エースコンバット7 FLIGHT REZON   作:ブレイブ(オルコッ党所属)

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 ネタ警報発令中~

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STAGE40【GOOD LUCK(あばよ、大馬鹿野郎)

 

《あいむしんかーとぅーとぅーとぅーとぅとぅー。あいむしんかーとぅーとぅーとぅーとぅとぅー》

 

 なんか陽気なんだか陰鬱だかわからない鼻歌を小耳に今日もいざ空へ。

 

 やあみんな! 俺はリヒト・パーマー! 

 ビンセント・ハーリングを殺したって言う冤罪でぶちこまれた特級犯罪者だ。

 

 もうほんと周りからハーリング殺しハーリング殺しって言われて、言われ過ぎてもう慣れてきました。

 人気者は辛いネ! 

 

《偉そうに。選んで殺すのが、そんなに上等かね》

 

 なんか鼻歌歌ってた人が愚痴って来たんだけど。

 知らんがな、水底に行け。

 

 さーて私が乗る機体はなんともスペシャルな機体だ!! 

 

 名前は………名前は………なんか飛龍っぽい名前の奴。

 

 そしてこいつが懸架してるのが展開式大型電磁投射砲アークライト! なんかコイツはスラッと頭に浮かんだな。所謂レールガンである。

 

 そして目の前にはあのクソッタレ司令官ファッキンゼイが乗った輸送機。

 これだけ見たらわかるよな? 

 

 これで臆する奴はいねえよな? いねえよなぁ!? 

 

「レールガンを輸送機のゴールにシュー!!」

「そんな! 私は司令官だぞ!? うおおおおおおおおおああああああ!!!?」

 

 ファッキンゼイの最高に耳に良い断末魔が響き渡った。

 一瞬ファッキンゼイがオールバック眼鏡になった気がしたがそんなこたぁどーでもいい! 

 

「ローパー1ロスト。ミッションもロストだ。守るほどの価値があった積み荷とは思えんがな」

「超! エキサイティン!」

 

 フロム・ソフトウェ───

 

 

 

 

 

 

 

 ピー! ピー! ピー! ピー! 

 

 基地の起床アラームで夢からグッドモーニング。

 

「んあ………………」

 

 ………なんか変な夢見た気がしたな。

 

 でもなんだろ。すごーーーくスカッとした目覚めだ。

 

「今日も頑張ろー………おっ?」

 

 窓の外が騒々しい。

 見てみると、なんだなんだ? 

 

 滑走路に輸送機、C-130 ハーキュリーズが沢山出てるではないか。

 

「あー、ファッキンゼイがなんか言ってたなぁ」

 

 

 

 ーーー◇ーーー

 

 

 

(いつの間にか正規部隊扱いだな………)

 

 444基地には大量の輸送機が現れ、基地物資の搬入作業が行われている。所謂お引っ越し。

 

 幸か不幸か、懲罰部隊の働きにより前線が押し上げられ。ここが囮の基地としての機能を失われつつあるという。

 実際、トリガーが来てからしばらく。欺瞞邀撃は行われていない。

 

 そして晴れてこの基地は新たなフロンティアへ。

 基地はユージア大陸南部に移動させるという命令が来た。

 そして移動には今や整備士のトップ、スクラップの女王であるエイブリル・ミードも含まれていた。

 

「私が軍人じゃないってこと完全に忘れられてるだろ………」

 

 大量のキメラ機をミキシング製作しておいて今さらと言われればそれまでだが溜め息を吐かざるを得ない。

 そして、彼女の存在が今後の鍵となるのだから手に負えない。

 

 そこら辺に転がってる地図を広げる。

 ザップランド基地の面々は、ユージア大陸の西側。

 エルジア、そして軌道エレベーターが目と鼻の先の島。タイラー島。

 

 ここは最近上陸作戦が行われ成功した場所らしく。

 エイブリルたちはそこに上陸せよとのこと。

 

「………はぁ」

 

 なんてことのない戦場の移動だ。

 と普通の軍隊ならそうだろうが、ここは懲罰部隊。

 

 命令はこうだ。

 懲罰部隊は飛行場まで輸送機で移動。その際、戦闘機の随伴は認められない。

 そして敵基地の格納庫に残っている機材を利用して戦闘行動に参加せよ。

 

 お前たちは正規軍ではない。

 本来なら地雷除去にでもさせられるのが良いとこの使い捨て(懲罰兵)だ。

 懲罰部隊は懲罰部隊らしく、因数外の兵器で戦え。

 

「………はぁー」

 

 でかい溜め息が出る。

 

(疑う余地もない。これは口封じだ)

 

 懲罰部隊は知りすぎた、何てことではない。

 フルバンドが何かを喋ったらしいが、肝心なことを言う前にバンドックに処されたと。エイブリルはトリガーからそれとなく聞いていた。

 

 では何故懲罰部隊が口封じを? 

