エースコンバット7 FLIGHT REZON 作:ブレイブ(オルコッ党所属)
陸のACを買おうか迷ってるけどとりあえず様子見にとどめようかと思ってる作者です。
こんにちは皆さん!
僕の名前はリヒト・パーマー! またの名をリヒト・フォン・フリューゲル!
ベルカ貴族の名家中の名家、フリューゲル家の末っ子! でも家と家族は核で吹っ飛び、残った父親はアホな思想を持ったブリストー野郎に殺されて壊滅したぜ!
核で理想叶えるとか。控えめに言って頭おかしいよね! 死ねば良いのに★
そしてベルカで奴隷生活(仮)をしていたところ凄腕傭兵に助けられなんだかんだでオーシア軍に入った僕はそれこそ順風満帆でエースパイロットと呼ばれ始めた! いやー恐縮です!
そんな時僕はなんとハーリング殺害の冤罪で戦闘機パイロットの流刑地、444基地に飛ばされることになったんだ!
オーシアの高官なんか今すぐ死ねば良いのに★
そんなモラルもへったくれもない懲罰基地に入って早1ヶ月となった僕なのですが………
「おいトリガー」
「少し俺らに付き合え」
「面貸せや」
「嫌だよ」
絶賛ガラの悪い奴らに絡まれてます。
あれれー、おかしいぞー。
よし、現実逃避終了。
なんかわからんが待ち伏せされていつの間に三方から寄ってきて退路塞がれて詰められてます。
自分、身長170ちょっきしで男としては小柄な方だからか。目の前の奴らは余裕で俺の身長越えてきてもはや壁なのよ。
やめて、私そっちの趣味ないの。
おかしいな。囚人としてはこれ以上ないぐらい模範的な行動を取ってきたつもりだった。
対人トラブルもなく(囚人としては)可もなく不可もない生活を送ってきたというのに。
なんでこんなことになってるんだろうね。助けてメガネボーイ。お爺ちゃんっ子でもいいよ。
「お前、最近調子乗ってるだろ」
「調子………ええ、最近は風邪もなく万全な健康生活を」
「ちげぇよ! 前から思ってたがテメェだけでバンバン敵落としやがって!」
「ルーキーの癖に戦果掠め取りやがって!」
「こっちの取り分が減るんだよ!」
(肝心な時に文句しか吐いてないからでは? なまけてばかりのお前らの代わりに敵をぶち殺してるの誰だと思ってるんだ、あん?)
と言おうとしたがやめた。
言おうものなら逆上してくるのは明白だ。こんな難癖つけてくる奴に常識なんざ埃や塵も同然だ。
とりあえず穏便に。話し合いを出来るところまでやりますか。
「で、どうして欲しいの。わざと手を抜けってか。そんなことしたらバンドックに怒鳴られるだろ。そしたら俺隠さず言うぞ、周りから働きすぎだって言われたから手を抜いてますって」
「本当に言いそうだなお前」
「別に俺はスコアなんざどうでもいいんだよ。金もな。あって困るようなもんでもないが、少し贅沢出来るならそれでいいし」
ハイローラーの賭け金。あと同室だからってことでチャンプの財産も貰ったから金には困ってない。
こういうのって基地の人間がやるもんだがそこは杜撰な444。チャンプも基地のクソッタレにやるぐらいならテメエにやった方がマシだって言うと思うし良いよね、きっと。
「ならてめぇの戦闘機を寄越せ」
「はぁ?」
「機体性能で良い思いしてるんだろ?」
「お前整備士の女と仲良いみてえじゃねえか。だからF-15Cのあとにラファールなんて上物をポイっと寄越してくれたんだろ?」
「あれはたまたま作っていたのがラファールで、たまたま俺に空きがあったから渡されただけだ。俺が望んだ訳じゃない」
確かにエイブリルとは親交はある。
だけどそれはラファールを受け取った後の話だし、それまで録に話してなかったんだ。
俺がねだった訳じゃない。
あと俺の操縦技術を機体のおかげと思われてるのは納得がいかん。
F-15Cとラファールは確かに素晴らしい機体ではあるけども。
「なら俺に渡しても問題ねえだろ。代わりに俺のF-4Eを寄越してやる」
よりによってファントムかよ!
