エースコンバット7 FLIGHT REZON   作:ブレイブ(オルコッ党所属)

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STAGE49【Dragon Bless(人間の意地)

 

 

「こちらストライダー。ヘリ部隊の掃討完了!」

「こちらでも確認した。奴らがストーンヘンジ内に入り込んだら万事休すだったからな、よくやったストライダー隊!」

「ああ。しかしヘリ部隊だけで突貫とは。命知らずにも程があるぞ」

「敵もこちらがここまでやるとは思わなかったのだろう」

 

 逃げ帰れば良かったものを、とは言えないか。

 敵はストーンヘンジが一発しか撃てないことを知らないだろう。ストーンヘンジを破壊する為ならなりふり構ってられないということかもしれん。

 

「サイクロプス隊がロケット砲部隊を壊滅させた。さすがだ!」

「ちょろいもんだぜ。しかしあそこから狙うつもりだったのか。大した腕だぜ」

「全部隊に通達。私のプログラムに必要な時間はかなり稼げた。もうまもなくストーンヘンジ発射の準備が整うわ」

「やっとか。じらしてくれる」

 

 まったくだ。だがこれであのにっくき怪鳥の翼をへし折れる。

 そしたら次は本土決戦だ。

 

「ん? なんだちょっと待ってくれ」

「どうしたロングキャスター?」

「レーダーに感あり! この巨大な反応は……アーセナルバードだ」

「何だって!?」

 

 何処だ、何処から! 

 あたりを見渡すとそれは目に入ってきた。

 

 何処までも広がる青い空の真ん中。雲の白とは違う。真っ平らに広がった余りにも大きすぎる巨翼。

 

 チョピンブルグと軌道エレベーターでの記憶が頭に浮かぶ。

 ミサイルと共に来た怪物。夥しいMQ-101。APSで揺さぶられた機体。全滅したスケルトン隊。ガーゴイル隊をエスコートした撤退戦。

 ハーリング元大統領の先に出たMQ-101。そして守りきれずに被弾したオスプレイ。

 

 数カ月越しに、アーセナルバードが俺の眼前に現れた。

 

「目視で確認! やはりアーセナルバードだ!」

「来やがったぜ! トリガー。お前の悪い予感が当たったな」

「ああ、当たってほしくなかったがな!!」

 

 アーセナルバードが即座にMQ-101を投下した。大量の無人機がアクティブになり。イナゴの大群のように向かって来た! 

 

「アーセナルバードより大量のUAV発進を確認! まずい、ストーンヘンジを防衛しろ!」

「全機、数に翻弄されるなよ!」

「ストライダー1エンゲージ! 全機、奴等を食い破れ!!」

「サラマンダー隊も続くぞ。ロングレンジ部隊ばかり働かせるな!」

 

 サラマンダー隊のF/A-18F含めた12機の戦闘機がUAVの群れに向かって上昇。

 今だけ自分の目の良さに腹が立つ。出てきているのは40機ぐらいの編隊。その圧がありありと見える光景に舌を打った。

 

 嫌な汗がパイロットに流れる中、マコニー少佐の冷静な声が響く。

 

「的が近いほど不確定要素は減る。発射までの残り時間は!?」

「発射まで60秒!」

「聞こえた? 守りきって」

「了解した少佐。全機、人間の底力をブリキ玩具に見せてやれ!! FOX2!!」

「「FOX2!」」

「「FOX3!!」」

 

 ミサイル、そして4AAMが出す白い白煙がMQ-101の大群に殺到。数機が正面衝突し砕け散る。

 だが正に焼け石に水、相当数のUAVが俺たちと交差して背後を通過。

 直ぐ様全機ハイGターンでUAVを追う。

 

「こっちを見やがれぇっ!!」

 

 ある敵は機銃で穴だらけに、ある敵はミサイルで木っ端微塵にし。全機が壮絶なドッグファイトにもつれ込む。

 幸運なことにUAVは俺たちを敵とみなし、ストーンヘンジに向かわずにこっちに向かって来た。

 

 何故ストーンヘンジに直行しない? 