 

 単純な話だ。オーシアは懲罰部隊という負の遺産を隠したがっている。

 ただでさえ世論から滅多打ちにされているオーシアだ、懲罰部隊を使って命知らずな任務に特攻させ。スペアの名のごとく使い潰していると知られればエルジアの格好の餌食だ。

 

 それは別として、懲罰部隊なんて奴らに手柄を稼がれたと思われたくないのだろう。

 前線の兵士がそう思ってるかは知らんが、腐ったオーシア上層部はそう思ってると確信してるエイブリル。

 

 特にトリガーは働きすぎた。

 

 欺瞞邀撃という名目なのに爆撃部隊を皆殺し。

 ロカロハでは無補給でUAVやネームドを返り討ち。

 インシー渓谷で最悪な悪天候の中正規軍を単機で守りきり、化け物を追い払い。

 アルティーリョ港で砂嵐に揉まれながら空対空爆撃を仕出かす変態野郎をぶちのめし。

 ワイアポロではIFFを擬装した敵機を退けた。

 

(………ほんとあいつ何者だ?)

 

 振り返ってトリガーがこれまでこなしてきた偉業を並べて思わず遠い目になった。

 

 トリガー、数奇な運命で444にぶちこまれた不幸な男。本来ならこの流刑地で死ぬはずだった男。

 

 今回の口封じ、その最大の目的はトリガーを葬り去ることなのではないか? 

 空で死ねないなら空を奪い、地上で殺せばいい。もしかしたらタイラー島に刺客を送り、流れ弾に当たった物として処理するとか。

 

 ふざけんじゃねえ。と心で毒づく。

 

 さんざんぱらトリガーに世話になりっぱなしの癖して自分の都合ばかりしか考えないオーシア。

 昔となんら変わってない。ハーリングが膿を摘出しても、人が人である限り腐敗は続く。

 

 そんな中トリガーは愚直に飛び続けた、ただそれだけだと言うのに。

 

 エイブリルは背後の戦闘機を見やる。

 色々無理を通して組み上げたトリガーの愛機。

 

 せっかく作ったんだから、是が非でも乗せてやりたかった。

 だが囚人であるエイブリルに何が出来ようか? 何も出来やしない。

 結局流れるまま、なんとかなるようにするしかない。

 

 せめてあっちでも奴の為に特上の物を作ってやろうと思ったその時。エイブリルは信じられない物を見た。

 

「電話だ………」

 

 白地のダイヤル式の電話。随分と古い型式の電話だ、エイブリルも小さいときに見たことあるかないかだった。

 懲罰兵が決して触れることの出来ない電話機が、基地移動のドサクサの中放り出されている。

 

 電話を通して繋がるはずの故郷が随分と遠い場所にあると感じられる。

 

 普通なら死ぬ前に家族に連絡の1つをやることだろう。

 だがエイブリルはそこら辺クレバーだった。というより、もう親族はみんな遥か空の彼方にいる。

 

 整備の腕と脱走の企てばかりが脳ではない。

 

 エイブリルは覚えている電話番号に希望を見いだした。

 

「………あ、もしもし。エドワード国防軍参謀本部副議長に繋いで貰えますでしょうか。ええ、コルベット・ミードの孫が尋ねたとお伝え下さい」

 

 

 

 ーーー◇ーーー

 

 

 

 しばらくして基地司令に呼び出された。

 

 我が物顔でソファに腰かけるエイブリルをマッキンゼイは忌々しげに書類をダンボール箱に落とした。

 

「聞いたろ? どうだった。副議長からの電話は」

「ぬか喜びも良いとこだ。お前、何故そんなパイプを持っている?」

「祖父が空軍中将で友人が多かったのさ。で、あんただけは特別仕立ての連絡機で飛ぶんだろ? みんなには明後日に向かわしといて、自分は安全な後方に向かうなんてな」

 

