エースコンバット7 FLIGHT REZON   作:ブレイブ(オルコッ党所属)

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 我ながらタイトルがドストレートな気がする………


STAGE41【Full House(五月蝿いお荷物)

 

 カウントのSu-33、俺のF-15 S/MTD、司令官が乗るC-17 グローブマスターは予定どおりエルジア支配領域を迂回してボルゴテレストに向かい飛行中。

 

 輸送機の前に俺、カウントは真横についている。

 

 どうでも良いことなんだけどさ。なんか輸送機の、司令官の後ろに立つと変なデジャブを感じたんだよな。

 なんか異様にレールガンが頭に浮かんでてね。俺使ったことないはずなんだけど。前回のネームド(おっさん)に影響されたのかな。

 

「まもなくエルジア支配領域に到達する。ボルゴテレスト周辺にはエルジアの長距離SAMが多く設置されているという情報がある。注意せよ」

「おいおい、もっと安全なルートなかったのか」

「バンドック。そんななか突っ切るのは危険じゃないか。一旦輸送機の速度を下げて」

「口を閉じろスペア15! 速度を下げるだと? 馬鹿を言うな! 私を一刻も早くボルゴテレストに送り届けるんだ!!」

 

 うるっさ! 

 メット越しに司令官のダミ声が直撃する。

 少し音量下げとこう………

 

 作戦領域までもう少し。カウントスタートまで、3、2、1………

 

「作戦領域に突入。命令はシンプルだ、司令官を殺そうとする者を殺せ。たとえ味方であろうともな」

「フルバンドのようにか?」

「あれは事故だ、しつこいぞ」

 

 カウントが軽く噛みついたがバンドックはやはり素知らぬ振りで通す。

 本人も分かっているのだろうから、これが一番効果的なのは確かだな。

 

「貸せ! 私が話す! 基地司令官のマッキンゼイだ。諸君らにはこの作戦の重要性を徹底したい。今後は私の命令を優先せよ、以上だ!」

「積み荷にしては声が大きい。さっきも耳がキーンと来たぜ」

「スペア15了解。言ってやるなスペア2、司令官殿も不安なのさ。まああれだ、今回はお互い特徴的な機体なんだ。敵がSu-33盛りだくさんで来ない限りは大丈夫さ」

「MTDなら完全に督戦隊だな。それか9年前の亡霊か」

「ベルカのアグレッサーなぁ」

 

 かつて8492飛行隊という名称でアグレッサーをしていた部隊。

 その部隊というのはとんでもない奴らで、環太平洋戦争を泥沼化させたベルカのグラーバク隊だったらしい。

 ユークトバニアの民間大学の虐殺事件や英雄ウォードック部隊を消し去ったのもその部隊だとか。

 まだまだ噂の域らしいが、ほぼ確実とか色んな噂が飛び交ってる。

 

「来たか!」

 

 ミサイルアラート。場所は遠くて見えないが、排気煙! 

 

「早速敵の防空兵器か、のんびり飛べる場所じゃねえな」

「カムフラージュされたSAMもあるはずだ。探し出して根絶やしにしろ」

「了解、スペア15、対処する!」

 

 機体を倒しスロットルMAX。

 

「おおっ」

 

 空力性能が上がったMTDイーグルだけども。加速もほんの少し上がったか? 

 それどころか最高速度、全体の機動性が上がってる。それなのに安定性能も上がっている。

 これがエイブリルの言っていた魔法の効果だろうか。

 

 前方にSAMが2機、うち1機がこっちにロックオンしてきた。

 

「ならこっち! FOX2!」

 

 俺は敢えてロックオンしてない方にミサイルを放ち。撃たれたミサイルを宙返りで避ける。

 

 こっちを狙ったということは輸送機には行かないということ。ならドンドンこっちに撃たせれば良い。

 

 そのまま宙返り機動のままSAMの直上から機銃で破壊。流石MTD、旋回の鋭さがまるで違う。その代わりバランス感覚が鋭敏だ。

 元がイーグルだからラファールより慣らしは必要なさそうだが、こいつの性能を引き出すにはまだ時間がいるか。

 

「SAMの排除を確認、気を抜くなよ」

「気を抜くなよって言っても、なぁ!」

 

 目に写るだけで3、4………5本の排気煙! 