 その行動にかすかな何かが頭を過ぎるのも束の間、ミニステルス機なフォルムのMQ-101の背後に機銃をぶち当てる。

 

「射撃管制システムの再チェックも完了。レーダーによる誤差修正も終了している」

「おかしいな。ジョゼフィンからの返事はないのか? 彼女は測量者に居るはずだが」

「安全装置解除!」

「電圧確認!」

「電圧安定!」

「発射まで残り30秒!」

 

 あと少し、あと少しだ! 

 あと少し守りきれば勝てる!! 

 今度こそ守りきる! そしてあの怪鳥を落とす! 

 そうすれば戦争は早く終わる。それこそが亡きビンセント・ハーリングに捧げる唯一の恩返しだ!! 

 

「行けよオラァァ!!」

 

 空対空ミサイルを出し惜しむことなく。なおかつ無駄玉を使わず1機ずつ確実に、そして速く撃ち落とす。

 機銃を当てるチャンスがあれば機銃で穴だらけにする。

 1機、また1機とスクラップに変え。UAVはサンサルバシオン砂漠の土になる。

 

「トリガー! いったい何機落としてやがる!」

「数えてない! もう1機ぃ!」

「俺も負けるかっ!」

 

 やっぱりこいつらは人形だ。行動パターンには必ず法則がある! 

 ファッキンゼイ護衛の時に出てきたオレンジの偽物に比べればお粗末だ。

 

 あいも変わらず奴等はストーンヘンジではなく俺たちパイロットを排除しようとしてる。

 考えられることは色々あるが後回し! 

 今は1機でも多く叩き潰せ!! 

 

「弾頭の飛翔体、装填完了!」

「エネルギー充填率、100%!」

「残り15秒!」

「具体制御は!」

「行けます少佐!」

「最終カウントダウンに移行!!」

「了解! 最終カウントダウンを開始します。テン、ナイン、エイト、セブン、シックス、ファイブ、フォー、スリー、ツー……」

 

 今正にストーンヘンジが撃たれる! 

 今か今かと待っていたパイロット達は……揃って小首を傾げた。

 カウントダウンが止まった? 

 

「ダメだ、カウントダウン中止! 目標消失!」

「消失!? 野郎は悠々と飛んでやがるぞ!? トリガー!」

「見えてる! 蜃気楼の幻でもない、奴は確かにあそこに居る!!」

 

 今も空を泳ぐように飛ぶアーセナルバードは確かにそこにあった。

 肉眼でははっきりと見える。だが、それは肉眼だからこそ認識出来ていた。

 

 俺達の知らないところで、ストーンヘンジの目を潰していた者が居たのだ。

 

『こちらグリトニル。ターゲットの排除完了。間に合ったようだな』

 

 グリトニル。エルジア軍の工作員。

 ロングレンジ部隊が空で大立ち回りをしている間、影で粛々と任務を完了していた。

 

『しかしオーシア軍め、兵器の測量に民間人など使いやがって。今回も汚れ仕事になってしまいましたね』

『これが我々の仕事だ。撤退する』

 

 溜飲を漏らしつつグリトニルが誰にも悟られず戦場を後にする。

 彼らが抹殺したのは、ストーンヘンジの重要機関だ。

 

「測量データの更新止まっています! 観測員、応答なし!」

「測量車か!」

「おいどういうことだ!」

「あの車両はいわばストーンヘンジの目よ。目がなければ目標を狙い撃つ事はできない。そこを狙われるとは……残念だわ」

「打つ手はないのか!?」

 

 カウントの質問にマコニー少佐は答えることが出来ない。

 くそっ! ここまで悪い予感が当たらなくても良いだろうに!! 