 自分はなにもしてない癖に。あることないことをさも自分の功績として高々と話したのだろう。

 こいつも腐ったオーシアと変わらない。

 違うとしたら、こいつが小物中の小物で、取るに足らない奴だということぐらいだ。

 

「わかった………だが便乗させるのはお前だけだぞ。座席の空きは1つだけだ。それ以上は融通できん」

 

 的を得たり。

 

 エイブリルは良いことを聞いたとほくそ笑んだ。

 見るものが見れば背筋が冷えるような笑みだった。

 

「ところで。スペシャルなあんたには誰がつくんだ? まさか護衛なしって訳じゃないだろ?」

「護衛にはスペア2、カウントが護衛につく。奴はこの基地一のトップエースだ。奴がつくなら万全だ」

 

 エイブリルはハッと、鼻で笑いそうになるのを抑え込む。

 カウントに対してではなく、目の前の能天気な指揮官に向かってだ。

 

 カウントは撃墜数を詐称している。噂では最近やっていないらしいが。トリガーが来る前から詐欺していた伯爵だ。積み上げた撃墜数は正にトップエースそのものだろう。

 それを鵜呑みにし、挙げ句の果て護衛には1機しかつけない。むしろ1機で充分だと高をくくっているマッキンゼイの頭の出来には関心すら覚えた。

 

 だがそんなことはどうでも良い。

 

「取り引きをしないか?」

「取り引き? 貴様を乗せるのは決定している」

「私の席を譲りたい奴がいる」

「なんだと?」

 

 マッキンゼイが正気を疑うような目をした。マッキンゼイから見たらエイブリルは命をドブに投げ捨てると言うことと同じだったからだ。

 無論正気だ。彼女は精巧な笑みを浮かべたまま続ける。

 

「何処のルートを通るかは知らないが。護衛が1機というのは流石に自殺行為だ。最低でももう1機ぐらいいた方が良い。例えばこの基地の真のエース様にな」

「エースはカウントだ」

「伝わらないみたいだから答えを言うぞ。私の代わりにトリガーを連れていけ」

「なんだと!?」

 

 全くもって欠片も考えてなかったのだろう。

 表面上冷静を装っていたマッキンゼイの薄い面が剥がれ去った。

 

「馬鹿を言うな! ハーリング殺しなんぞに護衛を頼む馬鹿が何処にいる! 護衛対象を殺すような奴だぞ!?」

 

 仮面の剥がれたマッキンゼイはいつものごとく怒鳴り散らかした。

 だが彼の主張は至極全うだ。エイブリルもなにも知らないければ同じく蹴っていたことだろう。

 

「あんたが殺されるようなビッグネームでもないだろうに。品性も祖業にも問題はないし、ずっと否認し続けてるだろ、奴は」

「ふざけるな! 汚らわしいベルカ人の言うことなど信用出来るか!」

「…ベルカ人だって?」

「そうだ! 奴の本当の名はリヒト・フォン・フリューゲル! ベルカ戦争でオーシアに散々煮え湯を食らわせたあの忌々しいフリューゲル家の子息だ! そんな生粋のベルカ人に護衛を任せるなど! だいたい奴は──」

 

 そのあとマッキンゼイはトリガーのことをクソミソに捲し立てるがエイブリルの意識はトリガーに向いていた。

 

(あいつがベルカ人だって? あの陰謀策略が得意なベルカ人だってのか?)

 

 エイブリルが見ていたトリガーはそんな物とは無縁に思えた。頭は切れるだろうがそれだけだ。

 

 フリューゲル、ベルカの生粋の英雄。

 その軍人らしからぬ清廉潔白っぷりは他国でも評価された、まさに英雄部隊。ベルカの空にフリューゲルありと言わしめた凄腕中の凄腕。

 そのフリューゲルの末路は10年前のOBC特番でエイブリルも知っていた。

 

 意識を浮上させると丁度マッキンゼイの罵詈雑言が終わったらしい。ゼーハーと肩を上下させる彼の顔は汗まみれ。

 

「あんたのトリガーに対する認識は充分理解できたよ。だが奴の腕前は本物さ。それにな、丁度奴の戦闘機を改修したんだ。私が今まで作った中で2番目の作品だ。乗ってくれなきゃ整備士泣かせ極まれりって訳だ」

「そんな理由で自分の身の安全を捨て去るのか? 理解できん」

「結構だね。第一、取り引きの主導権は私にある。断っても良いが、知り合いの副議長にあることないこと吹き込んでも良いんだぜ?」

「………」

「いやその必要はないよな? 聞いてるんだろ、参謀本部からトリガーを護衛機要員にしろってよ」

 

