エースコンバット7 FLIGHT REZON   作:ブレイブ(オルコッ党所属)

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 エースコンバット30周年。おめでとうございます!!


STAGE50【Magic Spear(槍を放て!)

『私は首都の下町で生まれたから……祖国といって思い出されるのは、私にとっては街の風景。でも人々は色んな環境で暮らしているから、わたしは国民たちが住むあらゆる地方を訪れるの。エルジア王国にはたくさんの地方があって、それぞれにちょっとずつ異なる文化があり………』

 

 テレビの中のローザ・コゼット・ド・エルーゼはプライベートジェットの昇降口前で笑顔で手を振っている。

 彼女が笑えば市民も釣られて笑みを浮かべ、身体が温かくなるような高揚感が湧いてくる。

 

 テレビの中で、自分ではない自分が喋っている。

 

 旧名ローザ・コゼット・ファルシネリだった少女は電気もついてない暗闇の部屋で煌々と光るテレビに頬杖をつきながらただ黙々と見ていた。

 

 彼女はもともと生粋の王家ではない。

 首都ファーバンティの下町にある仕立て屋の娘で。何処にでもいるロージーという愛称がついた学生だった。

 少し違うのは彼女の遠い遠い、またまた遠い祖先が王族だったこと。

 

 先代の王である叔父が事故でなくなり、血族というだけで父親が王様になった。

 仕立て屋から王様なんてとんだ大出世だ。勿論娘であるコゼットも王女の肩書を賜った。

 

 コゼットは自分の国が好きだ。

 ユリシーズや戦争などで国力が乏しくなっても、諦めずに輝き続ける薔薇の王国が好きだった。

 

 だからこそコゼットはローザ・コゼット・ド・エルーゼの役を羽織った。

 自分の笑顔で、言葉で、行動で。みんなが喜ぶ姿を見るのが好きだった。

 

 戦争が起こった。コゼットはエルジアのプロパガンダ放送を行って国民を鼓舞した。

 軍人からオーシアの蛮行を聞いた。そしてエルジアの悲惨な歴史を聞いた。

 

 許せない、これは正当な怒りであり義務だと。コゼットより一回り年上の若手軍将校がコゼットに語りかけるその姿は鬼気迫った物だった。

 

 UAVによるクリーンな戦争。オーシアによる誤爆。台本を与えられ、台本に乗せて自身の憤りを世界に発信したら世界は耳を傾けてくれた。

 戦争に勝てばエルジアは、ユージアは今より豊かになる。

 古き良きかつてのエルジアを、そのあるべき姿を取り戻すのだと。

 

 コゼットは民衆に呼びかけ、励ました。

 みんなコゼット王女を信頼してくれる。コゼット王女を頼りにしてくれる。コゼット王女が居れば安泰だ。

 ローザ・コゼット・ド・エルーゼはエルジアの希望の星だと。

 

「本当に?」

 

 本当にそうなのだろうか。

 そんな疑問が生まれたのは何時からだろうか。

 

 最初は疑いもしなかった。

 エルジアの奇襲により被害は最小限ながら最大の戦果を出し。降伏も時間の問題だと若手将校は言った。

 あなたとアーセナルバード、そしてUAVがあれば憎きオーシアに勝てるのだと。

 

 なのに戦争はまだ続いている。

 開戦から3か月立っても続いている。

 

 そしてアーセナルバードが1機落ちたという。

 無敵と言われたエルジアの守護鳥が落ちた。

 若手将校の人たちは必死に国民に隠しているが。それは徒労に他ならず。国民には伝わるし、オーシアや他の国のニュースでは高々と上がっている。

 

 そして敵のエース。『3本線』と呼ばれたリボンの死神、メビウス1に変わる新たなエルジアの死神が現れたと。

 

 国民は不安を募らせる。

 また戦争に負けたらどうなるのかと。

 戦争を煽ったローザ王女は間違っていたのかという非難の声すらある。

 

(私はいったい何者なの?)