いやファントムも悪い機体ではないよ。あのズィルバーも乗った名機ですし? だけどどうしてもラファールと比べるとスペック的に見劣りするかなぁって。
そんな年代物を平然とトレードに出すとかこいつ頭悪いのか? 等価交換って言葉調べてこい。
「嫌だよ。俺になんのメリットがあるわけ? 受ける義理もないね」
「おいおい、勘違いして貰っちゃ困るなトリガー。これはお願いじゃねえ、命令だ」
「ますます意味がわかんない」
「お前は飛ぶのが生き甲斐なんだろ? なら飛べねえ身体にされたら困るってもんだよなぁ?」
「今まで良い思いしたんだ? 俺たちにも分けろや」
これ見よがしにポキポキならしながらジリっと包囲を狭めてきた。
ああそういうこと。最初から話し合いなんか求めてなかったわけだ。
色々言ったが結局ルーキー、それもハーリング殺しの大罪人が444基地で伸び伸びしてるのが気に食わねえってことだ。
自分たちは看守に締め付けられてるのに、という理由で。自業自得も甚だしい。子供かよ。
ぶっちゃけこんな奴らを叩きのめすことなど訳ないが。まだ見ぬ恩赦の為に平和的に解決せねばなるまい。ええ、許されるなら奥歯ガタガタ言わせたいですけどね!
問題は平和的に解決するためのオツムがこいつらにあるのかって話だが。それを期待するのは酷だろう。
「ここに来たときから気に入らなかったんだよお前は」
「なんかあったっけ」
「輸送機の中で生意気にガンつけて来ただろうが」
………………………………………ああ。
こいつら勝手に絡んできて睨んだら怯んだ奴らか。顔覚えてないけど。
「こいつ忘れてやがったぜ、ますます気に入らねえ」
(別に気に入られても困るし)
「444のエースパイロット様は雑魚の顔も覚えなくても問題ないようだ」
「それは悪かったよ。俺は昔から人の顔や名前を覚えるのが大の苦手なんだ。わかった、そんなに欲しいなら、考えておく。ただもう少し待って欲しい。俺のイーグルがもう少しで修復される、イーグルが戻ったらくれてやるよ」
「安心しろ、お前のイーグルも俺らが使わせてもらう」
「はぁ? いい加減にしてくれ。こっちは最大限かつ破格の条件で譲歩してやったのに何様のつもりだ? 暑さでオツムがパーになったか?」
「うるせえんだよハーリング殺し!」
「うおっ!」
あーやべ。思わず挑発言葉が。
正面の男が殴りかかったのをサッ避けてそのまま包囲を離脱する。だが両脇の男も直ぐにこっちを取り囲んできた。
袋叩きする気満々だ。
「ついでだ、テメエの金も貰うぜ。懐が大層潤ってるんだ。少し頂いても屁じゃねえだろ」
「嫌だね。能無し猿どもに渡したところで尻拭き紙が関の山だ」
「てめえ一人でやりあえるってか? チャンプの間抜けもいねえ癖によ」
「なんの話」
「チャンプを飼い慣らしてボディガード代わりにでもしたんだろ? バナナでもあげたのか?」
「ウホッウホッ。バナナ美味しいウホー」
「………」
アホ面噛ましながら似てないゴリラの物真似をするアホを見る気にもなれず。
もう付き合う義理はないと合間を縫って逃げようと準備する。
「しかしあの木偶の坊がいなくなったおかげで此処も広くなったよなぁ」
「TACネームのアレ、チャンピオンらしいけど、だーれもその意味で呼ばなかったのウケるよなぁ。まぬけで充分だまぬけ!」
「情報屋が言ってたんだけどよ。最後は怯えながら堕とされたんらしいぜ。傑作だよな! 散々威張り散らして呆気なく死んだ。井の中の蛙ってああいうのを言うんだろうな! 超ウケるぜ!」
「「ギャハハハハ!」」
下品な笑い声を上げながら悦に浸ってる男ども。
しばらく笑っていると、すっかり黙り込んだ俺にやっと気付いた。
「おい、てめえも笑えよ。なあ」
「なに黙り決め込んでんだ? ええ?」
反応しない俺を面白くないと感じたのか胸ぐらを掴んで無理やり顔を向けさせる。
「うっ!」
「………」
男の目に写った俺の目を見て男どもは思わず怯んだ。
その目は静かな激情を宿し、まるで人ではなく害虫を見るような目だったからだ。
自分たちになんの価値も見出だしていない。虫を殺虫スプレーで殺すかの如く冷えきった目は男たちの背筋を凍らせる。