 無論、これはエイブリルが頼んだことだ。

 トリガー、リヒト・パーマーは無罪だ。奴は嵌められた可能性がある。オーシアはまた同じ過ちを犯すのかと。

 オーシア上層部にこんな話をするなど自殺行為も甚だしいが。エドワード副議長という男は信用できた。なんせオーシア軍が嫌いな彼女の祖父が一目置いているというお墨付きがあるからだ。

 

 そしてタイミングが良いのか、副議長も同じことを考えていたらしい。

 

「本当ならカウントではなくトリガーが護衛要員だった。それを現場判断も良いことにあの手この手で断ろうとしたんだろ、あんたは」

「な、なんのことだ。出鱈目を言うな!」

 

 隠す気はあるのに尻尾が丸見えだ。

 

 年功序列で大佐に上がったという噂があるが、それを差し引いて良くそんな階級章をつけてるものだと思った。

 だがエイブリルも長々と話すつもりはない。有無を言わさずトドメを刺しに行った。

 

「断言しても良い。奴を連れた方があんたの為になる。何が起こるかわからないのが戦場だ。理由をでっち上げて心象を悪くするメリットなどあるまいよ」

「………………………………良いだろう」

 

 長い長い沈黙の末、マッキンゼイは声を絞り上げた。

 

「じゃあそのように頼むぞ司令官どの。旅の幸運を祈ってるよ」

「狂人め」

「ハッ」

 

 その名は奴にこそふさわしい。

 

 

 

 ーーー◇ーーー

 

 

 

「お前の読みが当たったなトリガー」

「当たってほしくなかったよ。噂が本当なら、はぁ………」

 

 いつか来るであろう来ないでくれと願った日が来てしまった。

 444最後のミッション。そしてそれがどんな意味を持つのかも。

 

「よう」

「おう、なんだよカウント。上機嫌だな」

「まあな。お前らには悪いが抜け駆けさせて貰うぜ」

「あんまそういうこと言わない方が良いぞ。俺たちはまだしも後ろから刺されるぞ」

 

 主語を言わなくても会話が成立した。

 その答えはこれからあのジャスティン・マッキンゼイ大佐どのが言うことだろう。

 ジャスティン………似合わねぇー。

 

「整列! 参謀本部からの通達がある、よく聞け。諸君らには、これまでの作戦遂行の功績が認められ恩赦が下った。全員にだ」

「全員ってまじか?」

「ハーリング殺しもか」

「こいつは良いな」

 

 懲罰兵は揃って信じられないと口にする。

 多生のざわつきを止めることなく司令官が続けた。

 

「オーシア軍第444航空基地飛行隊は正規軍部隊に編入。一般作戦に従い、ユージア大陸南西部のタイラー島基地奪還作戦へ投入される。既に戦闘が開始されており、南部の飛行場は取り戻した。今は島の北部で残存戦力と戦闘中だ。戦闘は激戦を極めており、参加部隊はかなりの損耗が予想される。だが新たな戦地を与えられるのは栄誉あることだと考えろ」

「楽勝だ」

「地獄なのはいつものことだしな」

「合法的に足を洗えるなら訳もねえ」

 

 皆ファッキンゼイの言葉をそっくりそのまま鵜呑みにしている。

 ごみ溜めで一生を終えようと諦めていた連中だ。垂らされた餌は正に極上だろう。

 

 一部を除いて。

 

「呑気なもんだ」

「言ってやるなトリガー」

 

 後方の基地を取り戻した? 本当にそうなのかわからない。罪人に真偽を疑う権利はない。

 

 聞いたところ戦闘機は出さないらしい。文字通り身一つで飛び込む。

 取り残された戦闘機を使って戦えと言ってるらしいが。空母を抑えられ戦闘機の数が少ないオーシアが元犯罪者に戦闘機を貸し与えるだろうか? 

