エースコンバット7 FLIGHT REZON 作:ブレイブ(オルコッ党所属)
「こちらメンヒル7! 敵航空機接近中! ここを掃除するつもりだ! 味方機の助けがないと全滅しちまう!」
作戦空域。ストーンヘンジの北東側。メンヒル7が敵陸戦部隊と激しい砲撃戦を繰り広げていた。
「こちらストライダー隊! お待たせした、これより航空支援を開始する!」
「来てくれたか! 地上はまだ持つ、頼むぞ!」
「空の敵はロングレンジ部隊に任せろ! 俺たちの敵は地を這う蛇どもだ!」
俺たち以外にも航空戦力は多少居るが、あまり宛には出来ない。俺等が気張らなければ。
「トリガー。敵増援はA-10Cが4機だ」
「サンダーボルトⅡか! またドでかいのが来たな。でも大丈夫だ、もうすぐ射程距離!」
前方に雲がかかって機影は見えないが、レーダーは機能してる。
Tu-95やTu-160と違って小回りが効く地上戦の覇者とも言えるA-10C。だがイーグル相手に逃げれる機動性ではない。
固くても鈍重だ。さっさと仕留める!
敵機、もうすぐ射程内。ヘッドオンで。
その時、目の前で断続的に何かが光った。
「ブレイクブレイク!!」
「うおっ!」
「わーお!」
デジャブとも取れるそれに
雲を貫いて無数のロケット弾と機銃が四方八方に乱れ打ちを噛ましてきた。
一番危なかったのは先頭を飛んでいた俺。
もうまさに神のみぞ知るとも言える感じで機体を捻り機銃がかすっただけで済んだ。
かすっただけで済んだが機銃とは思えない衝撃に舌を噛みかけた。
雲から飛び出した4機の巨影。
外付けの巨大エンジンに幅広な主翼。そして無数にぶら下がるミサイルとロケットユニット。更に本機の代名詞とも言える挽き肉製造機ことGAU-8 アヴェンジャー30ミリガトリング砲。
空飛ぶ重戦車。A-10C サンダーボルトⅡだ。
しかもこいつは。
「敵のA-10C編隊のうち1機はネームド! 斑点迷彩にバイソンのエンブレム! バッフルを確認!!」
「バッフルか! 厄介な奴が来たものだな」
「知ってるのか? ワイズマン」
「エルジア古株のA-10乗りだ。A-10で戦闘機を撃墜することに生き甲斐を感じるネームドだ」
「トリガー以上に大馬鹿野郎じゃねえか! いやそんなことねえな」
オイ否定が速いな!
まだノーロック射撃を2回成功したことしかねえよ! …………しかねえよ!
『来たぜぇ来たぜえ! MTDイーグルだ! 3本線かお前? なあ3本線だろお前!! いいねぇ今回の戦争はそうそう骨のある奴が居なかったからなぁ! お前らはストーンヘンジをへし折れ! 3本線はこのバッフル様が頂く!』
『了解だベッカー! パッと出のエースに落とされんなよ!』
『こっちの台詞だてめーら! さっさと行け! おら行くぞー!!』
「バッフル! こっちに向かってくるのか!?」
伊達や酔狂ではないだろう。
大陸戦争から生き残った古株。かのメビウス1と交戦したのかもわからんがここまで生き残ったんだ。
その証拠に!
「FOX……え、はやっ!?」
『A-10Cとドッグファイトは初めてかぁ!? 動きが若いぜ3本線!!』
こっちがミサイルを撃とうとしたのをあらかじめ悟ったように宙返りで回避機動を取るバッフル。
負けじと追いかけようとしたら敵は急停止。こちらの速度が乗ったのを良いことにオーバーシュート。即座にロケットとガトリング砲。そしてミサイルを矢継ぎ早に発射。
面の圧を確認する暇もない。こっちは速度を殺すことなくインメルマンターンとフレアでなんとか回避する。
大回りで旋回し、狙いを定めて再加速。
今度はヘッドオン。バッフルはミサイル射程2000になる前にロケットを発射。
微調整でなんとか避け、返す刀でミサイルを撃つが既に奴は回避軌道を取っていた。
「くそ! ミサイル当たらねえ! こんな当たらないってマジかよ!」
『遅いぜスローだぜスローリーだぜ! 俺よりノロマのつもりかぁ3本線』
「あーもうちょこまかと!」
A-10Cってみんなこうなのか? いや絶対違うこいつがおかしいだけだ!!