 

「カウントフレア!!」

「無茶言うなよぉ!!」

 

 文句言いながらもSu-33がミサイルの前方に躍り出てフレアを炊いて急降下。

 輸送機も大量にフレアを炊くが、至近距離でミサイルが破裂した。

 

「ぬおぁ!」

「ローパー1の損害は軽微、まだ飛行は可能だ」

「軽微だと! それ以前にミサイル発射を許すな!」

「こちらスペア15! 先行して叩いて回る!」

 

 スロットルをぶっ叩き、排気煙に向かって直進する。バンドックも容認したのか黙っている。

 しかしマッキンゼイが輸送機から離れる機体を見てがなりたてた。

 

「おい、何故スペア15が離れている!? 呼び戻せバンドック! 奴は護衛を放棄するつもりか!」

「SAMを潰しに行ったんですよ、あなたの命令通りにね」

「奴が戦線を離脱したらどうするんだ!!」

「これまでのミッションでスペア15が敵前逃亡した記録はありません、何か問題があればスペア2に対処させます」

(勘弁してくれ)

 

 内心カウントが悲鳴を上げていることなど露知らず一足先にボルゴテレスト方面を飛行。カムフラージュされてるとはいえ、近づけばロックオンしてくれる程度の擬装。たとえ見逃してもバンドックが拾ってくれるはず。

 何よりも今日は風がない。排気煙が色濃く残る! 

 

「見えた」

 

 SAMが2機、AAGUN1機。ケチってる場合ではないから思いっきり。

 SAMにそれぞれミサイル。増速してすれ違いざまにAAGUNを機銃で粉微塵にした。

 

「SAMの排除を確認。気を抜くなよ」

 

 このままボルゴテレストの街並みを沿って時計回りに飛んでいく。

 と思ったら西側はがっつり雨雲地帯。煙の方向からして南西一つに西側に三つはあるか。

 

「カウント! 輸送機の正面、というより戦域のド真ん中にSAMがある筈だ! 俺は大回りで外側やるから、そっちは任せていいか」

「見えてる。けど離れたら司令官が五月蝿いだろ」

「スペア2、前方のSAMを破壊せよ」

「あいよ!」

「おい待て! 貴様まで離れるなスペア2ッ!!」

 

 大義名分を得たカウントがマッキンゼイが騒ぐのも気にせず、というより一刻も離れたい為にパワーダイブで接近。

 

 こっちも方位230方面のSAM2ヶ所を破壊し、加速を維持したままハイGターン。わあ、やっぱり曲がりやすいなこいつ。

 

「いたぞ! 山の上に二つ、てかあれカモフラージュしてんのか?」

「口を動かす前にさっさと落とせ」

「わーってるよ。FOX2」

「SAMの破壊を確に………」

「破壊したならさっさと戻れ!! 私がどうなっても良いのかぁ!!!」

 

 SAMを破壊しカウントはそのまま輸送機にとんぼ返りする。

 マッキンゼイがカウントが戻るまでずっと罵詈雑言吐いてるんだけど。よく息続くな。不安になるのもわかるけど。やっぱ肝の座り方がちがうんだろうな、ハーリングとは。

 というより自分が守られてる自覚がないんだろう。信頼関係の欠除という。

 

 比べるのも酷だなと思いつつそのまま北上。

 

 ここらへんはインシーほどじゃないが雨が酷い。

 エイブリルが防雨加工してくれていたお陰でそこまで弊害はないが速度に物を言わせてるから見えづらい。

 ロックオンカーソルを頼りに減速。機銃でキルして手早く加速する。

 

「き、機体が振動している………ば、バンドック!」

「司令、まだ堕ちません。しばらくは」

「バンドック! 至急増援を送らせるんだ! 私の名前を使え!」

「間に合いません。2機でやるしかないんですよ」

((使ったとしても来ねえだろ………))

 

 大佐階級だとしても戦略的価値がないからなぁ。

 ただ来てくれるならそれはそれでありがたいぞオーシアさん。

 目の前のボルゴテレストから来てくれれば良いが。あまり期待出来るものではなさそうだ。

 

「スペア15、方位330からバンディッドが接近。敵機と判断する、迎撃せよ」

「近いか?」

 

 レーダー光点確認。と、アラート! 

 

「SAMを発見、全ての脅威に対応せよ!」

「通り道だけど」

 

 丁度山が影になるか! 

 

 上から攻撃する為に急上昇。

 

「折角なら試してみるか」

 

 エアブレーキオン、急停止。

 速度1000、700………500、今! 

 

 機首を起こし、そのまま操縦桿を引き続ける。

 コブラ機動からそのまま後ろに倒し、速度を気にしながら宙返り。

 ストールなし、その場で270度縦回転し直上からSAM目掛けてミサイル発射………ヒット! 