 

 否だ。むしろ懲罰部隊はこれからのオーシアの栄光に不要なもの。

 

 口封じ。そんな言葉が頭に浮かぶ。

 切っ掛けはあの時のバンドックの事情聴取、ではないと良いな。

 些か喋りすぎてしまったか。だがあれ以外で身の潔白を証明する術となかったろう。

 

 もっとも、それを差し引いて。至極全うな命令だとしても俺たちは戦闘機をタイラー島とやらに持っていくことは出来ない。

 

 何故なら俺たちの監視役であるAWACSバンドックは司令官につく。

 監視のない俺たちが戦闘機という自由な足を手に入れたらどうなるか。

 

 良くて脛に傷がついた傭兵。悪くてエルジアの小間使いに転属だ。

 

「懲罰部隊司令官の小官はここまでだ。私を含む基地司令部要員はユージア極東部の基地へと転属になった。補給による経由地ボルゴテレストはエルジア領内にある親オーシア国で、途中迂回しても最後はエルジア領上空を飛ぶこととなる。そこで護衛要員を数名人選した。命を賭して私を守るように。以上だ、解散!」

 

 護衛に選ばれたのはカウントだろう。

 一応データではトップエースだからな。

 

 もし仮に自分がトップだとしても護衛には抜擢されないだろう。

 3本線のハーリング殺しのベルカ人。

 

 見るからにベルカ拒否派であろうファッキンゼイが俺を指名するはずがない。現に通達来てないしね。

 しかしどっちにしろ俺のハーリング殺しの罪は清算されることとなった。精々生き延びて見せるさ。

 

「おい! 待てトリガー」

「ハイ?」

 

 呼び止められると思わなかったから変な声が出た。先に行くぞとタブロイドは文字通り行ってしまった。

 こんな中年デブと二人っきりってどんな罰ゲームだ? 

 

「貴様には護衛として飛んでもらう。腕前には多少不安があるがな」

「え!?」

「なんだ」

「飛べるんですか?」

「そうだ。貴様は無人機を落とすことに関しては秀でてるらしいな。また来ないとも限らん。何があろうと私の乗る機体を守り抜け」

「りょ、了解しました」

 

 え、えー? 選ばれちゃったのか? 

 ハーリング殺しの俺を肝っ玉が小さいことに関しては右に出ることのない司令官が指名したのか? 

 

 と思ったらそういうわけではないようでもの凄い不機嫌な顔のファッキンゼイ。

 

「参謀本部直々による護衛機要員の指名がなければ、貴様もタイラー島送りだったんだ………貴様、ハーリング殺しのベルカ人の癖に裏から汚い手を回しやがって」

「参謀本部直々、汚い手? すいません司令官、一体何を………」

「良いか! 怪しい動きを見せたら直ぐに撃ち落とすからな!!」

「え、ええ………」

「わかったらさっさと行けハーリング殺し!!」

「は、はい!!」

 

 これは駄目だ。と一目散にブリーフィング室を後にした。

 

「トリガー」

「うわっバンドック! 目の前に立つなよ!」

「お前が来たんだろう」

 

 だからってドアの真横に陣取るな! 

 

 前方のバンドックに後方のファッキンゼイってなんだよこの地獄。今さらか。

 

 無言でついてこいと言うバンドックと共に廊下を歩く。一刻も早くそこから逃げたいのは同じらしく俺たちは揃って早歩きだ。

 

「聞いたか? いまの話」

「聞いた。そして俺も奴のお守りだ」

「どっちが幸運かな。いやこっちか。あんたの聴取は無駄じゃなかったみたいだな、そこらへんは?」

「俺は何も聞いていない」

 

 てことは効果があったのかはグレーゾーンか。

 とりあえずまだ飛べるみたいだ。その後のことはその時に………

 

「なあバンドック。基地司令を送り出した後にまたブタ箱ってことはないよな?」

「恩赦は与えられた、それ以外はない」

「そうか」

「だが恩赦を与えたのはオーシアだ」

「嫌だぁ………」

「幸運を祈ることだな」

 

 優しい! バンドックが過去1優しいよ! 泣きそうだよ! 

 

「あんたが基地司令部ならって思えてならない」

「そしたらアイツがAWACSだな」

「冗談以前に無理だろ」

「無理だな。任務の内約だが、大体はブリーフィング通りだ。予測では無人機が来るような場所は避けるが、その限りではない。ネームドが来ないとも限らんしな。ところで貴様、どれだけネームドと遭遇した」

「えーと。パイロ、ジェスター、ベイオネット、ローニン、ファングにキートン、フォコンにガゼル、そしてスパイダーだから、9機」

「貴様呪われてるのか?」

 

 俺もそう思う。

 初陣でガンポッドモンスター出るなんてどうなってるの俺。

 