 

 最近考えるようになった疑問。自問自答しても答えが出てこない。

 これから愛するエルジアはどうなるのだろうか。

 

 ローザ・コゼット・ド・エルーゼ王女はこう言う。

 

『エルジアはまだ負けていません。皆様、希望を失ってはいけません。最後に勝利するのは我々エルジアです』

 

 ローザ・コゼット・ファルシネリだった少女は何も言わない。

 

 いや、何も言えなかった……

 

 これからまた演説の打ち合わせだ。

 先は分からない戦争。自分を導く灯火は見えない。

 

 それでも彼女は役を羽織り続ける。

 自分とは違う鏡合わせの。

 

 エルジア王国王女という灯火の役を。

 

 

 

 ーーー◇ーーー

 

 

 

 王女のニュースに頬杖+冷えた目で見る俺は不敬罪だろうか。

 なんてよくわからない思考になる程脱力してるオーシアの2つ頭の片割れになった俺は王女の音声を右から左に受け流しながら缶ジュースを一口。

 

 アーセナルバード・リバティを撃墜してから2週間。俺たちロングレンジ部隊は根城であるニューアローズ基地から一歩も出ずに居た。

 

 要因としては人員と機体に少なからず損害を出たこと。そして補給線が少し滞ってるのだとか。

 

 うちからはフェンサーのF-15Cが全損、フーシェンのは小破。

 無茶な脱出をしたフェンサーは命に別状はないものの負傷しており原状復帰まで時間を有するらしい。当分は8機フル出撃は出来ないと考えていい。

 

 もう一つは俺たちがわざわざ出張る必要のあるミッションがないことだ。

 アーセナルバードの防空権が消えた今オーシア側は破竹の勢いで領土を取り返している。

 ワイズマンが言うには、アーセナルバードの防空圏だったエリアにはUAVの防空網が少ないんだとか。

 アーセナルバードに絶対的信頼を置きすぎた弊害が出た結果、破竹の勢いに乗ったオーシアを止められず防衛圏を続々と縮小している。

 

 ……今のところミスターXオレンジクソ野郎の目撃情報は出回ってこない。

 アーセナルバードを落とされた今奴はいったい何を考えているのだろうか。

 

「ここに居たのかトリガー」

「おはようワイズマン。早いな」

「お互い様だな。ほう、コゼット王女のニュースか」

「そっ。麗しき国民にとっての太陽様。エルジア王国に咲く大輪の薔薇である王女殿下さ」

「そういう割には敬意が足りんな」

「いるかよそんなもん」

 

 どんな理由であれ戦争を扇動する奴を俺は好きにはなれない。

 彼女を慕う国民には悪いし、王女も国民を想ってこそってのは伝わってるけども。

 案外王女も体よく利用されてるのかねぇ。

 

「……なあワイズマン。一つ気になったことがあるんだが。知見を聞いても良いか?」

「俺でよければ聞くぞ」

「ありがとう。話ってのは、ストーンヘンジ防衛戦での無人機たちについてだ」

 

 アーセナルバードが現れた時。奴は40機ぐらいのUAVを投下した。

 正直言ってこれは不味いと思った。

 俺たちが持てる火力を持って迎撃してもすり抜けた数十機がストーンヘンジに向かった。

 奴らが一斉にミサイルを放てばストーンヘンジはひとたまりもない。そう思った。

 

 なのに奴らはストーンヘンジに目もくれず俺たちとドッグファイトを演じた。

 

「成る程。確かにあの時のUAVの動きは不可解だったな」

「フォートグレイスに居た頃おやっさんに無人機にはミスターXの部隊が関わってるという噂があるってのを聞いたんだ。この噂に関しては信憑性があると思う。現にボルゴテレストであった特殊な無人機の動きにはミスターXの動きに酷似していた。

 もし。もしあのクソ野郎が何よりも戦闘機と戦うことを好むなら、それを反映したUAVがストーンヘンジではなく俺たちを優先して攻撃したのも説明がつく。と思ってな」

 

 飽くまでこれまでの無人機の動きを見て立てた仮説だ。

 結構いい線言ってると思うが……

 

「どう思う?」

「ミスターXの思考や行動パターンがUAVにそのまま反映されてるというのは、我々も予測を立てている。だが敢えて別の切り口を出すとすれば、そうだな……敵が工作員を送ってストーンヘンジを機能停止にした。ストーンヘンジにもはや攻撃能力はなく、後は戦闘機部隊を消せば戦闘は終わる。それに加え、ストーンヘンジが稼働出来るとするならばエルジアにとっても武器になるから再利用も考えた」