胸ぐらを掴んでいた手を逆に掴まれた男はあからさまに狼狽え。必死に振りほどこうとする手は抜けないどころかますます絞める力を増していく。
「さっきから耳が腐るようなことをベラベラと。いい加減喋るしか能のない口を閉じたらどうだ」
「な、なにを」
「お前らみたいな口だけの奴らと違ってあいつは、チャンプはキッチリ働いていたぞ。何も知らない癖にあいつを間抜けなんて言うんじゃねえぞ。腐れ蜜柑ども………!」
「いっ、いででで!」
まるで地の底から聞こえるような声に揃って震え上がる。
腕を捻り上げて男は膝をつく。取り巻きの男はハーリング殺しの豹変ぶりに引いている。
このまま腕を折ってやった方が都合が良さそうに思える。
大の男が小柄なハーリング殺しに返り討ちにあったと報告するのは、それはそれで屈辱的だろう。
なかなか乱暴な思考とは別にここらへんで勘弁してやれという理性が頭を過るが。火の付いた導火線のようにそれは止まることは無さそうで………
「おーい看守看守! 喧嘩だ喧嘩! こっちに来てくれ!」
「やべ」
「ずらかれ!」
思わずパッと手を離した隙をついて男どもは揃って逃げ出して姿を消した。
捻り上げた手をパタパタと振っていると道角からタブロイドが現れた。
しかしタブロイドが呼んだと思われる看守は一向に現れる気配がない。ということはだ。
「看守ってのはブラフか? 詐欺師顔負けだな」
「ハハ、助けは必要なかったかトリガー?」
「いや。もう少しで取り返しのつかないことになるとこだった。ありがとう………はぁ、俺って相当な癇癪持ちだったみたい」
「知ってるよ」
今後の課題になりつつある。
まだまだ未熟だわ。
「なあ、あのリーダー面してた奴の名前わかる?」
「一緒に入ってきたのに知らないのか?」
「興味なかった。けどまたガン付けられた時ように知っとこうと」
「そうかい。TACネームはビンゴだ、本名は知らん」
ビンゴね。俗っぽい名前だこと。
「なあ俺って弱そうに見える?」
「外見的な意味としてだよな? まあそうだな、どっちかと言うと
「傷ありでも?」
「ベイビーフェイスってよく言われないか?」
「言われるわ」
幼少期の栄養失調のせいだ、きっとそうだ。
おのれベルカめ、おのれ叔父夫婦め。
「んで、なんであんな怒ってたんだ?」
「何も知らない癖にチャンプを笑いやがったんだ」
「そんな怒る程仲良かったのか」
「オーシア上層部の陰謀に巻き込まれた仲間さ。知ってるか、あいつの本名。グレゴール・ダッチマンだってよ。強そうな名前だろ。実際あいつは強い奴だったんだ。少なくとも、死んだ仲間の為に上官を半殺しにする度胸があるぐらいにはさ」
寂しげに言う俺の言葉をタブロイドは「そうかい」と窓の空を見上げた。
今日もここは快晴。熱気が地面を焼いて何処を見ても陽炎だらけだった。
「なあ、答えたついでに一つ聞いていい?」
「なんだ?」
「お前ってさ。国境無き世界となんか関係ある感じ?」
一瞬だったか数十秒だったか。周りから音がなくなった気がした。
俺がここにいる因果。その最序盤にしても最も憎むべきワード。
あの時聞いてから頭をよぎって仕方なかった。
「ああ。この間のミッションで言ってたことか? いやいやそんな大層な奴じゃないよ俺は」
「じゃあ灰色の男たちと関係が」
「どうしても国際テロ組織と関わり持たせようとしてる?」
割とシリアスな話題をぶっ込んだつもりだったのだがサラッと流されてしまった。
もしかしてこいつの笑顔は仮面で周りを欺くための芝居なのでは、と思いたくはないが。
「俺はそこまでコアじゃないよ。ベルカしかり、オーシアユークしかり。そんな国っていう力ってのが無くなればさっぱりするよなって思った………ってこれも建前さ」
「建前?」
「もう何もかもどうでもいい。国も、いや世界にすらなんも期待してない。失望、いや幻滅してるのさ。デモに参加したって言っただろ。あの時はオーシアのベルカイビりが酷くてな。ストレス発散を求めて顔を隠して石を投げまくった挙げ句捕まった。お前の言うとおりショボい理由でぶちこまれたのさ」
タブロイドは窓の縁に寄りかかるわ。
