エースコンバット7 FLIGHT REZON   作:ブレイブ(オルコッ党所属)

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 2カ月の間に2回も風邪を引きました。しかも2回目はインフルエンザという。
 最近ほんと流行ってるみたいです。皆さんもお気をつけて。


STAGE47【Stonehenge(目覚める遺跡)

 

 

「それではブリーフィングを始める。ここ最近で展開された我が軍による反攻作戦により戦況は大きく変わった。しかし依然として大陸西部、そして軌道エレベーター周辺はエルジアの勢力下にある。皆も知っている通り。灯台を護る巨鳥 『アーセナルバード』が空を支配しているからだ」

 

 アーセナルバード。

 

 ノースオーシア・グランダー・IGが開発した軌道エレベーター防衛用大型無人全翼機。

 1号機リバティ、2号機ジャスティスで構成される軌道エレベーター防衛網の迎撃範囲は半径1200km。ユージア大陸の西半分を覆い、そこにはエルジア首都『ファーバンティ』もすっぽり防御範囲に入っている。

 

 エルジアは当初。これをオーシアによる弾圧だと捉えていたが。

 世論は過去に戦争を起こした前科があるんだからさもありなんと捉える人がむしろ多かったとか。

 

「トリガー。此処に居るメンバーの中でアーセナルバードと遭遇し、交戦したのは君だけだ。アーセナルバードについて君の所感を聞いておきたい」

「はい。皆が知っている通りアーセナルバードは軌道エレベーターからの電力供給で無制限に飛行が可能。最大の特徴は翼に無人戦闘機MQ-101を80機も懸架していることです。この無人機は皆が戦ったMQ-99よりも高性能に感じました。更に本体にはミサイル射出口を多数配備。最悪これだけなら対処は出来なくもないって感じですが」

「いや普通は出来ねえんだよトリガー」

「お黙りカウント。実際フォートグレイス飛行隊含めた4小隊の攻撃はアーセナルバードに通用したんだよ。奴は化け物ではあるが決して不死身の存在ではない。

 だが一番厄介なのはAPSと呼ばれる巨大な電磁バリア。アーセナルバード中央にハイロゥみたいな光が出た後、あのでかい図体を覆うレベルのバリアが出来る。機銃ミサイルはおろか、その中に入った戦闘機は一瞬でボンだ。自分たちフォートグレイスはその後一切手が出せず、やむなく撤退となりました」

 

 これがなかったらやりようはあったんだがなぁ。

 あの時はギリギリ退避が間に合わなくてAPSの効果範囲に入ったんだよな。よく生きてたよ、ほんと。

 

「総括するとAPSを破らない限りアーセナルバード破壊は不可能です。こんなところで宜しいでしょうか」

「充分だ、ありがとうトリガー。聞いてのとおりだ、アーセナルバードの鉄壁の守り。これを突破しない限り有効打は与えられない。そこで我々はサンサルバシオンに設置された『ストーンヘンジ』によるアーセナルバード狙撃作戦を決行する」

「「ストーンヘンジ!?」」

 

 ストーンヘンジ砲台。

 正式名称、120cm対地対空両用磁気火薬複合加速方式半自動固定砲。というとてつもなく長い名前をした、いわゆる巨大なレールガンだ。かつてこの星に接近した巨大な小惑星ユリシーズを破壊し、粉々にしたのがストーンヘンジと呼ばれた8門の大型レールガンだ。

 人々はストーンヘンジによって滅亡を免れたのであった。

 

 だがそこで綺麗に収まらないのがこの世界が御伽噺ではなくリアルである証明なのかもしれない。

 ユリシーズが破砕され粉々になって多くの国が救われたがそれは全てではなく。エルジア、そしてエストバキアは国家経営が立ち行かなくなるほどの大損害を被った。

 特にユージア大陸西部の被害が酷く、エルジア首都ファーバンティに至っては三分の一が水没都市となっており。その凄惨さが分かる。

 

 そして発生した難民問題にエルジアがキャパオーバー。それでもなお難民を押し付けるユージア東部にふざけんなコノヤロー! (要約)となったのが15年前の大陸戦争。ストーンヘンジを乗っ取り瞬く間にユージア大陸の9割を占領した。

