エースコンバット7 FLIGHT REZON 作:ブレイブ(オルコッ党所属)
ニューアローズ基地のベッドはとても寝心地が良かったでございます。
どうも。恩赦を貰い懲罰兵を卒業したトリガーことリヒト・パーマーです。
といっても昨日はずっとこの部屋に居た。
本当に事情が複雑な俺らはみだりに外に出ることは出来なくてね。
独房の百倍良い部屋で全力で脱力していましたとも。
そんななかカウントと同じ部屋で過ごした訳だが、特に対人トラブルもなく普通に過ごせた。
スペア小隊入隊初期と比べて一番変わったのはカウントだ。俺への当たりも減った気がする。
前のマッキンゼイ護送の時も。しっかり働いてくれたからね。
ご飯を食べて、備え付けのテレビを見ながら今後はどうなるのかをあーだこーだ話してるうちに寝た。
テレビを見るに未だにエルジアが優勢らしく。コゼット王女様が相も変わらず民衆にオーシアは非道だの、不安にならないでくださいだのと訴えかけている。
「カウントはどう思うよ。コゼット王女様のこと」
「どうってなんだよ」
「本心でこんなこと言ってるのかなぁってさ。詐欺師だからそういうのわからない?」
「言っとくけどな。俺そこまで詐偽の経験豊富じゃねえからな」
「知ってるよ。で、どうなの」
話聞かねえとこあるよなお前と呆れるカウント。髭をイジリながらテレビに写るコゼット王女を吟味する。
「嘘は言ってねえ。が、嘘じゃないとも限らねえ。本心で喋ってるにしては台本っぽいし。台本っぽいにしては真に迫った感じで喋ってる」
「つまり?」
「台本はあるが思うところはある。この新人王女様がどれだけ世界の闇を知ってるかで話が変わってくるってこったな」
コゼット王女は祭り上げられるまで平民として暮らしていた。
俺のように世界の裏側を知らない限り、一市民である彼女は目の前の景色だけを見て育ったことだろう。
彼女の年齢を見るに、16年前の大陸戦争の時はまだ子供も子供だったはず。
戦争の怖さを理解していたかは別として。飛来した小惑星ユリシーズの被害の中生きていた。
真に迫ったという表現は、そんな時代を生きていたからなのだろうか。
考えているとノックが。
鍵を空けるとワイズマンが立っていた。
「おはよう二人とも。よく眠れたか?」
「ぐっすりです」
「ああ。前の基地のお粗末な物とは比べ物にならなかったぜ」
「それは結構。早速だがトリガー、査問会議を行う前に合わせたい人がいる。2人とも面識のある人物だ」
「「俺に?」」
俺たちは揃って顔を見合わせた。
意味深な笑みを浮かべるワイズマンについていきまた別の部屋の前へ。
この中に誰かいるのか?
ワイズマンに促されてドアノブに手を掛けた。
「失礼しまーす………え?」
「グゴーーー」
でっかいイビキを立てて机に突っ伏す恰幅の良い男の姿が。
繋ぎ姿とほんの少しツンとする機械油の匂いを見るに整備員なんだろうけど………なんだろこの既視感。
ん? あれどうしたカウント。そんな顔面蒼白になって。汗も凄いぞ?
「おいマジか………嘘だろ」
「カウント?」
「悪いトリガー。俺トイレ行ってくる!」
「え、カウント!?」
何故か逃げ出そうとするカウントの前にワイズマンが立ち塞がる。
「おい何で立ち塞がるんだよ!」
「顔合わせは大事だぞ。彼はこの基地の整備士なのだからな」
「冗談だろ!? だってこいつフォートグレイスの!」
「んだよ、うるせえなぁ」
「………え?」
口から声が漏れた。
いやだって、ほんとなんでここに?