その目には何も燃えていない。小さな燻りもなく、ただただ何もかも諦めた男の眼があった。
「ベルカイビりって、お前ベルカ人なのか?」
「………あっ」
「いや秘密にしてたんか、さらっとバラしたなお前」
「ミスったなぁ。すまん今のなしでな」
「いや別にいいよ。俺もベルカだから」
「え、マジ」
「あっ、マジ」
「あって、いまあって言ったかトリガー」
なんかスラッと俺も出してしまった。
油断しすぎだな。タブロイドは他より信用出来るとはいえだ。
こいつが吹聴することはないと思うけども。
「言っとくけど心はオーシアな俺。ベルカは嫌いではないけど、良い思い出なんかなかったから」
「そうなのか?」
「そうよ。家族はベルカの核に吹き飛ばされ。逃れた父親も国境無き世界に吹き飛ばされた。唯一生き残った俺はそれはまあ酷い暮らしさ。縁あってベルカを抜け出してオーシアに転がり込んだ。そしてオーシアに居てもまあ、ね。ベルカ強硬派や灰色のアホどものお陰で善良なベルカ市民まで標的だ。この頬の傷だって『お父さんの仇!』って切られてついた傷さ、笑っちまうね」
「なかなかハードな人生送ってたんだな」
「今もね。折角お国の為に働いたのにお国に裏切られてこんなところに流された」
ほんとやってられん。
そこから地獄の1ヶ月(当社比マイルド)を経験して。
よくもまあテロ落ちしなかったな俺。メンタルやばくない我ながら。
「灰色の男はどうやっても認めれないが。国境無き世界には少なからず大義があった。いっそ全てまっ更にしてくれたら生きやすくなる。そう思ったんだ。国ってくくりが、煩わしくて仕方ない。お前もそう思わないかトリガー」
「………俺は違うと思う」
俺の考えは子供の頃から変わらない。
ラリーたちが間違いと言うように、俺もラリーたちがやったことを認めれない。
「例えこの世から国という概念がなくなろうが戦争は起きるよ。テロ組織レジスタンス、果ては企業とかが民間組織雇って戦争とかするだろうさ。なんせ戦いの武器である戦闘機や艦船、戦車や銃が消え去っても人々は争って戦争に発展する」
「兵器がなくなっても戦争が起こる? 流石にそれは言い過ぎじゃないか。そんなことが起こったら戦争どころじゃない」
「なんでさ。銃がなくなったらナイフ、ナイフが無くなれば棍棒。棍棒すらなくなれば石ころ。それすらなくなれば拳で戦うよ。古来人間は戦争だらけの生き物だ。人の歴史は戦争の歴史。国境線がなくなったぐらいで人が止まるものかよ。国という枠組みがあったとしても戦争は人が行うもので、人が引き起こすものだ」
仮に国境無き世界が主要国をV2で吹き飛ばすとしよう。むしろ国家消滅を口実に人々は狂気を武器にして他者を傷つけることだろう。
人はそこまで賢くない。だから国境無き世界や灰色の男たち、オーシア上層部のようなアホが生まれる。
「俺が生まれて今に至るまででかい戦争が6回も起きてる。巨大レーザー兵器に巨大潜水艦に巨大軍事衛星に空中母艦、今度は無人機パーティーだ。人は戦争のためなら何処までも技術成長する。例え全てがゼロになろうともまた発展し、人を殺すものを作るだろう。この世から永久的に争いを無くすには知的生命体全てを皆殺しにするしかないだろうね」
余りにも過激な結論に思わずタブロイドは言葉をなくす。
極論だけどね。
なにせ平和を誰よりも願ってる国民が居て武器を持って戦うのが間違ってると言ったとして、国民全てがそれを望むだろうか。
現に軍人がいる、傭兵がいる、テロリストがいる。
一時の平和が仮に十年続いたとして。その後戦争が起こらないなど誰が言えるだろうか。
「………そこまで達観してるのに、なんでお前はあんなに飛べるんだ?」
「達観してるつもりはないんだけど。ありのまま思った事を言ってるだけだし」
「はぐらかすなよ。お前は飛ぶことに文字通り命を賭けてる。前も言ったがまともじゃない。今の話を聞けば尚更だ。なんで世界に絶望しないでそんな生きてられる。こんなところにぶちこまれてまで」
「空を飛びたいから飛ぶ………じゃ納得しそうにないな」