「だが作戦開始してからは積極的にストーンヘンジ破壊しようとしていたぞ? 特攻する奴まで出る始末だ」

「工作員の作戦成功は飽くまでサブプラン。成功すれば御の字程度に考えていた。ストーンヘンジの射程距離は奴らも知っている。いつでもアーセナルバードを狙い撃ちに出来るストーンヘンジを早めに破壊出来ればそれで良いと思うだろう。ストーンヘンジ発射の直前、急にUAV共がストーンヘンジに反転したのは封じた筈のストーンヘンジが動いてたのを察知し、慌てて命令を更新した……俺の仮説はこんなところだな」

「……確かに」

 

 そっちのほうが信憑性はある。

 ミスターXのプログラムが堅実に反映され当初の作戦を行えなかった。そんな欠陥品をあのベルカ共が作るのか。という話になる。

 

 流石、賢人の名は伊達ではない。

 あまりの説得力に思わず脱力してしまう。

 

「オレンジ野郎に執着し過ぎたかなぁ。ワイズマンの仮説の方があってる気がするよ」

「そうか? 弁舌を披露はしては見たが。俺としてはトリガーの考察の方があってるようにも見えるぞ」

「ワイズマンと違って信憑性ないぞ? 論理的でもない」

「確かにそうかもしれん。だがトリガーの言う通り、UAV。特にMQ-101やボルゴテレストのアンノウンの動きは無人機と思えないほど有機的な面がある。ミスターXの動きを再現するのにこだわり過ぎてそうなった。というのは強ち間違いではないかもしれない。俺はミスターXと翼を交えたトリガーの直感を信じてみたいと思う」

「そう言ってくれるだけ嬉しいよ」

 

 嬉しいけど、こうも見事に返されちゃうとなぁ。

 少し凹むぜぇ……

 

「そんな傷心な小隊長に編隊長が朗報を持ってきてやったぞ」

「ああ。そういえばなんか用あって来たのか。悪いな差し込んじゃって」

「いいさ。有意義な論議が出来たことだしな」

「さようで。それで何を持って来たんだ」

「プレゼントさ。とびっきりのな」 

 

 オーシアの2つ頭のもう一つの片割れであるワイズマンが勿体ぶった感じで向かいに座った。

 ワイズマンの顔を見るに悪いことではなさそうだが……

 

「今回アーセナルバード撃墜を含め数々の功績を残したトリガーに本部から特別な報酬が与えられることとなった」

「それはそれは光栄でありますな。で、内容は?」

「この基地に好きな戦闘機を1機プレゼントだ」

「なんですと?」

「そしてトリガーの乗機にしてもいい」

「なんですって!?」

 

 待て待て待て待てぃ! 

 そんなポーン! とプレゼントされるようなものなのか戦闘機って! 

 あんぐりと口を開ける俺にワイズマンがタブレットを差し出した。画面には様々な戦闘機の写真がある。なにこれ戦闘機図鑑? 

 

「ここにあるリストから好きなものを選んで良い、とエドワード副議長からの言伝だ」

「俺の目の錯覚か? ラインナップにF-22AやYF-23どころかSu-57とかもあるんだけど?」

「勿論費用は本部負担だ。それだけお前か評価されたってことだろうな」 

 

 1機あたり何百万とか何千万の世界じゃないだろ。何億何十億飛ぶのが戦闘機じゃないのか。

 大空戦時代特有のノウハウでそこらへんの費用が大幅削減されたとは言えこれはなんとも、なんとも………

 

「おいおいおい。MTDだけじゃなくF-16XLとかFB-22 ストライクラプターなんて凄いレア物まであるじゃないか。何処に保管してたんだよ……流石にモルガンはないか」

「何処でそれを……ああ、乗った本人から聞いたのか」

 

 ADFX-01 モルガン。

 ラリーが国境なき世界において乗ったベルカ製のワンオフ機。

 ラリーから聞いた話では背部にレーザーポットを装着し。広範囲を攻撃できる散弾ミサイルを懸架。

 そして特殊な電子兵装ECMP。これは敵からのミサイルを機体到達前に自爆させ、機銃のレティクルを狂わせるチートクラスの防御兵装だ。

 唯一の弱点は電磁妨害範囲外のエアインテークへの攻撃のみであり。実質ヘッドオンでしか有効打を与えられない。ふざけてるなぁ。

 まことに恐るべし、ベルカテクノロジー。

 