 が、そのストーンヘンジもかの有名な大英雄メビウス1にぶっ壊され、エルジアはそのまま敗退したのだ。

 

 閑話休題。

 

「計8基のストーンヘンジ砲台のうち7基は大陸戦争時に独立国家連合軍による空爆で破壊されてしまった。ただしその時隕石によって被害をうけ復旧中だった1基は空爆をうけずに済んだ。オーシア軍は秘密裏にその1基の復旧を進め、基盤システムの再起動にまでこぎつけた」

「ストーンヘンジは全て破壊されたと聞いていたけどな。実態は違ってたって訳だ」

 

 仮にストーンヘンジ、まだ1基原型残してますよーなんて知れ渡った日にはどんな扱いになるか分かったもんじゃない。

 実際エルジアは気づかなかった訳だし。これ一つでユージア大陸の圧力は飛躍的に跳ね上がることだったろう。

 

「発射準備作業が完了すれば発射が可能となる。現在技術班総出で急ピッチで作業を続けている。ただし作戦担当士官から『2発目が撃てる』という言葉を引き出せていない」

「1発限りの怪鳥殺し、か」

「だがこの1発はとてつもない味方だ」

「その通りだ。難攻不落のアーセナルバードを墜とせる絶好の機会。我々はこの作戦に賭けたいと思う」

 

 確かに巨大隕石を砕く程の威力だ。あんな薄っぺらなプラズマの膜なんか紙風船のように突き抜けるだろう。

 

「だが敵もただ黙してる訳ではないようだ。この動きを察知したエルジア軍はストーンヘンジへの進軍を開始している。アーセナルバードも接近中との情報だが、射撃準備が順調に進めば作戦空域到達前に撃墜が可能だ。ストーンヘンジの周囲に防衛拠点『メンヒル』を設置した。これを航空支援しつつ、航空優勢を確保。巨鳥を撃ち堕とすまでストーンヘンジを護りきるのが、我が部隊の任務だ」

「ストーンヘンジを攻めた側だった俺たちが。今度はストーンヘンジを守る側になるって事か」

「アーセナルバードを1機でも撃墜できれば、軌道エレベーターの防空圏を大幅に縮小できる。今現在、ストーンヘンジ以外で落とせる手段はない。首都ファーバンティへの道を、そして戦争終結の道筋を作るためにも。この作戦は完遂しなければならない。諸君の健闘を祈る!!」

「「ハッ!!」」

 

 

 

 ーーー◇ーーー

 

 

 

「しかしメンヒルとはこれまた因果な名前だな」

「どういうことだイェーガー?」

「メンヒルというのは遥か昔に建てられた遺跡の名前だ。そしてそのメンヒルの別名の一つがあのメガリスだ」

「メガリスっていやぁ。大陸戦争の降伏勧告に反対したエルジアの若手将校が立てこもった軍事要塞だったか?」

 

 軍事要塞メガリス。

 かつてユージア大陸南西に位置するトゥインクル諸島に存在していた要塞だ。

 その要塞の目的は軌道上、未だ宇宙に漂っている小惑星ユリシーズの破片にレーザー誘導されたミサイルをぶち当て、目標の場所に隕石攻撃をするという。ユリシーズの厄災を繰り返す悪夢の所業を目的に建造されていた。

 

 カウントの言う通り。首都ファーバンティを落とされてもなお諦めの悪い若手将校の手で厄災を再現しようとしたが。そんな暴挙を許さんとメビウス1を御旗としたメビウス中隊が引導を渡して、今度こそ戦争は終結したという訳だ。

 

「遺跡といえば、ストーンヘンジもかつて存在していた古代遺跡から取った名前らしいじゃないか」

「ユージア大陸にはそんな文化遺産がゴロゴロ存在していたらしい。その半数が戦争によって砕かれたらしいがな。正に戦争というのは百害あって一利無しだ」

「じゃあとっととアーセナルバードをぶっ潰して、さっぱりさせようぜ!」

「フーシェンの言う通りだ。みんな、また空で会おう」

 