不機嫌そうに起き上がった男。
恰幅の良さに違わぬ豪快な雰囲気。
思わず大工の棟梁と見紛うほどの筋肉質なそれは数多の戦闘機を整備し続けた血と汗の証。
この男を俺は知っていた。
「………おやっさん?」
「あん? ………トリガー坊主!!」
「ふごぉ!!」
前にもこんなことがあったなと思いながら汗と機械油の匂いでむせかえりながらハグされる。
フォートグレイス基地メイジ隊の整備士長。
ラック・マートン中尉その人であった。
「うおおおぉぉぉ! ワイズマンの言った通りになりやがった! ほんとにトリガー坊主じゃねえか! 痩せたか!? 獄中でろくなもん食わなかったんだろ! 元気してたか? なあ!!」
「お、おやっさん。苦しい、ほんと苦しい。落ちるぅぅーー」
あーなんか走馬灯が見える。
覚えてないはずの父さんと母さんが川の向こうで手を………
「おいおい待て待て! トリガーが逝っちまうって! 加減を覚えろ整備ゴリラ!!」
「ん、あーん?」
「あ、やべ」
「お前………貴族野郎か!」
「え、ま、グホッ!」
ロックオン変更。
俺から離れたおやっさんはそのままカウントの頬を殴り付けた。
「お、おやっさん!?」
「いってぇなぁ、馬鹿力め………」
「おうおうおうおう! よくもまあ俺の前に顔出せたもんだなぁカウントさんよぉ!!」
「好きで出てきた訳じゃねえんだよ。この筋肉ダルマが!」
「うげっ!」
「ええぇぇぇぇーー!!?」
今度はカウントが殴り返したぁ!?
不意を突かれたおやっさん。だが少しのけ反っただけで大したダメージはなさそうだ。
「ヘッ、相変わらず腰の入ってねえパンチだなぁ」
「うるせえ! フィジカルありすぎんだよお前は!」
「当たり前だ! フィジカルなくて整備士が勤まるか!」
「ハイハイハイ! タンマタンマタンマぁ!! 落ち着いて二人とも!」
「トリガー坊主はどいてな。あと2、3発ぶちこまねえと気が済まねえ」
「上等だ! 今日こそ引導渡してやるぜゴリラ野郎!」
「おんどりゃああ!!」
「はいだらぁぁぁ!!」
更にヒートアップするんじゃない!
もうどうしたらええんじゃ。こうなったら2人の男のシンボルに向かってFOX2叩き込むか?
パンっ!
「二人とも、そこまでだ」
なんて最終手段を考えていたらワイズマンが大きく手を叩いて意識を反らしてみせた。
「おい邪魔するんじゃねえよワイズマン。こいつは」
「事情は知っている。だから1発は許したんだ。2発目は看過できないな」
「けどよぉ」
「ラック。せっかく手に入れた優秀な整備士とパイロットを早々に失わせたくないのだがな」
「むっ………おいカウント。ワイズマンの顔を立ててこれ以上は勘弁してやる」
「そうかよ。そいつはありがてぇな」
なんとか場は収まったようだと安堵の溜め息を一つ。双方納得行かねえと思いつつも椅子にドカッと座った。
とりあえず色々説明して貰いたいとワイズマンを一睨みするがワイズマンは笑みを絶やさない。黙って椅子に促された。
「えーっと。とりあえず何でおやっさんとカウントがここまで仲が悪いかは大体想像つくから放っておくとして」
「おいトリガー。なんで俺だけそんな雑なんだよ」
「どうせ444基地と同じぐらい気取りや一人称僕だったんだろ? クラウンでさえ1年かかって打ち解けたっていうんだからお前とおやっさんの相性最悪だろ。あと詐偽で部隊抜けたんだからこれ以上なく最低だし」
「ぐっ! ていうかお前は何でそんな気に入られてんだよ。あんなデレデレなマートン初めて見たぞ。お前どんな手使いやがった?」
ぐうの音も出ないカウントはせめてもの反撃をと質問を投げ掛ける。
どんな手って言われてもねぇ、てかそんなデレデレ? なのかなぁ………えーっと。
「………割と最初から気に入られてた気がする」
「はぁ!?」