「考えてみるととんでもない経歴だな」

「そのせいで難癖つけられましたけどね」

「心中察するよ。今すぐ決めなくても良いが、早く決めればその分早く基地に届くぞ」

「実質いま決めてね、じゃないか」

「勿論他の人員に権利を与えても良い。F-15 S/MTDを持ってる以上それも選択肢の一つだ」

「ワイズマンは?」

「俺はずっと乗り慣れたF-15Cで充分さ。他の人員もそう言うんじゃないか。カウントはわからんがな」

 

 確かに完熟訓練の都合上、機体を乗り換えるというのは言葉以上に難しい。先ほどのコスト面同様、全ての戦闘機に共通性のあるユニバーサル規格があるとはいえだ。

 

 思えば戦争が始まって以来様々な機体に乗った。

 F-16C、F-15C、ラファールМ、そして今のF-15 S/MTD。

 テストパイロットですらここまで乗り換えないだろ。しかも開戦から3か月の間に。

 

 うーん。しかしF-15 S/MTDも良い機体だ。

 なによりエイブリルが自信を持って作ってくれた神業の作品。

 これをあっさり手放したら怒られ……怒られ……

 

 ないな、多分。

 いま彼女がここに居たら「そんなこと拘ってないでさっさと貰えるもん貰っとけ大馬鹿野郎」なんて言いそうだ。

 

 そこらへんドライだからなぁ、エイブリルは。

 とりあえずクイーンズカスタムだけは移植してもらおう。

 

 よし、そろそろ真面目に考えるか。

 事実、性能の良い機体が部隊に加わればそれだけ部隊の生存能力と作戦成功率が上がる。

 

 いまのロングレンジ部隊に総合的に足りないものは……対地攻撃能力。

 F-15 S/MTDに搭載できるFAEBは派手な一発は出せるが汎用性がない。F-15Cにも一応無誘導爆弾なら括り付けれるらしいがあまりアテにするのは心許ない。

 対地攻撃能力を持ちつつ、それでいてF-15 S/MTDと同等の空戦能力を持ち、痒いところに手が届く機体……

 

 色んな機体の詳細とにらめっこしてようやくある機体を指差すと、ワイズマンは予想通りみたいな顔で笑った。

 

「なんだよワイズマンその顔は。別にミーハーな理由じゃないぞ。今のロングレンジに足りない要素をだな」

「わかっているとも。我らのナンバー2は若輩ながら思慮深い人物だとな」

 

 くそぅ。父親みたいな顔しやがって。

 まあ実際それもないとは言えないけどもさ。

 

 問題は誰にMTDを譲るかだが……

 

「2人共ここに居たのか」

「司令官。何か御用でしょうか」

「新たなミッションだ。アーセナルバードを落とされて、エルジアは大分焦っているようだぞ」

 

 

 

 ーーー◇ーーー

 

 

 

「これより、ブリーフィングを始める。諸君らの活躍によりアーセナルバードの片翼は撃墜され、エルジアの防空圏を大幅に縮小することが出来た。航空優勢を確保できた地域にはオーシア軍が侵攻し、ユージア大陸の半分以上を解放したとのことだ」

「まるで大陸戦争の再演だな。確かストーンヘンジが落ちたあともこんなんだった」

「詳しいなカウント。従軍してた訳じゃないだろ」

「うちの親が国防議員でな。自分は大したことしてねえのに我が事のように話してたからよく覚えてる」

 

 へえ。良いとことは聞いてたが親が国防議員か。

 なんか前にも親が国防議員だって威張り散らかしてた奴居たな。あいつどうしてんだろ。まあどうでもいいか。

 

「だがこの大攻勢に対し、追い詰められたエルジアはシエラプラタ近郊の弾道ミサイル基地を稼働させようとしている」

「穏やかじゃなくなってきたな」

「現場では72時間前より人、物資の動きが活発化し。既に発射準備は最終段階に入ったという判断が下った」

 

 シエラプラタ基地はダムと併設された軍事基地だ。

 ダムから弾道ミサイルか。まるでアヴァロンダムだな。V2は流石にないよな? 