 豆知識講座も終わり、各員が各々の愛機に馳せ参じるべく走り出す。

 と思ったらカウントが俺を呼び止めた耳を寄せた。

 

「ちょい待ったトリガー……あーこんな時に話すことでもねえけどよ」

「フルバンドのことか?」

「んだよ、わかってんのかよ」

「まあね。俺も思ったよ。フルバンドが掴んだ遺跡っていうのは、間違いなくストーンヘンジ砲台の修復についてだ」

「それを握って、あわよくば言いふらそうとして。バンドックに目をつけられ」

 

 ボン、だ。

 

 フルバンドがストーンヘンジ修復の情報を言いふらし、万が一エルジアに流れてしまったら。

 今回のストーンヘンジ砲台によるアーセナルバード破壊作戦。オペレーション・ドラゴンブレスは頓挫する。

 正しく戦争の命運が断ち切られることを意味していた。

 

「お前の言う通り、フルバンドは死ぬべくして死んだことになるわけだな」

「スッキリしたか?」

「いーやまったく。だが溜まったもんを吐き出したかったのさ。事情を知ってる元スペアの大馬鹿野郎にな」

 

 そう呟くカウントの顔は確かに晴れやかなものではなかった。

 だがほんの少しだけ腑に落ちた。そんな顔をしていた。

 

 

 

 ーーー◇ーーー

 

 

「こちらニューアローズ基地のロングレンジ部隊。ただいま現着し……」

「防衛陣地ならびに航空支援の各部隊へ! いま私が1番欲しいのは、時間よ。時間さえ稼がれば、私のプログラムがアーセナルバードを撃ち墜とすっ」

「お、おう」

「伝達が早くて助かるねぇ。んで、いまのせっかちなマドモアゼルはどちら様で?」

「すまないロングレンジ部隊。いまのは作戦指揮官のディアナ・マコニー少佐だ。私は特技兵のレーマン准尉だ。彼女はせっかちを絵に描いたような人でね、多めに見てくれると助かる。これよりアーセナルバード破壊作戦を決行する!」

「ロングレンジ各機、ミッションスタートだ。長い戦いになる、兵装を無駄に消耗させるな」

「了解!」

 

 慌ただしい、というよりクイックな声に導かれ作戦が開始された。

 目の前に広がるは荒野。そのど真ん中にサークル状に並んだストーンヘンジ8基。

 そしてユリシーズの欠片と思わしき小さなクレーターの側で唯一生き残ったストーンヘンジ【4番機】が鎌首と共に産声を上げていた。

 

「あれがストーンヘンジか。思っていたよりデカいな」

「見ろよケーブルだらけだ。電源車で無理やり稼働させてる」

 

 スカルドの言う通り。ストーンヘンジ近辺には夥しい数の電源車がストーンヘンジ1基に電力を供給し続けている。

 元々ストーンヘンジには専用の原子力発電所が備わっていたが、冷却用のプールが干あがったことで使用不可。あの大量の電源車は原子力発電の変わりというわけだ。

 だがあれだけの電力を持ってしても1発しか撃てない。改めて建設当時のストーンヘンジ砲台の凄さと恐ろしさが分かる。

 

「しかし前大戦の兵器ってちゃんと動くのか? ぶっ壊れてたんだろ?」

「動かなければ俺たちの命運は尽きる。天に祈っておくんだな」

「だが撃てればアーセナルバードでも堕とせそうだ」

「ああ撃てればな。それに当たればだ」

「マコニー少佐たちの腕前を信じよう。先ずは敵航空部隊が近いメンヒル5の敵を掃討する。ストライダー1。ストライダー隊の面倒を頼むぞ。全員生きて帰すんだ」

「了解!」

 

 ここを成功させてもまだまだ戦争は続く。今もこれからも、欠員ゼロを大前提として動かなければならない。

 

 レーダーを見ると、既にメンヒル5、6、7の3部隊が敵地上部隊と交戦中だ。メンヒル隊は精鋭と名高い部隊。陸戦で押しているが、空からの爆撃にはひとたまりもないだろう。