「配属初日で戦争始まって。スクランブルしてネームドとか色々落としまくって。無人機の話で意気投合してそんな感じ」
「なんだそりゃ………てか配属初日でスクランブルしたのかよ………」
絶句。カウントは口を閉じて目頭を抑えた。
てか放っておくって言って結局話したな。
「さて。順序立てて聞くけども、フォートグレイス基地にいたおやっさんが何で此処に?」
「そりゃあフォートグレイス基地を辞めてきたんだよ」
「辞めたぁ!?」
「マジかよ………」
開幕とんでもない物が飛び出してきた。
元メイジ隊のカウントも怪訝な顔をしている。
「え、なんでまた」
「お前さんが捕まったあとちーっと暴れちまってな。トリガー坊主はやってねえ! ガーゴイルの奴らを連れてこい! って騒いだら司令官に『これ以上言うなら処罰対象とする』って言われて文字通り三行半突き付けて辞めちまったのよ」
「そんな………」
俺が捕まったばかりにおやっさんが………
「言っとくがお前さんはなーんも悪くねえからなトリガー。俺は自分の意思で辞めたし後悔もしてねえからな。それに、お前さんは本当にやってねえんだろ?」
「勿論です」
「ならこれ以上言いっこなしだ。なっ?」
「はい。ありがとうございます。俺のために怒ってくれて」
「よせやい。俺は俺のしたいことをしちまっただけさ」
少し照れながら笑うおやっさんの顔を見て安心した。
おやっさんはあの時からなんも変わってない。竹を割ったような快活な人のままだと。
カウントはさっきから「誰こいつ?」って顔で固まっている。
そのあと話はワイズマンに引き継がれた。
何故フォートグレイスのおやっさんがニューアローズの整備士として居るのかを。
「インシー渓谷の戦闘のあと機体と人員の損失などで我々の部隊は待機を命じられてな。その時に旧友であるラックに電話をかけたんだ」
「お二人は知り合いだったので?」
「ベルカ戦争時代の頃から私が所属する部隊の新人整備士だったんだ」
「昔からお前は名前負けしない賢い奴だったよなぁワイズマン」
「お前は大分落ち着いたなラック。ようやく大人になってきたと言う訳か」
「これで落ち着いたってマジ?」
「ああ。武勇伝は数えきれん」
先ほど豪快な一撃を食らったカウントが信じられない顔でおやっさんを見る。
本日何回目だろ、カウントのこんな顔。
「話を戻そう。私が電話した時には既に彼は基地を離れた後でな。エキスポシティで酒を交わした時にハーリング元大統領の事を切り出した」
「おいおい。一応マートンは退役したんだろ? 民間人に話したのかよ」
「民間人であるが当事者だ。そのあと私はニューアローズ基地の整備士として彼をスカウトした。トリガー。君を迎え入れ、査問会議の証人として立たせる為にな」
「最初は難色を示したがな。トリガー坊主の為ってなら話は別って訳よ」
「どんだけトリガーのこと好きなんだよ」
「そりゃあ命を預ける程だ!」
ドンと胸を叩くおやっさんがニッと笑う。
こんなに信頼してくれるのは若年ながら嬉しいものである。
精々嫌われないよう立ち回るとしよう。
ーーー◇ーーー
おやっさんとの顔合わせを済ませた俺は査問会議の場に案内された。
基地司令のアイゼンハワー少将。そして補佐としてワイズマン。
フォートグレイスから証人としておやっさんことマートン中尉。
そして。
「初めましてリヒト・パーマー少尉。私はフェリックス・エドワード。オーシア国防軍参謀本部副議長を勤めている。モニター越しですまないが、今回の査問委員会の再審議責任者としてこの場を執り行わせてもらう」
なんか凄い人出てきたなぁ!!
オーシア国防軍参謀本部副議長!? 軍部のナンバー2じゃないか!!
ことがこととはいえ、本当に凄い人が目の前に居るんだけどナニコレ!?
モニター越しとはいえ緊張感やべぇ! シェパードなにがしなんて目じゃないぞ!?