 

 そのまま上体を起こして再加速。成功。

 

「よし出来た!」

 

 クルビット飛行。簡単に言えば高度を変えないままその場で一回転するもの。

 相手をやり過ごしたり、縦回転の他に斜めに回転することで即座に方向転換することが出来る。

 

 インシー渓谷でミスターX相手にやった擬きとは訳が違う安定したクルビット機動。

 凄いぞこのMTDは! 

 

「おっと、喜んでる場合じゃねえな。敵機は………ミラージュか」

 

 タブロイドと同じミラージュ 2000-5が2機。

 

『こちらスコール3。敵輸送機とその護衛を発見 確認されたし』

『こちらHQ、増援を送る。交戦を許可』

『了解、交戦を………』

『アラート! 敵機、チェックシックス!』

 

 雲に紛れてレーダーが散らされたことで反応が遅れた2機が動こうとする。遅い、今の装備なら手が届く! 

 

 特殊兵装選択、トリガー! 

 

「FOX3!」

 

 今回積んだHVAA、超高速ミサイルが空気を切り裂いて飛翔。距離4000mをものともせずミラージュ1機の尾翼を吹き飛ばし、すれ違いざまもう1機を機銃でエンジンを細切れにする。

 

『なんだ、何をされた!?』

『イジェクト! イジェクト!』

「敵機の撃墜を確認。護衛を続けろ」

「護衛任務ってのはまるで手足を縛られてる気分だ………」

「まだまだ、こんなのぬるいぬるい。ハーリング元大統領の時はこれの比じゃなかったぞ。辺り一面アーセナルバードのUAVだらけの中を強行突破だったんだからな」

「聞くだけで鳥肌もんだぜ」

 

 あの時は地獄だった。

 随伴したガーゴイルを抜いて総勢6機で守ったにも関わらずハーリング元大統領が乗ったオスプレイのコクピット部分に直撃。

 キャノピーガラスの悲惨さは今でも脳にこびりついている。

 

 目の前で落下傘が二つ咲いていた。

 パイロットとぶつからないよう上昇して通りすぎる。そして目の前にまた排気煙。

 

 迎撃に向かう途中マッキンゼイが気になることを言ってきた。

 

「トリガー、お前は参謀本部にハーリング殺しではないと心証を与えたようだな。目的地で査問会議のやり直しが待っている。この護衛任務を全うして精々身の証を立てるがいい」

「………了解」

 

 心証、査問会議のやり直しだって? 

 恩赦じゃなくて本格的に精査するのか? 

 

 バンドックの聴取が生きてきたのか、それともまた聴取というなの茶番をやらされて豚箱か、そのまま殺すのか………

 何れにしろマッキンゼイの機嫌は取った方が良いかな? その為にもミサイルを潰さねえと。

 

 今にも発射しそうなミサイルをガラクタに変え、カウントと合流する。

 

「おうお帰り。どうだったよ、F-15 S/MTDの調子はよ」

「悪くないね。クルビットも問題なく出来たし。思った以上に操作しやすい」

「羨ましいねぇ、俺もミス・スクラップ・クィーンの機嫌を取っておくんだったか」

「エイブリル、お前がスクラップ・クィーンの名付け親だって聞いて凄いしかめっ面だったぞ」

「マイナススタートじゃねえかよ」

 

 是非もないね。

 

 しかしよくもまあ男所帯の中で仲良くなれたもんだよなぁ。顔面がベイビーフェイスだったから気を許したとか? むさい男ばっかだったし、あそこ。

 

「目的地まで残り40キロ」

「護衛機が撃墜されても、それは盾になったということだ。褒めてやらねばな」

「ただ次のミサイルが確実にあなたの機体を撃墜しますがね」

「………護衛機が撃墜されないよう指揮をとるんだ。バンドック」

「プフッ」

 

 思わず吹き出しちまった。

 バンドックのレスバ性能もそうだが、マッキンゼイの手のひら返しも見事なもんだ。

 隣にいるカウントも笑いを堪えてるのか震えている。

 

 だが危惧していた長距離SAMはパタリと止まった。

 排気煙も確認できず、戦場とは思えない静けさが広がっていた。

 

「バンドック。SAMの反応はあるか?」

「今のところ確認できない。だが警戒しろ」

「そうか。大回りした甲斐があったな」

「まだ隠れてるのもあるかもしれねえ。今度は俺が見回り行ってやろうか?」

「いや駄目でしょ。ザップランド基地のエースパイロットであるカウント様が離れたら司令官の胃に穴が空くぞ。折角のご指名だ、大人しく直掩に付いとけ」

「あーー」

 