 

 最強の武器は潰えた。ストーンヘンジでアーセナルバードを落とせない。

 あるとすれば戦闘機の力だけでアーセナルバードを落とすこと。

 不可能。その現実が全員にのしかかった。

 

 だがそれでも諦めない男がいた。

 

「少佐、諦めるな。センサーはまだ残ってる。世界最古のセンサー……目ん玉がね」

「どうするつもりなんだ!?」

「まさか人力で狙撃するのか!?」

 

 アーセナルバードはゆっくり飛んでるように見えて早い。

 それを人力で偏差射撃を行おうとするなど、神業の如き技量がなければ不可能だ。

 

「信頼性が低すぎるわ。でも……」

「悪くない」

「おもしれぇ」

「まさにジャイアント・キリングだ」

「派手だな。最高に派手だぜ!」

「無理ですよ少佐! 針の穴に糸を通すなんてもんじゃない!」

「これ以上は無理です! 現実的じゃないですよ!」

「このままでは作戦の続行は不可能です。何か代案を」

「ええいもどかしい!!」

 

 バン! 通信越しに机を叩く音が響き、通信が静まり返る。

 叩いたのは勿論、あの女傑だ。

 

「全員傾注! 作戦を変更し、直接照準射撃でアーセナルバードを撃ち堕とす!! 中央のプロペラを攻撃して。それが破壊できればアーセナルバードは速度を落とすわ!!」

 

 オーライ! そう来なくちゃなぁ!! 

 

 まさに燃える展開だ。これ以上ない程に! 

 デジタルではなくアナログで。人の力だけでアーセナルバードを落とす。エルジアの無人機至上主義者にとって、もっとも屈辱的で痛快な一撃だ!! 

 

「サイクロプス1、ストライダー1。隊長機2機でプロペラを攻撃しろ。それ以外の者でストーンヘンジを守る」

「ウィルコ、イェーガー。そっちの指揮を頼む!」

「了解した」

 

 みんなに後を託し、俺とワイズマンは機体をひるがえしてアーセナルバードに向かって急上昇。

 こちらの動きを察知したのが、アーセナルバードが残りのMQ-101を投下した。

 

「トリガーとワイズマンだけじゃ荷が重い。俺もプロペラをやる!」

「こっのでしゃばりが! 足を引っ張んじゃねえ!」

「2機だけでやるなんて無茶だろうが!」

「カウント。UAVからの防衛には戦えるやつが必要だ。頼んだぞ」

 

 プライドの高いカウントだが。二人の力量を信用してないわけじゃない。

 手柄を立てたいという欲はある。だがそれ以上に相手が強大なことを理解できないほど馬鹿ではない。

 ワイズマンに託されたとはいえ、それでも何処かふんぎりがつけなかった。

 

「ロングキャスター! 俺が落としたUAVの数は!」

「トリガー?」

「いま現在トリガーが落としたのはUAVは13機だ」

「聞いたなカウント! 俺のスコアを超えてみろ! 出来ねえのか腰抜け!!」

「てめっ、言いやがったなこの野郎! 仕方ねえ! トリガー、ワイズマン。しくじるんじゃねえぞ!!」

「任せろ!」

「了解だ」

「アーセナルバード、APSの準備動作に入った。発動予測時間は2分! 頼むぞ二人とも!」

 

 たった2分! とても現実的じゃない! 

 だが俺たちには頼れる仲間がいる。欠片も負ける気がしない!! 

 

 最高速度でアーセナルバードに直進。

 こちらの意図を察知したのか、アーセナルバードを取り巻くMQ-101の動きが殺気立っていた。

 

「トリガー。高火力のミサイルを持っているのはお前だ。周りの雑魚は俺が引き付ける」

「了解した! そっちも無茶しないでくれよ!」

 

 この時の為に積んできたHPAA。ミサイルの知名度トップクラスのAIM-9X サイドワインダー。

 この高火力をあの化け物鳥のケツにぶちかましてやる!! 

 

「信じられない。ストーンヘンジにも射表なんてものが備え付けられているの?」

「先人の知恵に助けられましたね、これさえあれば百人力ですよ」

 

 射表とは火砲の弾道予測を計算する為の表。

 万が一億が一、人類を救うために作られたストーンヘンジにトラブルがあった時の為の万全の備えがそこにあった。

 

「どけよオラァ!」

「FOX2!」

 

 群がる小鳥をミサイルと機銃で散らし、アーセナルバードを眼前に捕らえる。

 

 久方ぶりだなアーセナルバード・リバティ。あの時の雪辱をいま晴らしてやる!! 