「では。オペレーション・ライトハウスキーパーで起こったビンセント・ハーリング暗殺事件の査問委員会を始める。アイゼンハワー中将、進行を頼む」
「了解しました。パーマー少尉、これから出る質問に嘘偽りなく答えるように」
「は、はい」
そこから何度答えたかわからないハーリング元大統領の護衛任務を事細かに説明した。
司令部直々に単機突入を指名されたことから、『メイジ2のミサイル』が落としたという誰かの声。
基地に到着するなり拘束され、オーレッドに送られ。身に覚えのない容疑をかけられたことを。
拷問を受け、書類を強制されかけたことエトセトラ。
「マートン中尉。調書の記録ではパーマー少尉のブラックボックスは破損していてデータが見れない状態だったという記述がある。査問委員会では隊長機であるアイザック【クラウン】ノスト大尉か君が証拠隠滅をした疑いがあると書かれている」
「なんですかいそれ? どうして無実の証拠をわざわざ壊さなければならないのです?」
「では事実無根だと」
「当然です。クラウンも帰ってから部屋に引きこもってましたからなぁ。むしろ連中の動きが早すぎて証拠隠滅どころではありませんでしたよ。作戦から帰った時には既に情報規制や現場保存を徹底され。作戦の翌日に本部の奴らがユージア最果ての地であるフォートグレイス基地にゾロゾロ乗り込んできてデータを全部抜き取った。いくら何でも早すぎる。まるでハーリングがフォートグレイスの誰かに殺されるのを分かってたみたいでしたよ」
確かに動きが早すぎたと思う。
俺を拘束して連れ去ったのはオーシア大陸ではなくIUN本部の部隊だとしても指示と判断が早いなんてものじゃないだろう。
「ふむ。パーマー少尉の供述は事前にフォスター大尉から送られた事情聴取と同様だ」
「フォスター大尉………AWACSバンドックのことですか? 失礼ですが。バンドックの直属の上司って」
「私のことだ。私は以前からライトハウスキーパーの事件に不信感を持っていた」
とんでもない人の下で働いてたんだなアイツ。
本当にただのAWACSなのかバンドック。
「故に。オーシア内部での手引き。そしてオスプレイに無人機のAIが搭載されていた、という君の見解も聞いている」
「飽くまで憶測です」
「だがまったくの見当違いという訳ではない。現に君はビンセント・ハーリングにもっとも近い場所で飛び回っていた。そしてキャノピーが破損しとても飛べる状態ではないということも。我々は参謀本部議長と大統領経由で事件の内情を調べ直した。秘匿機密のデータを閲覧してな」
「それって」
トップシークレットと表してひた隠しされてしまった。ライトハウスキーパーに関わる全ての情報?
「残念ながら君が乗っていたF-16Cのブラックボックスやフライトレコーダーの情報は存在しなかった。無論、存在していれば君の犯行ではないと立証出来たからだろう………だが彼らは詰めを誤った」
副議長の言葉と共に画面にデータが写される。
忘れる筈もない。ハーリング救出時の軌道エレベーター付近のマップだ。
「作戦時、AWACSスカイキーパーの機体に残された戦況データだ。ハーリング氏が撃墜された時、彼を攻撃できた者は君以外レーダーにはない。そう、レーダーにはない」
含みのある言い方をする副議長。
先ほどからまるで俺が犯人ではないということを確信しているような物言いだ。
これから写るものにそれがあるのか?
「これはハーリング氏が殺される数分前のレーダーマップだ。マップの西側を見てくれたまえ」
「西、左側………………え?」
しばらくじっと見ていると思わず声が出た。
メイジ、ゴーレム、ガーゴイル隊の計10機の部隊が軌道エレベーター周辺でUAVの対処をしている時。
マップの西側からその10機とは違う11機目の味方機の機体アイコンが出現したのだ。
「これって!」
「ライトハウスキーパーにおいて。増援の情報はない。この味方機は存在しないはずの味方機となる」
突如現れた不明機はそのままゆっくりとハーリング氏、そして俺のF-16Cから少し離れた場所。距離にして6000の場所に位置したあと直ぐ様その場を後にした。
そして、ハーリング元大統領にミサイルが直撃した瞬間。その光点は青から赤に変わっていた。
「IFFの擬装………」
「そうだ。スペア隊がワイアポロで遭遇したF/A-18Fの編隊と同じ物だと我々は踏んでいる」
「しかし。ミサイルが発射された形跡がありません。ハーリング元大統領は何に撃墜されたのでしょう」