 

「こちらメンヒル5。チラチラと鳥が集まってきてる。ついばまれないうちに頼むぜ」

「こちらストライダー1! メンヒル5、持ちこたえてくれ! いま空のカトンボを落とす!」

「随分と若そうなリーダーだな。頼むぜ若いの!」

 

 気勢のいい陸軍将校だ。死なせるわけにはいかない。

 直ぐ様近場のMIG-29Aをロック。その翼に機銃を叩き込み。ぐらついたところをミサイルをぶち当てた。

 

『なに? やられた!?』

『気をつけろ! あのイーグル、カナードがついてやがる! 噂のやつかもしれねえ!』

「ナイスキルトリガー。そういやよ、今回は前のFAEBじゃなくてよかったのか? あれがありゃあ密集してる奴ら根こそぎやれるだろ」

 

 カウントの言う通り。今回はFAEBではなく。高威力ミサイルであるHPAAを装備している。

 

「積載が少ないからな。それに、もしかしたらアーセナルバードと直接やるかもしれねえ」

「その為にHVAAじゃなくてそれ担いできたのか。最悪を想定しすぎだろ」

 

 ブリーフィングでも言ったが。アーセナルバードの恐怖を知ってるからな。

 少しでも対空兵装を増やすために。積載量増加のチューンを受けている。

 

 そうこうしてる間に上を飛んでいるMIGを全部叩き落とした。そのまま下を相手しているサイクロプスの援護に向かおうとする。

 

「こちらメンヒル6。前方に敵戦車だ、敵戦車を発見。ロングキャスター、近接航空支援を要請する」

「メンヒル6、航空支援要請を了解した。直ちに展開させる」

「ストライダーの手がいま空いた。ワイズマン、ここは任せても?」

「ああ、メンヒル6の方を頼む!」

「了解! 行くぞみんな!」

「「「ウィルコ!」」」

 

 ストライダー、編隊を組んで右旋回。南側を抑えているメンヒル6の方に馳せ参じる。

 

「いいか! 要塞を落とせってんじゃねぇ、ここを守るだけの仕事だ。楽な仕事だぞ、給料分働けよ!」

「オーシア陸軍はどいつも活気があるな。精々萎えさせないようにしようぜ」

「全機! 地上部隊を根こそぎ噛み潰せ! 陸軍の仕事を奪ってやるんだ!」

「わーお、我らが小隊長の気合いの入りようが凄いぜ」

 

 この大空戦時代において陸軍の力は空軍に比べて余りにも力の差がでかすぎる。

 それでも臆せず立ち向かう勇士たちだ。無駄死にさせるわけには行かない。

 

 南側のメンヒル6の頭上を通過し、ストライダー隊の機銃とミサイルが敵陸戦部隊を薙ぎ払った。

 

『ぐあっ! 今ので幾らやられた!?』

『SAM2台、AAGUN2台、ADタンクが1台! こちらの戦力が半減!』

『半減? これは壊滅というんだ! くそ、敵航空機たちさえいなければ!』

『落ち着け! ストーンヘンジをなんとしても破壊するんだ!』

「いい援護だイーグルたち! うちの空軍もまだ捨てたもんじゃねえな!」

「貴方たちには負けますよ。お互い生きて帰りましょう!」

 

 こっちに手を振る陸戦部隊に手を振り替えしつつ、仇とばかりに狙ってくる敵機の翼を引き千切る。

 こちらが戦ってる間に、マコニー少佐率いる技術班がひっきりなしに指示を飛ばしてるのが聞こえてきた。

 

「メインシステムに通電。コールドブート、シーケンス47から97までを省略」

「それでは起動。一発撃てればいい」

「ストーンヘンジ、起動確認!」

「コンディショングリーンは60%。30%はイエロー、残りはレッドか。大分やつれてるな……」

「20年前の壊れてた兵器だからね。ガタがきてて当たり前。イエローとレッドの箇所のチェックを急いで!」

「了解!」

 