 

「FOX3!!」

 

 発射された2発のHPAAが右メインプロペラに着弾! おまけでミサイルをぶち込んだがそれは盾になったUAVに阻まれた。

 

「こんな作戦無茶だ!」

「ああ、無茶な大馬鹿野郎しか。アーセナルバードは落とせないんだ! あの3本線のようにな!」

「鬱陶しいんだよ蝿が! 落ちやがれ!」

「スカルド! チェックシックス!」

「了解!」

「アーセナルバードの真下に居る兵士にUTM座標を報告させて。距離を割り出す」

「了解!」

「こちらメンヒル、了解した! GPS更新、座標検出、送れ!」

「サイクロプス3! ミサイルだ!」

「やられた! 駄目だ、脱出する!」

 

 フェンサーのF-15Cが被弾した。

 見たところ低高度から脱出したみたいだが。

 

「ロングキャスター、救助部隊を要請してくれ。無理な態勢だった、負傷しているだろう」

「了解した!」

「どけどけどけぇ!!」

 

 阻むUAVにミサイル、機銃で細切れにし。空いた隙間に差し込むようにHPAAをぶち込んだ。

 クソがッ、一発防がれた! 

 

 ワイズマンも4AAMとミサイルでUAVを散らしてくれるおかげで後方の危険度は下がってるがストーンヘンジに向かっていた一部も戻ってきて如何せん数が多い! 

 

「こちらサラマンダー2、被弾した! 駄目だ脱出する!」

「すまない、あとは頼む!」

「サラマンダー2、3撃墜! APS発動まで60秒だ、急げ2人とも!」

「もう少し! もう少しだ!!」

 

 メインプロペラをロックオンし続ければ嫌でも撃墜数が増える。

 時折宙返りして敵をやり過ごし……そこぉ!! 

 

 HPAAを一発ずつメインプロペラにぶち込み、片方が煙を上げて止まった。

 

「アーセナルバードのメインプロペラ1基の停止を確認! この調子で続けるんだ!」

「今のでHPAA撃ちきった! あ、くそほんとうっとおしいな蝿鳥!!」

「FOX3! こっちも特殊兵装を撃ちきった!」

 

 素のミサイルをぶち込むがまだ壊れない。

 どんな装甲材なんだよ! バッフルにもこれ使われてたんじゃないか!? 

 

「射表から割り出した砲仰角に風力、それにコリオリ力も計算に入れたほうが良いんじゃない?」

「こっちからはオーシア軍旗が見えます。風は弱い、あとは勘でなんとかなります」

「あなたは何時だって落ち着いてるわね。少し羨ましいわ」

「相方が速い人なのでね。自分が帳尻を合わせないとって奴ですよ」

 

 確実にダメージを与えているがもう時間がない。

 アーセナルバードのAPSのハイロゥも徐々に強く、そして広がってきている。

 

 ミサイルも残り2発。確実に撃ち込まなければ。

 

「フーシェン! ミサイルだ!」

「躱して、ぐっ!」

「サイクロプス4被弾! 大丈夫か!?」

「……問題ない、まだやれる。これ以上味方が減ったらまずいからな」

「ダメだ。みんなそう言って無理をして死ぬ。基地に戻れフーシェン」

「……ウィルコ」

「お前の分も活躍してやるよ。先に帰ってな」

「フーシェン、敵に見つかったら無理せずベイルアウトしろよ。ミスターXあたりが来たら不味いからな」

「それは怖いな。すまない、あとは頼む!」

 

 UAVに捕まらないように低空飛行で離脱するフーシェン。

 このシチュエーションはあの時を思い出して胸が締め付けられる。

 

 だがあの時の未熟な俺じゃない! 

 仲間を信じて、怪物を討ち取れ!! 