 

「ミサイルサイロは地下深くにあり、破壊するには戦略爆撃機の大型貫通爆弾による精密攻撃が必要だ。しかし現在当該空域には分厚い雲に覆われており、爆撃機だけでは目標への精密攻撃は難しい」

「いつも肝心な時に天気悪いよなトリガー」

「まったくだな」

 

 雷雨しかり砂嵐しかり、今回の雲しかり。

 

「そこで君たちの出番だ。我が部隊が爆撃機の目となり、ミサイルサイロを探し出す。君たちは特殊兵装の代わりに照準ポッドを機体に搭載。当該空域を低高度で飛行し、稼働しているサイロを目視で見分け、それを照準ポッドで捉えよ。兵装発射スイッチを押せば照準ポッドが継続した位置情報をもとに爆撃機が爆弾を投下する。その上で着弾までの間、照準の中心にサイロを捕らえ続けなければ命中しない』

 

 これはなかなか大変だよ、ほんと。

 事前に聞いた照準ポッドの射程は2500。そこから爆弾が到達するまで低速かつブレずに飛び続ける飛行技能が必要。

 その間は無防備状態、その状態で敵の対空火器や航空機にも注視しなければならない。

 

 空戦でビュンビュンやるのとは違う精密な技術が必要だ。

 

「また、先の戦闘により機材と人員に被害が出ている為、本作戦はサイクロプス隊は参加出来ない。トリガー、君のストライダー隊だけで作戦に当たってもらう」

「了解しました。ストライダー隊のメンバーをワイズマンと協議した。今回ストライダー2にカウント。3と4はいつも通りイェーガーとランツァの編成で行く」

「俺がトリガーの指揮下に入るのか?」

「不満か?」

「まあぶっちゃけ釈然とはしねえが。お手並み拝見と行こうじゃないか、小隊長どの」

 

 おや。思ったより反発はなかったな。

 もっと渋ると思ってたのに。

 

「今回のミッションで照準ポッドをつけるのは俺とイェーガーだ。カウントとランツァは対空装備。空戦は当てにさせて貰うからな」

「そりゃいい。対地なんて性に合わねえからな」

「俺も終末誘導は向いてなさそうだ」

「拝命した。しっかりやり遂げるとしよう」

「決まりだな。追い詰められた者のヤケがろくな物であった試しはない。ストライダー隊、健闘を祈る」

「「了解!!」」

 

 

 

 ーーー◇ーーー

 

 

 

「作戦領域突入。ミッションスタート」

「エルジアの所有するIRBMは5発と少ない。そのため敵は偽のサイロを作ってたこちらの爆撃から守ろうと必死だ」

「偽のサイロだと?」

「ペンキで書かれたサイロだ。そんなものでも空からの目は騙せる」

「この天気だと偽装効果も増すな」

「トリガー。お前の目なら遠目でも見分けられるんじゃねえか?」

「さあ、どうだろ……」

 

 実際見てみないとわからんが。思ったより天候が悪いな。

 あちらの画工の腕が画伯であることを祈ろう。

 

 しかし偽装か。444基地の偽装滑走路とモスボールを思い出すなぁ。

 通り道のAAGUNを破壊しながら染み染み感慨にふける。

 

「こちら爆撃部隊。巨鳥を落としたロングレンジ部隊の片翼だな、噂は聞いてる」

「俺たちは爆弾を運ぶ。あんたらは終末誘導を頼む」

「こちらストライダー1。ロングレンジ部隊の小隊長のほうだ。若輩ながら宜しく頼む」

「おいおい本当に若いじゃないか。こんな若いのがあのアーセナルバードをなぁ」

「侮るもんじゃないぞ相棒。こういう奴が次代のトップエースになったりするんだ」

 

 こんな事を言われるようになっちまった。

 改めて巨鳥落としがとんでもない偉業であることがわかる。戦争の一手だもんな。

 

「前方ミサイルサイロ。目視で確認」

「トリガー。照準ポッドを使うにはまず兵装を切り替えるんだ」

「了解」

 

 兵装切り替えボタンを押すといつもは見ない表示が。

 十字のレティクルとそれを覆う点線で象られた丸が表示される。

 