「そうだな。それは大前提なのは分かってる。だがお前は敵に容赦する気もない、それに疲弊してる感じもない。初戦闘がこの戦争だとしても、慣れるなんてもんじゃない。お前は何者なんだ?」
「そんな突発的イレギュラーディザスターみたいな目しないでよ。別に戦闘も人殺しも好きじゃないよ。命の取り合いなんて本当は真っ平ごめんだ。それでも殺らないとこっちが死ぬし。それをいちいち気にするのはとっくに止めたからさ」
迷ってる間に誰かが死ぬ。自分が死ぬ。
自分が死ぬのはいい、だが他人が、親しい人が死ぬのなんか見たくない、絶対に。
「世界平和、なんて大層なことは考えてない。俺は守りたい人だけ守れればいい。恩人たちがいるオーシア大陸や前の部隊の仲間がいるユージア大陸の平和の為。あと個人的に無人機ひけらかしてクリーンな戦争してまーすって能書き垂れてるエルジアをぶちのめしてやりたいってのもある。エルジアにメビウスの恐怖再び的なことを噛ましてやろう。ついでに俺をここにぶちこんだ奴らに苦い顔させてやる」
さて、長い前置きは置いとくとして。
「なによりも俺は見たい空があるんだ。その空はきっと、戦争が終わった先にある。だから死ぬまで飛び続けたいのよ、俺は」
「それだけであんな風に飛べるものなのか。片っ端からネームドを落とし、あの化け物と渡り合えるほどの」
「飛ぶ理由なんて人それぞれでしょ。プライドのため、誰よりも強い力を求めるため。他にも金とか気高き心のためとか、それこそ十人十色よ。俺はたまたま出来る奴だってこと。狂ってようが変態だろうが関係ない。俺は俺の手で飛ぶだけ。そしてこのアホな戦争を止める手助けになれればって。大層な思想なんか持たなくても人は生きていけるって」
そもそも一々考えたら頭がパンクすると思う。
ラリーは考えすぎて国境無き世界のブリストークソ野郎の甘言に乗っかってしまった。
考えるなとは言わんが、迷って道を外れるぐらいなら考えずに進むことも大事だと思う。
「俺、巷で『大馬鹿野郎』って呼ばれてるんだ。馬鹿げた機動ばっかしてるから付けられた名前なんだけどようするに、難しいこと考えずに今出来ることやろうぜって感じ。頭の良い解釈なんか必要ないの。納得した?」
「今まで知らなかったトリガーの一面を見た気がするが。お前って案外現実見てるんだな」
「むしろシンプルに生きた方が楽ってわかった。思想に取り付かれた狂信的快楽者ども小難しい」
「狂ってるな」
「うん、喋ってて自覚しつつある」
客観的に見て普通じゃない。
不屈の精神も良いところだ。他より秀でた者って大概は精神支柱がとんでもないことになってるらしいが。
でもどこまで突き付けても俺はリヒト・パーマー兼リヒト・フォン・フリューゲルな訳だから。
俺が正しいと思った方向に進むしかない。
いやほんと、なんでテロ堕ちしないの俺ってなってる。
「あー、湿っぽい話疲れるわー。話題変えよ、タブロイドはなんで飛んでるのさ」
「俺は理由なんてないよ」
「うわー、人に聞いといて卑怯じゃね? じゃあなんで飛ぼうなんて思ったのさ。毛嫌いされることを分かってる癖にオーシア軍人になったのは何か理由あるんだろ。オラ吐けや、俺は今らしくないこと言い過ぎて地味に恥ずかしいんだこら」
「らしくない自覚あったのか、痛、痛い。脛を蹴るな脛を」
君が、喋るまで、蹴るのを、やめなーい。
しばらくエイヤエイヤとタブロイドの細い足を蹴り続けて遂にタブロイドが折れた。
「まだガキんちょの頃さ。ベルカの航空ショー見たんだよ。OBCニュースに出てたベルカエースがみんな出てきてな。色取り取り様々な戦闘機が飛んでたんだ。流石は天下のベルカってだけあって凄かったのさ。その中で一際目を引く部隊があってな」
「へぇ、ロトやフッケバインとか?」
「いや。フリューゲル隊だ。知ってるか? ベルカ空軍第3航空師団第23戦闘飛行隊。当時ベルカで最強と言われていたラプター4機の空戦部隊さ」
「………オゥ、知ってル」
知ってるも何もうちのパパンです。
うわー、ほぼほぼ面識も何もないのになんか凄いムズっとしたぁ。
てかそうだよなフリューゲルだよな、うんなんもおかしくないし自分のことじゃないのに凄いムズムズする!