どうしてこうネームドは曲者ばっかなんだ! 個性強すぎだろ!!
ミサイルに対して過敏なら機銃はどうだ!
A-10Cの上方から機銃を撃つ。
いかに硬いA-10Cでも機銃を当てたら少しはダメージは。
カカカカン!
『んー? なんかしたか?』
「硬ぁ!? こいつ装甲材盛ってやがんのか!? じゃあなんでそんな飛べるんだよ!!? てかなんで盛れるんだよ!?」
機銃はほんの少し凹んだだけで穴が空くことはなかった。
燃料タンクを防弾仕様にして耐久力を上げるという話を聞くが。爆撃機でも装甲なんて盛れないだろ。なにこれベルカテクノロジー!?
それだとしても硬い! これじゃ機銃もたいして効果ないぞ。
固くするならそれだけ重量が嵩むはすだ。なのに爆撃機より早い程度のA-10Cの機動力で済むとは。エンジンにも手を加えてるのか? なんてモンスターマシンだよ!?
「こちらストライダー4。ネームドじゃないA-10Cもなかなかの腕だ。こっちのミサイルを巧みに躱しやがる!」
「回避運動に集中してるからストーンヘンジとの距離は縮まらないがな。1on1で拮抗している状況だ」
「ストライダーに加勢したほうが良いか? 膠着状態になっている」
「そうも行かねえようだぜフェンサー。メンヒル6のほう、更に敵の増援だ! まだ地上部隊は気付いていてねえ!」
「結構な大軍だ。連中の手足が揃ってるうちに敵を始末してやる!」
「トリガー。悪いが直ぐに加勢できそうにない。頼めるか」
「大丈夫! 問題ない!!」
拮抗してる?
なら俺がさっさとこいつを叩き落とせば問題はねえってことだ!
こいつと数回交わってなんとなく分かってきた。
こいつは間合いと判断が普通より早いんだ。それがA-10Cの鈍重な回避機動をカバーしている。
そしてチャンスを見るや積載に任せた大火力を全力で叩き込みつつ、更に無駄な欲を見せず割り切るクレバーさを持っている。
熟練の操縦能力、機体特性を熟知しなければこういった芸当は出来ない。
技術力の高さなら今までのネームドでも断トツだ。
相手が早く動く。ならこっちも更に速く動けば良い! 後詰も控えてるんだ! ここで足止めていられるか!
スロットルを叩き加速。そのまま迂回して奴の右につく。
ぶつかるんじゃないかという早さで敵の右側面に機銃を打ち込む。だがA-10Cの戦闘機とは思えない堅牢なボディはほんの少し凹みを与える程度だった。
「痒い痒い! そんなチマチマやってたらストーンヘンジ折れちまうぜ!」
「まだまだぁ!」
再度大きく旋回して加速。再び右側について機銃を撃ちすれ違う。またも旋回、加速、機銃。
全部右側面から。すれ違いざまに通り魔攻撃。
『なんだこいつ。全然ミサイルを撃とうとしねえ。いやそんな素振りすらねえ』
「ん、ぐぅぅ」
何回も急加速からそのままハイGターンを繰り返し、流石に身体にかかる圧が重い。
だけど怯めない。時間が迫らないなら別のやりようがあっただろうが。生憎それがない。
身体の悲鳴を無視して何回も、何回も何回も繰り返す!