「HUDの中央に表示されている円内にミサイルサイロを捕らえろ。その状態で兵装発射スイッチを押せば爆弾が投下される。その後も着弾までサイロを照準の中央に捕らえ続ける必要がある。着弾の瞬間まで照準ポッドでサイロを捕らえ続けろ」

「了解。じゃあやってみるか。取り巻きのお零しは任せる」

「「了解」」

 

 目標まで加速、後にブレーキ。

 照準可能距離まで3、2、1。

 

「誘導開始!」

「了解、バンカーバスター投下!」

 

 ピッピという電子音と共に爆撃機からバンカーバスター投下。

 次第に電子音の間隔が細かくなり……ドカン! 

 

「バンカーバスターの着弾を確認! ドンぴしゃだ!」

「よし上手くいった!」

「1つ目のミサイルサイロの破壊を確認。バンカーバスターの再投下には時間が必要になる。慎重に狙うんだ」

「この調子でドンドン行こうぜ」

 

 次はあそこか。広域レーダーに従いそのまま北上する。

 

「IRBMの狙いはオーシア軍駐屯地だ。多数の将兵の命がかかってる。時間もない」

「しかも奴らが狙う駐屯地には多くの民間住宅が隣接している」

「民間人の巻き添え上等ってか。やつら狂ってるぜ」

「その通りだな」

「ああ、愚行を止めよう」

 

 最終的に勝てば全てが正当化されると思っているのだろう。

 どの陣営にも関わらず上に立つ奴は民草のことをただの数字としか見てないらしい。

 

「次は対空兵器が多いな」

「そこまで密度はなさそうだ。直進する」

「気をつけろよ」

 

 次のサイロは山の中だ。

 少し上昇し、ポジション調整……誘導開始! 

 

『奴らサイロを狙っている! 撃ち落とせ!』

『先頭の機体だ! 奴を狙え!』

「おっと! うちの隊長はやらせねえぜ!」

「ハリアーが来てるな。こいつは俺がやるぜ」

「目標弾着……今!」

 

 素直に誘導された地下貫通爆弾がサイロの蓋を突き破りサイロから爆炎が噴き上がった。

 

「ミサイルサイロ破壊! これで2つ! まだ発射の兆候はない」

「意外となんとかなるんじゃねえか?」

「この調子ですべてのミサイルサイロを壊してしまおう」

「ああ、そうだな……」

「どうしたトリガー?」

「いや、なんかさっきのと爆炎の規模が違うような……」

「気の所為じゃねえか? 本物のサイロに間違いないだろ?」

「こちらストライダー2、ハリアーは撃破したぜ。なんかあったのか?」

「いや、なんでもない。今はIRBM破壊を優先しよう」

 

 時間は有限だ。いまこの時もエルジアはIRBMをこっちに撃ち込む為に動き回ってることだろう。

 余計なことを考えている暇はない。

 

 次はマップ右上、と思ったらなんか来たぞ? 

 

「敵航空部隊を確認した。タイフーンが4機。おそらく向こうが呼んだ援軍だろう。爆撃機を狙う気配はない、ミッション遂行の障害になるなら排除しろ」

「ここでタイフーンか、面倒だな。カウント、ランツァ、頼めるか」

「おう、さっきのハリアーは物足りなかったからな。遊んでやるとするか!」

「援軍だかなんだか知らないが。わざわざやられに来てくれるとはな!」

「イェーガーは俺と一緒にサイロだ。行くぞ!」

「了解した」

 

 タイフーンは対空装備の2人に任せミサイルサイロに。

 うわ、なんか天気悪いなここだけ! 

 

「風強っ! 機体が流される!?」

「どうするトリガー」

「とりあえず脇のAAGUNを頼む! このまま行く! オラッ!」

「ストライダー1、座標を受け取った。バンカーバスター投下!」

「んーー。あ、駄目だ流された!」

 

 横っ面に強風を叩きつけられ強制的に座標をズラされて到達したバンカーバスターが落下。山の表面にクレーターを作り上げた。

 

「爆弾が目標からそれた。命中せず!」

「すまない!」

「気にするな。まだ爆弾はたんまりある。落ち着いて行け」

『上空の味方機、聞こえているのか!? 繰り返す サイロを破壊させるな!』

『わかっているがこいつら相当手練で……! 奴は何処に!!』

『雲の中に逃げたのか? 何処だ?』

「こっちだよぉ!」

 