「近年開発されているステルスミサイルという代物という線もあるが。飽くまで仮説であり決め手ではない。だが戦場に存在しない11番目の味方機。更にそれがIFFを擬装していたという事実に間違いはない」
それがハーリング元大統領を殺し、俺に全てを擦り付けた真犯人の姿。
オーシアのグルも流石にAWACSの情報まで消したら元も子もないと思って消さなかったのだろうが。
まさかこんな大胆不敵な犯行だったとは。
ハーリングが撃墜され、さらに反転し。無数のUAVから守らなければならないという限界状態。
スカイキーパーは責められたものではない。
ハーリングマニアであることを差し引いても、IFFが変わるなど誰が思おうか。
「パーマー少尉。確認するが、この情報を耳にしたのは?」
「いえ初めてです。法廷でもこのような情報は出てこなかった」
「そうだ。君が行った裁判は全くの茶番劇ということとなる。現に軍中央部はこの件に触れた形跡がない。ろくにデータを見ず、君だけを謀殺し。ハーリングを事故死したとすれば全て済むと思ったのだろう。まったく度しがたいことだ」
あまりにも予想と同じだったことに声を出すことも忘れていた。
かつての英雄を謀殺した腐った政府の人間たちは舞い戻ったハーリング大統領の手により粛清され。新たな国家体制として歩んできた筈だった。
だが人が存在する限りそこに腐敗は付くもの。
それが今に至るまでに淀みとして吹き出し、英雄ハーリングを毒牙にかけた。
「……オーシア上層部がハーリング元大統領殺害に関わっていたのでしょうか」
「決して無関係ではないと睨んでいる。現在君の裁判に関わった要人を尋問しているが、まだ確たる物は出ていない」
「シェパード中将という人は」
「………奴はまともに尻尾を見せん。無関係ではないと思いたいがな」
俺がシェパードを小馬鹿にした時取り巻きは過剰なまでに反応してきた。
派閥、というかは分からんが。とにかくシェパードは何処かしらの頭目っぽいのが予想。
「パーマー少尉。我々オーシアは多くの愚行を繰り返した。今も大国オーシアという名目に胡座をかき。戦場を知ろうとせず堕落を貪る者達が後をたたない………少尉。正直に話してくれて良い。君は今のオーシアを見てどう思う?」
どう、か。
何処まで話して良いものかな。
チラッと司令官の横に立つワイズマンを見やると、彼は促すように笑みを浮かべて頷いた。
「無礼を承知で言わせて頂きますが。決して他国に誇れる国ではないと考えております。本国の高官は前線を知らず。犠牲者を数字でしか見ていない。戦争で損をするのはいつも無辜の民草と前線の兵士ですから。そして兵士の不安が積もった先が国境無き世界でしょう。もっとも、それを擁護できる存在ではありませんが。
それでも大国の腐敗は巡り巡って我々に牙を向いた。エルジアの主張には全く賛同出来ませんが、大義名分を与えてしまったのは間違いなく我々オーシアと言えます。
はっきり言わせて頂くと。オーシアは環太平洋戦争、いえベルカ戦争から何も変わっていない。この国は一握りの高官の為ではない。市民1人1人の為にあるべきだと。少なくともビンセント・ハーリングはいつ如何なる時もそれを胸に戦っていた筈です」
我ながら無礼だな。相手は軍部のナンバー2というのに。
だがそれは嘘偽りない真実だ。
事実オーシアは前科を持った上でまだ腐敗が蠢いている。
それが分かっているのだろう。参謀本部副議長は眉間の皺を刻まずにいられない。
「………全くもってその通りだ。我々が今あるのはハーリング氏のおかげでもある。君が感じた懸念が真実であるならば。オーシアは至上最悪の愚行を為したこととなる。未来ある若者、そして英雄を謀殺する。大国という名目にまみれた祖国も、年貢の納める時が来ることだろう。だとしても、我々はその穢れを拭わねばならない。罪には罰を。古今東西、何人も変えられぬ摂理だ」
決意を露にするエドワード参謀本部副議長の目には力があった。
本気だ。汚辱にまみれたオーシアにおいて、この人は本気でオーシアという国を正面から見る男だという事が理解できた。
「さて、長くなったが結論を述べるとしよう。リヒト・パーマー少尉。オペレーション・ライトハウスキーパーにおけるビンセント・ハーリング殺害における君の罪状を棄却、貴君を無罪放免とする」
「っ! ………俺がハーリング元大統領を殺していないということに、なるのですか?」
「そうだ。冤罪による拘束期間の賠償金を支払う。そして少尉に対して不当な裁判、並びに拷問を行った職員、政府の主要人物を拘束。地位権限を剥奪し、ハーリング元大統領殺害についての聴取を行うこととする」
「………………」
これは本当に現実か?