 気を利かせた振りをしてマッキンゼイから離れたかったのだろう。

 目論見も潰されて思わず天を仰いだ。

 自業自得ってやつだ、お疲れ様。

 

「スペア15、東から敵機接近」

「ウィルコ。カウント、お守り任せる」

「へいへーい」

 

 うんざりしてるカウントを背にスロットルMAX。

 真ん中から最東端まで一気に飛行する。

 

 今回だけでどんだけ飛び回ってるんだと思いながらグングン加速していく。

 

 機数は2機………シルエットはラファールを一回り小さくしたスリーサーフェスの機体、グリペンEか。

 

 かつてベルカの藍色の騎士団、デミトリ・ハインリッヒが率いたインディゴ隊の乗機だったグリペン。

 ラファールより更に小回りが効く機体だ。

 

『護衛機のうちの一機は腕が良い。スコール3、4が一瞬で落とされたそうだ』

『F-15 S/MTDだと? なんであんな機体がここに』

『重要な荷物を運んでるのかもしれん。この先はボルゴテレストだ、通すな!』

 

 こちらに気づいた2機が二手に別れる。撹乱して本命を狙うつもりか? 

 そうはさせん! 

 

 敵とすれ違う前にクルビットに移行、そのまま半回転したあと停止、再加速して背後につく。

 機体を180度ロールして上体を起こし、ガンサイトど真ん中。カナード翼の都合上で設置された機体下部の機銃ポッドが火を吹いた。

 

『やられた!?』

『イリオス2! 脱出しろ!』

『了解……っ! イリオス1! チェックシックス!』

『なに、いつの間に!?』

 

 1機のエンジンを穴だらけにした後直ぐ様もう1機のグリペンの後ろについた。

 こっちに気づいたグリペンはその場でハイGターンをするが生憎こっちの方が機動力は上だ。

 

『ふ、振りきれない。なんなんだこいつは!』

 

 その場でグルグル回転しっぱなし。時折機銃で圧をかけつつ、Gで鈍ったところにミサイルを発射する。

 ヒット、だが掠っただけ。そのまま追い込んで機銃でフィニッシュ! 

 

『機体性能なのか!? くそ、何者だコイツ!』

「こちらスペア15、敵機撃墜。周辺警戒をしつつローパー1と合流する」

「早いな。絶好調じゃねえかトリガー」

「こいつの性能が良いのさ」

 

 うーん。凄い乗りやすい。

 イーグル以上に曲がりやすく、そして無理がない。

 

「ていうか輸送機は無事か? SAM飛んでないの?」

「おっと完全に忘れてたぜ。まだ飛んでるぜ、残念ながらな」

「真横にいるだろうに、まったく」

 

 なんかカウントが思ったより気さくだな。司令官のお守りが大分キツいとみえる。

 

 しばらく飛んだがSAMはない。さっきので全部落とした、と見ていいのかな。

 歩兵SAMなんてものもあるぐらいだから油断は出来んが。

 

 しかし国境線近くにここまでSAMを散りばめるとは。ボルゴテレストの環境が透けて見えるようだ。

 

「目的地まで24キロ。やっと半分というところだ」

「おお街が見えてきた。国境線の壁を越えれば安全だ! 速度を上げろ! これが限界? 馬鹿を言うな根性を出せ!」

 

 心なしか輸送機の速度が上がった気がする。

 

 それでも戦闘機と比べると格段に遅い。

 24キロなんて俺らからしたら散歩コースのような物だが。俺なんて今回だけで何キロ飛んだんだ? 

 

「敵機だ! 西からMiG-31が3機。東からグリペン1機、ミラージュ 2000-5が3機だ」

「キッツいなオイ! しかも片方はフォックスハウンドかよ!」

 

 MiG-31 フォックスハウンド。

 MiG系列の機体だが、こいつは他とは違う管轄と言って良い。機動性を削り速さを求めたドラッグマシーンと言ったところだ。

 

 曲がりやすさはないが、その分狙った獲物を逃さない正に狐狩り犬に相応しい。

 あのベルカの督戦隊シュヴァルツェ、通称ハゲタカのエスケープキラーも愛用していた。

 

 そんな速い機体から見たら輸送機はまるまる太った羊のようなものだ。

 

「頭数足りてるだけまだ良いさ! カウント! 足の早い狐狩りは俺がやる。数は多いが東を頼む!」

「わーってるよ!」

「おい待て! 同時に離れる馬鹿がいるか! 戻れスペア2! スペア15!」

 

 こいつ状況が見えてないのか? 