普通ならこうも上手く機銃は当たらないだろう。
だけどA-10Cは重い、装甲を盛ってるからか通常よりも動きが重い。
流石に回避動作をしようにも3本線は機銃ばかりでミサイルを撃とうともしない。
そして右側面に集中的に付けられた夥しい弾痕。
いくら盛りに盛った増加装甲だろうと、こうも立て続けに同じところを撃たれては。
『こいつまさか!』
「いつかヒビが入るってもんだよなぁ!!」
相手も避けに来てる。だけど回避動作が追いつかない。
闇雲に左右旋回など出来ない。そんなことしたら俺と向きが並行になってミサイルの射線が通ってしまうから。横合いだからこそ機銃で済んでいるのだから。
「普通より反応が遅れるよな。お前相手にこんな戦法する奴いなかったろ。そんなモンスターマシンに乗ってたら機銃でチマチマやるなんて馬鹿らしいもんなぁ!!」
『こんの!!』
これ以上やられたら不味いと思ったのだろう。
俺が機銃射程に入るタイミングでバッフルはハイGターンで機体を横に倒した。
これなら機銃に狙われず。攻撃しようにもする頃には通り過ぎるだろう。
ほんと判断が早いネームドだ。そしてありがとう。
「この瞬間を待っていたぜぇぇぇ!!」
エアブレーキMAX。急減速のブレーキGに耐えつつ斑点迷彩のA-10Cを見据える。
そのまま横向きにクルビット。機首をA-10Cの横っ腹、機体を横にして平行移動。兵装を高威力ミサイルのHPAAに切り替える。
『マジか!!』
「うおらぁっ!!」
ほぼ接触距離でのHPAA接射。避けられる訳もなくバッフルを貫いた高火力ミサイルがたっぷり溜め込んだ兵装ごとA-10Cを引き千切って爆散せしめた。
「ざまあみやがれモンスター! こちらトリガー。バッフルを撃破した!」
「トリガーこっちを頼む! 気を抜いたら出し抜かれそうだ!」
「あいよ!」
均衡が崩れた。未だドッグファイトに向かないはずのA-10C相手にペースを崩された部下を助けなければ。
と、旋回しようとしたらパラシュートが見えた。
『くっそー! やりやがったな3本線!! 次はこうは行かないからなぁ!! それまで死ぬなよコノヤローーウ!!』
なんか叫んでる。結構歳行ってる男は紛うことなきバッフルのパイロットだ。
命中から爆発まで一瞬だったのに先読みして脱出したのか? 何処まで判断が早いんだよ。
スパイダーといいおっさん恐るべし。
パラシュートを引っ掛けないよう気をつけながら残りA-10C部隊の横っ面をミサイルでぶっ叩く。
『いっでぇ! あぁん!? ベッカーの野郎やられてるじゃねえか!!』
『あ、これ駄目だ。イジェクトイジェクト』
「頂きだ!」
「FOX2!」
『あーやっぱA-10じゃ戦闘機に勝てねえかぁ』
拮抗を崩されたちまち数敵有利により次々とA-10Cが撃墜され。ポポポとパラシュートが追加で3個発注された。
きちんと脱出してるあたり部下にもしっかり教育が行き届いているらしい。
ていうか俺が来るまで生きてたんだよな。バッフル配下の奴等も対イーグル戦をA-10Cでやってるってどうなんだ。
エルジアって無人機戦法に転倒しなくてもやってこれたんじゃないのか?