それからタブロイドは水を得た魚のようにフリューゲル隊と隊長である父さんの話、そしてそこに感銘を受けて空軍に入ったとか。
聞いといて止めることなんて出来ないし、身内話的な何かなのか分からんけど聞き続けたら俺の情緒がピンチになるからとりあえずフッと沸いた疑問を投げた。
「て、てかなんでそこまでフリューゲルに憧れてたのにベルカ空軍入らなかったの君」
「ベルカ、というよりベルカ軍が嫌いになってたんだ。核によってフリューゲル隊が居た基地とフリューゲル邸が吹き飛んで。そして灰色の男がオーシアとユークを争わせただろ? オーシアも大概やってるが、ベルカよりマシかなって、当時の俺は思ったんだろな。若かったんだよ、あの時は」
思ったより重い反応が返ってきてしまった。
古き良き憧れも曇らせてしまうとは、ほんとおのれベルカ。
「この世界ろくな国ねえよなぁ。マシな国って何処かあったっけ」
「うーん、今だとオーレリアじゃないか。レサス復興で支援してる」
「なんかエメリアやエストバキアと同じ展開になると思うの俺だけかな」
「着服されて航空母艦立てられて?」
「「………いやいやそんな同じことが二度も起こるわけないって」」
半分空笑いが廊下に響いた。
これは余談だが。いまから一年後に全く同じことが起こることなど俺たちは知るよしもなかったのである。かしこ。
そっから(フリューゲルからの話題転換も含めて)他愛もない雑談にシフトした。
先程のシリアス会話などなかったかのように本当に他愛のない話を駄弁りに駄弁ったのだった。
「そういえばトリガー。仮に俺が国境無き世界と関わりあったとして、今も本気で国境線無くすために暗躍してるって言ってたらどうしたんだ?」
「全身全霊を持ってお前を殺す」
「怖っ、声ひっく! 殺意漏れてるぞ」
「冗談だよ冗談。足折るぐらいで勘弁してやる」
「どっちにしろ俺は無事じゃないな。譲歩してる分怖いよ」
「あとブリストークソ野郎も殺す」
「また唐突だな」
「早くあいつこっちに来ないかなぁ。出会ったら速攻玉を蹴りあげるって心に誓ってる」
「嫌な誓いだなぁ………」
以前から何処と無くお互い1歩引いた身だった俺たちだが。少しだけお互いのことを理解できた気がしたのだった。
主に祖国へのヘイト的な意味で。
あ、そうだ。
「タブロイド、俺のイーグル直ったらラファールやるよ」
「またまた唐突だな! ありがとう」
ーーー◇ーーー
「諸君らの一部に最近では司令部が懲罰部隊も有効な戦力だと思い始めている……そう噂を流す者があるようだが、それは間違いだ。諸君らは自らの罪を任務達成をもって償っているに過ぎない」
「そういうあんたは勲章をもらいながらな」
「独房! 連れて行け!」
「は? うわっちょ待て! おい離せ! 離せよ!!」
今日も一人、哀れな罪人が独房に連れられたとさ。
「てかいまの何処に独房要素あったよ」
「匙加減だからな」
「フッ、ならばこの極悪3本線ハーリング殺し様が手本を見せてやろう」
「お前散々否定しまくったネタを自虐に使うんじゃねえよ」
見よ、これが荒波に飲まれた俺の語彙力。
1ヶ月溜め込んだファッキンゼイに対するフラストレーション。
「(この無能チキン! 顔面報道規制! 服で隠してるようで隠せてないデブ! 言語野独房のみ! 肝っ玉なしの粗○ン野郎! お飾り勲章! 年功序列! スキップド下手! 計画性なしのお飾り司令官! 人望皆無! 笑顔キメェ! 444基地ぶち殺したい人物トップ1! ヘーイ! お前の頭アップルルースゥ!!)」
(スゲー罵詈雑言吐いてやがる。完全口パクなのに言ってること分かるってなんだよ)
(しかもしれっと前に居るビンゴを盾にしてるし………)
「おいビンゴ! 貴様! この私に向かって何を言った!」
((なんで届いた!?))