 我が身可愛さもここまで行くと呆れ通り越して感心するよ! 

 

 すかさずマッキンゼイをあやすバンドックを背にトップスピードで西に向かう。

 時間も立たずに敵が見える。相対距離が目に見えるより縮まっているのを見るに相手も飛ばしているのだろう。

 

 素通りされたら嫌だからな、まず脅かしてやるか! 

 

 超高速ミサイルを発射! 

 同時にエアブレーキオン、大きく上昇しそのままインメルマンターンでMiG-31の背後上空のポジションにつく。

 

 だが敵も馬鹿ではないのだろう。HVAAをかわし、うち2機は高所を取られまいとこっちに合わせてきた。

 

『エンゲージ! 先に敵に見つけられた!』

『カブレラ2は輸送機に向かえ! 残りは向かってくる奴だ』

 

 2機釣れたのは良いが、そのまま向かう1機が居る以上そっちを優先しなきゃいけないのが護衛任務の辛いところだ。

 

 2機が上がってくると同時に交差するようにパワーダイブ。

 MTDの素の加速とパワーダイブはMiG-31の最大加速に決して劣ることはない。

 距離6000、5000、射程内! 

 

「FOX3! いけぇ!」

 

 更に戦闘機より遥かに速い超高速ミサイル。

 背後を完全に捉えたミサイルは曲がることもままならないMiG-31のエンジンを突き破り爆ぜ上がった。

 

『カブレラ2!』

『やりやがったな!!』

 

 弔い合戦とばかりに残りのMiG-31は俺を狙ってきた。よしよし良いぞ良いぞ! 

 ハゲ司令よりこっちの方が魅力的だぜ! 

 

「こちらスペア2、敵機撃墜! だけど手が足りねえ! トリガー! さっさとそいつらは落としてくれ! 見間違いじゃなきゃ、グリペンがネームドっぽい!」

「なに!? グリペン………そいつ黒だったか!?」

「多分な!」

 

 黒いグリペンのネームドっていうと、ルヴトーか! 

 確か若手の男が乗ってた奴だったか。

 

 だが高速機を引き連れてそっちに行く訳にもいかねえ。

 

「持たせてくれよカウント! 基地一番のエースの腕の見せ所だ!」

「お前こういう時ばかり持ち上げやがって! 上等だ!」

 

 

 

 ーーー◇ーーー

 

 

 

(トリガーの奴簡単に言いやがってよ。四体から三体になったはいいが。このネームドは出来る奴だぞ!)

 

 愛機Su-33を駆るカウントは目の前で散らばるミラージュ2機とグリペンを見やる。

 

『ルヴトーからカブレラ隊、状況はどうか』

『敵のF-15 S/MTDと格闘戦。一瞬だったが尾翼に白い線が3本あった!』

『3本線! ソルや数多のネームドでも落とせなかった相手か』

『上等なF-15 S/MTDに乗り換えた、それを任される程のパイロットってことだな』

『ということは積み荷はやはり重要なものか? ルヴトー隊各機に通達! 隙をみて輸送機を狙え! カブレラ隊はそのまま3本線を足止めしろ!』

『わかってる! 背中見せたらMiG-31でも刺されそうだ!』

 

 ルブトーのパイロット、ケン・ウォーレン中尉は若年ながら部隊長を任される人材だった。

 主にボルゴテレスト方面の警戒を任される彼は突如現れたF-15 S/MTDに掻き回された戦場に馳せ参じ、賊を討たんと馳せ参じたのだ。

 

『3本線じゃないお前は我々の敵ではない。落ちろカトンボめ!』

「くそっ!」

 

 カウントも1機だけ相手取れば些か楽ではあったが、今回はお荷物を守らなければならない都合上3機を一辺に対応できる位置取りをしなければならなかった。

 

 だがそれは同時に攻め手に欠けるということ。

 突出すればその隙に抜けられる。

 例えるならサッカーやバスケのようなスポーツ。

 

 カウントは三人のオフェンスを一人で遮っているということになる。

 さっきは偶々飛び出した奴を撃ち落としたが。今度は………

 

『今だ、行け!』

『『了解!』』

「やっぱそうなるよな!」

 

 両翼のミラージュが同時に進行、一歩遅れてルヴトーがカウントのSu-33に迫る。

 

『何を運んでるかは知らないが。落とさせてもらう!』

「糞が!」

 

 カウントはルブトーに背を向けることを躊躇わず抜けようとするミラージュ2機を追った。たちの悪いことにミラージュ2機は大きく迂回しながら輸送機に向かっている。これでは1機追えばもう1機は遥か向こう。