 

「トリガー! チェックシックス!」

「見えてる! うぉらぁぁぁーー!!」

 

 フレア発射、そして低速からの小規模宙返り。

 目の前には回るプロペラ、そしてルートが出来ていた。

 だがまだ足りない。スロットルMAX! プロペラにぶつかる勢いで距離を詰め、UAVの入る隙間を物理的に消した。

 

「食らってくたばれリバティ! ブラウニーの手向けだぁっ!!」

 

 ミサイルを置くように発射、直ぐ様急上昇。

 ほぼゼロ距離のミサイルは寸分違わずメインプロペラに命中。回り続けていたプロペラを殺した。

 

「よし! ストライダー1がプロペラを片付けた! アーセナルバードの速度低下!!」

「いよっしゃあ!!」

「フッ。お前ならやると思ったぜトリガー」

「こちらは仕事を済ませた! ストーンヘンジ、やってくれ!!」

「了解! エネルギー充填率100%!!」

「APSが展開される! 離れろ2人とも!」

「「了解!」」

 

 アーセナルバードが電磁バリアの揺り籠を展開。これでアーセナルバードに手出しが出来なくなった。

 ストーンヘンジがうねりを上げる。

 アーセナルバードは今更ストーンヘンジが脅威と思ったのか、それともそれを操るものが慌てて新しい指示を飛ばしたのか。

 UAVは俺たちを無視してストーンヘンジに向かっていく。

 

 だが遅い。ノロマ過ぎる! 

 

「ストーンヘンジ、最終カウントダウン! 10、9、8、7、6、5、4……」

「仰角修正……!」

「3、2、1。発射! 当たれぇっ!!!!」

 

 マコニー少佐の言霊と共にストーンヘンジが放たれた。

 

 コンマ秒の仰角修正ののち、電磁加速と炸薬で撃ち出された対隕石用徹甲榴弾は可視化する程のソニックブームを発しながら寸分違わずアーセナルバードのど真ん中に着弾。

 

 絶対無敵と言われたバリアをシャボン玉のように突き破り。ユリシーズすら砕いたそれはアーセナルバードを見事に真っ二つにし。盛大な花火をぶち上げた! 

 

「イィヤッホォォォォーー!!」

「やったぜえ!」

「よぉぉし!!」

「foooooo!!」

 

 2つに分かれたアーセナルバードが地面に落着し更に盛大な爆発と爆音が響くと同時に全域から一斉に歓声が上がった! 

 

 ついに。ついにアーセナルバードが地に落ちたのだ。

 誰でもない。人間の力によって! 

 最先端の技術の結晶を撃ち砕いたのだ! 

 

 皆が歓喜に湧き上がる。誰もが勝利を喜び。ジャイアントキリングを成し遂げた瞬間を見届けた。

 

 だがそんな時、こういう時一緒に盛り上げてくれそうなロングキャスターの低い美声に喝采は遮られた。

 

「こちらロングキャスター。アーセナルバードの完全破壊を確認。みんな良くやってくれた……だが敵は俺たちをただで帰す気はないようだ。方位270より5つの機影がマッハ2で接近中! 機体は……Su-37!」

「Su-37だって?」

「Su-37の編隊がマッハ2で? おいおい、聞いたことあるぞこのシチュエーション」

 

 

 

 ーーー◇ーーー

 

 

 

『こちらサーペント隊、まもなく戦闘空域に到着する』

『隊長! アーセナルバードが落とされたようです!』

『まさかストーンヘンジを奴らが使ってくるとは!』

『所詮無人機では人には勝てん。最後に物を言うのは魂を乗せた戦闘機だ。各機、ターゲットはあのミハイ教官が落とせなかった相手だ。決して油断はするな』

『了解! ここで奴を落としましょう! イエロー7!』

『サーペント4。私のことはサーペント1と呼べ。何度も言っているだろう』

 

 溜め息を吐いた隊長機は自身の機体の主翼に目をやった。

 海洋迷彩のSu-37の部隊。だが隊長機である彼の機体にだけ主翼が黄色に塗装されていた。

 

『全機、オープンコンバット。奴を第二のリボン付きにさせるな』

『『ウィルコ!!』』

 

 黄色の亡霊が牙を向く。

 かつての敵の幻影を目に映しながら。

 

 

 

 ーーー◇ーーー

 

 

 

「来たぞ!」

「全機散開!!」

 