絶望的かと思われた自身の罪状が。
与えられた恩赦という間に合わせの物ではなく。
本当の意味で容疑が晴れたということが。
何処か空を飛べればどうでもいいと。ほんの少しの諦めが燻っていた。
そんな風に思ったことがあったのに。
「っ」
「おい大丈夫かトリガー坊主」
「は、はい」
いつの間にか目尻に涙が溜まっていた。
心配して駆け寄ろうとしたおやっさんを手で制して涙を拭った。
「寛大な処置。ありがとうございます」
「我々に礼を言われる権利はない。ただひたすら懺悔を述べよう。我々はウォードック隊の二の舞を起こしてしまった。取り返しのつかなくなる前に君の安全を確保できたことに安堵している………だが真犯人がまだ分からぬ以上。君は重要参考人としての立場にある。それは忘れないでほしい」
「はい」
「リヒト・パーマー少尉、不条理な災禍に屈することなく。今日この日まで生きていてくれたことに感謝する」
「もったいなきお言葉です」
ただ我武者羅に生きてきただけだ。
だがその生きた数ヵ月は間違いなく報われたのだ。
「これにて査問委員会は終了となる。アイゼンハワー少将。後の事は任せる」
「はっ!」
司令官にならいその場に居るものは敬礼を返した。
モニターから参謀副議長の姿が消えた瞬間感極まったおやっさんがタックルハグを食らったのは言うまでもない。
「トリガー坊主ぅっ!! 俺は信じてたぞお前がやってねえってなぁ!!」
「ぐおぉぉ」
鼓膜と身体にダメージがぁ。
オーイオイオイと泣くおやっさんはもう言っても無駄なのは学習済みなのでされるがまま。
ワイズマンと司令官は助けてくれないのも予測済みだ。
「これで君は晴れて自由の身という訳だな。どんな気分だ」
「ええ、まあ。オーシアにもまともな人が居たんだなって」
「エドワード参謀本部副議長は本物だよ。その上にいる議長、そして大統領もね。君のこともそうだが。ビンセント・ハーリングが死亡した事件だ。是が非でも掘り起こしたかった事だろう」
「おやっさんが途中口を挟まないかヒヤヒヤしましたけどね」
「おいおい。良い子にしてたおっちゃんにそれはないだろうトリガー坊主」
「イタタタタタタ」
ジョリジョリする。立派なお髭がジョリジョリするぅ。
「ところでトリガー。君たちのAWACSだが」
「バンドック?」
「そうだ。今日付けで基地を離れることになっている。何か言いたいことがあるなら会ってみるといい」
ーーー◇ーーー
「よう大尉」
「なんだ元囚人」
そこらの職員を捕まえてバンドックの居る場所を訪ねた矢先に書類を見ながらシワを寄せている御仁を見つけた。
見た目から相変わらず何処か疲れたような呆れたような強面は相変わらずだった。
「今日基地出るんだって聞いてね。別れの挨拶に」
「そうか」
「カウントも誘ったんだけど。真っ平ごめんだって断られたよ」
「そうだろうな」
「あんたとも1ヶ月ぐらいやってきたけど。今となっちゃなんだか寂しい気もするよ」
「そうか」
いつも以上に素っ気ないバンドックに苦笑する。
答えてくれるだけマシだと思いつつ、拒絶もしない彼に話し続けた。
「正真正銘無罪放免になったよ。重要参考人ではあるけど。あんたとの聴取は役に立った訳だ」
「それは良かったな」
「ほんと素っ気ないなぁ。なんかないの?」
「仕事をしただけだ。礼を言われることではない」
「相変わらず無愛想というか。俺もう囚人じゃないんだからもう少しフレンドリーでもいいんじゃない? そんなんじゃ嫁さん出来ないぞ」
「生憎二児の父親だ」
「………………嘘でしょ?」
無言で首元からチェーンに繋がれたリングを見せつけるバンドックに空いた口が塞がらない。
妻子もちだったのかこの男! てかこんな無愛想強面番犬男に惚れた女が居たのか!