 カウントのイーグルから4AAM発射。上空からの奇襲に2機のタイフーンが千切れ飛んだ。

 

「わーおやるなぁ。こっちも負けてられねえ」

「トリガー、イェーガー。もたもたしてっと先に終わらせちまうぞ!」

「言われてしまったな。では急ぐとしよう、誘導開始」

 

 AAGUNを潰したイェーガーが終末誘導開始。

 だが先程の俺と同じく風に流される。

 

「成る程確かに強い、ならば」

 

 風に流されながらも機体の向きを小刻みに変えることで目標と軸を合わせた。

 誘導されたバンカーバスターは揺れながらもサイロに向かって突き刺さった! 

 

「着弾確認。少しそれてしまったな」

「ナイスだイェーガー! サイロの蓋が吹き飛んだ!」

「弾頭は暴露しているはずだ、通常兵装でも破壊できる。やりやすい方でいいぞストライダー隊」

「なら直接狙おうかな!」

 

 風で横にズレるっていうなら、真上から行く! 

 

 急上昇、からの180ロール。そのまま逆向きで急降下し、直下にサイロ内のミサイルを捕えた。

 

「FOX2! 行け!!」

 

 ミサイルの誘導は風に負けることなく真っ直ぐサイロの中にイン。少し遅れて爆炎が高く噴き上がった。

 

「よっしゃ!」

「ミサイルサイロ破壊!」

「こちらストライダー2。敵編隊の撃墜を確認した」

「カウントは3、俺は1機だ。見事なもんだぜ」

「今日は空が広く感じるぜぇ。サイクロプスの俺は籠の中の鳥だったもんな……このミッションが終わったらまたあの中隊長様の指揮下か。あぁ、うんざりだぜぇ」

 

 おいおいテンションのアップダウンが激しいな2番機様よ。

 そんなに嫌ならストライダー隊に来るかい? 

 俺の部下っていう肩書がついちゃうけど。

 

「弾頭は残り2つ。サイロと思わしきポイントは5つか」

「どうする。二手に別れるか?」

「そうだな……そうしようか。俺とカウントは北側から。ランツァとイェーガーは南側から攻めよう。敵の規模は未知数だから、各機油断しないように」

「「ウィルコ」」

「よし、ブレイク!」

 

 右に進路を取りながらモクモクと煙を上げるサイロを見下ろす。

 そういえば今破壊したサイロの爆発。爆炎の規模が1回目に破壊してたのと似てたな。

 2回目はなんかそこまでだったけど……流石に気の所為だよな? 

 

「どうしたトリガー。余所見してると地上から落とされるぞ」

「そんなヘマはしないよ。さっ、口うるさくない小隊長の下でキリキリ働き給えよ2番機くん」

「おう。しっかり手綱を握ってくれよ。小隊長様」

 

 軽口を叩きながら進路を西へ。

 深く考えすぎるのも考えものだな。いまはIRBMを止めないと。

 

 ……まさかこの時の懸念が見事的中するとは思わなかったな。

 

 ストライダー隊がエルジアの奇策に度肝を抜かれるまで、あと少し。

 

 

 

 




 どうも。エースコンバット30周年にギリギリ間に合わなかった男。作者のブレイブです。

 朝SNS開いたらエスコン30周年って出ててびっくりしましたわ。残り2000文字書いて今日中に投稿しよう!と思ったら書き上げた時に丁度0時でした。畜生めー。
 何にせよめでたいですな。8の制作も進んでる雰囲気でしたし。楽しみですな。

 今回はコゼットの独白。ロングレンジ隊長2人、そしてミッション13。少し駆け足気味になったかなとは思いますが。楽しんでくれたかな?
 機体乗り換えの件エイブリルはどう思うかと悩みましたが。ここはトリガーから見たエイブリル評を素直に書いてみました。

 果たしてトリガーは何を選んだのか。まあ結構分かりやすいですけどねwww

 ちなみに原作より1週間早くミッション13スタートとなってます。後の1週間を開けた意味は近いうちわかるかと。
 ではまた次の機会に!サラダバー。
 
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