そもそもパイロットの数が少ないって話になるが。
「助かったぜトリガー。こいつら鈍重な癖に動きが曲者過ぎてな」
「仕方ないよ。バッフル含めてこいつらはイレギュラー過ぎる。残りの地上部隊を薙ぎ払うぞ」
「「ウィルコ!」」
今までの鬱憤を晴らすかのようにメンヒル7に向かっていた地上部隊が木っ端微塵となった。
途端にメンヒル7から歓声が上がる。
「いやっほう! 助かった!」
「3本線のマークの機体! あいつが命の恩人だ!」
「俺だけじゃないんだがな」
「謙遜することはないぞトリガー」
「良いじゃないか。その目立つマークは味方の御旗になる」
「士気が上がるのは良いことだぜ」
そういうものか。
メビウス1やウォードッグもこんな気分だったのだろうか。
褒められた分は頑張らないとね。
「レールガンへの電力供給……充填率40%、42%。くそっ、数値が上がらない!」
「予備のコンデンサーにバイパスしましょう」
「ああもどかしい! さっさと溜まりなさい!」
「頼むぞディアナ。いい子だから癇癪を起こすなよ」
「わかってる! 子供扱いしないで頂戴!」
あっちもなかなか難儀してるみたいだな。
さてカウントの方はどうなった。
「こちらサイクロプス2。敵増援は食い止めたぜ。奴等数だけ揃えて鬱陶しいったらなかったぜ」
「ロングレンジ部隊、支援感謝する。こちらでも増援の全滅を確認した。部下たちには15分の特別休暇をやった、悪いが俺も暫く離れる。なに、ちぎれた手足を繋いでくるだけだ。午後には戻る」
「なんだと?」
「大丈夫なのか!?」
「ハハハ! 騙して悪いがジョークだよ。まだまだケツが青いな若いの」
「無理を言うな」
これが陸軍ジョークってやつか。いやほんとジョークであって欲しいが今はそれどころじゃないな。
「こちらメンヒル5、敵の増援と会敵した。殴り合いなら望むところだ」
「全機、新たな敵機だ。方位210、機数不明」
「ストライダー隊、メンヒル5の防衛を頼む。航空戦力はこちらが当たる」
「了解!」
「あっちこっちに湧いて出やがって。こっちはもうヘトヘトなんだよ……」
「ぼやくなよフーシェン。こういう時はな、スコアを稼ぐチャンスって考えるのさ!」
「フッ、相変わらずだなお前は。全機踏ん張るんだ! これが戦争の命運を握る重要な任務であることを思い出せ!」
「ウィルコ!」
弾も燃料もまだまだある。飛べるうちは負けはしないぞエルジアめ。
しかしフーシェンが言うのも無理はない。作戦開始からあっちこっちを行ったり来たり。
さっきなんて特攻野郎が出て来てあわよくばだった。
戦闘の恐ろしいところは、短時間だというのに体感は長時間に感じてしまうことだ。
一部除いてお世辞にも硬いと言えない戦闘機は一発の傷が致命傷になるくらいデリケート。
パイロット常に極限状態の中で死線をくぐり抜ける。余程飛ぶことが好き過ぎる狂人じゃない限り一分一秒が精神をすり切りにかかるのだ。
だがそれは敵も同じ。エルジアの戦力も限りがある。いつかそれが切れる時が来るはずだ。
だが敵の司令官はそうとう意地が悪いらしい。
『目標地点を雲間より視認した 爆撃用意』
「また爆撃機だ! 高高度! 高度8000! 方位150!」
「総力戦か! 敵も必死だ!」
「うわほんとだ、たっか」
澄み渡る青空、千切れ飛ぶ雲に紛れてTu-95が3機ほど。
メンヒル5にも大量に来てるし距離も近い。どっちも放置出来ない。
「爆撃機を俺がやる。地上部隊を頼むぞ!」
「ウィルコ」
操縦桿を思いっきし引き垂直上昇。
迫るGに耐えながらグングンと高度計が加速する。
「こりゃ驚いた。敵ん中にナイトホークがいるぞ」