「基本いつも通り俺が指示を出すが。今回はかさばる荷物がいる。といってもわめき散らすだけだろう。気にしなくて良い」

「前から思ってたけど。あんた正規軍だよな?」

「お前が漏らさねば言ったことにならない」

 

 言っても信じてもらえねえよきっと。

 

「荷物を纏めろ、金や貴重品は持参しとけ。指揮官が没収を名目に着服しかねん」

「あんたはしないのか? 大損した補填はついたのか?」

「忘れろ、忌々しい」

「あれは苦い思い出でしたねぇ」

 

 思わずゲススマイル。

 

「はぁー…ミードがお前の機体について話があるそうだ。顔を出していけ。離陸まで多少時間もある。精々杭を残さないようにしておけ」

 

 

 

 ーーー◇ーーー

 

 

 

「エイブリル」

「ようトリガー。基地司令の護衛任務おめでとう。誤って司令を撃つなよ?」

「撃つ価値もねえよあんな奴。ていうか知ってたのか」

「まあな。私はタイラー島だ。そこで部品を繋ぎ合わせて飛べる機体を作って戦えだってよ」

「馬鹿馬鹿しい」

「だな。さて、わかりきった話をしても仕方ねえ。来な、見せたいものがある」

 

 エイブリルについていきガレージに入る。

 

 真っ暗なガレージに明かりがつき、思わず目が眩みながらソレを見た時、俺は目を見開いた。

 

 そこには、イーグルではなかった。

 

 形はイーグルだろう。

 だが普通のイーグルにはないカナード翼がコクピット脇に設置され。通常のノズルが次世代機やスホーイ系に使われる2次元式推力偏向ノズルになっていた。

 

「こ、これって」

「どうだい、なかなかの勇姿だろう?」

「F-、15 S/MTD………!」

 

 F-15 ACTIVE、F-15 IFCSとも呼ばれるそれはF-15イーグルの試作実験モデル。

 オーシアどころか世界でも数えるほどしか製造されてないレア中のレア。

 

 かつてアンソニー・パーマーが指揮を取るソーサラー隊の愛機だった。

 

「こんなレアな奴何処で!? 初めて実機見たぞ!?」

「元はお前のイーグルだよ。この前バンドックが来たときに貰ったのがMTDの改修キットだったんだ。そのせいで遅れちまったけどな。間に合ってよかったぜ。嬉しいだろ?」

「嬉しい、けど。いやでもなんでまた」

「あん? この前言ってたろ。MTDがあればなぁって」

「え………いや、え、あれで?」

 

 あんなボソッと言ったようなことで「よしMTD作ろう!」ってなるかい! 

 そんなんでこんな眉唾物に乗れるのか俺が。アンソニーの機体に? 

 

「ありがとうございますエイブリル様、いや女王陛下様」

「アホ、メカニックとしてエースの要望は聞かねえとだろ?」

 

 い、イケメン過ぎる! 

 改修キットがあったって言ったって、そんな簡単に作れるようなもんでもないだろうに。

 

「本体の方も出来るだけF-15系の部品で取り揃えた。所々キメラもある。問題はないと思うが、向こうについた時には部品を交換しとけ。これに諸々書いてるから渡せ、そしたらわかる」

 

 渡されたメモを読んでみるがわかるようでわからん。

 

「操作系はF-15Cに似てるが、それ以上にガンガン動く。コブラどころかクルビットもな。あたしお手製の魔法も組み込んだ。これなら例の化け物が相手でもやりあえるだろうさ」

「凄いな」

「まあ、お前としてはF-22ラプターの方が良いだろうけどな。なぁ、フリューゲル」

「え?」

 

 あれ、俺の聞き間違いですかねぇ? 

 なんか俺の旧姓が聞こえたような。

 

「なに呆けた顔してんだ」

「いやなんで知ってんの?」

「マッキンゼイが口滑らせた」

「あのハゲェ!」

 

 なーにいらんことぶっこんでるかなぁ! マジで後ろからぶち抜いてやろうか! 

