、戦闘機の数だ。エイブリルがせっせとモスボールから組み合わせて戦闘機を作ったとしても限界がある。この基地において俺たちの命は戦闘機以下だ。そうだろう?」

 

 スペアの名の通り何処からか輸送して人員を補充すればいい、俺みたいに。

 

「飽くまで仕事だと」

「ああ。俺にとって仲間っていうのはフォートグレイス飛行隊のような奴らだ。口だけの無能どもと仲良くする気なんかサラサラないね」

「そうか」

「言われなくても仕事はするよバンドック。俺はあるかないかも分からない恩赦の為、そして戦闘機に乗り続ける為、戦争を早く終わらせる為に働いてるんだ」

「戦争が終わればお前は戦闘機に乗ることはなくなる」

「エルジアが始めたアホな戦争が終わるならそれに越したことはないね」

 

 飛べなくなるのは。本当に嫌だけど………

 

「俺の話は終わり、あんたはある?」

「ない。デブリーフィングに行くぞ」

「了解。てか勘違いで説教された俺に対してなんかあっても良いのでは」

「生憎囚人に話す言葉はない」

「ズルい奴」

「お前に言われたくない」

「清廉潔白なんだけど」

「言ってろハーリング殺し」

「うるさい人でなし」

 

 両者一歩も引かずブリーフィングルームに歩を進み始める。

 それから特に何も話すことなく歩き続けた。

 

 ブリーフィングルームのドアを開ける前に一つ聞いてやろうと思った。

 

「なあバンドック」

「なんだ」

「あんたにとって俺はなに」

「フン、そんなの決まってる」

 

 鼻を鳴らしたあと、特に不機嫌になることもなく何時もの強面な面で言ってのけた。

 

「使える駒だ。それ以上でもそれ以下でもない。精々働け、3本線」

「ハッ、それは最高だ。これからも頼むよAWACS様」

 

 

 

 

 





 なんだかトリガーがドンドン黒くなってく気がする。
 ピカピカの一年生だったリヒト君はいったい何処へ。
 カウントもなんか変化があった?根本は変わらないけど何かが違う気がします。

 しかし空対空爆撃、F-15Eネームドを見て直ぐに思い付きましたがとんでもねえな。
 実際のマルチ対戦だとSFFSじゃなくても空対空爆撃する変態がワラワラいるとか。
 マルチ環境怖いねー。

【FLIGHT REZON アサルトレコードNo.8】

ネームド:ガゼル
機種:F-15E
カラー:砂漠迷彩
派閥:保守派
パイロット:サムエル・エベレスト

 のんびりとした印象のおっさんパイロット
 無人機に対して思うところがあるが、それはそれこれはこれと素直に無人機を戦術に組み込めるクレバーな持ち主。
 最大の特徴はSFFSによる広範囲爆撃を利用して空対空爆撃にする発想と実力の持ち主。
 いやほんと意味わかんねえな?でも実際それで戦果を上げている。ほんと意味わかんねえな?

 そしてメビウス1とも戦闘経験があるが。
 メビウス1は完全初見でそれを回避して速攻撃墜にかかったという。
 いやほんと意味わかんねえな?
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