「F-117Aか。これまた珍しいのを投入してきたな」
「レア物だな。あいつは俺が頂くぜ!」
サイクロプスの方に出て来たナイトホークはなかなか見ることのないステルス攻撃機。
今の御時世でそんなプレミアムな物が出てくるとは。エルジアも物持ちが良いというか。
「戦力の逐次投入は愚策だと思っていたが、今はその厄介さが身に染みているよ」
「敵の必死さが伝わってくるぜ。向こうにとってもこの作戦は重要なんだ」
「ストーンヘンジの脅威はやっこさんが一番分かってるってことさ。かつての超兵器が自分たちの鼻先に当てられてはな」
メビウス1に破壊されるまでストーンヘンジによる絶対制空権で覇権を握っていたエルジア。
防衛と攻勢が入れ替わるこの作戦はまるで鏡の裏表のようだ。
ストーンヘンジもアーセナルバードも、最初は平和利用の為の産物であったのに。ほんと人間というのはどうしようもない。
高度8000到達。目の前に爆撃機群、そして護衛のミラージュ 2000-5が1機。
Gで身体は軋むが待てるほど甘くない。殿を務めていたミラージュが爆撃機を守らんと突貫してきた。
「馬鹿正直に向かって来て!」
敵の機銃を下降して躱しそのままコブラ機動。機体を上に向け、すれ違いざま機銃で下から食い破る。
そのまま半クルビット。後方から通り過ぎたTu-95二機にHPAAを一発すつぶち当てる。
まだキレはそこまでだが。あの時のオレンジ野郎と同じ動きは出来るようになってきた。
180度ロールして再加速。敵もダイブして速度を稼いでるが条件が同じ以上逃げられるわけもなく空中分解を果たした。
『これだけの戦力を投入しても、ストーンヘンジを落とせないというのか!?』
『こちらが苦しい時は奴等だって苦しいはずだ。もう一息だ』
「ここからでも煙が見えたぞ! 爆撃機を全てやったのか!?」
「ああ! それも1機でな!」
「そうか例の3本線か! そうなんだろ!?」
「さっきの若いのか! 俺たちおっさんも負けてられねえぜ。撃ち返せぇ!」
元々高まっていた士気にガソリンをぶちこんだメンヒル5の攻勢はズタボロメンタルなエルジア陸軍では相手にならず。
ある車両は砲弾に、またはミサイルに木っ端微塵となり残ったのはスクラップの山のみとなった。
『おかしい、攻めているのはこちらのはずだ。なのになんだこのプレッシャーは』
『敵も半減している! もう一働きするんだ!』
「こちらメンヒル7。敵の増援だ、波状攻撃を仕掛けてきた。かなりの大部隊だ。敵陸戦部隊の本命と思われる」
「全機、また来たぞ! 爆撃機とその護衛機を確認 包囲170。更に敵航空機増援、Su-34 フルバックの編隊が接近! 方位200!」
「くそ! 撃ち落としに行きてえが、下の連中だって死にかけてんだ! 選べってのか!」
フーシェンがヤケになるのも無理はない。
陸戦部隊の気概は目を見張る物があるが、それでも無視できない損害が見える。
更に高速爆撃機と戦闘機増援、更に陸戦大部隊が一気に出現。これがゲームなら何だこのクソゲー! という鬼畜仕様だ。
「ワイズマン! 爆撃機は俺とランツァで充分だ! 行けるなランツァ!!」
「おうよ! まったく問題ねぇ!」
「了解した。ストライダー2、4はメンヒル7の援護に。サイクロプス隊はフルバックを叩くぞ!」
「折れるなよフーシェン! 敵はこれで勝ちを確信してやがるんだ! 油断して伸び切った鼻へし折ってやろうぜ!」
「カウント……ああそうだな! 選ぶ必要なんかねえ! まとめて総取りしてやる!!」
まだまだ終わらないぞ。上官は揃って能無しなオーシアだが、下っ端はそうじゃないことを教えてやる!!