「はあ!? 俺なんも言ってねえよ!」
「うるさい! 独房!!」
「なんでだーー!?」
ズルズルと連れ去られるビンゴ。
今度こそ何が起きたのかわからない面々は唖然とし、両隣のタブロイドとカウントがチラッと俺を見てきた。
俺も唖然としています。
「………」
「「………」」
「計画通り」
((トリガー、恐ろしい奴!))
この時の俺は大層ゲスい顔をしていたそうな。
そこ、嘘つけって言わないの。
「エフンエフン、んん。では作戦を説明する。次はエルジア領内に侵入しての作戦だ。北のワイヤポロ山脈にあるエルジア軍通信施設が敵の無人機群に関連する重要施設だとわかった。貴様らの任務はこの施設を破壊し、敵無人機群を弱体化させることとなる」
「ワイアポロ? ワイアポロって確か」
「トリガーが来た時に司令官が任務蹴ったとこだ」
「あーー」
そんなこと言ってたような。
確かあの時は本当に蹴った派と法螺吹き派でわかれたよな。
こんな路肩に追いやられた指揮官に司令部の命令拒否れる訳ないってのと。そんな重要任務が司令官の元に来るわけねえって奴と。
しかし今回は本物だろう。ブリーフィング画像を見るにインシー渓谷に近い場所にある雪山のようだ。
「だが敵にとっても簡単に破壊を許せる施設ではないのだろう。一帯は偵察衛星によって常時監視されており、発見されれば長距離超高速対空ミサイルが飛んでくる。その餌食になりたくなければ、山腹から麓にかけて発生している雲にすがるしかない」
「雲が全くなかったらどうする気だよ」
「空域情報を見て今の時期は雲が厚い。仮になかったとしてもお前たちが撃墜されるだけだ、なんの問題もない」
問題しかないし任務失敗で攻められるのあんただって分かってる? いや口八丁で誤魔化すのかね。誤魔化せるかの話だけど。
「ミサイルに撃墜されるか岩場に墜落するか、選ぶ自由くらいは与えよう」
((こいつ早くくたばらねえかな))
今日もスペア隊の気持ちは一つです。
ーーー◇ーーー
「まだ俺のイーグル直らない感じ?」
「時間かけてるのは悪いと思ってる。上層部とバンドックにもせっついてる。あと少しだから我慢してくれ」
「りょーかい。代わりにチューンは速度に振り切ってくれると嬉しい。機動性は幾らか落としてもいいから」
「雪山の上で対空ミサイルとのチキンレースだってな。ご愁傷様だぜ」
「今日も頼みます俺たちの女王様」
馬鹿言うんじゃないと呆れながらエイブリルはラファールの元へ。
今回はここに配属されてから一番深くエルジア領内に踏み込む作戦だ。気を引き締めねえと
「よおトリガー」
「あ? なんだフルバンドか。なんか用かよ」
ハンガーに入ってきたのは自称情報屋のフルバンドだった。
何処からか抜き出した情報で日銭を稼いでは売り払うことを趣味としたこのガリガリ男がいったい何しに来たのやら。
「なーに。お前に情報を売りに来たのさ」
「金なんかないぞ」
「金はいらねえ。その代わり次のミッションで俺がヤバくなったらこの前の正規軍やジャイロみたいにアシストしてくれよ。今回はあのアーセナルバードが来るかもしれないだろ?」
つまり金銭を欲求しない代わりにボディーガードをやらせろってか。
確かにインシー渓谷でUAV相手に孤軍奮闘した俺に守ってもらうなんて心強いと感じるだろうが。
加えて今回のワイアポロはアーセナルバードの防御圏内ギリギリ踏み込んでいるかないか。
1歩間違えば小鳥どもが来る可能性もある。
「悪いがいらねえ。他人を一々気にして飛んでいられる程余裕ないし。自分の身は自分で守れ」
「そういうなよ。この前のミッションでタンクローリーから出てきた白い光の正体、知りたくねえか?」
「アーセナルバードが搭載する長距離広範囲ミサイル、とか言うんじゃないだろうな?」
「………」
フルバンドの顔が強ばった。
あってるのかよ。情報屋を気取るならもう少しポーカーフェイスを身に付けたらどうだ?