 Su-37の編隊が戦場を突っ切り、俺の方に向かって来た。

 全員で。

 

『3本線のF-15 S/MTDを確認。1機で戦うな。5機でやる』

『ウィルコ!』

「おっとぉ?」

 

 全速で離脱を試みるが。敵編隊は鶴翼の形で包囲してきた。

 完全に包囲される前にインメルマンターンでやり過ごそうとしたがそれを読んだのか中心の1機がヘッドオンで対応してきた。

 

『FOX3』

「なろ!」

 

 Su-37がミサイル2発と特殊兵装2発を同時発射。

 インメルマンの耐性のまま180度ロールせずそのまま背面急降下でやり過ごす。

 通常のミサイルより遅かったからHPAAか? だがそれよりも。

 

「こいつら、俺たちを無視している。奴らの狙いはトリガーか!」

「アーセナルバードの救援。というよりはアーセナルバードで疲弊したトリガーを狙うって魂胆か」

「色付きSu-37の編隊。こいつら現エルジアのトップエース部隊のサーペントだ!」

「エルジアも本腰入れてトリガーを狙いに来たってのか!」

 

 熱烈過ぎるなぁ! 俺はメビウス1じゃねえぞ! 

 まだ飛び続けて半年も満たねえルーキーなんだがなぁ! 

 オーシアに忙殺されたウォードッグ隊の気持ちが理解できる! 

 

「トリガー、残弾は」

「ミサイル、HPAA共に0。フレアは1。機銃は150ちょっと! もうほぼ空っけつ!」

「全機、トリガーを援護するぞ! トリガー、奴らを釣り上げろ。出来るか?」

「了解だ」

『全機、背後に気をつけろ。敵がこちらの意図に気付いた』

 

 サーペント隊隊長は冷静さを崩さずに部下を率いて死神の再来を狩りに来る。

 特に隊長機が付かず離れずきっちりマークしてあえる。

 ……しかも極めつけに嫌な色をこさえてやがる! 

 

「見間違いであってほしいぜ。俺を追ってる隊長機。そいつだけ翼端が黄色だ!」

「なんだって!?」

「まさか、黄色中隊の生き残りだとでも!?」

「どうせパフォーマンスだ! 振り回されるんじゃねえぞトリガー!」

 

 わかっているがな。こいつは今まで戦ったネームドと比べてもダンチだ。

 オレンジ野郎と比べたら流石に下だが。こいつは別種で強いしテクニカルだ! 

 

 途端に多数のアラート表示。僚機のSu-37が一斉にミサイルと4AAMで部隊ごと撃ち取りに来た。

 

「危ねっ! こっちを狙ったのか!?」

「いや。こいつらは俺たちを散らしてトリガーを孤立させるつもりだ。そして隊長機がトドメを刺しに行く算段なのだろう」

「ワイズマンの言う通りだ! フレアフレア!!」

 

 最後のフレアを使ってしまった! 

 くそっ! お前らこんなルーキーを袋叩きして悲しくならねえのか! お前らやってること灰色の男たちと同じだぞバーカ!! 

 と胸中で罵詈雑言出来るぐらいはまだ余裕はあるが長くは保つまい。

 既に疲労もピーク、弾薬どころか燃料も心許なくなってくる。

 

 ワイズマンたちも背後を取ろうとしてるが本当にこいつら賢いうえに徹底的に俺を囲って撃ち落とす気で居る。

 一瞬だけベイルアウトを考えてしまう思考を振り払い。俺は覚悟を決めた。

 ぶっちゃけやりたくない。だがこの包囲を抜いて活路を開く方法が浮かんじまった。

 

「いいぜ、地の果てまでついてくる気なら来いよ、ついて来れるならなぁ!!」

 

 スロットルとペダルを踏みパワーダイブ。向かう先はマコニー少佐達がいるストーンヘンジとは逆側にあるストーンヘンジ7番機。

 