ーーー◇ーーー
『こちらウォルラス。ただいま現着した! おいおい、まだストーンヘンジは落とせてないのかよ! ベテランネームドどもは何処行ったよ!』
上面が黒、下面がミントグリーンに塗装された4機編隊のSu-34ネームド部隊のリーダーであるアーノルド・デュランは未だ鎌首を上げているストーンヘンジ4番機見て吠えた。
『フードルとバッフルの部隊は全滅した。敵の航空戦力は渡り鳥部隊だ。3本線のF-15 S/MTDも確認している』
『おいおいおい! フードルはどうか知らんがあの化け物A-10Cのバッフルが落とされたのかよ。半端ねえな3本線』
『現在三方向から攻めている。やれるかウォルラス』
『やってやるさ! アーセナルバードを落とされたら今度こそエルジアは終わりだぜ! 行くぞお前らぁ!』
『ウィルコ!!』
増速するSu-34の編隊をサイクロプスの3機が捕らえた。
「下が派手な彩色してるぜ。ネームドかこいつら!」
「Su-34だとウォルラスか。最近頭角を現している若手だ」
「上等だ! 食い破ってやる!」
『前方にF-15Cが4機! 3本線は居ないようですが』
『例の3本線じゃなくても渡り鳥部隊はスナイダートップを壊滅させた奴等だ! 油断したら死ぬぞ! 気張れよてめぇら!!』
F-15CとSu-34の編隊が交差する。
機動性はF-15Cが優勢だが相手も攻撃機でその機動性はA-10Cとは雲泥の差。重装甲と高機動を両立させた名機は臆せずサイクロプス隊に飛び込んでいく。
『イヤッホゥ!!』
「うおっ! こいつら躊躇いもなく突っ込んで来やがる! 被弾が怖くねえのかよ!」
「肉を切らせて骨を断つって奴か。なら骨ごと砕いてやる!」
ヘッドオンしても果敢に突撃を噛ますウォルラス。多少の被弾を装甲で受けるそのスタイルは戦闘機乗りとしては非常識。
距離をとって充分加速してミサイルをばらまいて突撃。
攻撃機の意味を履き違えているほどの攻撃的機動にサイクロプス隊は食らいつかんと操縦桿を巧みに操っていく。
「こちらストライダー3。これよりメンヒル7の援護に入る」
「こちらストライダー1。爆撃機部隊に接触。Tu-160の編隊だ。最後の最後にこれとは、今回の司令官は結構意地が悪いぞ。そっちは大丈夫そうか?」
「こっちの心配してる暇あったらテメェの心配しとけ」
「ストライダー1! 後方に敵機!」
「あいあい! おら見積もりが甘いって!」
近づいてきた護衛機をなんなく対処したトリガーを尻目にドッグファイトは続く。
ふと、飛びながら状況を観察していたワイズマンが敵の意図に気付いた。
敵は積極的にサイクロプス隊を落とす勢い、と考えていたがどうやら違うらしい。
「成る程。奴等こちらに攻撃すると見せかけて着実にストーンヘンジに近づこうとしている。大振りな動きはそれを悟らせないカモフラージュだろう」
「詰んでるのは爆弾か? 対地ミサイルか? くそっ、トリガーなら見てわかるんだろうけどな!」
「いや流石のトリガーでもそれはありえな、くもないな。飛んでる奴のエンブレムを見れるやつだ。きっと見れるだろう」
あいつ本当に人間か?