 

 そして背中を見せればルブトーに狙われるのは必定だ。

 

『FOX3!』

 

 ルブトーの6AAMが発射される。

 だがファングのような一斉射撃ではなく、間隔を開けて断続的にカウントに撃ちはなった。

 

 カウントのSu-33がバレルロール、一発をやり過ごしすかさずフレアで回避。

 

 だが1本避ければまた1本発射される。

 素のミサイルに加え計8本が間隔を開けてカウントの動きを散らしていく。

 

 だが大人しくやられるカウントではなく、急上昇からの急降下、フレアを随時撒きながらそれ全てをいなしていった。

 

『掠りもしない!? だが!』

「くそっ! トリガー、2機抜けた!」

「スペア2、スペア15。バンディッドがローパー1に接近、迎撃せよ!」

「やれたらやってんだよ!」

 

 悪態をつきながらも突出したミラージュを追おうとするがルブトーが逐一横やりを入れてきてそれもままならない。

 

「状況確認。何か起こってるぞ」

「国境周辺の緊張が高まっている、部下におかしなことをさせるな」

「撃つな! 撃つなよ! 越境軍事行動とみなされ進行の口実にされる! エルジア領飛行中は手を出すな!」

「そんな。兄弟国オーシアの所属機を助けるべきです!」

「わかってるだろ! エルジアがひとたび本気を出せば俺たちみたいな小国は容易く踏み潰されるんだぞ!!」

「上空のエルジア軍機に警告! 貴機はボルゴテレスト領空を侵犯している! すぐさま退去せよ! 繰り返す、すぐさま退去せよ」

 

 目の前が戦場になっているボルゴテレスト駐留軍の動きが慌ただしくなる。

 涙ぐましいことだが、こっちとしてはさっさと援軍を送って猫の手も借りたいのが現状だ。

 

 だがその願いも叶うことなくミラージュ2機が輸送機を射程に捕らえ、ミサイルを放つ。

 

「フレアだ! ありったけのフレアを撒くんだ! フレアだフレアぁ!!」

「了解。フレア放出、赤外線ジャマー最大出力」

 

 真横で喚き立てるマッキンゼイの指示をパイロットは冷静に処理する。

 輸送機が上昇しながらフレアと赤外線ジャマーでミサイルを反らしていく。

 

 だがミサイルの一部がC-17の近くで爆発した。

 

「ぬぁぁぁ!? ば、ば、バンドック! 敵機だ! すぐ近くを飛んでいる! 護衛機をすぐ呼び戻せ! 今すぐだ! 護衛に期待出来るのはカウントだ。戦績も上々だ!」

「だからやれたらやってると!」

「スペア15、エンゲージ!」

「っ!」

 

 輸送機の周りを飛んでいたミラージュが1機爆散した。

 撃ったのは尾翼に白い3本線、そして銃を噛み締める狼のエンブレムを持った機体。

 

『ルブトー4より1! ルブトー2がやられた!』

『こちらカブレラ1、MTDが抜けた』

『こいつぅぅ!!』

 

 見事に撒かれた2機のMiG-31が最大戦速で抜けたトリガーを追う。

 飛距離は遠くない、MiG-31の推力なら直ぐに追い越せると遮二無二にスロットルを倒す。

 

 だがそれはトリガーの策。

 

 背後から追いすがる2機の狐狩りを相手に減速。そのまま180度クルビットで機首を裏返した。

 

「FOX3! FOX3!」

『なに!?』

『駄目だ、避けられ──』

 

 2機のHVAAとMiG-31が正面衝突した。

 最大戦速かつ撃たれることはないと高を括っていた狐狩りはF-15 S/MTDの性能を存分に活用した狼の手にかかり、流れ星となってボルゴテレストの土に消えた。

 

『か、カブレラ隊がやられた! あんな一瞬で! ば、化け物だ、助けてくれ!』

『ルブトー4持たせろ! いまそっちに』

『駄目だ、駄目だ! うわぁぁー!!』

 

 動揺して動きが緩くなった戦闘機など食ってくれと言ってるようなもの。

 腹に無数の弾痕を穿たれたミラージュはそのまま花火となって消えた。

 

「スペア15、敵機撃墜。輸送機は無事だ。いまそっちに向かう」

「いらねえよ! これぐらい一人でやってやる!」

 

 じゃなきゃ良いとこなしにも程がある! 