 はたから聞いたら何を言ってるのか分からないが。それぞれの戦場でみな命を削っている。

 そしてそれは敵も同じだった。

 

「レーダーに新たな敵機! 増援か! こんな時に!」

「爆撃機だ! 包囲190、ストーンヘンジが空爆に耐えられるとは思えない。なんとしてでも阻止するんだ」

「メンヒル6側か! 爆撃機はストライダーが行く!」

「頼むぞストライダー隊。まて、包囲280より機影3! 爆撃機より速い、真っ直ぐ突っ込んてくるぞ!」

「爆撃機は囮か、それともどちらも本命か」

「どちらにせよ見過ごすわけには行かない。こっちはサイクロプスが片付ける。そっちは頼んたぞトリガー」

「ウィルコ!」

 

 

 

 ーーー◇ーーー

 

 

 

『フードル1から各機! 我々の目的はストーンヘンジの破壊のみ! 他は構うな! なんとしてでもあの遺跡を破壊するのだ!』

『『了解!!』』

 

 FOUDRE(フードル)。エルジア語で雷、激怒の意味を持つネームドであるネイサン・ロシュという男はその名の通り激しい気性を持つ男。

【エルジアの黒雷】と呼ばれるほどの凄腕の男だった。

 

 彼らフードル小隊が駆るは黒いボディに赤い稲妻を刻んだミラージュ 2000-5。その翼にはかつて祖国が死に物狂いで守ろうとしたストーンヘンジをへし折る為のGPBが積まれている。

 

『オーシアめ! ストーンヘンジを何処に向ける! アーセナルバードか! それとも首都に向けるのか!! やらせはせん! やらせはせんぞ! これ以上奪われてたまるか!!』

『隊長! 前方に機影!』

『構うなと言った! 総員命を賭してストーンヘンジを砕け!!』

『『了解!』』

 

 スロットルMAX。ミラージュの限界速度のままサイクロプス隊と衝突する。

 双方ロック距離に突入と同時にミサイル発射。排気煙がフレアの光が2小隊の間を彩った。

 

『どけぇ! オーシアぁ!!』

「んなっ! こいつらこっちにお構い無しかよ!」

「ろくな回避機動もない! フレアでゴリ押しだ!」

「ストーンヘンジしか見てねえって感じだ!」

「逃がすな! F-15なら追いつける!」

 

 サイクロプス隊もスロットルMAX。

 フードルたちは後ろなぞ眼中にないとばかりにストーンヘンジに向かっている。

 

「敵編隊、ストーンヘンジまで10000を切った! 急げサイクロプス隊!」

「もう少しで射程……捕らえた!」

「FOX3!」

 

 ワイズマンとカウントが4AAMを発射。放たれた8発のミサイル。フードルはまたも回避機動を取らずフレアで回避しようとするも、フレアを逃れたミサイルがフードルの僚機に命中した。

 

『フードル3!』

『頼みます隊長! 必ずストーンヘンジを……』

「こいつらガチで目の前しか見えてねえ! 決死隊かよ!!」

「続くぞフーシェン! FOX3!」

「FOX3! 落ちろ!!」

 

 入れ替わりフェンサーとフーシェンが4AAMを発射。

 フレアを出すフードル。旋回も回避も減速もない。ただ加速あるのみ、ストーンヘンジに一撃入れれば勝ちなのだ。

 電光石火の一撃を叩き込まんとするフードルに容赦なくサイクロプスの棍棒が振り下ろされた。

 

『ぐあぁぁ!』

『ヘンネル!!』

『行ってくれネイサン! あの遺跡を壊してくれ! エルジアよ! 祖国に栄光あれぇぇぇ!!』

 

 隣で爆散する僚機。アカデミーから共に居た相棒の散り様を脳髄に刻み。再びストーンヘンジを睨みつける!! 