『全機逃がすな。射程に入り次第撃て』

『ウィルコ!』

『逃さねえぞ3本線!』

「くぅぅ。みんな、頼むぞ!!」

「トリガーいったい何を……する気か分かっちまった自分が憎い」

「ああ、俺もだ……」

「馬鹿だ。あいつほんと大馬鹿野郎だ」

 

 避ける素振りもなくただ直進。このまま真っすぐ飛べば目の前のストーンヘンジにぶつかるだろう。

 サーペント隊も何をする気か分からない。だがやることは変わらないと。ロックオンが重なる瞬間を待つ。

 

「…………ここっ!」

 

 ゆっくりとブレーキ。速度がぐっと下がり、直ぐ様ロックオン警告のアラートが鳴った。

 5方向からミサイルが発射され、真っすぐ俺に集約される。

 

「いっけぇぇっ!」

 

 背後にミサイルが迫る、避けれる距離ではない。

 俺は速度1500まで下げた状態で───ストーンヘンジ7番機の僅かな隙間をくぐった。

 

『『はっ!?』』

「「FOX2!!」」

「「FOX3!!」」

 

 十数本のミサイルが全て破損したストーンヘンジ7番機に命中。爆炎がストーンヘンジを包む中。ロングレンジとサラマンダー2機はサーペントに向けて一斉にミサイルを発射した。

 

『ブレイク、ブレイク!』

 

 今度は自分たちにミサイルが降りかかったサーペント隊はフレアを放出して散開した。

 3本線の予想外過ぎる行為に虚を突かれ、初めて彼らはフォーメーションを解いた。

 

 狙い通り。その隙は逃さない。

 ミサイルが全て消えた瞬間に直上に急上昇、からのインメルマンターン。

 ワイズマンたちのミサイルであぶれた1機に向かって急接近。

 敵のパイロットと目があった。目をひん剥いたそいつは慌ててフレアを焚きながら回避行動を取るが動揺したのかその動きは鈍い。

 

 軸を合わせ、少ない機銃の1発も無駄にせんと狙いを定め……撃つ!! 

 高速で減る機銃残弾カウントを視野に、曳光弾と共に放たれた弾丸は迷うことなくその機体に撃ち込まれた。

 

『嘘だろ! なんなんだよこい……』

『サーペント4!』

 

 脱出する暇もなくサーペント隊4番機が花火となった。

 爆散した機体を尻目に俺は全力でサーペント隊から離れ、味方の後方に向かう。

 今ので正真正銘、残弾ゼロだ。

 

『おい、誰かサーペント4の脱出を確認できたか!?』

『あいつ狂ってやがる! なんであんな小さい隙間通ろうなんて思うんだよ!』

『サーペント5、後ろを取られているぞ!』

『いつの間に!』

 

 動きが鈍った5番機を見逃さずワイズマンが突き崩していく。

 まだ数回しか飛んでいないが。ワイズマンは相手の機敏を感じ取るのが上手い。彼の前で弱みを見せれば、たちまち目をつけられる。

 そしてワイズマンが狙えば他の僚機もそれを察知して追い詰める。

 

『サーペント5振り切れ。今援護に』

「そうはさせん」

「てめぇは俺が相手だ!」

『くっ』

 

 救援に向かおうとした黄色の7はイェーガーとカウントにインターセプトされた。

 サーペント隊の僚機も同様に防がれる。

 そして均衡を崩された相手をワイズマンが時間をかける道理もなく。

 

「FOX2!」

『そんな、我々がこうも簡単に!』

『喋る暇があったら脱出しろサーペント5』

『りょ、了解!』

 

 5番機がベイルアウト。

 だがまだ黄色を含めた3機がまだ飛んでいる。

 

 もう一度囮をするべきか。

 

『2、3。狼狽えるな。3本線さえ落とせれば我々の勝ちだ。このまま一気に』

『こちらHQ。サーペント部隊、ただちに撤退せよ』

『……ネガティブ。いま奴を落とさなければ大陸戦争の二の舞だぞ』

『アーセナルバードが1機を落とされた。故国防衛の要である君たちまで落とされてはエルジアの士気は大きく低下する。アルカンジュの調整も目処が立っている。ニューアローズ基地の賢人ワイズマンも健在だ』