 

 トリガーが入ってきてから、いや。

 トリガーが入ってくる前からカウントは見せつけられてきた。

 

 カウントとトリガーには隔絶とした差があると。

 

(だからなんだ! 俺だってやれんだよ!!)

 

 事実は事実として突き刺さる。

 だが男にはプライドというものがある! 

 

『部隊が、全滅? せめて私だけでも輸送機を! っ、敵機!!』

「こっちは眼中なしってか? 侮ると怪我するぜ色付きさんよぉ!」

 

 カウントを無視して輸送機に飛ぼうとするルブトーに襲い掛かる。

 グリペンの機動性は高いが、カウントのSu-33もフランカーの系譜。トリガーと同じスリーサーフェスの機体は逃れようとする子狼(ルブトー)を仕留めんと食いついていく。

 

『嘗めるなよオーシア! 私だってネームドだっ!』

「トリガーに比べりゃお前なんか路傍の石だ!」

 

 狼に勝る子狼などいない。

 それに負けることはカウント自身が許せない。

 

「FOX3!」

 

 グリペンの機動力で振り払おうとするルブトーだがそこは経験の差、カウントは最短コースで距離を詰め。的確な位置でHVAAを叩き込んだ。

 

『そんな! ソルを追い詰めた3本線でもないやつにネームドの私が!!』

 

 脱出する間もなくルブトーはカウントの手で空に散って行った。

 ネームドを落としたカウントは喜悦に浸ることなくシートに身体を預けて息を吐いた。

 

 強敵という訳ではなかったが、それでも肝を冷やしたのは事実。

 とにもかくにも脅威は消えたことに対して安堵している。

 

「………来なくて良いって言っただろうがよ」

 

 一拍置いて寄ってきたトリガーのMTDに毒づくだけの元気はあった。

 

 

 

 ーーー◇ーーー

 

 

 

「いやいや。脅威は速やかに排除しないとね?」

「脅威ってほど脅威じゃねえよ」

「あんま強くなかった?」

「出来る奴だったがそこまで強かねえな。弱くもねえが、あのオレンジ野郎と比べるとな」

「あれは頭おかしいキチガイだから」

 

 今のは冷や汗ものだった。

 C-17が頑丈で、フレアやら何やらをバンバン放出したから事なきを得た。

 

 実際カウントは良くやった。あの時近づいたミラージュが2機ではなく3機だったらそれはそれで危なかっただろうし。

 

 なにより、何度も言っているがコイツの性能に助けられた。

 エイブリルに生きて会えたらまたお礼を言わないとな。

 

「おい! 敵を撃破したならさっさと戻れ! 私を守り盾になることがお前たちの使命であることを忘れるな!」

「戻りたくねえ」

「同感」

 

 敵機を退けた俺とカウントは輸送機の元へ。

 戻るまで仕切りにがなりたてる司令官にげんなりするが、一番可哀想なのは真横で騒がれる輸送機のパイロットだろう。

 

 こんなに通信がうるさい作戦もないものだな。

 ノイズキャンセル機能が欲しいものだ。

 

「おいトリガー、下を見ろ。こいつは………壁か? 壁がズラーっと立ってるぞ」

「壁?」

 

 下を見てみると、本当に壁があった。

 ボルゴテレストを前に蛇行しながら建設された壁がそこにあった。

 

「国境に沿って壁を作ったのか、正気じゃねえな。目に見えて立ち入り禁止って看板立てた方が可愛げがあるぜ」

「周囲に望まれていない独立をしたってことだ」

 

 望まれていない独立………か。

 

 上空から目視出来る国境線、それを見て俺はなんとも言えない気持ちになっていた。

 

 ………空からでも見える国境線はあったよ、ラリー。

 

 かつて国境無き世界として国境線を吹き飛ばそうとした彼がこれを見たらなんと思うだろうか。

 こんだけシンプルなら世の中楽だったのになと思うのだろうか? 

 

 あれだけせっせと作り上げ、国の周りをスッポリ覆うだけの物理的な壁を作ったところで。戦闘機主体の今のご時世なら軽々と跳び超えて全てを壊せる。

 

 俺たちは抵抗するぞ! と声高に叫べない無言の抵抗を哀れというのは簡単だが。

 目に見えるそれに対し俺はどうしても窮屈だという言葉以外浮かんでこなかった。

 

「目的地にまもなく到達する。トリガー、お前が出ていって清々しているよ」

「言われてるぞトリガー」

「酷いなぁバンドック。俺が来たお陰で444の作戦が上手く行ったといっても過言ではないぞ。俺がどんだけみんなのケツを蹴りあげながら頑張ったことか」

「お前は色んな意味で厄ネタだったんだ。その自覚を持て」

 