世の中広いものだなぁ。どんな相手なのか気になるところだが絶対答えてくれないだろうからやめとこう。
「参謀本部副議長直属の部下がなんでAWACSやってんの?」
「誰から聞いた」
「本人」
「まったくあの人は………順序は逆だ。元々AWACSとして働いてるうちに目をつけられてな。今ではAWACSの仕事をしながら諜報員の真似事をさせられている」
「俺が444基地に行くこと知ってた?」
「あれは偶然だ。直ぐに副議長から監視を命じられたがな」
「もしかしてあの後賭け事に参加しなかったのって指令があったから?」
「黙秘する」
闇のなかに放っていい真実もあるよね。
「マッキンゼイのこと聞いた?」
「聞いた。そして俺も傭兵部隊の元へ行く羽目になった」
「はいぃ?」
え、何時からバンドックと因果応報ざまあないぜマッキンゼイがセットになってるん?
最初からか?
「あの能無しと同じ理由だ。懲罰部隊で培った技量を役立てろということだ」
「役立ってたっけ?」
「ない」
「だよね………まあ評価はされてるんじゃない。少なくともアレと違って」
視線の先にはマジで囚人みたいに輸送機に乗り込むジャスティン・マッキンゼイ大佐の姿が。
大丈夫かアレ。真っ白になってんじゃん。生きてんのアレ。
「部隊指揮権限は俺が上位であることが救いだ。アレが喚いてもなんとか出来る権利がある」
「囚人の方がまだ優しいと思うよ。くれぐれも人間として扱えよ? 傭兵は囚人と違ってプライドがある」
「ラリー・フォルクのようにか?」
「その通りだ。もしかしたらラリーが居るかもしれないな。もし会ったら元気してるって言っといてくれ………こんなことなら手紙書けばよかった」
「居るかも分からない相手にか?」
「しばらく連絡取ってないんだよ」
この戦争に参加してるのかさえも分からない。
適度に連絡をいれないのはラリーの悪い癖だ。
「お前はこれからどうするんだ」
「さあね。いま人事が動いてくれるから、それ待ち」
「飛ぶのか?」
「当然」
「晴れて自由の身だ。前線を退く権利はあると思うが?」
「俺にとって空は切っても切れないものだ。せっかく飛ぶ手段があるなら俺は命の限り飛ぶつもりだぜ?」
「大馬鹿野郎だな」
「だろう?」
生意気に笑う俺にバンドックは初めてほんの少し気付くか気付かないぐらい小さな笑みを浮かべた。
「じゃあな、AWACSバンドック。あんたの下で飛ぶのは楽しかったよ」
「そうか。精々生き延びるといい元ハーリング殺し」
「おう、また会う日まで」
「真っ平ごめんだ」
「ハハハ!」
決して振り返ることなく何処までもドライな関係だった俺たちは背を向けて歩き出した。
どうもゴールデンウィークなんてなかったブレイブです。
客商売に休みなんかねえ!帰ったら飯食って寝る日々でした。疲労がやばかったです。
今回はおやっさんことマートン中尉、まさかの再登場。
査問委員会やりなおしの2本となりました。
おやっさん再登場は最初から決めていました。黙ってても動くキャラなのでほんと書くのが楽しい漢です。
そしてエドワード参謀本部副議長。
まさかのDLCミッションSP2終盤からフライング出演。
察した人や驚いた人もいるでしょう。私も驚いています。
副議長は(非常に)数少ないまともなオーシア高官としてのキャラを立たせて頂きました。
劇中に出てくるオーシアほんとひでぇから。いやほんとに。
トリガー、無事に無罪放免!やったね!
といっても真犯人のイニシャルGなにがし判明してないので一応監視下ということに。
それでも自由の身です。
次回から本格的にストライダーとして動くかな?と思います。
どうなるかは書いてみないと私にもわかりません。かしこ