というかアーセナルバードはあんな物まで積んでるのか。あんなものが遠方からドカドカ撃ちまくられるなんてことがあったらたまった物ではないだろう。
確かエストバキアのアイガイオンも似たような物を持っているという噂を聞いたことがあったな。
「ならUAVだ。これまでUAVがなんで俺たちの行く先々でかち合うのか。それを知りたくないか?」
「別に来たら来たで撃ち落とせばいいし。仕組みだってエルジアが張ったレーダー網に飛び込んだ奴を自動的に迎撃しに行くとかそんなもんだろ」
「なっ、誰から聞きやがったんだ!?」
「当たりかよ。自分で考えた。そうだとしたらロカロハやアルティーニョでのやけに遅い援軍タイミングも納得が行くし」
またも鎌かけが当ててしまった、情報屋の面目丸潰れである。
基地が壊滅的被害を受けてから飛んでくるなんて。UAVを自慢するエルジアらしくない。
UAVの戦闘能力は有人機のそれを凌ぐ。それを積極的に基地配備しないのはどうにも可笑しい。
思い返してみればエルジアの電撃的領土拡大はいち早くUAV警戒網を引くためだったのかもしれない。
メイジ隊に所属してレーダー車を破壊したが、あれもその一環だったのだろう。
もしかしたら俺たちの任務もそれを探らせるため? なんてのは流石に考えすぎか、わからんが。
「な、なら遺跡の」
「もういい。俺はお前から情報なんか買わない。欲しくもないしな」
フルバンドはあからさまに動揺していた。
この基地に置いて情報を知りたくないなんて言う奴は居なかった。だからこそフルバンドの懐は暖まっていた。
目の前に居る俺を信じられないと後退り、驚愕を露にするフルバンドに思わずため息が出た。
「はぁ。言っても分からないなら言ってやる。俺、お前のことなんーか好きになれないんだわ。情報をひけらかすのは自分が他人より知ってることを実感したいからだろ。優越感に浸って他人を操作しよう、なんて大それたことは考えてないだろうけど」
「それの何が悪い。情報は全てだぞ? 情報が少ない方が死ぬ、なら知っておいて損なんかないだろ」
「お前は何もかも軽いんだよ、情報も身の振る舞いも。だからこんなとこにぶちこまれたんだ」
「何を………」
「おーい、トリガー。ちょっと来てくれー」
「あいよー。ま、そういうことだ。お前も命が惜しいならもう少し考えて情報を出すんだな。でないと、死ぬぜ?」
呆然とするフルバンドに踵を返してエイブリルの元へ。
これで懲りないようなら遅かれ早かれどうにかなる。
あいつ個人が死ぬなら勝手に逝っていいが。巻き添えで死ぬのは御免だ。
「ここなんだが、もっと速度上げれて………ん、どうしたトリガー。変な顔して」
「んあ? ああ、戦争で厄介なのって敵のエースじゃなくて無能な味方だよなって」
「ちげえねえ」
エイブリルと共にラファールの最終調整をする俺らをよそにフルバンドも自身のハンガーに戻っていた。
その顔はいつものヘラヘラ顔ではなく困惑と焦りに似たものだった。
「訳わかんねえ………」
ガシガシと頭をかきながらフルバンドは誰に言うのでもなくボソッと呟いたのだった。
この作品で何回こすってるか分からない国境無き世界へのヘイトスピーチですが。今回はなんとも闇深な部分を出しましたね。
書いててこいつ人類の天敵ルートで皆殺しテロリストルート良くならんかったなと。
原典トリガーもよくもまあ戦争終結に力を注いだなと思いましたね。
そして今回タブロイドとフルバンドに焦点を、というかほぼタブロイドです。
タブロイドのデモ理由とか匂わせ国境無き世界系の整理はほんと苦労しました。
代わりにフルバンドはほんと短くおわりました。トリガーにとってフルバンドはそんな尺を使うような感じでもなーということでしょうね。はい。
次回(多分次次回)フルバンドの運命やいかに!!