『しかし司令官』

『わかってくれフォークナー大佐。黄色中隊の生き残りである君まで死なせるわけにはいかんのだ』

『……………………了解した。サーペント小隊、帰投するぞ』

 

 サーペント隊が大きく弧を描いて戦闘空域を離れていく。

 行ってくれた。それだけ奴等はこの場において最大の驚異だった。

 

「今度こそ、本当に終わったのか?」

「全機に通達、サーペント部隊の撤退を確認。更なる敵増援の気配もない。我々の完全勝利だ!」

 

 ロングキャスターの声に全員が湧きに湧き上がった。

 歓声を上げるもの。泣きながら笑うもの。感極まって喋ることすら出来ないもの。みんな各々持てる感情を総動員して作戦の成功に声を上げた。

 

「作戦完了を宣言する。今回のアーセナルバード破壊のMVPはレーマン准尉、貴方のおかげね。あらゆるシステムにはマニュアル操作を実装すべきだと思い知ったわ」

「一番の功労者はロングレンジ部隊ですよ。アーセナルバードと渡り合い。あの黄色中隊の再来をも振り切った」

「その通りだ。特に2機の隊長機。まさにオーシアの2つ頭だよ」

「あいつらについていけば勝てる!」

「2つ頭か!!」

 

 なんだか凄い英雄視されてる。

 そうだな。凄いことしちまったんだな、俺たちは……

 

「2つ頭ねえ」

「なんだカウント。拗ねてるのか?」

「いーや。反論の余地もねえなってな。ところで撃墜数はどうなったんだロングキャスター」

「カウントのUAV撃墜数は15機。トリガーは28機だ」

「おいほぼ2倍じゃねえか!! プロペラやったんじゃねえのかよトリガー!」

「いやね。プロペラ破壊しようとしても目の前にUAVが出て盾になるんよ。弾薬ほぼそいつらに吸われたし」

「ワイズマン! ワイズマンはなんぼだ!」

「ワイズマンも15機だ」

「同率じゃん。やったなカウント」

「嬉しくねーー!」

 

 本格的に拗ねてしまったカウントに部隊内で更に笑い声が響いた。

 

「今後は攻守が入れ替わるだろう。アーセナルバードが堕ちたことで敵の防衛範囲が狭まるからな」

「その分こっちがパイを奪える」

「パイを全部食べちまうつもりか?」

「上層部の食い意地がはってるんだ。もっともっとと欲しがっている」

「パイね。ベルカ戦争のホフヌングみたいなのはごめんだぞ」

「そこらへんはエドワード副議長たちに託すしかないな。とにかく今はしばし休んでくれ。反撃はここからだ」

 

 アーセナルバードが堕ちた。

 ついに俺達は首都ファーバンティに王手をかけようとしている。

 

 アーセナルバード・リバティ。

 俺を含めたフォートグレイス飛行隊を何度も苦しませた奴が地上に屍を広げている。

 

 流石に褒めてくれよブラウニー。俺、結構頑張ったんだからな。

 

 調子に乗らない。なんて声が聞こえた気がした。

 

「まったく。褒めろって言っただろうが」

 

 そうぼやきながら見るサルサルバシオンの空は何処までも広がる真っ青な空だった。

 

 

 




 久々の2週間投稿に驚きを隠せない。どうもブレイブです。

 ミッション12完了!と思ったらなんちゃって黄色中隊が乱入!!突然の完全オリジナル展開に驚いた方も多いでしょう。
 といってもエスコン4のストーンヘンジ攻略のオマージュなんですけどね。
 本来はファーバンティのネームドであるサーペント。本人も元ネタは少尉なのに黄色中隊の生き残りでかつ大佐という
化け物ワープ進化してしまいました。Su-37に乗ってるのが悪いのさ(ΦωΦ)フフフ

 そして今回も隙間をぬってしまったトリガー。
 違うんです!彼は決してスキマニアではないんです!ただ隙間くぐったら相手驚いて隙が出来るよなって考えただけなんです!!
 スキマニア・トリガー・クグロフの明日はどっちだ。
 ではでは。


 
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