 

「残り5000! ワイズマン、カウント!」

「やらせはしない!」

「止まりやがれ!!」

 

 2機とミラージュ 2000-5の彼我距離は2000。

 通常ミサイル発射。三たびフレアを撒き散らすフードルの付近で破裂するが、フードルの機体は健在だった。

 

『ぐぅぅ! FCSにエラーだと!?』

 

 だが当たりどころが致命的に悪かった。

 今の彼の機体はGPBはおろかミサイルや機銃も撃てなかった。

 

『だからなんだ!!』

 

 即座に使えなくなったミサイルとGPBをパージ。軽くなった機体に鞭を入れて更に増速する!! 

 

「おいマジかこいつ!」

「特攻する気か!? 何が奴を駆り立てる!?」

『うおおおおお!!』

 

 ただ目の前の、目の前にあるストーンヘンジ4番機。

 彼の視界に映るのはそれだけだった。

 

 ネイサン・ロシュはエルジアの軍人として従軍していた。それこそまだエルジアが共和国になって年月が経っていない頃から。

 

 祖国の為に戦うのは誇りであった。

 後に彼は一部で英雄として祭り上げられ、正しく順風満帆だった。

 だが一つの小惑星。ユリシーズが彼の人生を一変させた。

 

 ストーンヘンジが撃ち落とし損ねたユリシーズの破片により、妻が死に。

 ストーンヘンジ防衛作戦で同じく従軍していた息子を失った。

 

 たったそれだけで彼から全てを奪った。 

 ストーンヘンジがエルジアを守りきれなかった。誰が悪いわけでもない。ただただ結果がそうなった。そうなってしまった。

 

 フードルに再びミサイルが命中。

 単発エンジンに異常発生。尾翼ももがれた。それでもフードルは止まらない。

 TACネームの名の通り激情が彼とミラージュを突き動かす。

 

 すべてを失った彼は途方に暮れ。くすぶった怒りと恨みの矛先は戦争を始めたエルジアや大国でもメビウス1でもなく。彼から妻子を奪った原因であるストーンヘンジ砲台に向けられた。

 そんな彼にストーンヘンジ破壊作戦の一報が来たのは、正に天啓と言えたのだ。

 

『ストーンヘンジ! リーシアとカトルの仇! いまこそ因縁に終止符を打ってやる!! 砕けろストーンヘンジぃ!』

 

 彼は止まらない。元より彼は、いや彼らフードル隊は死ぬつもりで此処に来た。

 全てはストーンヘンジをこの世から消すために。それを成す為なら未練などかなぐり捨てる。

 

 後ろのイーグルの機銃が機を揺らすがもう遅い。

 ストーンヘンジはもう目と鼻の先。

 

 やったぞお前ら! 

 勝利を確信し、家族の笑顔を浮かべ、喜びに打ち震える彼に。

 

 死神の鎌が通り過ぎた。

 

 

 

 ーーー◇ーーー

 

 

 

 ストーンヘンジとフードルの距離、わずか300m。

 横合いから飛来したミサイルがフードルのミラージュ 2000-5を粉砕した。

 

 木っ端微塵となったフードルの破片は電源車の真横に落下。

 まさに、間一髪。

 

「あっっっぶねぇぇ!!」

 

 全身から汗がブワッと吹き出し、心臓が早鐘を打っている。

 ノーロック偏差射撃、万歳!! 

 

「今の爆発はなに!? ストーンヘンジは無事!?」

「各部チェック、変化なし。ロングレンジ部隊がやってくれました!」

「そう。戦闘機部隊、次はもっと早く撃墜して。ストーンヘンジが傷つかないことが前提条件よ」

「すまない。次は気をつける」

「言うてもよ、あれはとんでもなかったぜ。なんで尾翼やられて真っ直ぐ飛べんだよ……」

 

 彼が爆薬をパージしていなければもっと前にワイズマンたちは撃墜できていた。まさしく執念の結果と言えるだろう。

 

「トリガー助かったぞ。ナイスタイミング」

「ええ、ふー。はい、どういたしまして……」

「トリガー、お前なんでこっちに」

「通信聞いてたらなんか嫌な予感がして。来てみたら特攻仕掛けてると来た。ギリギリ刺し込めたけど。ワイズマンが削ってなかったら危なかったな。しかし特攻って、大昔のノースポイントじゃないんだぞ……てか一瞬だったからわからんがネームドじゃなかったか?」