 だってエイブリルはベルカに親父殺されてるんだぜ………

 

「なあトリガー。この前お前は聞いたな、ベルカは嫌いかって」

「うん」

「確かにベルカは嫌いだ。力に固執し、身勝手な復讐で自国の民を殺し、戦争まで起こした陰謀国家だ。けどな、良いベルカ人も居る、居ても良いって思った。思えてきたんだ」

 

 エイブリルは何処かスッキリした顔をしていた。

 グジグジ腐ってる自分が嫌いって言ってたが、今の彼女は晴れやかだった。

 

 言って恥ずかしくなったのか、短い髪をガシガシとかいてそっぽを向いた。

 

「あたしは機体の最終確認をする。タブロイドとかに挨拶はしたのか」

「これから」

「じゃあ行ってこい。時間はそんなねえぞ」

「ああ」

 

 まだまだ熱気を放ってる外は輸送機のプロペラ音で賑わっていた。

 歩きだした俺の足は1度止まって振り返る。

 

「エイブリル!」

「ん?」

「ありがとう! お前のお陰で飛べた! この恩は忘れねえ!!」

 

 プロペラ音に負けない声量で叫ぶ俺に対してエイブリルは軽く手を上げて答えてくれた。

 

 

 

 

 

 

「タブロイド!!」

 

 輸送機に乗りかけるタブロイド。

 こっちに気付くと側の看守に一声かけてこっちに来てくれた。

 

「おうトリガー。護衛要員おめでとう」

「まだなんも言ってないんだけど」

「そんな申し訳なさそうな顔されたらな。むしろ一番に声かけられなかったのが不思議なくらいだ」

「いや、俺ハーリング殺しだし」

「元だろ? 恩赦をくれたんだから」

 

 そうだろうか。どうにも不安が拭えないから素直に喜べないな。

 俺が冤罪だから許された訳ではないし。

 

「恩赦を貰いたがってたのに嬉しそうじゃないな」

「当たり前だ。ファッキンゼイがお前たちのこと何て言ってたか分かるか? タイラー島送りだぜ? 連中はお前らをゴミのように捨てる気だ」

「まあ俺たちはスペアだからな。でもお前は違う」

「俺だってスペアだ。スペア15として飛んできたんだ」

「お前のような奴には相応しくないよ」

 

 何処までも本心だろう。

 こいつは本当に此処にいるのが馬鹿らしいぐらいの良い奴だ。

 良い奴は何時だって馬鹿を見る、愚かな高給取りだけが甘い蜜を啜り続ける。国益なんて考えてない、自らの快楽しか知らない奴らがいるというのに。

 

「トリガー。俺はな、お前から飛ぶ翼が奪われないことが何よりも嬉しいんだ」

「なんでそんな」

「初めてお前が飛んで、敵を片っ端から撃ち落としたのを見た時。俺は航空ショーで見たフリューゲル隊の姿を見たんだ。雄々しく羽ばたく力強い飛び方に俺は魅せられた。いや、あの時のフリューゲルなんか目じゃないぐらいの熱を感じられたんだ」

「タブロイド」

「嬉しかったんだぜ。あの化け物の僚機を任せるって言った時はな。状況は最悪だったが、終わったあとの爽快感は忘れられない。燃えカスのような俺にそんな体験をしてくれたお前には感謝してもしきれない」

 

 あの時は、とにかく余裕がなかったんだ。

 死にに行けと言ったようなもんなのに、こいつは欠片も恨みごと言わない。

 

 こんな奴が割りを食う為に飛んでるわけじゃねえってのに。

 

「トリガー、お前は生き残れよ」

「お前もだ馬鹿! さよならなんて言ってやらねえからな!」

「ハハハ。こりゃおちおち死んでられねえな」

「おーいタブロイド! そろそろ時間だ」

「おう! じゃあなトリガーまた会おうぜ」

 

 勿論だ。その為にもしっかり飛んでやらねえと。

 

 あ、そうだ。

 

「タブロイド、お前に言いたいことがある」

「なんだ?」

「なんというか、お前ってほんと勘が良いよな。大当たりだよ」

「どういうことだ?」

「俺はリヒト・パーマーって名前だが。実は本当の名前があるのさ──俺はリヒト・フォン・フリューゲル。ベルカ空軍第3航空師団第23戦闘飛行隊、フリューゲル隊隊長、アレクセイ・フォン・フリューゲルの末っ子なのさ」

「え………ええーー!!?」

 

 これまで見たことない顔で驚くタブロイド。

 余りにも満点で驚いてくれたから思わず笑ってしまった。

 

「またなタブロイド! 生き残って会えたらまた一緒に飛ぼうぜ!!」

 

 あんぐりと口を開けるタブロイドを置いて愛機が待つガレージに駆け込んだ。

 