新人小隊長が持つ化け物じみた動体視力に今更ながら引くフェンサーとフーシェン。
流石にわからないよと心の中で呟くトリガーだが言っても信じて貰えないだろう
とりあえずその議論は後にしよう。今は着々と距離を詰めていくSu-34の部隊をなんとかしなければならない。
「敵が積極的ではないなら引きずり出すべきだ。全機、攻勢に出るぞ!」
「了解! 先手を撃つぜ!」
カウントがウォルラス隊に向けて4AAMを発射。
更に間隔を開けてフーシェンが4AAMを撃つ。
『そんな破れかぶれが当たるかよ!』
唐突に飛来する多数のミサイルに散開。
飛来した8発のミサイルは空を切り明後日の方向へ。
だが元々それは当てるためのミサイルではない。
「そこだ」
『なにっ!?』
回避運動で減速した1機にワイズマンは機銃掃射。穴だらけになった仲間に気を取られたもう1機を流れるようにミサイルで撃ち落とした。
『ウォルラス3、4! ロスト!』
『なんだ!? 何が起こった!?』
「頭は回るようだが、いかんせん動きが直線的だな。その回避ルートは致命的だ」
ワイズマンは敵の動きの癖を把握して的確なポジションでアタックをかけたのだ。
相手が迂闊な位置取りをしたというのもあるが、それを戦闘中に組み立てて実戦に移すのは並大抵のことではない。
トリガーとは方向性が違うが、ワイズマンも大概である。
「ワイズマンだけ良いかっこさせるかよ!」
「フーシェン、エレメントを組むぞ」
「了解!」
『くそっ! このまま黙ってやられるか!!』
残ったウォルラスが急旋回。誤魔化しはやめてストーンヘンジに向かって進路を取った。
「行かせるかよ!」
息巻くカウントはスロットルを全開でぶっ倒した。
先程のフードルをあと一歩撃ち落とせなかった。トリガーが来なければ危なかったという事実は少なからずカウントに突き刺さっていた。
スペア小隊で手を抜いていたカウントの姿は今や何処にもない。
いま彼の頭にあるのは部隊長であるワイズマン、そして何よりルーキーだったトリガーに負けられないというプライドだった。
元々速度に差があるF-15CとSu-34の距離がドンドン縮まっていく。
ウォルラスはたまらず回避運動。残った僚機もフェンサーとフーシェンに追い立てられで援護は期待できない。
必死に旋回して射線を逸らすウォルラスだが、そこにワイズマンのF-15Cが視界に映る。
一人だけ動きが違う。仲間を撃ち落としたのは奴だと、若手であるウォルラスでもそれは理解できた。
少しでもワイズマンから離れようとするウォルラスだが、追っているカウントから意識を離したのは失策だった。
ロックオンアラートに気付いた時にはもう遅く、ミサイルの破裂音が振動と共に響いた。
「ロングレンジ部隊はトリガーやワイズマンだけじゃねえんだよ!」
『くそぉ! 3本線でもない奴に!!』
追い撃ちの機銃がSu-34のエンジンを食い破り、ウォルラスは空中で爆散した。
「しゃあ! 見たかワイズマン!!」
「ああ見ていたぞ。よくやったサイクロプス2」
「こっちも終わらせたぜ」
見やるとフーシェンが落としたと思われる機体のパラシュートが眼下に見えた。
「メンヒル7の防衛に成功した。みんな良くやってくれたよ」
「こちらストライダー1。爆撃機部隊、並びに護衛機を撃破! キツかったぁ、やっぱTu-160速いわ。ケツの機銃もウザかったし」
「何回も宙返りしては撃ち落としての繰り返しだったな。あれで目が回らないのスゲーよトリガー」
トリガーはあいも変わらず馬鹿な機動をしたらしい。
もうそこらへんは考えても無駄だというのはこの短い間で理解できてしまった。
「なんにせよこれで終わりだよな。流石にまだ来たりは」
「残念ながら増援だ。南西から敵のロケット砲部隊。
北東からヘリボーン部隊が接近中! ストーンヘンジを直接攻撃するつもりだ! 阻止しないと致命傷になるぞ!」
「まだ来るのか!?」
最後の最後にまだ手札を隠していたらしい。
戦力逐次投下作戦は着実に兵士から気力を奪うつもりのようだ。
「ストーンヘンジ! あとどのくらいで終わる!」