 好きで厄ネタ持ち込んだ訳じゃねえっての。

 

「我が隊に居るのは腕はあっても本物の犯罪者ばかりだった。だが奴らが発する腐臭がお前からはしない。お前が本物の犯罪者だったらどれだけ楽だったかと何度も思ったよ」

「まるでトリガーがハーリングを殺してねえって物言いだな。番犬だから鼻が効いたのか?」

「カウント、お前は詐偽の罪で懲役なのは間違いないんだ。伯爵なんて気取った名前をつけるならもう少しマシな罪状で来るんだったな」

「空で説教はごめんだぜ」

「フン、ならこれからは至極全うに生きることだな」

 

 この2人実は仲が良いのでは? 

 あんなことがあったからカウントがもう少し噛みついてそうだけど。

 アフターケアが効いたのかな? 

 

 バンドックもバンドックで俺を白判定してるみたい? 

 この後査問会議のやり直しがあるというらしいが、メンバーは変えて欲しいよ。特にシェパードなにがしは。

 

「ローパー1、状況を知らせよ。問題なければ着陸態勢に入る」

「やっと終わりかぁ。疲れたぜ………」

「ああ、もう1機は欲しかったかな」

「誰を選抜するよ」

「それはまあ」

「よし! 護衛目的である私はまだ生きている。これは軍全体に取っても意義がある! 私は懲罰部隊を軍の戦力として活用するという点に置いて成果を出した。これは類いまれなる栄誉であり紛れもなく私の戦果であって──」

 

 うわ、うわ………なんか行きなり演説というなの自慢始めたんだけど。

 てかお前なんもやってなかっただろ、ただ騒いでただけだし。うわー、この演説うぜぇー。ウザさしかねぇ。

 

 しかも最悪なことにこの演説を聞かないという選択肢はない。完全に悦に浸ってるのか演説が止まらない。俺なんか悪いことしたかな。

 

「おいトリガー、司令官の声だけ消える回線ってなかったか? あったら教えてくれ」

 

 カウントも同じことを考えていたらしい。

 その回線は俺も是非欲しいところだ。

 

 あと何分かなぁ、敵も居なさそうだし。

 こういう時の何分って異様に長く感じるから………

 

「全機コーション、ボギー出現!」

「まだ続くのかぁ!!」

 

 うんざりしていた意識を瞬時に覚ます。

 まだ敵がいる? 

 

 レーダーには写ってないが、バンドックが何かを捕らえたらしい。

 

「未確認の機体だ、速度は速い。速いぞ!?」

「なんだって?」

「なんだ………?」

 

 何かがいる、何かが来る。

 

 と思ったその時、俺とカウントの間を何かが切り裂いた。

 

 惚れ惚れするような清潔感のある純白の姿、それでいてとても冷たい何かが。

 

 





 わかってたさ!1話でおさまんねえってなぁ!!

 どうも、SEEDFREEDOMの小説前編をやっと買えたブレイブです。後編3月末って長いよ、長いよぉ。

 本当ならミッション10終了して次って流れだったのに気づけば12000、最近書きすぎじゃないかい私。

 カウントまわり台詞がゲームと結構違ってると思います。まあなんでこんなになったかというと。SPミッションのカウントの相棒感が凄いのでここら辺で改編いれようかなぁって。前々から準備してました。
 デレた訳ではないですが。気にくわない奴から同僚レベルにはなったのかなと思いますね。トリガーもカウントがしっかり仕事してくれてるから特に言うこともないですしね。

 そしてゲームより五月蝿くなるマッキンゼイ大佐。マッキンゼイはどんだけ五月蝿くしても良いって前世の婆ちゃんが言ってました(誰だよ)


【FLIGHT REZON アサルトレコードNo.10】

ネームド:ルブトー
機種:グリペンE
カラー:黒地に白
派閥:急進派
パイロット:ケン・ウォーレン

 ボルゴテレスト方面を任された若手の部隊長。
 若手にしては指揮能力も高く腕はそこそこ。

 ルブトー(読み方合ってるかな)ってフランス語で子狼という意味らしいので、マイルド(当社比)版トリガーとしてキャラ付け
 ちょっとキャラ薄かったかなと思いますがこういう平凡な奴がいても良いでしょう。

 輸送機優先、トリガーを足止めと順調に作戦を展開し追い詰めますが。
 マッキンゼイの悪運の強さとトリガーに盤面を纏めてひっくり返された末。カウントとの一騎討ちに敗北して死亡しました。

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