 取り残されたタブロイドは暫しのあと天を扇いだ。

 

「ふぅー。生きてりゃ良いことあるなぁ」

 

 見上げた空はフリューゲル隊のカラーと同じ色をしていた。

 

 

 

 ーーー◇ーーー

 

 

 

「バッテリーオン。各計器類チェック、よし。カナード、エルロン、ラダー、エレベーター、フラップ。正常に稼働確認」

 

 エイブリルから貰った手製のマニュアルに目を通しながら出撃を待つ。

 操縦系統はF-15Cそのままにしてくれたようだ。

 あとは飛んでみてだな。万が一は心配してないが。

 

 あとはイジェクションシートさえあれば完璧だった。というのはエイブリルの談だ。

 

「んだよトリガー。なんかスゲーの乗ってるじゃねえか。F-15 S/MTDなんて、初めて見たぜ」

「羨ましいでしょ。エイブリルが精魂込めて作ってくれたスペシャル機だぜ」

「嬉しそうな声しやがって。いいさ、俺にはSu-33(こいつ)で充分さ。先行くぜ」

「ああ、先にお守り宜しく」

「気が滅入るぜ………」

 

 軽口をまじ合わせながら基地でも一際目だったカウントの海上迷彩仕様のフランカーDが上がった。

 司令官のC-17 グローブマスターは空に上がっている。まったく、タブロイドたちはC130 ハーキュリーズだってのに。これ見よがしに見せつけやがって。

 

「スペア15、こちら管制塔。滑走路の確認OK、離陸を許可する。司令官を乗せた輸送機は既に離陸済みだ。スペア2が側についている」

「了解コントロール。機体チェック、オールグリーン」

「お前を見送るのもこれでおしまいだなトリガー。知らねえだろうが、お手本のように離着陸するお前は一番人気なんだぜ」

 

 これが最後だからだろう。

 いつもより感傷的に聞こえる。

 

 ああやめてくれ、こういうの弱いんだ俺は。

 

「今生の別れじゃない。戦場の空は狭いんだ。湿っぽいのは程程にしようぜ」

「そうだな。お互い次は違う部隊で会おう」

「了解。そうだ、初任務の時俺に賭けてくれてありがとな! スペア15、トリガー発進する!!」

 

 エンジンに火を入れ、ゴゥという音と共に滑走路を滑ったF-15 S/MTDは大空に羽ばたいた。

 当然ながらガタつきの欠片もない。元キメラ機とは思えない最高の品だった。

 

「スペア15、高度制限を解除する。グッドラック!」

「グッドラック! コントロール!」

 

 

 

 ーーー◇ーーー

 

 

 

 エイブリルが輸送機の窓から離陸していく連絡機と2機の戦闘機を見送っていた。

 

 特徴的なスリーサーフェス翼がトリガーの存在を現していた。

 

 軌道エレベーターの補給の要であるタイラー島。

 エルジアも易々と奪わせはしないだろう。

 

 これから向かう先は地獄の底なのは間違いない。

 

(まあいいさ)

 

 飛び立っていくF-15 S/MTDを見つめるエイブリルは地獄に向かおうとする囚人の顔ではなかった。

 

 ともに乗る懲罰兵や、同じく脛に傷を持つ看守。

 

 そして訳も分からず、理解しようとせず父親を蔑んでいたエイブリルにとって。この道のりは丁度よかった。

 

 だが不思議と悲壮感や絶望感はない。それは隣にいるタブロイドも同じだった。

 

「あいつは何処までも此処に似つかわしくない奴だったな」

「この先もな」

「違いない」

 

 地獄に行くのは罪人だけで充分だ。

 リヒト・フォン・フリューゲルにはその名のとおり、大空を羽ばたく翼がお似合いだ。

 

 だからこそこれ以上ない褒め言葉をくれてやろう。

 

「あばよ。大馬鹿野郎」

 

 

 




 どうも。雪がやばくなってきましたね。ブレイブです

 開幕のマッキンゼイRTAには驚いたことでしょう。
 実は前々からぶっ混みたいネタでした。
 ゲストの古王さんとカタツムリさんありがとうございました。

 そしてF-15 S/MTD、伏線はありましたが。無事に挿入完了。
 これからどういう活躍をするのか。パッケージ機体のようなF-22とはどうなるのか。てか登場するのか。

 スペア隊以降も書き続けることを決めましたし。
 彼と彼の愛機の活躍をお楽しみに。
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