「充填率80%。いまならもう撃てるが……」
「いや、仲間の努力を無駄にしないために。100%まで待ちましょう」
「そうね。その間に増設した射撃管制装置の再チェックをして」
「聞いての通りだロングレンジ部隊。こちらも早く射出できるよう尽力する。そのわずかな間だけ、防衛を頼む」
「了解、こっちは任せろ! ワイズマン、ストライダーは合流してヘリをやる!」
「了解した、サイクロプスはロケット砲排除に向かう」
「きっともう少しだ。あと少しで終わる」
「酷い戦いだが、いつか息子に話してやろう」
「よし行くぞ。一気に攻めて来なかったことを後悔させてやれ!!」
「「ウイルコ!!」」
ーーー◇ーーー
サンサルバシオン空域に接近する白い巨影があった。
雲を突き破り出てきたそれは軌道エレベーターの守護鳥の片翼、アーセナルバード・リバティ。
『アーセナルバード、リバティ。ストーンヘンジに向けて飛行中』
『いかんせん足が遅いのは仕方ないか。戦況はどうなっている』
『ストーンヘンジは未だ健在。爆撃機部隊、フードル、バッフル、ウォルラスを含めたネームド部隊は全滅したようです』
それを聞いたアーセナルバードの管制責任者は鼻を鳴らした。
彼はノースオーシア・グランダー・IGからの出向者であり、無人機に対して信頼を超えたある種の感性を持っていた。
『所詮有人機ではそれが限界か。グリトニルはどうなっている』
『まもなく作戦行動に移ると』
『アーセナルバードの到着を急がせろ。奴等の希望を木っ端微塵に砕いてやるのだ』
『了解。しかし宜しいのでしょうか。敵の3本線はあのアルカンジュが仕留めきれず、メビウス1の再来とも噂されているそうですが』
『それが何か問題かね? アーセナルバードは無敵だ。今も昔も、そしてこれからもな』
彼らは疑わない。彼らの技術の集大成。
航空母艦の技術到達点であるアーセナルバードを。
そして今度こそ、ベルカの科学力が世界の覇者となる未来を。
どうも、最近着々と三十路の影響を受けてるブレイブです。
油もののキャパが来てる……。くそぅ。
ミッション12中編。大変ですわ。
もう行動次第で台詞が前後したりするわで。ストーリーの組み立てが大変でごわす。特に台詞が被ってないか確認したりとか。
しかもゲームと違ってストライダーとサイクロプスが分かれて仕事できちゃうからバッフルはA-10Cの増援に組み込んだり。ウォルラスはヘリポーン部隊とは別個で出したりして工夫しました。
ゲームとは少し違う感じになったから結果オーライです。
次回、遂にアーセナルバード・リバティ戦。お楽しみに!
【FLIGHT REZON アサルトレコードNo.14】
ネームド:バッフル
機種:A-10C サンダーボルトⅡ
カラー:緑基調の斑点迷彩
派閥: 急進派
パイロット:キース・ベッカー
フードルと同じベテランパイロット。
初期からA-10シリーズを乗りこなし、A-10で数多くのパイロットを葬ってきた強者。
愛機の鈍重さを理解し、判断の早さを持ってトリガーとドッグファイトを繰り広げ。トリガーの奇策により撃墜された。
ちなみに作中では装甲を盛ったA-10Cが出ましたが。普通はA-10Cでも装甲なんか盛れないし盛ったら飛べないとのこと。
恐らくベルカテクノロジーかもしれんが詳細は作者にすら分からない。
【FLIGHT REZON アサルトレコードNo.15】
ネームド: ウォルラス
機種: Su-34 フルバック
カラー: 上面黒、下面がミントグリーン
派閥:急進派
パイロット∶アーノルド・デュラン
エルシアの若手の中では一際戦果を上げてるネームド。
逐次投入作戦において後詰を担当し、サイクロプス隊と交戦。
速度に振ったチューンナップを施されており。装甲頼りの突貫攻撃、に偽装した戦法でストーンヘンジとの彼我の距離を縮めようとしたが賢人ワイズマンに見破られて失敗。
隊長機であるアーノルドはカウントに撃墜された。
特殊兵装はSFFSを装備。流石に空対空爆撃をするほどぶっとんではなかった模様。