「ああ、エルジアの黒雷と呼ばれていた大陸戦争を生き残ったベテランだ。彼ほどの男が何故あんな……いや、彼ほどの男だからとも取れるか……」

 

 生存性を度外視した、まさに神風特攻。

 今より遥か昔の東の島国は複葉機で船に突貫したという末恐ろしい戦法があったとかなかったとか。

 

「こちらストライダー3。爆撃機は撃墜した。そっちはなんとかなったようだな」

「ネームドと敵爆撃機の撃墜を確認! いいぞ、その調子でストーンヘンジを守り切るんだ!」

「こちらメンヒル6! 敵地上部隊の全滅を確認した。航空機支援を感謝する。ようしお前らよくやった! 今回は特別に45秒休憩だ、飯でも食ってこい」

「こちらメンヒル7! 敵陸上部隊の攻勢が激しい。長い間持たないぞ、迅速な支援を要請する」

「メンヒル7も激戦だな。トリガー、合流して援護に向かおう」

「サイクロプス隊は増援を警戒する。メンヒル7は頼んだぞトリガー」

「了解! 旋回する!」

 

 ひっきりなしに交錯する通信の合間でストーンヘンジの準備も進んでいる。

 あんな濃いのが出てきたがまだ作戦は序盤も序盤だ。気合を入れ直してスロットルを吹かす。

 

 見てろよアーセナルバード。

 今度こそ引導を渡してやるぜ!! 

 

 

 

 ーーー◇ーーー

 

 

 

『こちらグリトニル。ターゲットを視認した。ブリーフィング通りの地点だ。これよりストーンヘンジを遺跡に戻す』

『今回はクリーンな仕事だといいですね。隊長』

『わかりきったことを聞くな。俺たちは任務を遂行するだけだ。行くぞ』

『『了解』』

 

 

 

『こちらバッフル! もうすぐ作戦領域に到達! またストーンヘンジが動くところをお目にかかるとは夢にも思わなかったぜ。てかフードルはどうなった?』

『HQよりバッフル。フードル小隊全滅。ネイサン・ロシュ中佐はストーンヘンジに突撃を敢行したが直前で阻止された』

『そうかい。あの跳ねっ返りめ、最後に一花咲かせれなかったか。よーし分かった! 奴のバトンは俺様が引き継ぐぜ! フードルやったのはどいつだ』

『確認はまだだが、例の3本線との報告が来ている』

『スナイダートップをやった死神の再来と言われた奴か! よーし見てろよ3本線! このキース・ベッカー様のA-10C。ただのサンダーボルトⅡだと思ったら火傷するぜぇ!!』

 

 

 

 

 グリトニル。輝けるものという意味とは反対に彼らは影に紛れて忍び寄る。

 バッフル。その名の如く止められるものはないとばかりに目標に向けて猛進する。

 

 数々の古強者が時を経てこのサンサルバシオンに集結しようとしていた。

 

 

 

 





 どうも病み上がりです。
 まだ完全復活ではありませんが。それでも動けるようになりました。

 さて、始まりましたストーンヘンジ。今回でわかりましたが。3か4話編成になりそうです。やばい。
 初っ端から濃いめの内容ぶち込みすぎた感が凄い。もっとスマートに書きたいものです。
 なんせ今回のミッションで3人もネームドいますしね。どうなるほんと。

 私でも書ききるまで未知数です。待っててくれた方ありがとうございます

【FLIGHT REZON アサルトレコードNo.13】
ネームド:フードル
機種:ミラージュ 2000-5
カラー:黒に赤い稲妻
派閥:保守派
パイロット∶ネイサン・ロシュ

 大陸戦争からのベテラン。
 ストーンヘンジが破砕しきれなかったユリシーズで妻を、ストーンヘンジ防衛戦で息子を失う。
 茫然自失だった彼はやがてその責任と恨みの全てをストーンヘンジにぶつけてしまうほど精神がすり切れてしまい。
 最後は部下と共にストーンヘンジに特攻。神風攻撃をする瞬間にトリガーがなんとか撃墜した。

 


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